051_勝利
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
「行けぇぇ!今日こそ、突破するのだ!!」
「「「おおぉーー!!」」」
防衛戦が開始され2日目、未だ反乱軍は前線を押し上げるに至らなかった。
それどころか度重なる、撤退によりその兵力は徐々に失っていた。
今や、その数は4割は減らされていた。
「己ぇぇ!一体誰の軍だと言うのだ!グレイ達、3軍と2軍は演習で南にいるはずなのに」
「ソフィア殿下の第4軍なのでは?」
「そんな訳は…!彼女の軍は、正式に軍として認められてないのだぞ!それなのにこの数はあり得ない…。それにこんな強い兵士達などかつてのガリランドでの決戦でも見た事はなかった」
「では一体…」
「うわぁぁぁーーー!」
「こ、今度は何事か!?」
「岩です!巨大な岩が頭上から降ってきています!」
「投石機だと!?一体奴らは、何人兵がいると言うのだ!!」
「こ、こうですか」
「…はい、ここにきっちりと載せて下さい」
「クロエさーん、次の岩を持ってきました!」
「…ご苦労様です。そちらに並べて下さい」
「おお、軽々と持ち上げるなんて!!」
「…えっと、それはこの鎖が。私自身は非力です」
「助かります、クロエ殿」
「…いえ、ご主人様がこの投石機を用意して下さったので」
「上手く行ってれば、そろそろソフィア様も来られる頃かと。昨日は反乱兵に紛れての奇襲と、さすがに彼らも警戒が高まってきましたので、撹乱も困難になってきましたからな」
「…えっと、ご主人様がいるから負ける事はないと思います」
「そうなのだが、我らの務めは足止め。あくまでもソフィア様が鎮めて頂かないと」
「…その辺はご主人様もよく分かってるかと。意外と几帳面な方なので」
「クロエさん、準備出来ました!」
「…はーい。じゃあ発射しましょうか」
「ほ、ホントに俺たち戦えるんだよな?」
「ああ、この戦が上手くいけば正式な徴用も許されるかもしれないんだ」
「けどよ、これが罠とかで俺たちを皆殺しにするとかはないよな?」
「ははは、お前は小心者だな。俺たちの大将はあの『姫将軍』だぞ。それこそ約束を違えてたなんて事になったら市民の反感を買うに決まってる」
「今回の戦、敵兵が10,000もいると聞いてるぞ。俺たちはその半分の5,000程しかいないんだ。そもそもがこの戦い、厳しいんじゃないか」
「何、弱気になってるんだ!俺たちですら、その日の食い扶持に困ってるんだ。こうして戦う機会を貰えただけでもありがてぇ!」
「そうだ、こうやって戦いに出れば食事には有り付ける。そして戦に勝てば、正式な徴用の道が開けるんだ」
ソフィアが率いる第4軍は、反乱軍を鎮めるべく北進していた。
「随分と兵の士気が高いですね。さすがは『姫将軍』と呼ばれただけはありますな、ソフィア殿下」
「そう煽てるな、クルス。これはまたとない機会なのだ。兵達も分かっているのだ」
「しかし10,000の反乱軍とは。これでは他国との戦争と変わりませんね。それに比べ我らの数はその半数。此度の戦、勝ち戦とし今後の地位を確立したいとこですが上手く行くのでしょうか」
「私は信じているよ。それがアインとの約束だからな」
「彼ですか。まさか初めて会った時には、このような運命になるとは思ってもいませんでした。今更になって、恐ろしくもあります」
「私もだよ。だが、たまに麻痺しているのを感じるよ。アインの放つ鈍い輝きに全てを委ねたくなる。彼はそういう男なのだ」
「姫様…。いえ、何も言いますまい。叔父であるアーノルドも、姫様に忠誠を誓ったのです。全ては貴女の御心のままに」
「殿下!斥候が戻って参りました!」
「戦況は!?アーノルドは、アイン達は無事か?」
「ディータ殿下、戻りました!」
「どうであった?」
「はっ、それがあの黒い兵団は変わらず防衛線を維持しております。もうこれで三日。彼奴等は一度たりも休む事なく立ち尽くしております」
「信じられんな…。例え士気の高い兵と言えど、三日だぞ。常に立ち尽くし、警戒し続けるなど不可能じゃないのか」
「はっ、我等も驚いております…。そのような兵がいるとは。猟兵かと思っていたのですが、金の為とはあそこまで忠実に任務をこなすなどとは思えず…」
「くっ、だがいかな兵と言えど永遠とあの場を死守するのは難しいであろう。明日こそは、戦線を突破し帝都へと攻め込むのだ!」
「しかし、殿下。転進は考えられませんか?度重なる撤退、そしてあの黒い兵団。我が兵の士気はかなり下がっております。今宵も逃げ出す者がいた始末」
「そうなれば、帝都へ着くのに更に数日を要するぞ。さすがにグレイ達、他の軍も到着してしまう。数を集めたとはいえ、そうなってしまえば勝機はなくなってしまうぞ」
「そ、そうですが…」
「明日だ、明日決着をつける!兵達にもそう伝えよ!」
「はっ!」
翌日。
ディータ率いる反乱軍は再度、防衛線の突破をしようとしていた。
「あの黒い兵士達は変わらずか!?ちっ、我が兵達はまだ前線を突破出来ぬのか!」
「はっ、依然と防衛線を守っています」
「己!我らも出るぞ!」
「殿下、まだ突破口も見つかっておりませんぞ!無謀です!」
「構わん!我らは何としてでも皇帝を討ち取るのだ!兵達よ、私についてこい!必ずこの試練を乗り越えるのだ!!」
「「「おおぉーー!!」」」
ディータ達は、精鋭を引き連れ黒い兵士達が守る防衛線まで接近する。
気を伺い、突破する手立てを模索するがピクリとも動かぬ黒い兵士に困惑を隠せないでいた。
「死屍累々とは…。あやつらが黒い兵士。私達が近づいてるのに全く反応しないとは」
「本当に人間なのか…。敵が来れば勝手に倒すなどと、まるで機のようだ」
「い、行くぞ!ここで必ず、道を開けてみせる!続けーー!!」
「ディータ殿下に続くのだ!我らが殿下をお守りする!」
意を決して、ディータ達は黒い兵士達に突撃を開始する。
勇ましい言葉をかけつつも、その表情には絶望が溢れていた。
「み、見よ!突破口が!」
「な、何故今になって!いけません、ディータ殿下!罠です!」
「ええい、構わぬ!行け、行けぇぇ!!」
突如として、黒い兵士達は道を開けた。
今まで決して動かぬ事のなかった黒い兵団は中央に道を作った。
それを好機と見たディータ殿下はそこに兵士達を集中させる。
「ははは、そうだ、私の覇に道を開けたのだ!」
「ディータ殿下が突破口を開いたぞ!!」
「続け、続けぇぇ!これを抜ければ、皇帝の首はすぐぞ!」
黒い兵士達など無かったかのように、近づかぬように次々に反乱軍は中央を抜け始める。
この転機に、反乱軍達は立ち上がった時のように快進撃となりこのまま帝都へと思っていた。
だが、それは長く続かなかった。
「敵襲ーーー!!」
「行けぇぇ、反乱軍を鎮めるのだ!!」
ソフィア達、第4軍がゴーレム達の守る防衛線から飛び出してくる。
抜けたと思った反乱軍の一部はすでに包囲され、殲滅されてしまっていた。
「ソフィア様、我らは作戦通りに左翼から包囲致します!」
「頼む、アーノルド!連戦で疲れてるとはいえ、後少しだ」
「いえ、彼の…。アインのおかげでかなりの反乱兵を減らせました」
「私も驚いているよ。流れは私達にある。勝利を持って、帝都へ凱旋しようじゃないか!」
「はっ!」
「クルス、右翼は頼むぞ!」
「分かりました、ソフィア殿下!」
ソフィア達は中央を抜け、反乱軍を一気に中から瓦解させる。
アーノルドとクルスは左右から展開し、反乱軍を包囲していく。
連敗で疲労と士気の低下した反乱軍が敗けるのは目に見えていた。
反乱軍を率いていたディータも指揮官達も、奮戦するが心の折れた将兵では兵達を纏め上げることも敵わず次々と拿捕されていく。
こうして、帝国を倒さんと立ち上がった旧ガリランドの反乱軍は僅か数日で壊滅させられてしまった。




