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18話

9月18日、学園祭2日目・・・。

―――「・・・ココは?」

白い空間に1人佇む紅葩。

(私って・・・変な夢見すぎじゃない?)

自分で自分にツッコミながら辺りを見回す。

 真っ白で何もない空間・・・に誰か立っていた、その人物とは・・・。

「・・・っ、し・・・ぐれ?」

蓮との戦いに敗れ消えた自分の後輩、雪乃 時雨だった。

「時雨っ。」

紅葩は驚きと混乱の中、それでも時雨に駆け寄りその勢いのまま抱き付いた。

「紅葩さん姉さんに伝えて下さってありがとうございます。」

終始笑みの時雨・・・何も変わっていない。

「紅葩さん何だか雰囲気が変わりましたね・・・。」

「そう・・・?」

「はい、昔の紅葩さんに。」

「・・・時雨は私の過去、知ってるんだね?」

時雨が自分の過去を知っているのに驚くべきはずなのに紅葩は妙に納得している。

「水上さんには気を付けてください。」

「睡蓮を?」

「・・・緋真さんはやっぱり甘いですね、紅葩さんの側にいるのに彼は・・・。」

「時雨・・・蓮はっ「恨んでいるわけじゃないですよ?ただ嫌いなだけです。」・・・フフッ。」

思わず笑ってしまう紅葩。

「・・・そろそろ時間ですね。

  紅葩さん仲間同士で戦う必要は無いんです、本当に倒すべき相手は―――。」

「時雨?何言ってるか聞こえなっ。」

紅葩はその白い空間から姿を消した・・・残っているのは時雨と・・・。

「紅葩さん・・・。」

名残惜しそうに紅葩の名前を紡ぐ時雨の背後には・・・。

『どこまで話そうとしていたんですか?時雨は。』

「すみません・・・でも貴方だって紅葩さんに近づいて何をしたんですか?」

人型だが人ではない何か・・・。

 昔の古風な服装、本来顔がある部分は炎が揺らめき、顔(炎)の正面には『月』と書かれたお札。

『まぁいいでしょう・・・君がどれだけ彼女を止めようと彼女の針は止まらない。

  今更彼女の運命を、スサノオの呪縛を止められるものはいないですからね。』

「・・・・・。」

『フフ、楽しみになってきました・・・帰りますよ時雨。』

「・・・″月読″さん、貴方は・・・どっちの、味方なんですか?」

人では無い何か・・・それは天照やスサノオと縁のある兄弟神の月読命。

 なぜその月読の側に時雨がいるのか・・・。

『おかしいことを聞きますね時雨は・・・私はただの傍観者ですよ?』

顔が無いので表情を読み取ることは出来ないが声色からしてとても楽しそうだ。

「・・・紅葩さん。」

時雨は死してなお、想い人をいつまでも想った・・・。―――

白い空間から追い出された後紅葩はベットの上で目を覚ましていた。

「時雨・・・アレは・・・ただの夢?」

時雨に触れた感触が、熱がまだ残っている気がするのだが・・・。

「・・・・・。」

いつまでも悩んでいても仕方がない、紅葩は学校に向かった。

教室の扉を開けばすでに着替え終わっていた剣の姿。

「おはよう剣。」

「おはよう紅葩。」

「・・・本当に休み1日貰っていいの?」

基本休みは1人半日なのだが、剣は休みがいらないらしくその分を紅葩に譲ると言ったのだ。

 彦星も織姫もクラスの名物になっているので両方が消えることはクラスにとってマズイ状況だが、剣だけに負担を掛けたくない。

「元々アタシが提案した出し物だからな、最初から最後まで面倒を見るつもりだったんだ。

  アタシは去年楽しんだからそれで充分だ・・・アタシの分まで楽しんできてくれ。」

紅葩の頭をなでながら優美に微笑む剣・・・本当に高校1年生なのか疑いたくなる。

「紅葩お待たせしました。」

「睡蓮。」

紅葩は剣に見送られ睡蓮と教室を出た。

「紅葩はどこか行きたくて?」

「うーん、睡蓮の好きなトコで良いよ。」

「・・・・・。」

―――黒髪の少女は目も合わせず抑揚の無い声で言い放つ。

「アナタはアナタの好きなようにすればいい・・・。」―――

「・・・睡蓮?」

急に立ち止まる睡蓮に首を傾げる紅葩。

「っ、ごめんなさい・・・みんなの教室行ってみましょうか。」

「・・・この格好で?」

1日オフとはいえクラスの貢献のため織姫の格好をしている。

 睡蓮の容姿を加え、視線が痛いほど刺さるが睡蓮はまったく気にしていない。

「行きましょう。」

睡蓮に手を引かれ紅葩はここから1番近い咲良の教室に向かった。

 咲良のクラスは屋台を使った軽食屋。

「咲良が食べててどうすんの?」

クラスに入れば咲良がハムスターのように頬を膨らませていた・・・口に食べ物を含みすぎているようだ。

「ひひゃふよ~ふひにふぁったらじぇんぶふぁだなんだよ~。」

「・・・なんだよ~しか分からないし行儀悪い。」

「ウチに勝ったら全部タダなんだよ~でしょ?咲良。」

咲良は親指を立てながら口に含んでいる物を飲み込む。

「さっすが睡蓮っ。」

「フフ、じゃあ私も挑戦しようかしら?」

「えっ?」

睡蓮の言葉に驚く紅葩。

 咲良は生徒会の中で1番の大食い、そんな咲良にあんな細い睡蓮が勝てるとは思えない・・・睡蓮も咲良の大食いは知っているはずだが。

「すいれっ「無理っ、睡蓮に絶対負けるもんっ。」えっ・・・。」

「お店のもの全部食べられちゃうっ。」

「失礼ですわよ咲良、私を節度の無い人間みたいに言わないでくださいな。」

節度が関係なかったら出来てしまうのか・・・。

 咲良はお店のものを全部食べられるくらいならと無料で焼きそばを出してくれたのだが・・・睡蓮の前に置かれた瞬間焼きそばは消えていた。

「睡蓮すご・・・。」

こんな細い身体のどこに胃袋があるのか・・・。

 2人はお昼を終え次は双子のクラスへ。

「「・・・・・。」」

向かったまでは良かったのだが女の子の行列が出来ていて並ぶ気すら起きなかった。

「次行きましょうか。」

「うん。」

立ち去ろうとする2人に・・・。

「紅葩~。」

「それはないんじゃないかな~。」

「擦りつくなっ。」

抱き付いてくる執事2人。

「フフ、執事がそんなことをするものではありませんわ。」

「「・・・・・。」」

睡蓮のその言葉に紅葩から大人しく離れる2人。

(・・・さすが睡蓮。)

璃莉もそうだが・・・生徒会は2人を恐怖で支配しているのではなかろうか。

 2人の主な被害者の紅葩だがこればかりは同情してしまう。

「では改めて・・・お入りになられますか?お嬢様方。」

「お嬢様方には特別な奉仕を「遠慮しとく、そういう特別扱い嫌いなの。」えー。」

「睡蓮、次はどの店・・・睡蓮?」

睡蓮を呼ぶ紅葩だが睡蓮から返事は無い。

―――「親が偉いからって自分が偉いわけじゃない。

     そういうすねかじりの考え嫌い。」―――

(・・・やっぱり。)

不思議そうに首を傾げる紅葩を見つめる睡蓮。

「睡蓮?」

「ごめんなさい紅葩、ちょっと考え事を・・・。」

「うん?じゃあ行こう。」

次は璃莉のクラスへ。

 璃莉のクラスは電気がついていなく、アロマキャンドルの灯りが神秘的にクラスを照らし、甘い香りが鼻に心地良い。

「いらっしゃい紅葩に睡蓮、ゆっくりしていって。」

璃莉はこのクラスの責任者でとても忙しそうだった。

「紅葩。」

「・・・あ。」

睡蓮に手を取られ左手の中指に何か当たる感触、

そこにはシンプルだが紅葩好みのシルバーの指輪がはめられていた。

「とてもよく似合っていますわ。」

「ありがとう睡蓮にも何か・・・。」

「別に構いませんわ、紅葩が喜んでくれただけで。」

「私が構う。」

紅葩は奥に探しに行った。

睡蓮はその光景を穏やかな笑みで見ていた・・・。

その頃・・・仕事をがひと段落した剣は別の教室で休憩していた。

 すると突然賑わいとは別の騒がしい声が廊下に響き渡っていた、剣が扉から覗き込むとそこには・・・。

「蓮っ。」

ボロボロな蓮、手首には縄の食い込んだ跡があり制服や愛用のバンダナは血で濡れていた。

「その傷はっ「紅葩はっ?」睡蓮と朝から一緒だ、そんなことより手当てを。」

剣が蓮の腕を掴み教室に入れさせようとするが。

「クソッ。」

「蓮っ。」

蓮は走り出す・・・彼女の元へ。

 そして場所が変わり紅葩と睡蓮、

紅葩は璃莉の店で良い物が買えたのか上機嫌だった。

「良かった睡蓮に気に入ってもらえて。」

紅葩が睡蓮に贈ったモノは紅葩がもらった指輪と同じデザインのピアス。

 睡蓮は今着けているピアスを外し、付け替えてくれた。

「ありがとう紅葩、大事にしますわ。」

微笑み合う2人・・・容姿はまったく正反対だがまるで姉妹の様だった。

 そんな2人はいつの間にか人気の少ない場所に・・・ソコは。

「・・・ココ・・・は・・・。」

紅葩は話に夢中で気づかなかった・・・顔から血の気が引いていく。

「・・・蓮に聞きましたわ、紅葩はここで大切な人を失くしたそうですね・・・。」

「・・・・・。」

ソコは裏庭・・・夏の日に時雨はココで・・・。

「私も・・・10年前に失くしました。

  親の愛情、信頼、周りから与えられていた期待もすべて1人の少女によって。」

「すい・・・れん?」

睡蓮は儚げに笑う・・・その笑みは紅葩を責めているようで・・・。

「少し・・・昔話をしましょう。」

睡蓮は紅葩の回答を待たず語りだした。

―――今から10年前、睡蓮はその街1番の金持ちの家に産まれ育てられ、その家にふさわしい淑女へと育っていった。

 それは親からはもちろん周りの大人たちも睡蓮には大層期待していた。

しかしそんなある日、睡蓮の家よりも豪邸な家が街のはずれに建てられた・・・。

 その豪邸の家には睡蓮の家をはるかに凌ぐ使用人の数、カリスマ的オーラを纏った紳士淑女な夫妻。

そして6歳の睡蓮よりも幼い、が睡蓮のすべてを上回っていた黒髪の少女。

 周りの大人たちは・・・睡蓮の両親でさえ睡蓮には見向きもせず彼らに取り入られようとしていた。

「お父様もお母様もどうしてっ・・・。」

睡蓮はその少女に嫉妬していた・・・そんなとある日の夜会パーティー。

 その日のパーティーはその豪邸の家の豪華な庭で行われ、

睡蓮は大人たちの中で浮く、小さな存在だがとても大きな期待を背負う少女に近づいた。

「ごきげんよう。」

「・・・・・。」

少女は、言葉は発さず会釈だけした・・・会釈だけでも分かる気品ある動作に嫉妬してしまう睡蓮。

「貴方はちっとも嬉しそうではありませんね・・・皆様にあれだけ褒められていて。」

「別に・・・アイツらが期待してるのは私じゃないから。

  親も他の大人たちも私じゃない・・・私の″先″を期待しているだけ。」

「・・・・・。」

そう呟いた少女の瞳はとても暗かった・・・彼女は睡蓮が思っているような子ではなかった。

 それでも睡蓮には先でも期待してくれている・・・そんな現状が羨ましかった。

・・・これが少女と睡蓮の最期の会話だった・・・。―――

睡蓮の過去の話が終わり、紅葩は驚きに目を見開いていた。

(豪邸に豪華な庭、黒髪の少女・・・夢とそっくり・・・。)

冷や汗が頬を伝う・・・心臓の鼓動がうるさい。

「・・・そしてその家族はあの事件以来全員行方不明・・・でもようやく見つけましたわ。」

睡蓮の目はとても鋭く細められていた。

「私の人生はスサノオが現れる前にその少女によって狂わされました・・・その家族の名前は・・・「紅葩っ。」・・・もう来てしまったのですか。」

「・・・蓮?」

傷だらけの蓮・・・そのボロボロな身体で睡蓮を睨んでいた。

「あの縄を自力で抜けてきたのですか?

そんな傷だらけで・・・そんなに紅葩が、″彼女″が大事なのですか?」

「うるせぇ・・・そんなんじゃねぇよ。」

蓮は銃を出現させ、その銃口を睡蓮に向けた。

「・・・っ、蓮どうして睡蓮に銃口をっ、それに睡蓮も縄って何でっ・・・。」

「私が紅葩と2人になるのを邪魔していたからですわ。

  蓮は・・・私が貴方に真実を話すのを、貴方の記憶が戻ることを止めたがっていた。」

「私の・・・記憶?」

「やめろっ。」

睡蓮に銃口を向けるが血を流しすぎたせいか焦点が合わず蓮には睡蓮を止めることは出来ない。

 紅葩はそんな蓮には目を向けることが出来ず、睡蓮だけを見つめる。

睡蓮の口がゆっくりと開く・・・。

「家族の名字は″椿″・・・娘の名前は紅葩。」

心臓が跳ね上がる・・・。

(私が豪邸の・・・睡蓮が憎んでいる少女?)

そして10年前・・・紅葩もあの日その街にいたのだ・・・。

「・・・じゃ、じゃあ私は・・・。」

身体が震え睡蓮の次言うであろう言葉を脳が拒否するがそれは残酷に紅葩の耳に入る。

「そう・・・貴方も私たちと同じスサノオに狂わされた玩具。

  紅葩、貴方も・・・″仲間″なのよ。」


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