15話
剣の誕生日から1週間、お盆に入り今夜は近くの神社でお祭りがある日。
「・・・・・。」
紅葩は店長から貰った浴衣を着て神社で暇を潰していた。
誕生日の日剣が言った欲しい物とは今日の祭りを2人で回ることだった。
(・・・変に剣に気を遣わせちゃったかな。)
紅葩はずっと悩んでいた・・・待ち合わせの時間まで後10分。
「今日私が奢ろう。」
自己完結を済ませ紅葩は空を見上げた。
真っ暗な夜空に散りばめられた無数の星と夜を淡く照らす大きな満月、
紅葩のいる場所が暗いためか今日は一段と輝いている気がする。
「綺麗な月・・・月か。」
天照こと天照大御神、日の神と呼ばれ昼を司る。
その天照の弟神であり蓮たちの敵、素戔嗚尊・・・
史実では凶暴だと記されているし玩具という非道をしているスサノオ、いったいどんな人物(?)なのだろうか・・・。
(そしてもう1人、天照の弟神でスサノオの兄神。)
月の神とされ夜を司る天照とは真逆の神、月読命。
「・・・月読もこっちに存在しているのかな?」
ずっと見ていると吸い込まれそうな錯覚になる月に魅了されている紅葩。
「・・・・・。」
ずっと月を見ていると自分に近づいてくる複数の気配。
「彼女、壁の花だなんてもったいないよ?」
「暇なら俺たちと祭り行こうよ。」
月の鑑賞を邪魔されイラつく紅葩は無表情で声の主たちを睨みつけた。
ラフな格好をした大学生位であろう3人の青年たち。
(・・・普通の格好だけあって見た目はマシじゃない?見た目だけは。)
心の中で毒を吐くが、こんな所でこんな日に暴れるのもどうかと考えてしまう。
「友達と待ち合わせしてるんです、他当たってください。」
「彼氏じゃないんだろ?その子も一緒にさ~。」
「・・・・・。」
紅葩の笑顔が引きつる。
「結構ですから。」
「女の子2人じゃ危ないよ?」
(・・・うざい。)
笑顔とは裏腹に拳を握る力が強くなる。
それに気づかない男達、1人が紅葩の肩を抱く。
「・・・っ、いい加減にっ「そこまでだ。」・・・剣。」
紅葩がキレる前に浴衣を着た剣が男の手を捻りあげていた。
「紅葩に何をしようとしていた?」
男達を睨みつける剣、男達はビビり後ずさる。
それを見た剣は捻っていた男を男達の元へ押した。
「「「ひぃーーー。」」」
男達は悲鳴を上げ逃げ出した。
「・・・見てたんならもっと早く来てよ。」
「悪い・・・紅葩が可愛くて見惚れていた。」
「~~~~~っ。」
剣のホストのような台詞に顔を染める紅葩。
「・・・フッ、行こうか紅葩。」
剣は微笑みながら紅葩の手を取り屋台のある所に向かった。
「やはり人がたくさんいるな。」
「・・・剣。」
「ん?」
「手・・・放してよ。」
人が多いからといって紅葩も剣も子どもじゃない・・・手を繋ぐ必要はないはずだ。
しかし剣は放すどころか、紅葩が慌てる行動をとった。
「あああああっ、剣っ。」
「どもりすぎだ・・・アタシの誕生祝いなんだ、アタシの好きにしていいだろ?」
「・・・うっ。」
「それとも・・・嫌なのか?アタシとするのは。」
(コイツ、絶対からかってるっ。)
顔を真っ赤にする紅葩とは反対に妖しく笑っている剣。
「・・・嫌じゃ、ないっ。」
「ならこのままで頼む。」
剣は握る手に力を込めた・・・剣がした行動とは″恋人繋ぎ″。
男と無縁な紅葩はもちろんそんなものしたことが無く、相手は剣だとしても緊張してしまう。
2人は手を繋いだまま色々な屋台を回った・・・が。
「紅葩?綿あめは嫌いだったか?」
「・・・・・。」
片手に綿あめを持つ剣を横目で見る・・・ファンの子が見たらギャップで卒倒してしまうだろう。
「本当に剣のお祝いになってる?」
屋台のお金は全部剣が先に払ってしまい奢ってもらう形、
手は剣に繋がれ主導権は剣にあるため紅葩は連れられるまま。
「紅葩。」
「・・・剣?」
剣に呼ばれ顔を上げる紅葩・・・剣の表情は今までに見たことが無い穏やかな顔だった。
「アタシは去年みんなが祭りで楽しんでいるときに玩具と戦っていた。
だから紅葩と祭りを一緒に回るだけで、それだけで充分すぎるぐらいにアタシは楽しい。」
「・・・私も剣と一緒ですごく嬉しいよ。」
剣に笑顔を向けスッキリした顔で綿あめを頬張る紅葩。
「・・・・・。」
「剣?どうしたの?」
「・・・嫌なんでもない、次行こうか?」
紅葩を引っ張って歩く剣・・・紅葩は知らない。
先を歩く剣の顔が赤くなっていることに・・・。
剣に引かれるまま神社とは離れた場所に来てしまった。
「剣、どこ行くの?」
「もうそろそろ花火が始まるからな・・・花火の絶景スポットにな。」
「でもココって・・・。」
暗くても見覚えのある道だと分かる・・・着いた先は黒天学園だった。
驚く紅葩を横に剣は校舎の中に入り馴染みのある生徒会室に。
「紅葩が開けてくれ。」
剣に手を離され言われるがまま扉を開けるとクラッカーの音。
「・・・えっ?」
「「「お誕生日おめでとうっ。」」」
紅葩本人は祭りの件で自分の誕生日が今日だということが頭から抜けていた。
「前もって雫ちゃんに聞いといて良かった~。」
「さぁっ、楽しもう~~~。」
「・・・ありがとう。」
咲良たちも浴衣で紅葩と剣が浮くことは無い・・・あの蓮でさえココにいて浴衣を着ていた。
「紅葩、コレ食べてくれる?」
「「「「「・・・・・。」」」」」
全員が無言、璃莉が持っているものは何の料理か見当がつかない黒焦げのもの。
「り・・・璃莉さん、イッタイコレハ?」
「ステーキよ?ちょっと焦げちゃったけど・・・。」
(((((ちょっとっ?コレがっ・・・。)))))
皿に乗ってなければ料理かも分からない物体が・・・。
「ゴメン璃莉・・・屋台の料理でもうお腹いっぱいで。」
「そう・・・残念。」
璃莉には悪いが紅葩は心の底から安心した。
「「紅葩ちゃん、コレッ。」」
双子から貰ったのは何かのチケット・・・。
「ココって・・・超有名の高級レストランじゃない。」
雑誌やテレビなどでたくさん取り上げられている高級レストランの、それも無料券が3枚も。
「おじいさんたちと今度行ってきなよ。」
「ありがとう、蒼葵、紫葵。」
嬉しそうにチケットを握る紅葩。
「2人ともあのチケットどうしたの?」
「「もらったんだよ~。」」
いったい誰にもらったのやら・・・余計な追及はしないでおく。
「わたしからはコレ、剣と同じ店の品なの。」
「うちからはコレ~。」
璃莉からは椿の携帯ストラップ、咲良からは癒し用のアロマキャンドルだった。
「ありがとう2人とも。」
「アタシからは・・・。」
「え・・・剣は今日で充分っ。」
剣を止める暇無く後ろを取られ髪を弄ばれてしまう。
「出来た。」
「・・・・・わぁ。」
鏡を渡され後ろを見ると椿の花の髪留めで纏められていた。
「下ろしている姿も似合ってたからな。」
「ありがとう剣。」
剣に微笑む紅葩の頭に乗せられたラッピングされた小箱。
「・・・蓮。」
「剣と正反対だが・・・いらないなら捨てろ。」
「・・・・・?」
小箱の中身は・・・白色の髪紐、触り心地から高級そうだった。
「いいの?」
「・・・いらないなら捨てろ。」
「いるっ。」
顔が綻ぶ紅葩に蓮も満更ではなさそうな顔。
「・・・それともう1つ、生徒会室の前に置いてあった。」
椿 紅葩へというカードだけの、差出人不明のラッピングされた箱。
家ではなく生徒会室前ということに引っ掛かる・・・。
「開けてみないと危険なのかも分からないじゃん~。」
「ちょっ・・・咲良っ。」
咲良が勝手に包装を解き中身を開けてしまった。
「・・・ブレスレット?」
中にはシンプルなブレスレットだけ。
「普通のブレスレットだね~紅葩ちゃん着けてみたら?」
「う・・・うん。」
咲良に手渡され着けてみることに・・・そこに。
「ゴメンね紅葩、遅れちゃって・・・っ、それはっ。」
「・・・天照?」
いつもおちゃらけている天照とは一変・・・様子がおかしい。
「・・・紅葩、それどうしたのかしら?」
「生徒会室の前に差出人不明で私宛に置いてあったらしくて・・・。」
「そう・・・。」
全員が不思議がる・・・こんな天照見たことが無い。
「変なブレスレットね~紅葩にはこれあげるわね~。
これはあたしが捨てとくから~~~。」
「天照っ。」
紅葩に手渡されたのは先程のブレスレットよりオシャレなブレスレット。
天照はブレスレットを持って生徒会室を早々に出て行ってしまった。
「どうしたんだろ?天照。」
「・・・・・。」
天照を気にかける中、夜空に大輪の花が咲く。
みんなは花火に見惚れる・・・紅葩も見惚れる中天照を心配していた。
「・・・アイツ、紅葩に何のために・・・。」
理事長室・・・ブレスレットを見つめ呟く天照・・・重々しい雰囲気だ。
「・・・・・紅葩。」
おそらく紅葩は興味を持たれてしまったのだろう・・・いったい何時接触したのか。
『もうすぐだ・・・もうすぐで。』
平穏な時間の歯車が軋み始めた・・・もう戻れない。
動くたびに壊れていく歯車が壊れるまで後もう少し・・・。
今回の話は軽く百合要素が入りましたが、設定した方がよろしいですか?
これ以上の百合要素は入らないと自分では思います。
意見お願いします・・・。
なければこのままBFを進めたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。




