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007_立ち上がる為に

あれからもサボーやリルハからの嫌がらせは続いた。

ダンもタージュも気付いているが、一々相手するのが面倒なのかあまり言わなくなってきていた。

さすがにシャドウウルフの襲撃の時の、死の危険に迫るような嫌がらせはなくなったが。


野営の時もひどかった。

準備が下手くそだと、サボーに怒鳴られ、わずかな飯はリルハによってわざと地面へと捨てられたりもした。


だが、無事にシルバーウルフを発見する事が出来た。


これでやっと帰れる。


「何とかなったな」

「久しぶりだったからよ、ちょっとヒヤヒヤしたぜ」

「こうしてみるとモフモフで愛くるしくあるんだけど、生きてる時は駄目ねぇ」

「血の匂いにつられて、他のモンスターが集まっても厄介だ。さっさと解体して去るぞ」


シルバーウルフはCランクモンスターだ。

シャドウウルフのリーダー格が進化すると言われている。

体長はゆうに3mを超える大きなモンスターだ。


『風の手』は戦い慣れているのか、見事な連携でシルバーウルフを討伐する事が出来た。


「おい、荷物持ち!こいつも持て!」

「あ、ああ!」

やはり大物だけある、かなりの素材数だ。

さすがにアイテム袋をもっていないとキツい。


「さぁ、街に戻るぞ」


帰りの道中は行きよりも辛かった。

大量の素材を持ち歩いてたのも有り、あいつらの嫌がらせも止まらない。


「ふぅふぅ、やっと…、街が見えた…!」

「ああ、着いたな、ウィレームに。さてアイン、素材を渡してくれるか?」

「ああ」

精神的にも肉体的にもしんどいクエストだった。

ある意味、そのおかげか少し筋肉が着いたかも。

今回のクエストを踏まえて、俺は強くなる。


「よし、じゃあ俺のアイテムボックスへと収納する。あとは分かってるな、サボー、リルハ?」

「え?」

「悪いな、アイン。俺とタージュはクエストの報告に行ってくるから待っててくれ?」

「どういう事だ?」


俺はダンの後を追おうとするが、サボーとリルハが立ち塞がる。


「プププッ、もう駄目!アーッハッハッハッハ」

「ホント、間抜けなガキだぜ」

「どういう事だ!?」

「こういう事さ!」

サボーが剣を抜くと、俺へ向け振り下ろす。


「クッ」



ガンッ



「ちっ、またこのクソゴーレムかよ」


エメが俺を守ってくれる。

だが、サボーの強烈な一撃だ。

今ので腕が取れてしまう。


「アハハ、おもしろ~い!ねぇねぇ、サボー。今度は足を壊してよ!」

「へっ、そのつもりだよ!」


ガンッ


「エメ!!」


足を壊され胴体が地面へと倒れこむ。

それでも俺を守ろうと必死に動こうとする。


「おもしろ~い!こうやればいいかな?どう?どう!?」


倒れたエメに対して、リルハはブーツでガンガンと踏みつける。

エメの素材であるガラクタのブリキはバキバキと音を立てて一枚一枚取れていく。


「おい、クソガキ。お前が金持ってるの知ってるんだ、出せよ!?」

「エメに触るな、ババア!!」

「はぁ!?誰がババアだって?」


リルハのキックが俺の腹へと命中する。


「ぐっ」

「ちっ、大人しくしろよな!おっと…、こいつが怪しいな」


俺の腰から金貨の入った袋を取られる。


「おおお!思ったより、金貨が入ってやがる。へへへ、さすが男爵の見舞金だ」

「見して、見して!わぁ~、すご~い!」


くそ、迂闊だった。

全部仕組まれてたんだ。

俺がジジイの見舞金を持ってる事を知ってて、あいつらは俺の同行を許したんだ。


「最初はお前をぶっ殺して、金もらってお終いだったんだけどな。以外にも根性だけはあるみたいだから、奴隷として売り払う事に決めたぜ」

「ねー!もっと泣き喚くかと思ったんだけど、思ったより根性あるよねぇ、キミ!」

「ククク、安心しろよ、奴隷になれば命だけは助かる。命だけはな!」

「プププッ、あの変態貴族に可愛がられるよ!本当に頭の狂った趣味を持ってるからね、キミみたいな根性のある子は大好物だよ!」


くそ、くそ、くそ!


俺はエメを見る。

僅かだが、動いている。

そしてリルハによって、剥がされたブリキの装甲からコアである魔石が見えている。

俺はあいつらの隙をついて、エメの元に近寄る。


「こんな状況になっても、そのお人形さんが大事なの!?あなたも相当、頭おかしいよね?」

「ククク、ここまでの大馬鹿は初めてだ。いやー、いい仕事もさせてもらったし、ダンのおかげだ」


気づかれないよう、エメの胴体に手を伸ばし魔石を取り出す。

ごめん、エメ。

必ず元に戻すからな。

ポケットに入れてあった、シャドウウルフの魔石を取り出す。


ゆっくりと魔力を通し、ゴーレムの核を錬成する。

エメだったブリキたちの真ん中に核を置く。


「”emeth"」

「は?」

「もしかして、最後の悪あがき!?」


強烈な光の後、一体のゴーレムが誕生する。


「これがゴーレム錬成か!?」

「でもでもぉ、出てきたのはさっきと違う人形じゃない。こんなポンコツに何が出来るの?」


良かった、やつらは油断している。

魔道書ゴーレムによって、こいつにはエメにはない力を付与している。

チャンスは一度のみだ。

魔石のランク的にも、胴体の素材もきっとその一回で崩壊してしまう。


「頼むぞ!」


俺の号令と共に、そのゴーレムは動き出す。

そして俺は全力で逃げ出す。


「くそ、おい、待ちやがれ!!」

「逃さないわよぉーー!」


ブリキゴーレムはサボーとリルハに立ち塞がると、手をかざす。


「何をする気なのよ!?」

「ただのガラクタのコケオドシだ!」


ブリキゴーレムに魔力が集まる。


「魔力?まさか、何かする気なのぉ!?」

「くそ、あのガキ!!」


ブリキゴーレムの手から風の魔法が放たれる。


「ウィンドカッター!?」

「くっ、うおおお」




「はぁはぁ、何とか逃げ切ったな。よし、後は街に戻って冒険者ギルドへと報告だ」


『風の手』に見つからないように来た時とは別の入り口から街へと入る。

そして警戒しながら、冒険者ギルドへと入る。


よし、ダン達はいないな。


「あら、お帰りなさい」


受付嬢は俺に気付くと声をかけてくれた。


「ダン、いや『風の手』にはめられた!エメは壊されるし、俺の金貨も奪われた!?」

「え…、『風の手』がですか?」

「そうだ!」

「んー…とはいえ、証拠がないと彼らを裁く事は出来ません。具体的にはどういう状況だったんです?」

「街の近くへと戻ってきた時に、ダンとタージュだけ先に戻って、サボーとリルハが俺を捕まえようとしたんだ」

「あれ…、『風の手』は二人組ですよ?ダン様とタージュ様のお二人組ですよ」

「え…、なんだって」


サボーとリルハはいない…?

どういう事だ?


「ふぅ。アインさんはまだ冒険者になりたてです。今回は不問としますから、どうぞお帰りください」

「え、どういう事だ?」

「つまり、『風の手』からはクエスト達成の報告を受けています。同行していたアインさんはお金をなくされ、不運にもゴーレムを失った。失望のあまり勝手にパーティを抜け、失踪したと聞かされてます」

「おい、嘘だろ?それを信じるのか?」

「信じる、信じないよりも冒険者としての信頼ですよ。彼ら『風の手』はウィレームの街はもちろん冒険者ギルドへの貢献してもらっています。それに比べて、アインさんは先日の帝国への襲撃でショックが強く、ご自身でも何をするか分からないのでは?」


くそ、くそ、くそ!

こんな事があっていいのか!?


「そういう事ですので、もうお帰りください」

「くそっ!」


俺は勢いのまま、冒険者ギルドを飛び出す。

家へと戻り、ジジイの工房へと入る。


「エメ…」


まだエメの核からは魔力を感じる。

まだいるのだ、彼女は。


「必ず強くなる。そして…」


俺は昂ぶった気持ちを落ち着ける。

静かに瞼を開く。


「必ず復讐を遂げる。帝国もあいつらも。ただ殺すだけじゃない。絶望を味わせて、最後に這いつくばって死を懇願するまで苦痛を与えてやる」

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