050_転機
ついに50話…!!
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
帝国城の一室。
今ここでは、定期的に行われる軍議の真っ最中だった。
とはいえ今帝国の主力とも呼べる二つの軍のトップが不在だった。
第一皇子ヘンリー。
そして軍の演習の為、欠席した第二皇子グレイ。
普段から大した事ないといった態度である皇帝だが、今日の軍議はいつも以上に退屈そうであった。
「次の議題ですが…」
「失礼します!陛下に至急ご報告申し上げます!旧ガリランド領が反乱!現在、反乱軍は帝都へ向け南進中です!その数10,000!」
「ほう、反乱か」
「反乱だと!!一体、どういう事か!」
「はっ、我々も突然の事で現在調査中でして。ただ反乱軍の多くは難民の模様!」
「ば、馬鹿な…、まさか反乱が起きるとは」
「どうした、テオドア卿。顔色が悪いぞ」
「い、いえ、陛下」
「しかし反乱か、ヘンリーもグレイもいない機を狙ったか。10,000となれば帝都で仕留めたとて損害は免れぬな」
「陛下、進言を!」
「どうした、ソフィア?発言を許す」
「この軍議でも報告申し上げるところでした。我が兵のいくつかを旧ガリランド領付近にて展開中。数は少ないですが、足止めにはなるかと思います」
「ほう、捨て駒にするという事か?」
「いえ!第4軍の予備軍人にも急ぎ召集をかけております。許可を頂ければ今すぐにでも出立します!」
「なるほど、ごっこ遊びをしていた訳ではないと」
「へ、陛下、彼らは軍人と呼べぬ者達ですぞ!そんな彼奴等を軍として派遣などと!」
「父上、テオドア卿の言う事も一理あります。形だけでも認めたのに、もし軍人として動かしたなどと事実が残れば難民がつけあがるのは目に見えているかと」
「その辺はぬかりなく!彼らとて軍人、私の名を持って規律を守らせます!」
「そんなの詭弁ではないか!」
「ふん、シルビア、テオドア卿。なら、お主らがこの事態を何とする?帝都まで来れば余が自ら打って出よう。だがそうなれば、帝都のいや貴族達は何と申すかな?」
「ぐっ…、それは」
「ソフィアよ、直ちに出立せよ。そして反乱軍など鎮めてくるのだ」
「はっ!」
シルビアとテオドアは、額から出る汗が滲み出ていた。
まさか本当にこのような事態になるとは、彼女らはそう心の中で絶句していたに違いない。
攫われた王国の留学生もまだ見つかっておらず、彼らはその焦りを抑えられずにいた。
「10,000だと!…この数はさすがに想像していなかった。この差では我らでは時間稼ぎにはなるまい」
「それも織込み済みだから俺がいるんだろう。何の為のゴーレムだと思ってるんだ」
「貴様ならどうにか出来ると言いたげだな」
「どうにか出来るからここにいるんだ」
俺はゴーレムの召喚を開始する。
「…えっと、ご主人様。魔力ポーションはこちらに置いて置きますね」
「ああ、ありがとう」
「な、何だこの数は!?貴様、一体いくつのゴーレムを出す気だ!」
「2,000くらいにしておく。倍は製造してあるが、あまりに一方的だとソフィアが来る前に敵が逃げてしまうだろう。ソフィアが鎮圧したと言う筋書きは守るさ」
「2,000!!誠か!し、しかし貴様一人でこれだけの数を」
「ああ、そうだ」
「たった一人でこれだけ多くのゴーレムを。伝説とは侮れないな」
「何か作戦はあるのか?」
「作戦か…、我々だけならと諦めていたが何とかなるかもしれん。アインよ、ゴーレムはどの位の強さだ?」
「騎士など相手にならないさ。本気を出せば、10,000といえど殲滅する事も可能さ」
「ぐっ、そこまでなのか。しかし我らの任務は時間稼ぎだ。アイン、敵軍の中央に構えるように配置してくれ。我らは敵を撹乱させる」
「そんなんでいいのか?」
「ああ、我らとてできる事はある。本来は騎馬があればいいのだが、そうも言ってられないだろう。4軍よ、移動する!私についてこい!」
「「「はっ!」」」
アーノルドはそういうと軍を引き連れ、先を進む。
軍と言っても僅か100名程だが。
俺は旧ガリランド領の国境だった場所に陣を構えている。
小高い丘の上、そこから反乱軍が一望できた。
まだ距離はあるものの、その数が陣乗じゃないという事は軍人でもない俺でも分かった。
エメとロザミアは帝都で待機してもらっている。
元老院やレジスタンスが妙な動きをしないか見張りも兼ねている。
「皆、進むのだ!!我らが怨敵は、帝都に鎮座する皇帝!必ず我らの手で打ち取り、自由を掴み取るのだ!!」
「「「おおーー!!」」」
10,000もの大群を引き連れ、反乱軍は南進する。
いざ皇帝を倒さんとその足取りは勇ましい。
そして反乱軍を率いるのは、旧ガリランド王の末子・ディータ王子だ。
「と、止まれぇぇーー!!」
突然、怒声が聞こえる。
声を上げたのは指揮官を任じられた人物の一人。
「おいおい、何で止まるんだ」
「帝都はまだだろう!」
「ふざけんな、早く皇帝をぶっ殺してぇのに!」
反乱軍の中から不満の声が多数が上がる。
軍と言ってもその多くは難民。
軍人として鍛えられてはいない者には規律などとは到底遠いのだ。
「おい、何だあれは!?」
「敵なのか!」
「て、敵だって!?嘘だろ!?」
前方にいる者が騒ぎ出す。
それは徐々に感染し、大きくなっていく。
反乱軍の正面には敵が横一列に並び待ち構えている。
その様相は黒い甲冑を来た重装兵にも思える。
「あんな鎧を着けた兵士なんて見た事ないぞ。帝国の兵士なのか」
「落ち着け!!所詮はあんなものは飾り!貴族の道楽にて、塗り固められた化粧の鎧である!そんなもので我らの意思が挫けるか!進め、進めぇぇーー!!」
「ああ、そうだな、あんな奴らに負けるわけないよな!」
「ふん、貴族共め!俺ら民の気持ちなんて考えた事あるのか!あんなもんに負けねぇ!」
「そうだそうだ!俺らがどんだけ虐げられたか!踏みにじられ、奪われ続けた分取り返してやるんだ!」
「「「おおぉーー!!」」」
反乱軍は一斉に、突如現れた黒い兵団に向かい突撃する。
「負けるかぁ、ちくしょう!…あれ」
「ふざけんなぁぁぁ!ぐ、ぐあああぁぁ。や、やめろ、やめろー!」
「い、いてぇ、いてぇよ!」
「防衛線を死守せよ。突破させぬ」
「マスターからの命令を遂行」
「警告警告。敵性を確認、迎撃開始」
黒い兵団は主人より与えられた命令を実行する。
彼らにより守られた防衛線を守り続ける。
反乱軍がいかに近づこうとも、彼らは機械的に反乱軍を倒していくのみだった。
「な、何が起きてる!何故、前線は進まんのだ!数はこちらの方が多いのだぞ!」
「ディータ殿下、敵の練度が優れており我々では太刀打ち出来ません!突破は難しいかと!」
「くっ、そんな馬鹿な!我らとてこの日の為に訓練はしたのだぞ!な、何だこの煙は?どこから立ち込めてるのだ!?」
「ひ、火の手が!」
どこかからか、煙がもうもう立ち込め始めた。
火の手は強くないがその煙は反乱軍を包み込むように、彼らの視界を奪っていく。
「くっ、前線はどうなっている!消火はまだなのか!?」
「うわぁぁぁ!」
「て、敵襲ーー!?」
「や、やめろぉぉ!」
「敵だと!?一体どこから!そうか、この煙か!」
「殿下、一体おひきを!敵の数が不明な上、このままでは数を減らされます!」
「撤退だと!こんな所でか!?我らには兵站も少ないのだぞ!」
「英断をお願いします!大義は我らにあります、機を見てここを突破するべきかと!」
「我が父の無念…。良かろう、一時下がる!兵達にも指示を出せ!」
「はっ!」
「…えっと、何だか一方的でしたね」
「ああ、そうだな。と言っても俺はほとんど何もしてないんだけど。あの煙はアーノルド達がやったんだろう」
「…みんな混乱してましたね。慌てふためく姿は、まるで蟻のようでした」
「こういうのには、アーノルド達は慣れている。軍も人間の集まりなんだ、一人が混乱すればそれが伝染する。特に軍人じゃない彼らはまさにパニックだったんだろうな。まぁ、こうやって時間を稼げばいいさ。それが俺のやる事だから」
「…皆さんが戻られる前に、食事の準備を始めます」




