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13話

時雨の件から1週間の月日が経ち、時期は生徒たちが待ち望んでいた夏休み。

 そこで紅葩は不思議な出逢いをした・・・紅葩にとって良くも悪くも忘れられない夏になる。

―――「海の家の手伝い?」

それは前日の出来事・・・理事長室にて天照と紅葩の会話。

「そうっ、毎年生徒会みんなでお世話になってるホテルが海の近くに在るのよ~ぜひ紅葩にも手伝ってほしくてね~。」

「別にいいけど・・・。」

「海の家だからねっ、ちゃんと水着持ってくるのよっ。」

爛々とした天照に紅葩は顔を歪める。

「水着なんて持ってない。」

「なら・・・あたしが紅葩の水着準備しとくから明日学校に来て頂戴ねっ。」

「・・・・・。」

そう言った天照の顔は恐ろしいほど妖しく、不安になる紅葩だった・・・。

 次の日、海の家の手伝いと言ってもみんなと遠出をする・・・紅葩の顔は嬉しそうだった。

 しかし・・・その顔はすぐに崩れることになる・・・。―――

「・・・・・。」

バスに揺られること数時間、着いたホテルはとても立派なリゾートホテル・・・部屋に荷物を置き水着に着替え紅葩を待っていたのは・・・。

「焼きそばとクリームソーダ3つずつ。」

「こっちは5つずつっ。」

「イチゴとレモンのカキ氷っ。」

「はいっ、ただいまお持ちしますっ。」

(何なんだっ、この忙しさはっっっ。)

海の家に暇という文字は無かった・・・お昼を過ぎても満員。

「・・・それにこの格好。」

天照にもらった水着・・・紅葩は自分の健康管理をきちんと行っているためかスタイルはとても良く、そのスタイルの良さが引き出される黒のビキニを着用している。

 暑さとは別の意味で紅葩の頬が赤く染まる。

「紅葩っ、ボケっとしてないで手を動かせ。」

「・・・蓮が1番文句言いそうなのに真面目に働いている・・・。」

学校のごとくサボると思っていた蓮だが、

赤の水着に白のTシャツにいつものバンダナで厨房に立っている。

「ここのホテルは格安だから毎年客がいっぱいなの。」

「時機に紅葩も慣れるさ。」

スカートタイプの白の水着にマフラーという歪な格好の璃莉と、

 長身でモデル顔負けのスタイルが分かる赤のビキニに赤のパレオの剣。

「ウチはココで働くの好きだよ~。」

「・・・・・咲良。」

ピンクのハイレグ水着の咲良・・・片手にはどうやって積み重ねたのだろう山積みの食器が危なげに揺れているが落ちる気配はない。

「オレたちも毎年楽しみ~。」

「水着の女の子と触れ合えるもんね~。」

女の子に囲まれている双子・・・彼らは通常運転で紅葩は何も言わない、ちなみに水着はお互いの色を着ている。

「・・・で、連れてきた張本人は?」

全員が一斉に指差した・・・奥の方で店長と真っ昼間からビールを飲んでいる天照の姿。

「・・・天照。」

「紅葩水着似合ってるわよ~それでじゃんじゃん稼いで頂戴っ。」

「いつも助かります理事長・・・紅葩ちゃんも、よろしく頼むよ。」

「・・・はぁ、頑張ります。」

人柄の良い、紳士的な海の家店長兼ホテルのオーナーに言われたら何も言えない・・・。

「ここは天照が建てたホテルでな・・・アタシたちの学費稼ぎの場所でもある。」

身寄りのいない生徒会のメンバーだが・・・自分たちで稼ぐのはどうかと思う紅葩だが口には出さない。

 それから数十分客は衰えることを知らない・・・その理由を紅葩は悟っていた。

「ご注文は?」

「「剣様、今年も素敵です~~~。」」

「「蓮く~~~んっ、休憩になったら一緒に遊びに行きましょ?」」

「・・・・・。」

「「「咲良ちゃん大丈夫?」」」

「全然大丈夫っ、もっといっちゃうよっ。」

「・・・1200円になります。」

「「は~い。」」

「「お姉さん、オレ(ボク)たちと・・・店終わるまでいてくれる?」」

「「「「「きゃあぁ~~~~~。」」」」」

「・・・・・はぁ。」

という理由である・・・お客は全員目がハート。

(まぁ・・・美男美女の集まりだもんね・・・性格はともかく。)

紅葩は外のお客の注文を取るために店を出る。

「・・・久しぶりの1人、かも・・・。」

周りにたくさんの人がいるのに妙な孤独感に包まれる。

「・・・・・。」

みんなは傷だらけになりながら戦っているというのに自分はただ見ているだけ・・・足手纏いだった。

「・・・私には・・・みんなといる資格なんてないのかな・・・。」

海を見つめる紅葩・・・そんな紅葩に近づく影。

「おい。」

「・・・っ。」

急に声を掛けられ肩が跳ねる・・・ボーっとしていたとはいえ全く気付かなかった。

「すみませんっ、ご注文です・・・か?」

振り向くと歳は20代半ばくらいだろうか・・・身長は蓮よりも高く首を上げて見上げる。

 大人の色香が感じられる締まった体にサングラスをかけた男性。

「・・・・・。」

蓮たちと同等、それ以上に整った容姿に思わず見惚れる紅葩。

「何だ?我に見惚れてでもいるのか?」

「・・・っ、いえっ・・・スミマセン。」

我に返る紅葩・・・目線を逸らし、頬を染める。

「・・・ふっ。」

そんな紅葩を見てか、笑った男性・・・紅葩の頬がさらに赤く染まった。

(一人称が我って不思議な人・・・。)

「お主は不思議だな。」

「えっ?・・・っ。」

自分が思っていることを口に出され驚き目を合わせる紅葩、男性の手が頬に添えられる。

「不思議で不確定で・・・不安定な存在。」

「あっ・・・のっ。」

「他とは違うモノ・・・我はお前に興味がある。」

その言葉に、声に背筋が凍りつく・・・まばたき、呼吸さえできず時が止まっているかのよう・・・。

「・・・もう少し戯れていたかったが。」

「・・・っ・・・はぁっ・・・はぁ・・・?」

男性の手が放れていく・・・時が動いたように呼吸を始め咳き込む。

「別れるのが名残惜しいな。」

紅葩の耳に入る自分を呼ぶ蓮の声、と同時に再び添えられる手。

「また会おうぞ・・・紅葩。」

「え・・・・・?」

初対面の相手に名前を呼ばれた・・・驚く間もなく、額に感じた温かくて柔らかい感触。

「はっ?・・・えっ・・・なっ。」

「・・・ふっ。」

「・・・・・っっっ。」

目の前には不敵に笑う男性の笑み・・・ボンッと効果音が付きそうな位、顔全体が真っ赤になる紅葩。

 男性は口角を上げたまま踵を返し紅葩を呼びに来た蓮とすれ違う。

「・・・・・。」

蓮は振り返り男性の後ろ姿を一瞬見るが、すぐに身体を逸らし紅葩の元に向かった。

「おい、何サボってんだよ・・・?おい紅葩?」

「・・・ふぇ?れっ、蓮っ?」

肩を跳ね上げる紅葩に蓮は顔を顰める・・・そこで初めて自分が外に注文を取りに行っていたことを思い出す。

「・・・店が忙しいんだ、早く戻ってこい。」

「うん。」

蓮の後ろを歩く紅葩・・・まだ蓮の顔をちゃんと見ることが出来なかった。

 どうしても時雨の最期を思い出してしまうからだ・・・。

(恨めるわけがない、仕方がないことだって分かってるのに・・・。)

頭では分かっていても心のどこかで時雨は死ななくても良かったんじゃないかと・・・。

「わぷっ・・・。」

「暑いから代わりに着てろ。」

そう言われ塞がる視界・・・顔からはがすと蓮が来ていたTシャツ。

 上半身裸になった蓮、女性の黄色い声が周りから聞こえてくる。

「・・・・・。」

そんな声に耳もむけず蓮は店の中に入って行った。

「ちょ・・・何で私が・・・。」

手には蓮のTシャツ・・・持っているのもアレなので着ることに。

「・・・ブカブカだし。」

Tシャツというよりワンピース・・・黒のビキニがすっぽりと隠れてしまった。

「蓮さんも素直じゃないね・・・。」

「璃莉。」

休憩中なのだろうか、両の手にはジュースが握られており1つを紅葩に渡す。

「どういうこと?」

「紅葩は気付いてなかったけど紅葩を汚らわしい眼で見ている男どもが多かったんですよ?」

「・・・・・。」

璃莉の言葉に目を見開いて驚く紅葩・・・「紅葩は鈍感ね。」と軽く笑う璃莉。

「・・・私なんかを見るより璃莉たちでしょ?」

「紅葩は魅力的ですよ・・・自分を卑下しない。」

「・・・・・。」

璃莉の真っ直ぐな言葉に頬を染める紅葩。

「璃莉姉さんは紅葩と違ってペチャパイだもんね~。」

「な~。」

笑いながら近づいてくる双子に璃莉の周りの空気が冷たくなる。

「双子・・・バカ。」

「「へ?」」

璃莉に満面の笑み(雰囲気が冷たい)で引っ張られる双子・・・遠くで断末魔が聞こえたのは気のせいではない。

 それから数時間後、日も暮れ海の家は閉店しホテルのそれぞれの部屋に戻る。

紅葩は剣と同部屋・・・2人でお風呂の準備をしているとノック音がした。

「紅葩ちゃん、剣。」

店長だった・・・ホテルのオーナーらしくスーツだ。

「ちょっと来てくれるかな?」

紅葩は剣なら内容を知っていると思い顔を向けるが剣も知らないらしい。

 特に断る理由もなかったので着いて行く2人・・・店長は大きな扉の前で止まった。

その部屋には色とりどり、多種多様な浴衣が保管されていた。

「君たちに何かプレゼントをと思ってね・・・どれでも好きな物を選んでくれ。」

「え?でも・・・うっ。」

口を開こうとする紅葩に重い衝撃、十中八九犯人は・・・。

「紅葩ちゃんも早く選ぼうよ~。」

「重い咲・・・って咲良っ。」

「・・・・・。」

咲良の格好に紅葩と剣は驚く。

 咲良が描かれている桃色の浴衣は咲良に良く似合っているが・・・暴れたのか乱れ肌が露出していた。

 後ろ手は追いかけてきたであろうスタッフの人、紅葩(+剣)は咲良を引きはがしスタッフの人に手渡した。

「・・・・・はぁ。」

まだ何もしていないというのに疲れた紅葩。

「いつも咲良を止めるのは璃莉だからな・・・そういえば姿が見当たらないが。」

「今着替え終わったのよ。」

「うわぁ・・・。」

百合の清廉さを連想させる白色の浴衣。

 髪型は変わらず団子だが簪が刺してあって映えている、首元には成人式用のショールが巻かれていた。

「西洋美人だな・・・璃莉に浴衣が合うとは思わなかったな。」

「フフ、2人は予想通りに似合いそうね・・・早く選んで来たら?」

璃莉に言われ浴衣の山に向かった2人。

 剣はすぐに決まりスタッフに着付けをされた。

スタッフの顔は真っ赤・・・長身の剣は浴衣が良く似合う、剣の赤とは正反対の青色の薔薇ばらのデザイン。

 いつも下ろしている髪が結ってありいつもとは違うカッコよさ、璃莉とは真逆の和服美人。

「剣は美人っていうよりも。」

「ボクたちに負けず劣らずのイケメンだよね~。」

「・・・お前たちも着替え終わっていたのか。」

蒼葵と紫葵は桔梗柄の水色の浴衣、その後ろには赤色の彼岸花と蝶柄の浴衣の蓮。

「アイツは?」

「まだ選んでいるはずだが?」

「・・・・・。」

その頃の紅葩は・・・色とりどりの浴衣に囲まれていた。

 浴衣を選ぶには神妙な顔つきでスタッフも近づきにくかった。

(私に合う色って何だろう?)

自分は黒色の髪に漆黒の瞳・・・これといって合わせる色もなく、私服はほとんどが雫に選んでもらった物。

(それに・・・咲良や璃莉みたいに可愛くないし、剣みたいに美人でもないし・・・。)

鏡を見ながら自分の顔をイジる・・・決してブサイクではない。(中学時代、告白しようとした男子がいたのだが・・・すべて告白される前にある人物によって邪魔される。)

「黒でいいだろ。」

「・・・・・蓮。」

鏡に映る紅葩の背後に立つ蓮・・・その手には蝶と月、夜を現した浴衣があった。

 しかし紅葩は受け取ろうとはしなかった。

「チッ。」

蓮は舌打ちすると紅葩の首根っこを掴みスタッフに浴衣と紅葩を渡す。

「試しに着てみろ。」

「・・・・・。」

有無を言わせない蓮に紅葩は渋々スタッフと試着室に入り数分後。

 着付けされた浴衣は紅葩にとても良く似合っていた。

剣とは逆に普段縛ってある髪を下ろし頭には椿の簪を付けていた。

「可愛いっ紅葩ちゃん。」

「・・・本当?」

自信気の無い紅葩のか細い声にみんなが頷いてくれた。

 紅葩の顔が綻ぶ・・・いつもの紅葩の笑顔。

「とても似合ってるよ、紅葩ちゃん。」

「店長・・・。」

髪型が崩れないように優しく頭をなでられる・・・紅葩にはそれがなぜかとても嬉しかった。

(お父さんって・・・こんな感じなのかな?)

「みなさん、明日もよろしくお願いしますね・・・おやすみなさい。」

店長の言葉でみんなは解散し、次の日・・・。

「いらっしゃいませ。」

「・・・何か紅葩、ヤル気満々だな。」

「剣なんかあったの~?」

昨日よりもテキパキ働いている紅葩にみんなが不思議がる・・・昨日は渋々だったのに。

「・・・イヤ、あの後は普通に寝ただけだが「紅葩は店長のために頑張っているのよ~。」天照。」

天照は昨日同様酒を飲みながら、紅葩を微笑ましく見つめていた。

「紅葩ちゃ~んっ。」

「はいっ、ご注文はお決まりでっ・・・お客様、この手は何ですか?」

紅葩の手を掴むのはニヤニヤと笑う男2人。

「ご注文が決まっていないなら呼ばないでくれますか?

それと手を離してください、接客出来ないんですけど・・・。」

冷たく言い放つが男は手を放してくれず・・・周りのお客たちは口と手を止めその光景を不安気に見ている。

「じゃあ注文は紅葩ちゃんをテイクアウト「お客さん、ウチにそんなもんはねぇよ。」いてっ。」

厨房から出てきた蓮、紅葩の腕を掴んでいた男の手を捻りあげる。

「兄貴に何しやがるっ。」

もう1人の男が蓮に殴りかかる・・・が。

「・・・っ。」

紅葩の蹴りが顔面擦れ擦れのところで止まる・・・ヘタレ込む男。

「お客じゃないのなら容赦しませんよ。」

「・・・っ、くそっ。」

男は慌てて店から出て行く・・・店は拍手に包まれる。

「・・・蓮、ありがっ・・・。」

蓮にお礼を言おうと振り返ったが、蓮は女性たちに囲まれていた。

「・・・・・。」

紅葩は何事もなかったように仕事に戻った・・・。

 それからは事件などなく海の家は繁盛し閉店。

全員ホテルに戻り浴衣に着替えまた浜辺に・・・学園に帰る前の思い出づくり、浴衣で花火だ。

「・・・・・。」

「紅葩ちゃん、機嫌悪いね。」

「・・・別に。」

鈍い咲良でも分かるくらい不機嫌オーラを放つ紅葩。

「蓮が女の子に囲まれていたのが気に入らなかったのかな?」

「違いますよ店長・・・ただ、お礼を言いそびれて・・・モヤモヤするだけです。」

拗ねる紅葩と苦笑の店長だが咲良たちは。

「今年も疲れたね~~~。」

「これでしばらくは金の制限無いな。」

「えぇ・・・天照も昼夜お酒を飲んでしばらくはご機嫌だろうし。」

砂の上に座り自分の手で己を扇ぐ咲良と、椅子に座りクリームソーダを飲む剣と璃莉。

 双子は女性たちと別れを惜しんでいた・・・蓮はというと少し離れたところで黒い海を見ていた。

「紅葩ちゃん、蓮との仲直りはこれを使うと良い。」

「・・・・・。」

店長にあるものを手渡され、少し考えた後蓮の元へ向かった。

「蓮。」

「んだよ、俺はやらねぇぞ。」

「線香花火1本位、付き合いなさいよ。」

店長に渡されたのは2本の線香花火・・・蓮は渋々受け取った。

「イェーーーイ。」

「咲良1人で持ちすぎだぞっ。」

「「・・・・・。」」

咲良たちが派手な花火で楽しんでいる中、2人は静かな線香花火の日を見つめていた。

 先に火が落ちた方が負け・・・何も言ってないのに火が付いた瞬間始まったゲーム。

渋々だった蓮だが今は線香花火に集中している。

「・・・蓮。」

「あ?」

集中を切らせるためのものだろうが蓮はそんなものに引っかからない。

「色々と・・・ありがと。」

「・・・なっ。」

頬に触れる温かな感触・・・それが何か分かった瞬間、蓮の線香花火の火が落ちた。

「勝ったっ。」

「・・・テメェ。」

立ち上がって嬉しそうにガッツポーズする紅葩。

「蓮の負けは負けっ。」

笑顔を向けみんなの所に戻っていく紅葩、

髪の隙間から見える耳が赤いのを蓮はちゃんと見ていた。

「照れるんならやるんじゃねぇよ・・・ガキが。」

頭を掻きながら呟く蓮・・・昔少女に言われた言葉を思い出す。

―――「何でやる本人が照れてんのよ。」

「うるせぇっ・・・やる方が恥ずいんだよっっっ。」

「照れるぐらいなら実践しなきゃよかったのに・・・バカ。」―――

確かそれ系の雑誌を見て試しに実践して照れた彼女が見たかったのに赤かったのは自分だけで・・・。

「・・・・・ガキ。」

蓮も立ち上がりみんな所に向かった・・・。

 次の日、ホテルで朝食を終え学園に帰る。

「みなさん今年もありがとうございました。」

「店長まったね~浴衣ありがとう。」

全員の手には浴衣・・・本当にタダでもらって良かったのだろうか・・・。

「いつでも遊びに来てくださいね。」

微笑む店長に頷きバスに乗っていく。

「紅葩ちゃん。」

「はい?」

最後に紅葩が乗るところで呼び止められる。

 振り返る紅葩に、店長は小さな箱を手渡した。

「・・・コレは。」

急かされて開けてみるとシンプルだが見るだけで安物では無いと分かる、シルバーのネックレス。

 店長に顔を向けると店長は悲しげに笑った。

「・・・私の娘が大きくなったら渡そうと思っていたものだ、受け取ってくれるかい?」

「えっ?でも私なんかが貰ったらっ・・・。」

「娘は・・・もういないんだ。

  君に・・・娘の代わりに受け取って欲しい。」

何も言えなくなる紅葩、ネックレスを握った。

「ありがとうございます・・・絶対、大切にしますね。」

「・・・あぁ。」

紅葩はネックレスを身に着け満面の笑みを向けた後バスに乗り込んだ。

 バスの中では仲間と共に楽しそうに笑っている紅葩の姿、

それを見つめる店長の姿はまるで・・・・・。

「言わなくてよかったの?せっかく連れてきてあげたのに。」

「私は・・・自分のエゴであの子を苦しめてしまいました・・・合わせる顔なんてありません。

 それなのに逢って、あんなに楽しそうな笑顔も見れた・・・充分です。」

「・・・やっぱり人間の考えはあたしには分からないわ。」

天照は両手を上げながらバスに乗った・・・バスが出発する。

「・・・・・。」

店長はバスの中から手を振ってくる子供たちにいつまでも手を振っていた。

「いつまでも元気で・・・私の可愛い―――。」


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