11話
梅雨が過ぎ7月中旬・・・紅葩の風邪も完全に治り夏休みまであとわずか。
全校生徒は校長の放送で体育館に集まっていた。
「あっつ~~~あのハゲ校長・・・何考えてんだよ。」
暑さのせいで不機嫌MAXな紅葩。
「今回呼んだのは校長じゃない、そう言ってやるな。」
その隣では汗ひとつかかず、いつもと変わらない剣。
「・・・あの校長じゃなかったら誰が「みんな集まってる~?」・・・あぁ。」
この学校の理事長天照・・・校長は存在感無く後ろに立っている。(涙目)
「明日から5日間・・・受験生による学校見学を行うわよ~。」
唐突な物言いに生徒はざわつく・・・紅葩たちは事前に聞いていたので驚きはしない。
「内容は・・・は~・・・・・校長。」
((忘れたな・・・。))
紅葩と剣の心の声が重なる。
「えぇ、内容はじゃな・・・生徒の普段通りの学校生活を見てもらい、
黒天学園はこんな学校だということを「そうっ、だからみんなは普通に過ごすだけでいいのよっ。」・・・儂の立場って・・・。」
隅で泣く校長・・・誰も慰める人はいない。
「見学者は邪魔にならないように見学させるからね~。
話は以上よ解散してよしっ、あっ、生徒会はこの後生徒会室に来て頂戴ね~。」
場所が変わって生徒会室・・・生徒会室のソファーには蓮が寝っ転がっていた。
「・・・終わったのか?」
「アンタも一応学生でしょっ?なんで体育館に来ないのよっ。」
「あ?何でこんなに荒れてんだよコイツ。」
蓮に突っかかる紅葩・・・八つ当たりとはこういうことを言う、蓮が学校行事に参加しないのは毎度のことだ。
「うわ~紅葩ちゃん荒れてるね~。」
この2人のケンカも毎度のこと・・・傍観するメンバー。
「暑いのは我慢できるらしいが蒸し暑いのはダメらしいな。」
「紅葩の気持ちすごく分かるな。」
「「イヤ、嘘でしょ。」」
制服は夏服だがまだ首にマフラーを巻いている璃莉、剣同様汗をかいていない。
「そんな性格だから留年してんのよ留年男っ。」
「関係ねぇだろっ。」
「まぁまぁまぁ。」
咲良の仲裁にケンカを止め落ち着いた2人。(主に紅葩)
「蒼葵、今年は何人来るのかな?」
「この学校の見学来るなんてよっぽどの暇人位だって。」
この学校は内申よりも学問、部活動などの成績を優先している、
夏休みを返上(中学生たちは夏休みに入っている)してまで行きたいとは思わない。
むしろ勉強や部活を優先する・・・去年も見学は10人といなかった。
「・・・何の話だ?」
「学校見学の話ですよ。」
蓮の顔が歪む・・・その理由は。
「ねぇ紅葩ちゃん、時雨も来るの?」
「そう聞いてるけど?
時雨って頭良いし弓道の成績もあるのに、見学に来なくてもいいんじゃないの?って言っても行くって一点張りで。」
「「「「「・・・・・。」」」」」
みんなの雰囲気が変わったことに気づかない紅葩。
「それがどうし「紅葩、コーヒー。」・・・。」
紅葩は渋々コーヒーを淹れに理事長室にある給湯室に向かった。
紅葩が出て行った瞬間みんなの顔が変わる。
「時雨は紅葩ちゃんにベッタリだろうね・・・どうする?」
「とりあえず様子を見ましょう・・・剣、お願いね。」
「あぁ。」
紅葩と同じクラスの剣、剣が1番紅葩と学校での接点が多い。
「本当に時雨って・・・。」
「・・・・・。」
悲しそうな咲良の表情、他のみんなもそれぞれ浮かない顔をしている。
「蓮は1人にならない方がいい、天照がいる理事長室なら手は出してこないだろう。」
「・・・・・。」
無言な蓮・・・紅葩が戻ってくるまで静寂だった空間。
日付が変わり、学校見学1日目。
「紅葩さんっ。」
「時雨・・・雫のところに行かなくていいの?
私と雫、クラス違うよ?」
「知ってますよ。
姉さんとは午後からの部活動見学を一緒にということで、それまでは紅葩さんと一緒が良くて。」
歯の浮くようなセリフと可愛らしい少年の笑みに紅葩じゃなくて周りにいた女子生徒がノックアウト。
紅葩は出逢った日から言われ続けているので時雨に対しては免疫がついているし冗談だと思っている。
「剣さんもよろしくお願いします。」
「・・・・・あぁ。」
紅葩に向けられた笑みとは正反対の作り物の笑顔に剣は眉間にしわを寄せた・・・。
その後授業が始まり、時雨は後ろの席で見学していたが視線は紅葩へ・・・その次の授業も、その次も。
午前の授業が終わり昼休み、紅葩は雫と時雨の3人で屋上に来ている。
「紅葩、時雨のお守りありがとね、時雨がどうしても紅葩といたいってきかないから。」
「私は全然構わなかったよ。」
「紅葩さんはこれから生徒会に行かれるんですか?」
学校見学の授業は午前まで、午後からは部活動見学。
時雨は朝言っていたように雫と弓道部の見学に行くらしく紅葩とは別行動・・・紅葩は生徒会のメンバーだが帰宅部でもある。
「まぁ・・・家帰ってもやることないし・・・。」
「・・・気を付けてくださいね、色々と・・・。」
「「・・・・・?」」
時雨の言葉の意味が分からず2人は首を傾げる。
「・・・・・。」
「・・・どうだ?璃莉。」
反対の校舎から3人を見ていた剣と璃莉。
「あの子・・・。」
(気づいているのかしら?この距離でわたしたちの視線に・・・。
気配の察知は剣や蓮さん並かも。)
メンバーの中で1番気配を消すのが得意な璃莉、
その璃莉の視線に気づくなど至難の業・・・見知ったメンバーでも難しい芸当だ。
「・・・璃莉?」
「教室に戻るみたい・・・剣は教室に行って紅葩と一緒に生徒会室に来て頂戴。」
「あぁ。」
3人が屋上から出て行ったのを確認してから2人はその場を離れた。
教室に戻った剣、そこにいたのは紅葩だけだった。
「紅葩、雪乃姉弟は?」
「もう部活動見学行っちゃった、弓道部の人にやってみないか?って誘われてたよ。」
すでに有名人だよね。と笑う紅葩に剣は無言・・・。
「・・・剣?」
「紅葩・・・いや、なんでも・・・ない。」
「・・・・・?」
いつもと様子の違う剣。
「生徒会室に行こう紅葩、遅くなるとまた咲良たちに文句を言われるからな。」
「・・・うん。」
2人は生徒会室に向かった・・・生徒会室は2人を除くメンバーがすでに揃っていて。
「2人とも遅いっ。」
剣の言う通り文句を言われた2人は苦笑。
「ゴメン咲良。」
咲良に近づく紅葩・・・・・そこへ。
「「・・・っ、伏せろっ。」」
剣と蓮の声が重なる・・・生徒会室の窓ガラスが急に割れた。
部屋に無数に散らばるガラスの破片・・・紅葩はそれを呆然と眺めた。
「・・・くっ。」
「蓮っ。」
窓ガラスに寄り掛かっていた蓮・・・すぐに離れたのだが破片で腕を切ったらしく、それも深かったのか血が床に垂れるほど流れ出す。
紅葩は救急箱を持ってすぐに蓮に近寄り手当てをする。
「・・・・・。」
剣は床に刺さっている何かに触れた。
「矢か・・・。」
ボウガンなどに使われている短い矢。
矢は光となって消えた・・・それは剣たちにはよく知っている現象。
(これも・・・仲間(玩具)の仕業なの?)
紅葩は蓮の手当てをしながら頭で考えていた・・・常識で通用しないものは十中八九、スサノオの玩具が絡んでいる。
「・・・・・。」
蓮は紅葩に手当てをしてもらっている中、ずっと窓の外を睨んでいた。
「・・・・・残念。」
外には校舎位の高さの木々がたくさん並んでいる。
その中の1本にはたくさんの葉に隠れて生徒会室からは見えないがボウガンを手にしている人影が蓮をじっと見ていた・・・。
「手当て、終わったよ蓮。」
「・・・あぁ、悪っ「ついに・・・動いたね。」おいっ。」
「ついに?」
「あっ・・・。」
咲良は慌てて自分の口を押さえるがもう遅い。
「ついにって何?みんなはこのことを予想していたの?」
「「「「「「・・・・・。」」」」」」
紅葩の問いに誰も何も答えない。
「私には・・・何も、教えてくれないんだ。」
俯く紅葩・・・拳が力強く握りしめられている。
「紅葩ちゃん・・・。」
「紅葩、アタシ達はお前を「聞きたくないっ、もう何も・・・聞きたくないっ。」紅葩っ。」
生徒会室から出て行った紅葩・・・誰もその後を追うことが出来なかった・・・。




