12話
紅葩と生徒会の間に亀裂が入った学校見学。
2日3日、4日目が過ぎる・・・紅葩は1回も生徒会には行かず、同じクラスの剣とは目も合わせない。
そんな3日間、生徒会のメンバーは人気の無い所で狙われていた。
「あーっ、ムカつくなっ。」
「ボクたちの顔に傷をつけるなんて・・・すぐに治ったけどムカつくっ。」
双子は頬を傷つけられ根に持っていた。
「紅葩は・・・今どうしてるの?剣。」
「・・・ずっと時雨と雫と一緒にいる。」
「紅葩ちゃん・・・。」
「・・・・・。」
みんなの空気が重い・・・。
「嫌がらせもヒートアップしてるしさ・・・いっそのことこっちから・・・って蓮、どこ行くんだよ?」
「奴をあぶりだす。」
そう吐き捨て生徒会室を出て行く。
「どうする?剣・・・蓮さん、本気ですよ。」
「・・・・・あぁ。」
返事はするが動かない剣、他のメンバーもその場から動かなかった・・・。
「・・・・・何か用かよ?」
生徒会室を出た蓮を待っていたのは。
「・・・行くの?蓮。」
「ババァ・・・。」
待ち構えていたのは天照、蓮は真っ直ぐ天照を見る。
「・・・紅葩に嫌われても?」
「・・・・・。」
「・・・そう、音は聞こえないようにしといてあげるわ。」
天照は重い息を吐くと理事長室に入って行った・・・蓮はそれを見届けてからその場を離れた・・・目的地は1つ。
「・・・・・。」
紅葩は雲1つ無い青空を教室の席から見ていた・・・思い浮かぶのは生徒会のみんなの顔。
「・・・はぁ。」
先生の声など全く耳に入らない・・・が、扉が勢いよく開かれる音は耳に届く。
紅葩の首は自然と扉の方を向いた・・・そこには浮かんでいた人物の中の1人。
「・・・蓮。」
無意識に呟く紅葩・・・蓮はその声に反応し紅葩に近づくと有無を言わせず紅葩の腕を掴み教室から出る。
「蓮っ。」
「・・・・・。」
名を呼ぶが蓮は止まらず着いた先は裏庭、昼でも薄暗く近寄る者はいない。
「・・・っ、痛いっ、蓮。」
顔を歪める紅葩、蓮は力を緩めたが手は離れない。
「・・・れ「アイツにはもう近づくな。」誰のことを言っているの?」
紅葩には全く分からない・・・が蓮の真剣な表情に目が逸らせない。
「紅葩さんっ。」
「・・・・・時雨。」
聞き慣れた声・・・時雨が追いかけてきたらしい。
「緋真さんどういうつもりですか?紅葩さんは授業中なのに・・・。」
「テメェが尻尾を出さねぇからこっちから誘ったんだよ。」
「尻尾?何のことですか?僕は紅葩さんをあなたから取り返しに来ただけですよ。」
「はっ、察知は得意なくせに気配を消すのは下手なんだな・・・バレバレなんだよ。」
バカにしたような物言いに紅葩は訳が分からない。
(何の・・・話をしているの?)
蓮は時雨に何を言いたいのだろうか・・・。
「貴方に付き合っている暇はありません、紅葩さん戻りましょ?」
時雨が手を差し出しながら近づこうとする・・・がその足は蓮の手によって止められる。
蓮の手に持っている武器、銃の発砲によって・・・時雨の足元には銃弾が埋まった跡。
「・・・・・。」
「人の命を狙ってるやつに近づかせると思うか?」
地面に向けられていた銃口が時雨本人に突きつけられる。
「蓮っ、何してっ・・・時雨はっ「コイツが窓ガラスを打ち抜いた犯人だ。」えっ?」
銃口は時雨に向けられたまま、視線だけを紅葩にやる。
「あの矢を放ったのは時雨だ。
コイツは10年前孤児院に入り・・・雪乃家の養子になった。」
「・・・・・嘘、だってそんなこと1度もっ。」
「アイツも「止めて。」俺たちと同じ「止めてっ。」スサノオの玩具なんだよっ。」
耳を塞いでも入ってきた蓮の声・・・頭を鈍器で殴られた感覚に陥る。
紅葩は時雨を見た・・・時雨は表情1つ変えていなかった。
(時雨?)
普通なら銃を突きつけられたら脅えるもの、そういう職種の人間ならまだしも・・・時雨は一般人。
なぜ脅えていないのか・・・答えは1つしかない。
(時雨も″普通″じゃないから・・・。)
蓮たちと同じように10年前あの街に住んでいて、スサノオによって人生を狂わされた人間。
(・・・例えそうだったとしても私は。)
「紅葩っ、行くなっ。」
蓮の緩んだ手を振りほどき蓮から庇うように時雨に駆け寄った。
「ゴメン蓮・・・でも時雨はずっとそばにいてくれた、大切な人なの。」
記憶喪失が主な理由で、中学で荒れていたとき誰も紅葩に近寄る者はいなかった。
そんな中雫と時雨だけが怖がりもせず普通に接してくれたのだ。
「紅葩・・・。」
蓮は銃口を静かに下ろした・・・そのことに安堵する紅葩、時雨の方を向いた。
「時雨・・・。」
「紅葩さん、僕・・・紅葩さんが好きです。」
「・・・っ。」
いきなりの告白に驚く紅葩。
「紅葩さんは僕のことを弟だと思っているのは知っていますが、
僕は1人の女性として紅葩さんが好きです・・・1度も姉とは思ったことありません。」
「時雨・・・私はっ「だから。」・・・。」
紅葩の背筋に悪寒が走る。
時雨の雰囲気が変わり紅葩の耳には何かがセットされたような音が入った。
「邪魔な緋真さんにはここで消えてもらいます。」
「しぐっ・・・っ。」
時雨の手にはボウガン、さっきの何かがセットされたような音はボウガンに矢が装填された音。
時雨の名を呼ぼうとした紅葩だが・・・矢を放った音で遮られた。
「・・・っ、クソッ。」
先程のやり取りで気が緩んでいた蓮・・・避けきれず矢が右腕を貫通した。
もし蓮が避けなかったら・・・。
(心臓に当たってた・・・時雨。)
紅葩が驚き戸惑う中、時雨は何食わぬ顔で矢を再びセットしていた。
それと同時に紅葩から距離を取った・・・紅葩を巻き込まないように。
「随分・・・余裕だなっ・・・っ。」
「余裕ですよ?貴方は利き腕が使い物にならなくなったんですから。」
蓮は利き腕とは逆の左手で銃を持ちながら右腕を押さえる。
溢れんばかりの血の量・・・いくら致命傷だとしても玩具は死なないが出血多量で気絶はする・・・ギリギリの状態だ。
「そんな状態で僕と殺し合えますか?」
「はっ・・・自信過剰かよクソガキッ。」
「・・・っ、蓮っ。」
フラフラな蓮に駆け寄ろうとする紅葩の足元に放たれる矢。
「・・・っ。」
「紅葩さん、紅葩さんが動いたら貴方から離れた意味ないじゃないですか。」
「時雨・・・。」
顔を歪める紅葩。
「・・・自分の好きな女にっ・・・あんな顔させて、満足かよっ。」
「まさか。
紅葩さんには笑顔が1番です・・・貴方を消した後紅葩さんの笑顔は僕がちゃんと護ります。」
「・・・全然っ、分かって・・・ねぇっ。」
蓮が動き時雨も動く・・・遠距離同士の戦い。
出血で動きが鈍くなった蓮が圧倒的に不利な状況・・・だが。
「・・・・・っ。」
「どうしたよ?クソガキ。
俺を消すなんて余裕なんじゃなかったのか?」
右腕からは流れ続けている血・・・蓮の劣勢は変わらないのに焦っているのは時雨の方。
「・・・・・。」
時雨がボウガンの矢を放つと蓮はその場から動かず銃を構え発砲する。
弾で矢の軌道を変えた後、時雨に向かって発砲する、
時雨はそれを避けながら矢を再びセットする・・・それの繰り返し。
(僕が優勢なのは変わらないのに・・・何故っ?)
なぜ自分が焦った顔をして蓮が余裕な表情をしている?
「・・・何で・・・。」
「お前は何もわかっちゃいねぇ。」
「・・・っ、僕の何がっ「紅葩の顔をよく見て見ろ。」・・・っ、紅葩さん?」
2人から目を逸らさず、出てくるものを拭いもせずただ涙を流している紅葩の姿。
「何で・・・紅葩さんが泣いて・・・?」
「アイツはお前が思っているより脆い奴だ。
俺が死んでもお前が死んでも・・・アイツは喜びはしない。」
時雨と紅葩が出逢って3年・・・どんなに大怪我しても時雨は紅葩の涙を見たことは無かった。
「アイツは・・・紅葩はお前にこんなことして欲しくねぇんだよ、
好きな奴のことくらい、それ位・・・分かってやれよ。」
「・・・・・僕は。」
ボウガンを持つ手が震える。
「僕はもう・・・戻れないっ。」
ボウガンを蓮に向ける時雨・・・蓮も時雨に銃を向け・・・同時に音が鳴った。
「・・・蓮っ、時雨ぇーーー。」
紅葩の声が辺りに響く・・・。
「紅葩っ。」
剣たち生徒会のメンバーの声が背後から聞こえる・・・が紅葩は目を逸らすことが出来なかった。
メンバーは紅葩の視線の先を見ると驚愕した、
蓮と時雨がお互いの武器を相手に向けて静止していたのだ・・・。
「・・・蓮。」
「時雨・・・。」
困惑するメンバー、動かない紅葩・・・先に動いたのは。
「・・・っ。」
「蓮っ。」
左の脇腹を押さえながら膝をつく蓮・・・矢は脇腹を掠っただけらしい・・・。
「・・・・・っ。」
時雨はそのままの状態で後ろに倒れる・・・が痛みは無い、温かい人の肌に触れている。
視界が霞んでいる時雨だが誰かはすぐに分かった。
「くれ・・・は、さん?」
「バカ・・・時雨の、バカ。」
紅葩の声が震えている・・・蓮の放った銃弾はボウガンに当たり破片が地面に散らばっている・・・これではもう・・・。
「・・・何でワザとはずした?」
「貴方をっ、見て・・・いたらっ、紅葩さんの・・・笑顔が、よぎ・・・って。」
上手く笑えていない時雨に蓮はただ顔を歪める。
「お前・・・本当にクソガキだな。
お前が死んだら紅葩だけじゃねぇ、他にも悲しむ奴がいるだろうが・・・もっと周りを見ろ。」
「敵である僕をっ、説教なんて・・・やめてっ、くださいよ・・・。」
「・・・・・。」
「くれ・・・紅葩さん、からっ・・・姉さんに謝っといて・・・ください、ね?」
「・・・バカ時雨。」
時雨の頭を優しくなでる紅葩。
「紅葩さんっ・・・僕の・・・最後のお願い聞いてくださいっ。
僕は・・・紅葩さん、のっ笑顔が大好きですっ・・・だっ、からっ。」
紅葩の頬に手を伸ばす時雨。
「だから・・・ずっとっ、笑って・・・いて、下さい。
お願いしまっ・・・・・。」
後わずか・・・時雨の手は地面に落ちた。
「・・・時雨?」
紅葩が呼んでも返事が無い・・・次の瞬間、時雨は光の粒となって天に消えた・・・。
「時雨ぇーーーーー。」
紅葩の悲痛な叫び・・・大粒の涙を流し紅葩はしばらくそこで泣き続けていた・・・。
「・・・・・紅葩、ゴメンね。」
その光景をずっと理事長室から見ていた天照・・・人知れず謝罪の言葉の述べた。
その後蓮は大怪我のため生徒会室に強制連行され、
紅葩は泣き腫らした目で・・・茶道部の前にいた。
「・・・・・。」
扉が開かれドアの前にいたのは着物を着た雫。
「・・・っ、紅葩っ?どうしたのその目っ。」
泣き腫らした目を見て慌てる雫・・・だが今の紅葩にはそんなことどうでもよかった。
「雫・・・時雨のことなんだけど・・・。」
「時雨?誰のこと?」
「・・・・・えっ?」
その言葉に大きく目を見開く紅葩。
(覚えて・・・いない?そんなこと・・・。)
その時紅葩の頭には天照が浮かんだ。
(あのサラリーマンも消えたのに新聞にも載っていなかった・・・。
サラリーマンの男も時雨も天照に・・・。)
「存在を消されている?」
「・・・?なんのこと?」
「・・・なんでもないよ、それより・・・本当に時雨のこと覚えていない?」
「だから~全然聞き覚えが・・・アレッ?」
時雨の目からは涙が流れていた・・・本人も何故出てきているのか分からない涙・・・それを見て胸を痛める紅葩。
「・・・″ごめんなさい、姉さん。″」
「ちょっ・・・紅葩っ。」
雫の静止の言葉も聞かず走りさる紅葩。
「・・・・・。」
あてもなく歩く紅葩・・・たどり着いた場所は先程の場所・・・そこには。
「・・・重症のくせに出歩いていいの?」
「うるせぇよ。」
包帯を巻いた蓮がいた、紅葩を待っていたらしい。
「・・・ちゃんと伝えてきたのか?」
「うん。」
蓮の顔がまともに見られない紅葩。
「紅葩・・・俺を恨むか?」
首を振る・・・蓮を恨むわけがない。
「蓮・・・人に忘れられるのって・・・悲しいね。」
(忘れる方も・・・。)
「・・・泣いてんのか?」
「泣いてない・・・約束だもんっ。」
そう言いつつも紅葩の声、肩は震えていた。
蓮はそんな紅葩に近づくと何も言わず抱き締めた。
「・・・蓮?」
「これなら・・・アイツにも見えねぇよ、俺の気が変わらないうちにさっさと泣け。」
「・・・っ。」
紅葩は蓮の制服を掴み、声を押し殺して泣いた・・・蓮はただ紅葩を抱きしめる。
「・・・蓮。」
「何だよ。」
少し落ち着いた紅葩・・・体勢はまだそのままだ。
「蓮は誰かに・・・忘れられたことはある?」
「・・・・・さぁな。」
「私も・・・本当の家族には、忘れられているのかな?」
蓮の紅葩を抱く手の力が強くなった・・・。
「・・・アイツらが待ってる・・・行くぞ。」
「・・・・・うん。」
2人は仲間のいる生徒会室に向かって歩き出した・・・。
久々更新です!!
もう仕事忙しすぎるっ・・・そんな私ですが、更新頑張っていくのでこれからもよろしくお願いします。




