062_紅蓮に燃える帝都2
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「ぐああぁぁぁ…」
暴徒の一人が倒れる。
「あ、ありがとうございます!」
暴徒に襲われかけていた町の人を助けるべくロザミアは剣を振るっていた。
「いえ、これくらい平気ですわ」
「本当に助かりました!」
礼を言うと一目散に逃げ出す。
助けられたとはいえ、いつまた襲われるか分からない。
そう思った町の人の多くは、脇目も振らずに走って逃げ惑っていた。
「困りましたわね。これじゃあ聞き込みも出来ませんわ。相手してくれるのは暴徒だけなんて」
ロザミアはエメと別れた後、市民街へと繰り出した。
ソフィアを探そうにも次々と発生する暴徒の略奪や暴行に見かねて、暴徒の撃退を行っていた。
「この辺は探しましたわね。あれ?」
「おーい!」
遠くから声かけてきたのは、ムキムキの冒険者達だ。
「あら貴方達は?」
「ここは危ないぞ!…ですわ」
「さっさと逃げ!…た方がいいわ」
どこかで見た顔だと思ったら、冒険者ギルドで会ったオカマ…オネエさん冒険者達だった。
「って、あなたは確かAランク冒険者の」
「ロザミアよ。貴女達は依頼で町の人を?」
「違う!…わ。マスラオの姉御が、帝都を守るのは冒険者の仕事だってみんなを説得して私達がこうして暴徒の鎮圧を行ってるのよ」
「そうなんですのね。マスラオちゃんらしいわ。ところで知ってればなんですけど、ソフィア様を知らないかしら?」
「ソフィア様?それなら、他の地方で起きた反乱の鎮圧に出向いてるわ。なんでも帝都も含めて各地で反乱が起きたらしいわ」
「まさかこんな事になってるなんて…。ねぇ、他にもどうなってるか教えて下さいます?」
「後は、あのセルビアナ様も出兵されたわ。皇帝陛下がセルビアナ様を出兵させるのは珍しいわ」
「セルビアナが!?そうなんですのね…、グレイ皇子の言ってた通りになるなんて。ありがとう、貴女達!」
「気にしないで、同じ冒険者じゃない。ここは任せて他も見てくれる?」
少し悩んでから、ロザミアは返事をする。
「分かりましたわ。ひとまず大通りを見てきますわ」
「そう、気をつけてね!」
彼ら…、彼女らはロザミアと固い握手を交わすと、すぐ様暴徒の鎮圧に戻る。
「こぉらぁぁ、何してやがる!?」
「さすがわ、ロザミアちゃんの信奉者ですわ。思ったより早く情報が得られましたわね。彼女達との約束もありますし、大通りの様子を見てからでも間に合いますわね」
そう思い、急ぎ大通りへと向かう。
道中、再び暴徒を見つけては撃退しつつ先を進む。
大通りに出るとそこは想像よりも酷い有様だった。
「奪ってやる!お前らが俺らから奪っていた全部!」
「お前らのせいで、俺は家族を!!」
酷かった。
気持ち悪かった。
人間の持つ憎しみがここまで汚くなれるのだろうかと。
ロザミアは思わず口を押さえてしまう。
アインの持つ憎しみこそ純粋に見えるが、一歩間違えればアインもこうなってしまうのかと思うとロザミアは複雑な感情を持ってしまう。
帝都を脱出しようとする人達と、なだれ込むように入ってくる暴徒で大通りの入り口は溢れかえっていた。
「やるしかありませんわね」
ロザミアはそう言うと剣を握りしめる。
そしてひたすら剣を振るった。
ただ無心に。
彼ら暴徒を一人一人説得する間も無く、放っておけば次々と帝都の住民が殺されていくのだ。
だから剣を振るう事が今は唯一の方法なのだと。
「今になって、ソフィア様の気持ちが分かりましたわ」
ソフィアも戦う時、こんな複雑な想いで戦ってたんだとロザミアは気付く。
いつかこんな無意味な戦いが終わったら、ソフィアも入れて楽しく笑い合いたいと希望にすがるように剣を振るった。
「きゃあああぁぁぁ!!」
「何をしてますの!?」
近くで母娘が暴徒に襲われかけていた。
急ぎ、ロザミアは暴徒を斬り伏せる。
「な、なんで俺だけがこんな目に…」
「みんな、そうですわよ…」
暴徒が最期にそんな言葉を吐きながら倒れる。
「ありがとうございます!」
「平気ですの?急いでここを離れた方がいいですわ」
そう言い、ロザミアはまた別の暴徒を倒しに行こうとした。
「あ、あの!?お願いします!あっちで帝都を脱出する馬車があるんです。どうかそこまでお願いします!」
母親はすがるような思いでロザミアに頼み込む。
断ろうかと思ったが、まだ幼い少女を見て決意する。
「分かりましたわ。共に行きましょう」
「ありがとうございます!」
母娘を守りながら馬車の方まで護衛をする。
女三人というのは目立つのか、何人かの暴徒に出くわすがロザミアは次々と斬り伏せた。
「裏道ですのね!」
「はい、こちらからなら帝都の地理に疎い暴徒は分かりません!」
大通りではない、裏道から帝都を脱出する馬車の幾つかは待ち構えていた。
「ありがとうございます!なんてお礼を言ったら」
「気にしなくていいですわ。それよりもお気をつけて下さい」
「はい!」
母娘を見届ける。
そろそろ屋敷に戻ろうと道を引き返す。
「ロザミア様!」
「あら、貴女達」
声をかけたのはロザミアの従者としてついてきた者達だった。
「貴女達は無事かしら?」
「はい、ロザミアこそ良くぞご無事で!」
「貴女達はお逃げなさい。いかに王国からの留学とはいえこうなったら意味はありませんわ」
「ですが、ロザミア様は!?」
「アインが待っておりますわ。わたくしは大丈夫。十分、強いもの」
「お願いします、ロザミア様。王都へ戻りましょう。お父上が心配されます!」
「嫌ですわ。わたくしは王都へと戻りません。父上に、わたくしは無事だとお伝え下さい」
「しかし!」
「貴女達には申し訳ないけれど、わたくしは行きますわよ」
ロザミアは引き返す。
長年連れ添った従者の言葉を遮り、自分の信じる道へと進もうとする。
だが、従者二人は同時に頷くとロザミアを押さえる。
「何をするの、貴女達!?」
「申し訳ありません、ロザミア様」
「ベネット伯爵に厳命されているのです。帝国で何かあった際は無理矢理にでも連れて帰れと」
「父上が!?離しなさい!くっ、貴女達一体何を…!」
「とあるモンスターより取れる睡眠液を染み込ませた布です。ご安心を。目覚めた頃には王都へ着いておりますから」
「そ…んな。ア…イン」
ロザミアは遠くなる意識の中、燃える帝都を見つめていた。
自然と目から涙が溢れる。
アインと一緒にいると決めたのに、どうしてここに来てまで父上は私を縛り付けるのか。
「ごめ…んね」




