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16話

夏休みがあっという間に終わり秋の季節、2学期に入り黒天学園最大の行事が・・・。

「学園祭だぁーーー。」

「「「わぁーーーーー。」」」

「「・・・・・。」」

盛り上がるクラス委員長、クラスメートたち・・・テンションが変わらない紅葩と剣。

「・・・何でこんなに盛り上がってるの?」

「知らないのっ?紅葩。

  学園祭の出し物の売り上げは全部クラスで山分け、費用は学園持ちっ、コレが燃えずにいられますかっ?」

「あっそう・・・。」

燃えているクラスメートに何も言えないが・・・その費用はどこから来るのかとは考えたことは無いのだろうか。

(海の家とホテルの売り上げはコレで消えるのか・・・。)

「さぁっ、出し物は何にするっっっ。」

お化け屋敷や喫茶店、演劇などたくさん出たがどれもしっくりこなかった。

「他にはっ?何か良い案ないのっ。」

「・・・・・。」

紅葩は全く興味なく上の空で窓の外に顔を向けている。

「「「剣様~~~ぁ。」」」

剣の名前が出てきたので教室に顔を戻すと教壇に立っている剣の姿。

心なしかヤル気がある様に見える。

「・・・・・。」

こういう時の剣は周りの利益でなく自分の利益になることを言うので紅葩は嫌な予感しかしない。

「アタシも喫茶店が良いと思うんだが、ただの喫茶店では面白くないだろう?」

「剣様っ、何か良い秘策がっ?」

「コスプレ喫茶・・・何て良いんじゃないか?

  費用の上限は無いしココには手芸部も多い・・・どうだ?」

(期限は1週間しかないのよ・・・いくら剣の提案だからって無理が「素敵ですっ。」・・・。)

紅葩の頬杖を着いていた手が崩れた。

 剣がリーダーの元、誰がどの衣装コスプレになるかは出来てからのお楽しみとなった。

「・・・・・。」

顔が引き攣る紅葩と楽しげで妖しい笑みを浮かべた剣の目が合ったのは勘違いではない。

 生徒会室・・・。

「アレ?剣は?」

お馴染みのメンバーが揃う中、剣だけいない。

「剣は手芸部の子たちと打ち合わせ、何の衣装にするか決めてるんだって。」

「へぇ~剣がね・・・。」

そう話しているとご機嫌な剣が生徒会室に入ってきた。

「剣ー、コスプレなんだってぇ?」

「気合い入ってんじゃんっ。」

「どんなのにするのー?」

「出来てから・・・な。

  準備中は着慣れるために着る予定だからそれまで楽しみにしておけ。」

「剣が張り切っているなら期待できそうね。」

「・・・・・。」

璃莉は微笑んでいるが、当事者の紅葩にとっては何が来るのかと気が気でない。

「みんなは何するの~?うちはたこ焼きと焼きそばとお好み焼きと「要するに食い物屋ってわけ?」そうっ。」

「本番はまだなんだから涎を拭きなさい。」

提案したのは咲良で確定だろう・・・。

「オレらは~。」

「執事喫茶だよ~。」

「「だろうな。」」

剣と紅葩の声が重なる、双子の考えそうなことだ。

「似合うでしょ?紅葩ちゃんサービスするからぜひ来て「行かない。」え~。」

「過剰なスキンシップを嫌う人もいるってことを肝に銘じるべきね。」

紫葵を睨む紅葩。

「璃莉姉さんは何するの?」

「あるお店の商品を生徒が販売するの。」

剣や紅葩にあげたプレゼントを買ったお店、璃莉だけでなく常連客はたくさんいる。

 売り上げは全部お店に貢献する、クラス全員の意見である。

「璃莉らしいね。」

「蓮はどうするんだ?」

「あ?参加するわけねぇだろ。」

学校にいるだけで何もしていない蓮。

文化祭だけ参加するのはどうかと思うが・・・参加しないのが蓮だ。

「去年は睡蓮さんのクラスの使いっパシリでしたね。」

「うるせぇ璃莉、余計なこと思い出させるな。」

「・・・睡蓮、って誰?」

紅葩の知らない人物の名前。

「去年いた生徒会会長だ、名前は水上みずかみ 睡蓮すいれん。」

「うち等の″仲間″なんだよっ。」

その睡蓮という人もスサノオの玩具・・・。

「とてもリーダーシップがあって。」

「文武両道っ。」

「現代の大和撫子って感じで完璧なお嬢様。」

「蓮も睡蓮には敵わねぇもんなぁ~言いくるめられてさ。」

「・・・黙っとけ蒼葵。」

みんなの話を聞いて睡蓮という人物に興味を抱く紅葩。

「・・・会ってみたいな睡蓮さんに。」

「紅葩ならきっと気に入られるよ。」

「・・・・・。」

睡蓮の話で盛り上がる中、蓮だけは浮かない顔でソファーに寝っ転がっていた。

 それから1週間が過ぎ学園祭へと近づく。

「剣様っ、出来ましたよどうぞっ。」

「ありがとう、紅葩。」

「何?剣。」

教室の飾りつけをしている手を止め剣に駆け寄ると手渡された紙袋。

「試しに着てみてくれ。」

「・・・何で私?」

「紅葩のサイズに合わせて作ってもらったからな。」

「・・・・・。」

真顔で言うセリフか・・・剣と紙袋を交互に見る紅葩。

「・・・いやっ「連れて行ってくれ。」ちょ、剣っ。」

手芸部に両腕をホールドされる・・・そのまま強制連行され教室から出て行く。

「・・・楽しみだな。」

剣は紅葩の背中を見届けてから自分も紙袋を持って教室から出て行った。

 5分後、教室の扉が乱暴に開かれる・・・入ってきたのは紅葩でも剣でもなく、大量の荷物を持った蓮だった。

「剣の野郎・・・俺に持ってこいとか言っときながら何でいねぇんだよっ。」

知らない人間からなら絶対に断わっているのに・・・なんだかんだと仲間には優しい蓮。

(紅葩もいねぇじゃねぇか・・・どこ行きやがったアイツら・・・。)

荷物はクラスの人間に渡し蓮はイスに座りながら辺りを見回すと廊下から紅葩の声(叫び声)が聞こえてきた。

「絶対イヤッこんな格好っ。」

「今更尻込みしないでっ、剣様直属の命令なんだからっ。」

直属ってこの子たちは剣の家来かなんかか・・・。

「衣装お披露目~~~。」

扉が開かれそこにいたのは・・・。

「・・・うぅ。」

恥ずかしそうに頬を染め俯く紅葩・・・その格好はまるで天の川で有名な「織姫」のようだった。

 全体的にピンク色のドレス、前の丈は短く足が露わになっている。

「・・・紅葩。」

「れっ、蓮っ・・・何でココに・・・着替えるっっっ。」

蓮に見られることがよっぽど恥ずかしかったのか、

真っ赤にした紅葩は手芸部の子の手を振り払い扉を開けると誰かにぶつかってしまった。

「どこへ行く気だ?紅葩。」

頭上から剣の声、ぶつかった相手は剣らしい・・・紅葩は顔を上げた。

「何・・・?その格好・・・。」

女子たちから湧き上がる悲鳴。

「お似合いのカップルだろう?」

織姫の恋人といえば「彦星」

 青色の甚平の様な着物、長い髪は団子で纏め・・・極めつけはメイク。

(双子のプレゼントに使い道があったとは・・・。)

誕生日に双子から貰った男装用のメイク道具。

 剣の美人がイケメンに変わり、カッコいいがさらにプラスされている。

芸能人よりカッコいい・・・剣はいったい何を目指しているのだろう・・・。

「「・・・・・。」」

イスに座っている蓮と目が合う・・・剣は妖しく口角を上げると、紅葩の肩を抱きながら蓮に近づいていく。

「どうだ蓮、アタシも紅葩も似合っているだろう?」

「・・・・・。」

「・・・色気がねぇ。」

手を出す紅葩だが軽々と蓮に止められてしまう。

「・・・・・。」

「・・・蓮?」

ドレスを身に纏っているとますます似ている・・・。

「・・・紅葩。」

「・・・・・何よ?」

蓮に真っ直ぐ見つめられたじろぐ紅葩。

「やっぱり色気がねぇ。」

「・・・っ、悪かったわねっ。」

憤怒で顔が赤くなる・・・暴れてやろうかと拳を握るが。

「止めろ紅葩、衣装が汚れるだろう。」

「俺の心配は当然無しか剣。」

「当たり前でしょっ、このバカ蓮っ。」

「無いモンを無いって言って何が悪ィんだよっ。」

教室に響く3人(主に紅葩と蓮)の声。

「相変わらずですわね・・・蓮は。」

透き通った声・・・紅葩は目を向けた。

 腰位まであるカールのかかった青い髪に白いおしとやかそうな瞳、気品溢れるその容姿はまさに大和撫子。

「「睡蓮。」」

「・・・え?」

蓮と剣の声が重なり紅葩はその言葉に驚きを見せる。

(この人が水上 睡蓮さん?)

女性、睡蓮は教室に入り蓮たちに近づく。

 その歩き姿はとても優美でクラスメートたちは固まっている。

「睡蓮、何しに来た?」

まるで睡蓮から紅葩を隠すように紅葩の前に立つ蓮。

「・・・後ろの方は誰かしら?」

「新しい生徒会のメンバーだ、アタシたちのことも全部知っている。」

「まぁ・・・わたくしは水上 睡蓮と申します、貴方は?」

「蓮邪魔っ。」

蓮の前に無理やり立つ紅葩。

 紅葩の漆黒の瞳と真逆の睡蓮の白い瞳が合う。

「初めまして睡蓮さん、椿 紅葩です。」

「・・・っ、つばき・・・くれはっ?」

「・・・・・?」

蓮と自己紹介した時と同じ反応・・・いったい自分の名字に聞き覚えでもあるのだろうか?

 記憶喪失になっても覚えていた自分の名前・・・。

しかし紅葩は椿という名字に嫌悪していた、

本当は名乗りたくないほど嫌なのだが祖父母が知り合いに会うかもしれないと渋々名乗っている。

「チッ・・・おい睡蓮、話がある。」

「・・・クスッ、紅葩さん敬語じゃなくて構いませんわ。」

また会いましょうね、そう言い残して睡蓮は蓮と共に教室を出て行った。

(・・・蓮?)

2人が出て行った扉を凝視する紅葩。

「紅葩、残りの作業をさっさと済まそう。」

「・・・うん。」

剣は2人の様子には別に気にしていない、紅葩が気にしているだけ・・・。

 準備が終わり生徒会室に向かう2人・・・格好はそのまま。

「・・・本当にこの格好で行くの?」

「ここまで来て何を言ってるんだ?」

もう生徒会室目前、ずっと着ていて抵抗は無くなったがみんなに見せるとなっては別問題だ。

 渋る紅葩に剣は構わず生徒会室の扉を開ける・・・そこには。

「へぇ~睡蓮は秘書してるんだ~。」

「お似合いの仕事ですね睡蓮さん。」

「ありがとうございます咲良に璃莉。」

「会社でモッテモテじゃないの~?」

「そんなことありませんわ。」

「またまた~~~。」

睡蓮を囲む生徒会のメンバー・・・みんなは久しぶりの睡蓮にご機嫌だ。

「遅くなった。」

さっきぶりだな睡蓮、と輪に近づく剣、紅葩はその後ろをついて行く。

「2人とも可愛い~~~。」

「剣はカッコいいでしょ・・・お似合いですよ2人とも。」

「蒼葵と紫葵のプレゼントのおかげだ。」

「「へへへ~~~。」」

「たまには良い仕事するのね・・・双子の癖に。」

「「・・・・・。」」

調子に乗る双子に止めを刺す璃莉。

「どうしまして?紅葩・・・気分でも優れないのですか?」

「へっ?・・・やっ、別に・・・。」

何だか入り辛かった紅葩、睡蓮に呼ばれ近づく紅葩だが・・・。

「紅葩、来い。」

「ちょ・・・蓮っ。」

蓮に腕を掴まれ引きずられるまま生徒会室から離れる。

「・・・どうしたんだ?蓮の奴。」

「さぁ?」

みんなが不思議そうにする中1人だけ・・・。

「クスッ、過保護ですわね・・・蓮は。」

1人微笑む睡蓮。

その声は普段と変わらないものだったがその呟きは誰にも聞き取られることは無く、その瞳の奥に潜む眼光はとてつもなく鋭いものだった・・・。

その頃2人は中庭の大きな木の下にいた。

「蓮・・・睡蓮さんが来てから何かおかしいよ?」

「・・・・・。」

ココに連れて来て2人っきりになったのも蓮のせいなのに蓮は目を、顔すら合わせようとしない。

「蓮っ・・・私に言いたいことあるんでしょっ?」

「・・・・・。」

「・・・っ、答えてよっ。」

蓮の胸ぐらを掴み無理やり顔を合わせる。

「蓮と睡蓮さん、椿って聞いたとき同じ反応したよね・・・?」

「・・・っ。」

「ねぇっ、私っていったいなっ「知るか。」・・・。」

「テメェのことなんて知らねぇよ。」

それは拒絶の言葉・・・紅葩の耳に重く響く。

「″仲間″でもないのに人の周りをウロチョロしやがって・・・目障りなんだよっ。」

「私はっ「足手纏いだ。」っ。」

紅葩にとって1番蓮たちから聞きたくない言葉・・・本当は泣きそうな位心が痛いのに。

(どうして蓮の方が・・・。)

蓮の方がそんな切ない表情をするのだ・・・紅葩は蓮の胸ぐらから手を離す。

「紅葩・・・俺は。」

「・・・・・。」

見つめ合う2人・・・静寂の空間、を裂く人物の声。

「蓮。」

遠くから睡蓮の声・・・蓮は紅葩から離れ背を向ける。

「・・・れっ「もう・・・俺には近づくな。」・・・。」

手を伸ばすがその手は空を切る・・・。

「蓮いいのかしら?あの子、泣きそうですわよ・・・?」

「睡蓮、アイツには手を出すな。」

「・・・クスッ。」

 ―――歯車が軋み壊れるたび、別の歯車が動き始めようとする。

  その歯車はいったい何を動かすのか・・・それは動いてみないと分からない。―――


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