17話
―――広い庭で行われるパーティー・・・煌びやかなドレスが月光で光り輝いている。
そんな大人たちの中に負けず劣らず輝いている子どもが1人。
青い髪をした少女の周りに集まり次々と褒める大人たち、
少女は嬉しそうに微笑む・・・心から嬉しそうに。
しかし・・・もう1人の少女の登場によりその顔は崩れてしまう。
「おぉっ、あの令嬢は・・・。」
「何と気品溢れる・・・アレでまだ6歳だそうだ。」
「それは素晴らしい・・・。」
「・・・・・。」
大人たちは黒髪の幼い少女を囲み褒めだす、青い髪の少女の時より人は集まっていた。
「・・・・・。」
なのに、少女は喜ぼうともせずまだ幼いのに作り笑いを浮かべていた。
「・・・何で・・・お父様もみんな・・・あんな子のどこがいいのよっ。」
青い髪の少女はずっと黒い髪の少女を睨みつけていた・・・。―――
「・・・・・。」
紅葩は夢から目を覚まし身体を起こした・・・。
(今の夢は・・・私の記憶?)
断片的にしか覚えていないがあの黒髪の少女はおそらく・・・。
紅葩は瞳から涙を流していた、がずっとベットの上にいるわけにはいかない。
今日は9月17日、学園祭の1日目。
学園祭は全部で3日間、17日、18日、19日に行われ、最終日の夜はフィナーレが行われている。
(・・・早く行こう。)
紅葩は身支度を済ませると学校に向かった。
学校に着けば、生徒たちは始まる前だというのに浮き足立ち賑わっていた。
紅葩も教室に向かう、教室に着けばコスプレ衣装を身に纏うクラスメート、
自分も織姫の衣装を着るべく衣装を持って更衣室へ・・・衣装を着ることにも慣れてしまい羞恥などどこかにいってしまったものだ。
「おはよう、紅葩。」
「おはよう剣・・・やるからには気合入れるよ。」
「もちろんだ。」
紅葩もヤル気があるようで何より・・・ここの所少し様子がおかしかったので心配していたのだが・・・。
1週間前、蓮と紅葩が出て行った後睡蓮が探しに行ったのだが戻ってきたのは蓮と睡蓮の2人だけだった。
剣は紅葩を探しに校舎を回った・・・自分たちの教室に綺麗に畳まれた織姫の衣装。
「・・・紅葩。」
鞄が無いことから帰ったのだろうが、自分たちに何も言わないで帰るなんて紅葩らしくなかった。
「・・・・・。」
1週間聞くに聞けずにいたのだが心配はいらなかったらしい。
学園祭を始める合図・・・お客がさっそく入ってくる。
「いらっしゃいませ。」
コスプレ喫茶は予想以上に人気だった。
その中でも織姫、彦星は人気で紅葩も剣も大忙しだ。
「こちらミルクティーになります。」
「ありがとう紅葩、すごく似合ってるね。」
今紅葩が相手をしているお客は雫と・・・。
「雫の言う通り可愛い子だね。」
「でしょ?」
雫の彼氏、雫の家は名家で前から決まっていた許嫁らしいがお互い相性が良かったのだろう、恋人として仲は良好である。
「ごゆっくり・・・お2人さん。」
紅葩は別のお客のテーブルに向かった。
「・・・雫?」
雫は紅葩の背中を悲しげに見ていた。
「紅葩・・・無理してる。」
笑顔で接客している紅葩だが・・・雫だから分かること。
だが雫は分かるだけ、紅葩が何に悩み困っているのか今の雫には分からない。
「ありがとうございました。」
「くーれっはちゃんっ。」
「ひゃっ。」
耳元で囁かれ紅葩の肩が跳ねる。
「紫葵っ・・・咲良。」
「紅葩ちゃん耳まで真っ赤~~~。」
犯人は紫葵でその隣には咲良がいた。
「珍しいお客だな。」
「剣。」
紫葵は呼び込みで咲良は普通に休憩らしく一緒に紅葩たちの所に来たらしい。
2人をテーブルに案内し星形のクッキーを出す。
「こちら織姫と彦星からのサービスでございます。」
「わぁぁぁぁぁ。」
大袈裟に顔を輝かせる咲良、リスのように頬を膨らませて食べる。
「・・・・・。」
「な・・・何?」
紫葵はクッキーには手を付けず、ずっと紅葩の方を見ている。
「綺麗な足だなって「執事がセクハラしていいのか?」・・・。」
紫葵は彦星(剣)の鉄拳を喰らう前に身を引いた。
「・・・・・。」
その様子を見て苦笑する紅葩、そんなとき咲良が思い出したかのように。
「そういえばココに来る途中蓮と睡蓮を見たよ、2人一緒だった。」
「・・・っ。」
「珍しいよね~蓮が学園祭に参加してるなんてさ~。」
「睡蓮が一緒なんだろ?荷物持ちでもさせられてるのさ。」
「・・・・・。」
いつまでも人気の2人がサボるわけにもいかず、作業に戻る。
「いらっしゃいま・・・。」
「こんにちは、紅葩。」
「・・・・・。」
先程話していた話題の人物、睡蓮と蓮・・・蓮は顔を合わせようともしなかった。
「椿さん、ごみ出しお願いしていい?人手足りなくて・・・。」
「・・・分かった。」
クラスメートにごみを渡され睡蓮たちとすれ違う・・・蓮と目が合うことは無かった・・・。
睡蓮たちは他の店員に案内されテーブルに。
「ココのクッキー美味しいって評判で食べてみたかったの。」
「・・・・・。」
「フフ、そんな怖い顔しないで頂戴。」
優雅にコーヒーを飲む睡蓮・・・蓮は頬杖を着いてずっと外を見ていた・・・空には。
「・・・・・はぁ。」
紅葩はごみを出した後、教室にはすぐ戻らず呆けながら空を見ていた。
(昼なのに月出てる・・・。)
別段珍しい現象ではない。
ただ、その月が紅葩にはどこか神秘的でどこか怖かった。
「・・・「何を呆けているんですか?」っ。」
先程紫葵にもやられたがそれとは違って悪寒が走った・・・紅葩は思わず裏拳を繰り出す・・・がいとも容易く、受け止められてしまった。
「・・・・・。」
「・・・随分好戦的な織姫様ですね。」
「あっ、すみませんっ。」
おかしい・・・紅葩は自分から手を出すような気性さは無いはずだが・・・。
紅葩は頭を下げて謝った後、その人を見た。
袴に茶色の皮製のコートという不思議な服装に、
腰以上ある紅葩より黒い髪を三つ編みに纏め、目はサングラスによって隠れている。
肌は透き通るほど白く雰囲気がとても穏やかで、女性と言われてもおかしくない容姿の男性。
「・・・・・。」
彼を見ていると不思議な気持ちになる。
惹かれるのだが近づいてはいけないと本能が警報を鳴らす・・・それはそう、夏の海で出逢ったあの男性と同じ感じ。
「なるほど。
不完全でも我々のことを感知しているのですね・・・あの方たちが気にかけているわけだ。」
「えっ?」
「失礼、こちらの話です。
貴女はなぜ黙って見ているのですか?」
男性の手が紅葩の頬に添えられる。
「あっ・・・の。」
「貴女にはその力があるのに・・・。」
何を言っているのだろうか・・・何故初対面の人物にそう言われなければいけないのか。
「・・・・・フッ。」
混乱する紅葩に男性は微笑むと手を離す。
「私は傍観者です・・・貴女たちの物語、楽しみにしています。」
「・・・あのっ。」
歩き出す男性を止めようとする紅葩。
「そうそう・・・あの人によろしくお伝えください。」
「・・・あの人?」
聞き返すが答えてくれず、足を進める男性。
「・・・っ、まっ「紅葩?」・・・璃莉、蒼葵・・・。」
反対側から声を掛けられる、璃莉と執事服の蒼葵。
紅葩はすぐ顔を戻すがそこに男性の姿はなかった・・・。
「・・・・・。」
「・・・?どうした紅葩。」
「何かあったの?」
心配する蒼葵と璃莉。
「ううん、なんでもない。
それよりも・・・2人は何でココに?」
「わたしは休憩。」
「オレは客寄せ、紅葩たちに客取られてるから。
ってことで・・・紅葩一緒に行か「ないから。」・・・璃莉姉さ「わたしの休憩を潰すつもり?」スミマセン。」
蒼葵撃沈・・・負のオーラを出す蒼葵だが・・・。
「蒼葵せんぱーーーいっ。」
「はぁーーーいっ。」
女の子からの呼びかけに2秒で復活。
「・・・変わらないね。」
「人はそう簡単に変わらないわ、紅葩もそうでしょ?」
「・・・どうかな?私は昔の″私″知らないから。」
「紅葩は思い出したいの?」
璃莉の問いに紅葩は目を伏せた。
「・・・正直分からない。
思い出そうとすると怖くて、辛くて、でも嬉しいこともある気がするの、でも全部思い出したら私が・・・。」
自分が自分でなくなりそうで・・・それが紅葩にとって1番怖いことだった。
「・・・紅葩。」
璃莉は何も返せなかった・・・自分が思っていた以上に紅葩の過去は重いものなのかもしれない。
「紅葩はそのままだって、絶対。」
「蒼葵・・・。」
「話聞いてたの?ナンパしてたのに。」
「璃莉姉さん人を軽い人間みたいに・・・。」
「本当のことを言って何か問題でも?」
璃莉の正論に蒼葵再び撃沈・・・。
「紅葩、蒼葵の言う通り記憶を思い出しても紅葩は紅葩。」
「ありがとう璃莉に蒼葵。」
紅葩は2人と別れ教室に戻る・・・睡蓮と蓮はもういない。
「遅かったな。」
「剣・・・ちょっと考え事。
午後からちゃんと働くからっ。」
いつもの調子に戻った紅葩に剣は安心する。
午後も売り上げは好調に終わり、後片付けと明日の準備。
「紅葩お先。」
「お疲れ。」
教室には紅葩1人が残る・・・そんな教室に。
「お疲れ様、紅葩。」
「睡蓮。」
睡蓮が1人、蓮の姿は無い。
「明日暇な時間あるかしら?」
「明日は1日オフだげど・・・。」
睡蓮は嬉しそうに微笑んだ。
「なら明日私と―――。」
久しぶりの更新になりました。
最近忙しすぎてパソコンの前に立つことも無くなっていました・・・。
これからもよろしくお願いします。




