061_紅蓮に燃える帝都
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
時は遡り、大規模反乱が発生し各軍が出兵した後。
この事態に元老院とシルビアは緊急に招集していた。
そしてこの場でも事態は急変していた。
「これは一体どういう事かしら?」
喉元にナイフを突きつけられながらも、冷静にシルビアは対応していた。
「すみません、シルビア様。どうか動かないで下さい」
「やれやれ、テオドア卿の訃報から元老院の回復をと選んだ貴方達が反乱軍の手下だったとは」
「ち、違います!私はあの方に…」
「あの方?どうにも理解出来ませんね。腐敗した貴族の中でも、貴方達にはそういう黒い噂はなかったのにどうしてこのような事をするんでしょうね」
「私共は本気で改革を考えています。殿下も反乱が起きるのは、この帝国がもう手の施しようがない事だと」
「そうね、それは分かります。けれどそれを貴方が、レジスタンスとやらが成せると?犯罪者の集団がいかに主権を主張した所で意味がないわ」
「それは違うな」
「グレイ兄さん…!そういう事なのね」
「察しがいいな。変に暴れなきゃ命は取らねぇ」
「意外だわ。帝位の為にここまでするとは。父上が聞いたら大喜びするでしょうね」
「そうだろうな。まぁ後で父上の面を拝むから、有難い言葉が聞けるかもな。生きてればだが」
「どういう事かしら?兄さん、貴方が父上を討ち取らないの?」
「死に際には行くさ。まぁ表向きはそうなるだろう。けど、あいつとの約束だ。譲ってやったのさ」
「譲る?本気かしら。セルビアナが不在でも玉座は親衛隊が守備してるのよ。どこの誰かは知らないけれど許可なく玉座へと行けないと思います」
「ふっ、そうだな。まぁお前との話はそこまでにしておく。やる事は山積みだからな。お前ら、シルビアと残りの貴族を牢屋へ!」
「はっ!」
裏切った元老院達が、残りのメンバーとシルビアを連行する。
何か問題がないかグレイは見届けたが、問題はなさそうだった。
頭や口が回るとはいえ、荒事には慣れてないのだ。
「さて、あいつらの始末か。念を入れたが本当に帝都へ戻ってくるのかどうか」
ここまで順調に作戦は進んでいた。
城の外では、グレイ率いた第3軍が自分の兄ヘンリーの第2軍へと攻撃を開始していた。
そして玉座はファントム達が抑えている。
それなのにグレイの顔は浮かばなかった。
「レミリアの聖騎士か。ったく、そんな神聖なものじゃないのにな。やってる事は外道だ。だが、ここまでお膳立てしてくれた恩もあるし、約束を果たさないとな」
そう独り言を呟きながら、グレイは城を脱出する。
「ちょっと早すぎですよ!!」
今まで出した事もない速度に駅員が怒鳴りながら、俺に文句を言う。
「急いでると言っただろう!」
「風が気持ちいいですわ」
「早すぎて気持ちいい所じゃないでさよ!」
俺達はあのまま駅で立ち尽くす所だった。
だが、車庫を目にする。
そして俺らは半ば強奪するかのように列車を運び出した。
以前、ルゲイエに機関部を見せてもらった俺は魔導列車の仕組みは分かっていた。
レールからの魔力供給が駄目でも、直接送り込めばと試したら成功したのだ。
駅員は怒りよりも驚きが来ていたが、無理矢理にでも列車を使うと言ったらついてきたのだ。
結果、来てもらったのは正解だった。
「減速を!この先のカーブでこのままの速度だと脱線してしまいますよ!」
「魔力は落としたぞ!後はどうすればいい!?」
「このレバーで!」
大きな金切り音と共に、列車にブレーキが掛かる。
列車は徐々に速度を落とし、カーブへと入っていく。
「ま、間に合ったぁー!わ、ちょっと!」
「もうカーブは終わっただろう!」
再び列車を加速させる。
帝都まであと少し。
「見えましたわ!」
「…で、でも様子がおかしいですよ?」
「火の手が上がっている」
まさに帝都は今、レジスタンス共に襲われている最中だった。
帝都の駅までは大きなカーブや難所もないので、減速する事なく向かう事が出来た。
駅に着いた時にはその惨状はよりひどいものだというのが分かった。
暴徒の一部が略奪を行い、帝都に住む民達は逃げ惑っていた。
ある者は家を締め切り、ある者は家を捨て帝都から逃げ出そうとしていた。
「ひどいですわ…」
「…兵士が民を助けないで兵士同士で戦うなんて」
「あのグレイとかいう皇子のせいですわ。彼がクーデターを起こしたせいで余計に帝都内に混乱を起こしてますわね」
「マスターどうしますか?」
「状況が分からないのは困る。ソフィアを探すしかないが、この状況じゃ…」
この惨状に対して事情を分かるものを見つけないとならない。
皇帝を討つにしても、セルビアナがいるなら迂闊には城へと近づけない。
「手分けしよう。俺はミニゴーレムで帝都内を探る。悪いがエメとロザミアはソフィアを探してもらえるか?」
「分かりましたわ、アインはどちらに?」
「無事であれば屋敷内から操作する。そこを合流地点としよう」
「了解です、マスター」
「…えっと、私は?」
「クロエは俺から離れるな。一緒に屋敷へ行こう」
「…はい!」
帝都内に溢れる火種が渦巻く中、仲間と離れたくはなかったが仕方なかった。
攻めに転じるにしろ、守りに転じるにしろまずは状況を把握するしかなかった。
「どうします、エメさん?」
「スラムは置いたとして、貴族街に市民街、大通りは見てまわった方が良さそうですね」
「帝都といえど広いですからね。アインは反対するでしょうが、別れましょう」
「…そうですね」
「心配なさらないで下さい。それと列車から見えた様子じゃ城の周りが一番戦闘が激しいですわね。近い貴族街が見回るには一番困難かと思います。だから、エメさんお願いしてもよろしいかしら?」
「いいのですか?そういうのは貴女が真っ先に選ぶと思ったのですが」
「この状況じゃそうは言ってられませんわ。エメさんの方が実力あるのは分かってます。だからお願いしたいのです」
「分かりました。必ず生きて戻りますよ」
「わたくしも約束しますわ。アインの、わたくし達の屋敷で会いましょう!」
意外だった、ロザミアがエメを頼る事が。
だからこそエメはその期待に応えようと張り切る。
「私も行きますか!」
拳を握り貴族街を目指し進む。
ロザミアの言う通り、着いた貴族街はあちこちで戦闘が行われていた。
こちらの方は暴徒はあまりいない。
代わりに兵士同士の戦いが行われている。
「貴様、何者だ!?反乱軍の手の者か!?」
「待て、こいつ見た事あるぞ。そうだ、王国から来てた留学生の一人だ!」
「何?じゃあ違うのか?」
「ええ、私は王国のアイン様に仕える者です」
「なら、早く離れた方がいい!今、帝都は反乱軍とグレイ様がクーデターを起こされたせいで混乱を極めている!」
「ソフィア殿下はどちらにいますか?」
「ソフィア様か?知らないのか、この反乱軍に合わせてノースボアの反乱軍の鎮圧を任されてここにはいないぞ!」
「ノースボアに…。分かりました。感謝致します」
ソフィアがいない。
この状況で頼れる人物がいないのは、アインに取っては良くない報告になる。
けれど早々に欲しい情報は得られた。
後は城の情報だが、もう少し城へ近づけば分かるかとそちらへ赴こうとする。
「おい、どこへ!……!!ぐはぁっ!」
「お、おい!貴様かぁ!よくも仲間を!…がはっ」
三本の爪に獅子の模様。
グレイが率いる第3軍のシンボルだ。
それを刻んだ甲冑に身を包む兵士が今さっきまで話していた男を殺した。
「ふん、話にならんな!次は貴様だ!」
「城へ急ぎますので、どいてくれませんか?」
「はははっ、何を言うかと思えば王国の小娘が!城に行っても血に濡れた玉座があるだけだ!」
「それは残念ですね…!」
エメは瞬時にガントンファーを引き抜くと、魔力の弾丸を発射する。
「ぐわぁぁ!!」
「どけと言ったんですけれど…」
エメは何事も無く、その場を立ち去ろうとした。
だがエメは何者かに足を掴まれる。
「まだ生きてたんですか?」
「ぐ、おのれ!!俺がこんな所でやられるわけねーだろ!」
エメは簡単に振り解けるだろうと、足を上げようとするが動かなかった。
「どうして!?」
「調子に乗るなよ、小娘が!!」
「くっ!」
そのまま掴まれた足ごと、放り投げられる。
「いきなり力が上がるなんて…」
「俺はなぁ、グレイ様に選ばれた優秀な兵士なんだよ…!」
「体が変化していく…?これは[獣化]?」
「よく知ってるな!そうだ、俺らはグレイ様により選ばれこの力を得た!くっくっく、城の連中もめでたいぜ。こんな力があるなんて知らず必死に戦ってるんだ。俺らの勝利は決まってるのさ!」
「もうお喋りは以上ですか?なら早く戦いましょう。マスターからの命令を遂行する為にこんな所で時間を浪費したくないのです」
「ぐぐぐ、小娘ぇぇ!!」
前にメロと戦ったおかげで[獣化]を知っていたのは幸いした。
それに前回と違い今回は万全な状態での戦いだ。
特に相手は力に溺れている。
「くそ、何で!?俺の力は獣以上なんだ!それを軽々と!!」
「私が前に戦った方はもっと上手でしたよ?あなたはただ急激に上がった力を振り回してるだけです。技術や経験がない者が力を手に入れた所で、弱い事には変わりありません!」
「くそおおお!ぐああっ!!!」
「所詮、あなた方何人いようとも敵じゃありませんね」
トンファーで何度も殴打し、そしてトンファーの先端を敵の体にくっつける。
「では、さようなら」
バンバンバンッ
接射で魔力弾を撃ち込む。
「ぐうぅぅぅぉぉ…」
[獣化]した兵士は倒れる。
エメは何事もなかったように先へ進む。
この混乱の中心である城を目指す。
途中、先ほど似たように兵士に襲われるが難なく排除していく。
「おいおい、困るんだゼ!」
「またですか?さっきからひっきりなしに襲われるのですが、帝国の兵士は少女を見ると襲うんですか?」
「何が少女なんだゼ。でもこれ以上、あの兵士をやられちゃ困る。せっかく根回しして、セルビアナを排除したのにこんな所で一騎当千やられちゃ計画が狂うんだゼ」
「セルビアナを排除?一体どうやって…。それよりもあなたは兵士には見えないんですが、暴徒ですか?」
「暴徒が呑気にお喋りしねーぜ。レジスタンスだレジスタンス。覚えておきな」
「それではレジスタンスさん、城では何が起こってるんですか?」
「ちっ、やりづらいゼ!いいか、俺はライノス。それとペラペラと話すつもりないんだゼ」
「ライノス…。前にマスターが話していたレジスタンス。申し遅れました、私はエメと言います。ゴーレムですので、油断しない方がいいですよ」
「ゴーレム!?そうか、あの時のガキの!ちっ、なら本気で行くしかねーゼ!!」
ライノスの大斧がエメを斬り裂く。
だが、手に持ったガントンファーで防ぐ。
「思ったより力がありますね」
「ちっ、とんだ化物なんだゼ。[肉斬骨断]!」
「これは…防御を捨て力を特化させてるんですね」
「そういう事だゼ!まだまだぁ!!」
「あまり長引かせたくないですが…!」
エメとライノスの戦いがきって落とされた。




