006_新人潰し
翌朝になり、俺は街の入口で今回のクエストで同行させてもらえるパーティと合流する。
男3人、女1人のパーティだ。
向こうも見つけると、こちらへと手を振る。
「さて、お前さんが今回のサポートで入る…」
「アインとエメだ!」
「まさかな、変な奴が俺達の依頼を受けたいと聞いていたからな。まさかゴーレムだとは、実物は初めて見る」
「こんなポンコツが荷物なんて持てるのかよ?」
目つきの悪い男がエメの頭をボンボンと叩いていた。
「おい、やめろ!彼女はポンコツじゃない、エメだ。それに荷物を持つくらいなら問題ない」
「ククク、ガキはまだ人形遊びがやめられないって事か!?」
俺がまだ子供だからだろうか、それともゴーレムが珍しいからなのかやたらと絡んでくる。
「クッ、ふざけるな」
安易にもその男の挑発に思わず、睨みつける。
「おおっと、俺を相手にするっていうのか。自分のケツも拭けないガキとただのガラクタ人形じゃ相手にならないぜ」
「おい!?やめろ!」
「ちっ」
「すまなかったな、アイン。俺はダン。パーティ『風の手』のリーダーだ」
パーティメンバーを諌めてくれたダンが手を差し伸べる。
握手に答える。
ダンは、大きな剣を抱える剣士のようだ。
「こいつは、サボー。少し素行は悪いが、戦いになれば優秀だ」
「ちっ」
先ほど絡んできた男だ。
挨拶代わりに舌打ちをする。
腰に抱えた剣が武器なのだろう。
「この年食ってるのはタージュだ」
「まだまだ若いわ!」
ローブに杖、魔法使いだろう。
タージュは髪に少し白髪が混ざってるのを見ると、他のメンバーよりは年上なのかと思う。
「最後に、リルハだ」
「よろしくね、坊や。プププッ」
俺とエメを見つけてから、ずっとこの調子だ。
そんなにおかしいか?
まるで、学校でいじめを行っていた連中を思い出す。
「今回のクエストだが、シルバーウルフの討伐だ。ランクはC。俺らなら、問題なく倒せるだろう。素材や道中で拾った物などを運んでくれ」
「ああ、わかった」
『風の手』によるシルバーウルフ退治が始まった。
もちろん、討伐対象が街のすぐ近くにいる訳がないので、シルバーウルフがいる森まで行く事になってる。
森まではおよそ、半日。
そこそこの距離があるので、野営もする。
「おい、ガキ。俺らの足を引っ張るなよ。自分の身は自分で守るんだな」
「くっ、わかってる」
何が気に入らないのか、やたらとサボーは俺に絡んでくる。
その度に、ダンさんに止められている。
しばらくするとあまり絡まれなくなったから歩くことに集中していると誰かが倒れた。
ドスンッ
振り向くと、エメが倒れていた。
「エメ!?」
大慌てで近寄り、エメを起こす。
「ごめ~~~ん。ゴーレムっていうのが気になってて、転ばしたらどうなるか思わずやっちゃった」
リルハだった。
「くそ…」
「おい、お前らいい加減にしろ。あまりにも騒ぐからモンスターが近寄ってきたぞ」
「アインちゃんだっけ、エメちゃんを守ってあげなよぉ。プププッ」
明らかに俺らに対する新人への洗礼なんだろう。
ここでヤケを起こしてもしょうがない。
「エメ。俺は早速、収集を開始する。敵が近づいたら教えてくれ」
うん、と首を振る。
俺は魔道書ゴーレムを取り出す。
現れたモンスターはシャドウウルフが数体。
目当てのシルバーウルフではないが、Dランクモンスターで群れで現れると熟練の冒険者でも手こずるらしい。
「さぁ、来い!」
ダンは両手剣を構える。
「ガゥッ」
「ガルルルッ」
シャドウウルフが2体飛び込んでくると、相手に合わせて両手剣を振る。
「ハァ!!」
両手剣はその特性上、重い武器ではあるが、ダンは軽々とそれを振るうとシャドウウルフ2体を斬り伏せた。
「やれやれ、こんな所でMPを使いたくはないんだがな。我が魔力に答えよ、風の精に命ずる、刃となりて我が敵を屠れ、ウィンドカッター」
タージュは呪文を詠唱すると、その杖の先から風の刃がシャドウウルフへと襲いかかる。
「キャウッ」
「ウゥゥゥッ」
「ガウゥゥゥッ」
風の刃に襲われたシャドウウルフは、バラバラに切り裂かれる。
「ちっ、タージュの野郎。大事な素材がめちゃめちゃじゃねぇか。あれの毛皮は売れればいい値段するのによ」
悪態をつきながらサボーは片手剣を華麗に振るう。
顔に似合わず、剣捌きは綺麗だ。
サボーに翻弄されながらシャドウウルフはその片手剣の餌食になっていく。
「へっ、大した事ねぇな!」
身を潜めていたシャドウウルフの一体が、サボーの後ろから襲いかかる。
「ガルルルルッ!!」
「くそがっ!」
身を翻して避けるが、シャドウウルフの爪がサボーの足をかする。
「ちっ、かすり傷とはいえ、こんな奴の攻撃喰らっちまうなんてツイてないぜ。おい、リルハ」
「えー!しょうがないなぁ」
リルハは腰に携えていたロッドを手に持つ。
「癒やしの守りてよ、悪しきものからその身を救い給え、ヒール」
回復魔法だ。
サボーの傷はみるみるうちに塞がっていく。
「助かったぜ」
「貸しよ、貸し」
俺は本来の目的である情報の収集に徹していた。
さんざんな目には有ったが、やはりついてきて正解だった。
突然、エメが動き出す。
「エメ?」
見れば、シャドウウルフの一体がこちらへと向かってきている。
「なっ!くそっ」
誰か助けてくれないか、見るとサボーとリルハはこちらを見て笑っている。
まさか、わざやったのか…。
くそ、今の俺にはこいつと戦える力がない。
「ガルルルルッ!!」
ガンッ
エメが身を挺して守ってくれた。
「エメ!!」
エメは俺が初めて作ったゴーレムだ。
それもジジイの家にあった、ガラクタを寄せ集めて作った。
正直、戦う用にはなっていないからあと数度もシャドウウルフの攻撃を受ければ破壊されてしまう。
俺は近くに落ちていた、木の枝を拾い、それでシャドウウルフを殴りつける。
「ガルルッ」
「くそ!こんなのじゃ効かないのか…!」
シャドウウルフがエメに向かって飛びかかる。
鋭い爪を掲げ、エメを切り裂こうと。
「キャウンッッ」
「あ」
間一髪だった。
助けてくれたのは、ダンだった。
「間に合ったか」
「あ、、、ありがとう」
「いや、気にするな」
サボーは遠くから舌打ちをしているように感じた。
「おい、サボー。あいつはお前の相手だったろ?」
「悪いな、予想外にも攻撃を受けちまったせいで、一匹取り逃がしちまったぜ」
「アイン。それにエメ。すまなかったな、今度からは俺も注意深くみている」
「あ、ああ、頼む」




