自覚
この世界には魔力というエネルギーはあるが、それを自在に操る“魔法”という術を使用できる者が存在しない。
セリシィは、300年間孤独だったのが原因なのか、おねがいごとがだんだん多くなってきた。
そして意外と嬉しいのが、俺のことを「あんた」ではなく「レイ」と呼んでくれるようになったこと。
『レイ!私の額縁すこし汚くなったと思うの。自分じゃ見えないから見てほしいの。いい...?』
「はいはい。いいよ。」
『やった!ありがとうレイ!えっと、ここらへんよ。』
レイが言われた場所をじっくりと見る。
「あー、ちょっとほこりがあるかも。」
レイは羽箒で丁寧にほこりを払い落とす。
「ほかに汚れある?」
『うーん、今のところはこれで全部ね。またお願いね。』
「はい。わかりましたっ。」
レイとセリシィはかなり仲良くなってきた。
簡単には引き裂けない絆のようなものだ。
その日の夜のことだった。
セリシィが訳のわからないことを言い出す。
『ねえレイ。』
「なに?」
『私ね、この額縁から出てレイに触れてみたいわ。』
「...え?」
『だから、あんたに触れてみたいって言って―』
『いえ、やっぱり忘れて。』
「???」
恥ずかしそうにセリシィが視線を逸らす。
レイは違った。
「いいよ。」
『へっ?』
セリシィがレイの顔を見る。その顔は真っ直ぐこちらを見ていて真剣で、いつもの軽いレイじゃなかった。
そんなレイに、セリシィの心臓(?)が跳ねた気がした。セリシィが小声で呟く。
『なによこれっ...』
「セリシィが俺に触れることができるように、俺がんばるよ。」
『い、いいの?でもどうやって...』
「見つけるんだよ。自分達の力で。」
『はぁ...あなたらしいわ。』
(なんでそんな簡単に言っちゃうのよ。)
(そういうことを。)
セリシィが小さく息を吐く。
『...ずるい。』
別のことを言いかけてやめた。
レイは困惑した顔で言う。
「えっ?なにが!?」
セリシィがくすっと笑う。
『そういうところ。』
「はぁ?」
『なによその言い方、ひどくない?』
「いや、ぼかしてるのはそっちだろ―」
またいつもの口論が始まった。
魔力しかないせいで、こんなおかしな現象が起きています。




