063_紅蓮に燃える帝都3
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
「アーノルド、無事だったのか。ソフィアは近くにいないのか?」
「何も聞いていないのか?ソフィア様なら、ノースボアの反乱を鎮めに行ったぞ」
「何?じゃあ、何故お前達はここに?」
「私達はお前を探していたのだ。突然消えてしばらく姿を見せなかったからな」
「そういう事か…。分かる範囲でいい、一体何が起きてる?」
「分かった。私達はソフィア様に命じられ、密かに帝都へと戻っていた。何日かお前達を探し続けたが、手がかりは見つからなかったがな。その後だ、魔導列車が突然動かなくなり市民が騒ぎ始めたのだ。何者かが、この帝都にある魔力路を破壊したらしい。それと同時にだ、グレイ皇子が第3軍と大量の暴徒を引き連れ、陛下を討とうとクーデターを起こしたのだ」
「やはりそうなったか。しかし、それだけでここまでの騒ぎになるなんて。帝都にはセルビアナがいるんじゃないのか?」
「いないんだ。ソフィア様と同時に、陛下はセルビアナ様にも勅命を下し、他の地で起きてる反乱に向かわせたのだ」
「何!?セルビアナがいない!どういう事だ!」
「ぬ、離さぬか!私にも分からん!こんな事で陛下がセルビアナ様を出陣させるなど…」
どういう事なんだ。
こんな見え透いた罠に、わざわざ乗ったというのか?
「という事は今、城は!?」
「第3軍と、ヘンリー殿下の残した第2軍が争っておる。陛下は籠城しているが、時間の問題だろう。セルビアナ様が戻れば、覆せるだろうが列車があの調子ではな」
「くそ!それなら、奴は、ファントムは城に向かってるに違いない!」
「おい、どうする気だ!」
「アーノルド!クロエを頼む!」
「待て!!」
駆け出そうとする俺をアーノルドは止める。
「何をする…!」
「くっ、アイン…」
アーノルドは俺の眼光に驚き、固まってしまう。
「駄目だ、行かせるわけにはいかない…。お前が何をするかは分かっている!」
「なら、俺を殺してでも止めるか?」
「何を!?」
召喚陣からゴーレムを呼び出す。
「本気か、アイン?」
「本気だ。それに何故、お前が俺を止める?」
「お前が帝国を憎み、陛下の首を取ろうとしているのは分かっている。それでもだ!お前ならソフィア様を導けると思っていたのだ。そんなお前が城へ向かうのは何の為だ!陛下を殺す為か、ファントムを殺す為か!?」
「問答のつもりか…」
俺の殺気に当てられても、アーノルドは俺に問うて来た。
彼はそれほどまでに本気で、俺に答えを求めているのだ。
自分の為じゃない、ソフィアの為に。
「俺は…ファントムを止める。悔しいがあいつの作戦に便乗して俺の目的を果たした所で、俺の憎しみは晴れない…!」
「アイン…。分かった、行け。クロエ殿はしかと私達が守ろう!」
「くくく、素直じゃないな」
「貴様もだ。城へ行くなら地下水道から行け。城は第3軍が包囲している。忍び込むならそちらがいいだろう」
「地下水道か。分かった、そっちへ向かう」
俺はクロエの方を向く。
クロエは心配そうに俺を見つめると、ゆっくりと口を開く。
「…ご主人様。私は迷ってました。帝都で憎しみのまま暴れる暴徒を見て、憎しみを持つ者はこのように感情に飲まれ狂ってしまうんじゃないかと。ですが…、ご主人様は違います。憎しみを持っていても、貴方は貴方のままです」
「そうなのか?俺では分からないが…、いや。みんなのおかげだろうな。俺は知らず、みんなといる事で冷静さを取れ戻せていた」
「…ふふふ、初めてですね。ご主人様がこうして自分の言葉を話してくれるのは」
「え、そうか?」
「…はい。嬉しいです。だから、必ず無事で戻ってきて下さい!」
「ああ!」
「エメさんとロザミアさんにも戻られたら、伝えます!ご主人様を助けに行くようにって!」
「頼む!」
自分の言葉か。
クロエに言われ、俺は気付かされた。
なんだかんだ頼りにしていたのは俺の方だったのかも知れない。
戻ったら、みんなとちゃんと話そう。
戻ったら、復讐をする事を考えよう。
「ったく。アインよ、余り年頃の娘に気を持たせるような事をするな。ソフィア様もそれで勘違いされては…ゴホン。ともかく、ここは任せろ。お前にしか出来ない事をやってこい」
「ああ!」
俺は城へ向かい走り出す。
さっきまでの俺は焦っていた。
ファントムに踊らされていた事に。
だが迷わない。
ファントムを殺し、この反乱を止める。
そして然るべき時に俺が皇帝とセルビアナを殺すのだ!
アーノルドに教えられた地下水道の入口を見つける。
「ここか…。この先を進めば、皇帝とファントムがいる城に」
薄暗い中、地下水道を歩く。
水路だけではなく、通路もある事からここは非常用に行き来が出来るよう設計されてると気付く。
城の正面は兵士達が戦っているが、こちらにもいないとは言い切れない。
慎重に先を進む事にした。
思ったより地下水道内の道程は長く、半分程は進んだ所で何かを感じる。
「何かの気配がする…!」
周りを見渡すが、何も発見出来ない。
灯りが乏しいので先を見渡せないが、もしかするとそれは俺に気付き逃げてしまったのだろうか。
「ネズミだったか…?」
だが、突然天井から気配が強まり、急ぎ武器を構えた。
「ちっ、上から!」
「ネズミだぁ?よくも勘違いしやがって!」
「お前は、グレイ!?」
俺を待ち構えていたのは、この帝都を混乱に陥れた主謀者の一人グレイ皇子だった。
「あー、帝都まで戻って来ちまったか。ファントムの読み通りだな。これで、お前を殺さなくてはならなくなったまったよ」
「グレイ!!お前がここにいるという事は、皇帝を殺したのか!?」
「はははっ、皇帝を殺したか?さぁどうだろうな今頃ファントムが始末してるかもな」
「くそ!!よくもっ!」
「まぁ、落ち着けよ。って言っても殺すんだけどな!!」
「ちっ!」
グレイは喋りながら、距離を詰めてくる。
俺は後ろに下がりながら、ゴーレムの召喚を行う。
「やれ!こいつを殺せ!」
「くそ、卑怯だぞ!!」
「卑怯なものか!これが俺の戦い方だ!!」
ゴーレムがグレイに攻撃を開始する。
「ちっ、これが噂のゴーレムかよ!噂以上の強さじゃねぇか!!」
グレイは悪態を吐きながらも、ゴーレムの動きに対応する。
「ただのバカ皇子かと思ったが、ここまで戦えるのか?」
「はははっ、いいねバカ皇子か。そのおかげでクソ親父含めて、俺らの作戦が上手くいったんだけどな!」
「ちっ、ふざけた事を!!」
俺はもう一体、ゴーレムを召喚する。
「まだ出すのかよ!!」
「それだけだと思うなよ!」
二体のゴーレムはグレイに攻撃で圧倒し始める。
グレイも、ただの皇子ではないようでゴーレム二体をしてうまく立ち回る。
だが、その勢いは抑え始められる。
「何だ、そのゴーレム達の動きは?これは、魔壁!?」
「今だ!!フレイムウェーブ!!」
ゴーレム諸共、グレイを焼き尽くす。
炎の波が水路の上を這うように、覆い尽くす。
狭い通路でのこの魔法なら防ぎようはないはず。
だが、まだグレイらしき人影は膝をついていなかった。
「まだ生きてるか!?仕留めろ、ゴーレム!」
二体のゴーレムが剣を振るった。
だが、振るった腕を押さえつけられ、刃はグレイに届かない。
「その姿は…まさか!」
「はははっ、そうだ![獣化]だ!」
消え始める炎の中から、まるで獅子を模したかのような出立のグレイが現れる。
「[獣化]はお前も見たんだろう?俺がこんな凄い力を逃すはずはない。非人道だろうが、苦痛を与えられようが力を得られるなら俺はそれを選ぶ!!」
「そこまで…。侮っていたな。そうまでして、皇帝の座を手に入れたいのか?」
「はははっ、皇帝?そんなもの、俺は望んでいない!!俺の望みはただ一つ、クソ親父が死ぬ事だ!その為に俺はファントムとも組んだし、クーデターも起こした!」
「皇帝を殺す?何故だ、お前にはそこまでする理由があるのか?」
「あいつは俺の母親を殺した。シルビアを産んですぐだ!男子を産めないという理由だけであいつは俺の目の前で殺したんだ!」
「余計に分からないな。そこまで憎んでいて、何故お前はここにいる?皇帝を殺したくないのか!?ファントムに始末させるなんて間違ってるぞ」
「分かってないのは、お前だ。ファントムは俺以上にクソ親父を殺す資格がある」
「どういう事だ?」
「あいつは元帝国の将軍だ。クソ親父が皇帝の座に就く前から仕えていた友とも呼べる存在だった。それなのにだ、帝国の方針とそぐわぬ事を進言し続けた結果、処刑されたんだよ」
「ファントムが元将軍だと!?そうか、だからこんなにも帝国内の事情に精通していたのか!」
「それだけじゃない、あいつは将軍として優れていた。今でもその手腕を敬ってる奴は多い。俺を介して、再びファントムの力があれば帝国は安泰になると協力してくれた奴は多いぜ」
「全ては皇帝を殺す為か…」
「ここで全てわかった所で、お前は俺に殺されるんだけどな!!」
ゴーレムを操作して、攻撃を防ぐ。
だが、グレイの獅子と化したその爪や腕はいとも簡単にゴーレムの装甲を斬り裂いてしまった。
「ちっ、[獣化]でここまで強化されるとは!?」
「俺は獅子の[獣化]。力の上がり方は半端ないぞ!!」
俺は距離を取りつつ、再び召喚時を発動させる。
グレイの強さを見て、強化型ゴーレムを召喚した。
「さっきとは違うようだな?だが、それで俺をやれると思ってるのか!?」
グレイの爪を受け止める。
「そっちこそ、俺をなめるなよ!」
俺はゴーレムを操作し、グレイを攻める。
強化型の装甲なら、例え獅子の爪といえど簡単に引き裂く事は出来まい。
グレイが大きく振りかぶる時は盾を使い防ぐ。
ゴーレムとはいえ、あの攻撃力は目を見張るものがある。
「やはりゴーレムってのは戦り辛いな…!」
「ちっ、渋といな!」
ぐれいは明らかに押されているのに、その表情には何か余裕が感じられる。
「どうした?俺を殺すんじゃないのか!?」
「戯言を…。何かを隠してそうだな?」
「いや、なにお前の苦い顔を想像してただけだ」
「皇帝の事か?」
「言っただろう、お前を殺すと。それは俺の考えじゃない」
「何?」
「俺達には協力者がいるんだよ。そいつからがお前を殺す事を条件に入れてきた。せっかく有能な人材だ。仲間に引き入れ、殺したと報告するつもりだったが。そうは行かなかったからな」
「協力者だと!?」
「そう驚くなよ。きっとそいつらはお前らがブルミアから戻ってくると読んで、殺そうと動いてるだろうな。俺達も馬鹿じゃない。お前らが戻ってきたのは知っている。屋敷に誰がいるのかも分かっている」
「グレイ!!」
「おおっと、怒るなよ。だが急がないと間に合わないかもな。どうする。俺を殺してファントムを止めに行くか?それとも戻って仲間を助けに行くか?」
「貴様ぁぁぁぁあああ!!!」
どうする。
俺はどうするべきなのか。
すっと目を閉じると色々なものが浮かんでくる。
仲間と呼べる大事な人達の顔。
憎むべき皇帝とセルビアナ。
どうしてこう上手くいかないんだろう。
それでも俺は選ばなくてはならない。
「考えるのを止めたか、アインよ。なら俺が殺してやれば悩まなくて済むだろう!!」
召喚陣を発動する。
「おいおいおい!何だその数は!!?」
喚び出したゴーレムは100体。
こいつらに命令する事はただ一つ。
「そこの阿呆を殺せ!」
「おもしれぇ、それだけで足りるのか!?俺は何体でも相手してやるよ!!」
「グレイ、俺は仲間の元へ戻る。そうだな。もし生きていたら…。その時は必ず殺してやる!!」




