005_冒険者ギルド
本当に前世はひどかった。
いじめにつぐ、いじめ。
信用していた人の裏切り。
聞くに堪えない、言うに耐えない人生だ。
挙げ句の果てに最後は一人虚しく病院で死亡…か。
そして気付いた時にはこの世界にいた。
赤ん坊の姿でだ。
父と母らしき人物は一生懸命、俺を育ててくれた。
それこそ最初は異世界ひゃっほーを期待していたんだが、この人達に育てられているとそんな気分失せ始めていた。
けど、前世の不幸は続くのか、気付けば帝国の連中が俺の大事な物を奪っていきやがった。
そして流れ着いた果てて、あのジジイ、ゼペットと出会った。
俺はゼペットとたくさん話をした。
自分が転生者である事。
帝国を恨んでいる事。
俺は自分がゴーレム錬成士だという事は知っていた。
そして偶然出会った、このジジイも同じゴーレム錬成士だと言う事を。
だから師事を仰いだが、あいつは条件があると言った。
俺の記憶の一時封印。
その憎しみを持ったまま教えたくないとあいつは言った。
俺が無事にこの街の学校を卒業したら、その時に記憶を返すと。
まさか、それが終わる前に死ぬとは。
だがアインの時に教わった知識はある。
ゼペットの持ってる全てではなかったが。
俺は手に持った本を再び開く。
【魔導書型ゴーレム、起動を確認。マスターを承認。マスター情報を収集。登録完了。ようこそ、アイン様】
な、何だこれは。
俺の脳内でメッセージが聞こえる。
【マスターの命令を確認。魔導書型ゴーレムの情報を開示します。魔導書型ゴーレム。情報収集を目的とした自律型ゴーレム】
魔導書型ゴーレム?
この本はゴーレムだというのか?
【Yes】
情報の収集の目的は何だ?
【目的は不明。マスターの目的設定が必須。活用方法としては、他ゴーレム生成時に当魔導書型ゴーレムの情報が活かされます】
他ゴーレム?
これ以外にも本のゴーレムが作れるのか?
【Yes。収集済みの情報としては、鍛治スキルLv3などが使用可能】
まさか、武器や防具型のゴーレムが作れるのか!?
【Yes】
すごい、すごいぞ、これは!?
ぽんぽんっ
「エメ?俺は大丈夫だ」
「待ってろ、エメ。そのうち、ボディを作り変えてやる。立派な、しかも喋舌れるように」
ありがとうと言ってるように首を縦にふった。
俺は自身のステータスを確認する。
【ステータス】
名前:アイン
年齢:14歳
職業:ゴーレム錬成士
Lv:1
HP:23/23
MP:13/13
力:5
体力:4
早さ:7
魔力:9
運:3
【装備】
魔導書型ゴーレム[記録収集スキル]
布のローブ
革の靴
【スキル】
『真眼』
[ゴーレム錬成Lv5]
├遠隔操作
└命令付与
やはり、レベルは上がっていないか。
アインの状態じゃ、戦うなんて無理だよな。
昔、俺自身が戦いの才能がなさすぎて強くなろうというのは諦めていたが…。
それに記憶が封印されてから2年経っていたのか。
帝国に復讐する為には力をつけなければ…!!
「本日はどのようなご用件で?」
「あーっと、冒険者の登録を頼む」
俺は自身とエメを指してそう受付嬢に伝える。
「あなたとその人形でしょうか?」
「ああ、可能か?」
「そう…ですね。前例はございませんが、やってみましょう」
話の通じる受付嬢で助かった。
「では、こちらの石に魔力を通して下さい」
俺は言われた通りに指定された石に魔力を通す。
「登録完了ですね。えーっと、アイン様でいらっしゃいますね」
「ああ、そうだ」
魔力を通じて俺の情報が伝わったようだ。
「それでは、そちらのお人形の方、お願いします」
エメは受付嬢に言われるまま、石に魔力を通す。
「まさか!?成功するなんて…。一応登録完了ですね…。エメ様でよろしいでしょうか?」
エメは静かに首を縦に振る。
一か八かだったが、まさかゴーレムが冒険者として登録出来るなんて。
きっとあの石に魔力を通す事で、冒険者としての認証を行っているんだろう。
ある意味、自発的に魔力を発するなんて事はエメにしか出来ないだろう。
俺が他のゴーレムを作っても同じようには行かないな。
「それではお二人合わせて、銀貨6枚になります」
「すまないが、金貨からの支払いになるが大丈夫か?」
「ええ、大丈夫ですよ」
俺はジジイの見舞金としてどこそこの男爵よりもらった金貨を取り出す。
「それではお二人の登録料を引いた銀貨94枚でお渡ししますね」
俺とエメの冒険者登録は無事に完了した。
俺はともかくエメが登録出来るかは一か八かだった。
「お、おい、あいつって、例のゴーレム使いの孫か?」
「あ、ああ、確かゼペットっていう爺さんの孫だった…」
周りがガヤガヤと騒ぎ立てるが気にしない。
「登録完了致しましたが何かクエストは紹介致しましょうか?」
「まだ戦いには不慣れなんだ。荷物持ちなどの同行クエストはあるか?」
「えぇっと、そうですね。ありました、明日の朝に出立する討伐クエストの同行ですね」
「それで頼む」
俺とエメは早速、クエストを紹介してもらった。
内容はただの荷物持ちだ。
高ランククエストの荷物持ちをするだけの仕事だ。
「エメ、ここから俺たちの復讐が始まる…。俺は俺の大事な物を踏み躙った連中を許しはしない。もし、俺が危なくなったらすぐに逃げろよ?」
うん、分かった。
と、言うようにエメは返事を返してくれた。




