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約束の呪い

この世界には魔力というエネルギーはあるが、それを自在に操る“魔法”という術を使用できる者が存在しない。

セリシィが家に来て、それから二週間が経った。

セリシィはうるさいけど俺が落ち込んでいる時は励ましてくれる、まさに相棒と言える感じだ。


『ちょっと、いつまでそんな顔をしているの? せっかく私が300年ぶりに人と話してあげてんのに、視界が濁るじゃない。

……ほら、さっさと立ちなさいよ。あんたを罵倒できるのはこの世で私だけなんだから』

「なんだそれ。」

なんだか面白くて、レイが笑ってしまう

『なによ、笑えるんじゃない。』

そのままつられてセリシィも笑う。


二人の笑いが収まる。


『ふふ、笑うのも悪くないわ。』

「笑った方がいいだろ」

『もう平気なのね』

「うん。」


『よかったわ。あなたがあのままあの感じだったら私に悪影響だもの。』

「ひど。」


レイは肩をすくめて、ソファに体を預けた。


数秒の沈黙。

時計の針の音だけが、やけに大きく聞こえる。


『……で?』

「ん?」

『その疲れの原因よ。』


レイは少しだけ視線を逸らした。


「…仕事」

『仕事でなにしたの?』

「えっと、美術館の掃除じゃん?絵画綺麗にしたり。」

『はっ!?』

「ど、どうしたの、?」

『私という高貴で美しい絵画が家にあって別の絵画を綺麗にするわけ...!?』

「ちょっ、え?」

『ありえないでしょ!?私がいるのに他の絵に触るなんて!』


「いや仕事だから!?」

『関係ないわ!もっとこう……優先順位ってものがあるでしょうが!』

「絵に優先順位もなにもあるか!」


レイが思わず立ち上がる。

セリシィはむっとした涙目の顔で、じっとレイを睨んだ。

『……ふん。』

「な、なんだよ」

『別に。どうせ私はただの一枚の絵だものね』


「いやそういう意味じゃなくて」

『いいのよ。300年も閉じ込められてた絵なんて、その程度の価値しかないんでしょうし』

「拗ねんなって!」

思わず声が強くなる。


その瞬間、空気が少しだけ張り詰めた。

レイは気まずそうに頭をかいた。


「……ごめん。言い方きつかった」

セリシィは少しだけ目を伏せる。

『……別に、怒ってないわよ』

「絶対怒ってるだろ」

『怒ってないって言ってるでしょ』


小さく、しかし確かに拗ねた声。


レイはため息をついて、ゆっくりと近づく。

「じゃあさ」

『なによ』

「絵触らないで床掃除だけすればいい?」

『絶対に触らないなら、それでいいわよ。』

『でも、他の絵のこと、あんまり見ないで...』

セリシィの頬が、ほんのり紅い。

「へいへい。」


レイが軽く返した。


「……ん?」


セリシィは黙っていた。


さっきまでの拗ねた空気が急に消える。


「どうした?」

『……別に』


でも、瞳だけが少し揺れている。


レイは違和感に気づく。この位置は嫌だったのだろうか。額縁に触れようとする。


『触らないで』

「え?」

『……そのままでいいの』


静かな声。


さっきまでのわがままな調子とは違う。

レイは、言葉を止める。


少しの沈黙。

時計の音だけが響く。


やがて、セリシィがぽつりと呟く。


『……ねえ』

「なに?」


『さっきの、他の絵見ないでってやつ』

「うん」

『あれ、本気だから』


レイは少し驚いたような表情を見せる。

「え?」

『だって私』


ほんの少し、言葉が詰まる。


『…ここから一歩も動けないもの』


部屋の空気が、少し重くなる。


『外も見れないし、触れないし』

『…あんたしか、見えないのよ』


レイは何も言えなかった。


『だから』


ほんの少しだけ、笑う。


でもそれは、強がりに近い笑顔だった。

『せめて、レイも...できるだけ私だけ見ててほしいのよ』

「そっか。うん。」

「わかった。」

セリシィが満足げに微笑む。

『それでよろしい。』

魔力しかないせいで、こんなおかしな現象が起きています。

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