045_資格者
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
「っ痛ててて」
「ここは一体どこでしょう?」
「どこだ、ここは?俺たち、さっきまで石の塔にいたはずじゃ。というかみんなは!?」
目覚めた場所は明らかに先程までいた塔の頂上ではなかった。
それにクロエ、ロザミア、マスラオの姿が消えていた。
「もしかして俺達が移動したって事か?」
「そう…なるんでしょうね。明らかに今までいた場所と違います。でも外の風景が何だかぼんやりしてませんか?」
「言われてみればそうだな。見慣れない風景だが、ぼんやりしてるというか虚ろな雰囲気だ」
どうにか元の場所に戻れないかと周りを見渡す。
「資格者なんダナ?」
「資格者なんダゾ」
ふと声が聞こえる。
「誰だ!?」
「誰?お前こそ誰なんダナ?」
「は?アインだ。いいから姿を現せ!」
「もうお前は見えてるんダゾ」
「見えてるだと?」
前にあるのは大きな石像だ。
まさかこれが…。
「やっと気づいたんダナ」
「石像が喋ってる?」
「良く来たんダゾ、資格者よ」
「資格者?何だ、それは?」
「我らが主、セラフィス様より授かった使命。資格者よ、その力を示すんダゾ」
「何を言っている。セラフィスとは何だ?ダンジョンの異変を起こしてたのはお前達か?」
「ダンジョン。懐かしいんダナ」
「時は来たんダゾ。セラフィス様が残した悲願。それを成し遂げられるかどうかお前にかかってるんダゾ」
「やっぱりダンジョンの異変はお前達だったんだな。この異変を止めろ。そうすればモンスターでもお前達を見逃してやる」
「オラ達はモンスターじゃないんダナ」
「我らの使命は資格者の覚醒を確認する事なんダゾ」
「セラフィス様に言われたのがついこの間だったような気がしてるんダナ」
「我らが眠りにつかされて500年は経ってるんダゾ」
「500年も経ってるんダナ!?気づかなかったんダナ。じゃあ、セラフィス様の言う通り魔王が産まれたんダナ?」
「うむ、そしてまた資格者も現れたんダゾ。まさに悲願が成されるかもしれないんダゾ」
「おいおい、一体何の話を。そもそも魔王と言ったのか?この世界に魔王がいたのか…」
「魔王と言っても、今の神の…」
「喋りすぎなんダゾ。すまぬ、資格者よ。ダンジョンのいくつかは我が主セラフィス様により作られたんダゾ。目的は資格者をここに導き、その覚醒を確認する為なんダゾ。ここは世界の大陸の果て、魔族が住む場所。我らを倒せば元の場所に戻れると宣言するのダゾ」
「魔族?大陸の果て?そうか…つまりそんな危ない場所とダンジョンが繋がったせいでモンスターがダンジョンに溢れてしまったのか」
「ぐぬ、そんな事になってたんダゾ。セラフィス様は分かってて、こんな所に試験場を」
「バレたら、ユウマが怒るんダナ」
「し、しかし500年経ってるんダゾ。例え、かつての…いかんいかん喋りすぎなんダゾ」
「マスター、何だか彼らは聞いてもない事をペラペラと話してくれますね」
「ああ、その例のセラフィスとか言う訳分からん奴のせいで俺たちはここへ転移させられ、ダンジョンも異変が起きたって事は分かった」
「ともかく迷惑極まりないですね、そのセラフィスとかいうのは」
「コラ、セラフィス様の悪口を言うななんダナ!セラフィス様はそれはそれは優しくて可愛い方だったんダナ!」
「うむ、セラフィス様は聡明で美しかったんダゾ。少し胸が小さいのを気にしてたけど、関係ないんダゾ」
「その、お前らのセラフィス愛は分かったから、早く元の場所に戻りたいんだが」
「ゴホン、じゃあ試験を始めるんダゾ」
目の前の石像は音を立てながら、崩れ去った。
土煙から現れたのは二つの人影。
「に、人間?」
「まさか彼らが先程の石像の?」
「違うんダナ。我ら兄弟はマスターセラフィスにより作られたゴーレム」
「今代のゴーレム錬成士よ。その力、覚醒を確かめさせてもらうんダゾ」
「ゴーレムだと!?いや、だかまさに人間のような。まさか、完成した生体ゴーレムなのか?」
「あ、あれもゴーレム。凄い…人間みたいな」
エメは生体ゴーレムを興味深そうに見ていた。
やはり気になるのか…。
「エメ、戦いに集中しよう。後からあいつらを調べればいい」
俺は怖かった。
エメの正体が何なのか。
生体ゴーレムの研究は隠れるように行っていた。
倫理がどうという話ではない。
エメがそれを知ったら、どうしたいのか。
いつかはエメにも人と同じような体を望んでいたが、明らかにエメは他のゴーレムとは違う。
パラケルスと会ってから、よりエメの中に魂を感じていた。
エメは俺のゴーレムだが、その中にある魂は誰のなんだ?
その魂は何故、俺のゴーレムに入ってるんだ。
ゴーレムだから、俺の話を聴き俺と共に行動してくれているのか。
エメの中にある魂はそれを望んでいないとしたら。
もしそれが人間と変わらぬ姿を取ったなら、エメは俺から離れてしまうのか。
気づかないように考えないようにしていたが、俺はその事を恐れている。
「マスター!?」
エメの声でふと我に返る。
「油断しすぎなんダナ、資格者?」
「くっ!魔壁!!」
目の前には敵ゴーレム一体が殴りかかって来ていた。
拳には魔力を込め、振り下ろされる寸前を魔壁で防ぐ。
「くそ!」
「大丈夫ですか、マスター?」
「ああ、油断した」
妙な違和感を感じていた。
戦わなきゃと意識を、敵ゴーレムに向けるのだがいまいち集中出来ていない。
「試験は始まってるんダゾ、資格者。本気になるといいんダゾ」
「ちっ、分かってるさ!」
魔力を集め、ゴーレム召喚を行う。
だが。
「言い忘れたんダゾ。ここにはゴーレムの数に制限を入れさせてもらってるんダゾ。正確には人型ゴーレムなんダゾ。我と弟、そしてそこのゴーレムで三体。召喚出来るのはあと一体までなんダゾ」
「ちっ、厄介な…しかしどうやってそんな結界を」
「覚えておくといいんダナ。世界にはそういう事も出来る敵がいるんダナと」
「忠告のつもりか。いいだろう、望み通り一体だけで相手してやるよ!」
試験というだけあって、俺の召喚をわざわざ待ってくれてるようだ。
先程のベヒモスで高性能のゴーレムを使ったのは痛かった。
損傷が軽い物を召喚する。
「ボロボロなんダナ、そいつ。部分錬成してやるのを待ってやるんダナ」
「部分錬成…?」
「まさかこいつ、それも知らないんダゾ。うぅむ、困ったんダゾ」
「セラフィス様に言われたのは、ここに来たらぶっ飛ばせだったんダナ」
「そうだったんダゾ。セラフィス様はもしご自身の転生体であっても倒せと言ってたんダゾ」
まだ奴らがお喋りしている隙に[鑑定]を発動する。
【ステータス】
試作特級攻撃型鉄機兵 甲型
年齢:354歳
ランク:--
HP:1987/1987
MP:403/403
力:1762
体力:1321
早さ:456
魔力:589
運:33
【スキル】
[スキル共有][風魔法スキル 8][火魔法スキル 8][魔壁スキル][剛力スキル][鉄壁スキル][強魔スキル][加速スキル][自動HP回復スキル][自動MP回復スキル]
【ステータス】
試作特級攻撃型鉄機兵 乙型
年齢:354歳
ランク:--
HP:1623/1623
MP:1096/1096
力:598
体力:467
早さ:1125
魔力:1322
運:33
【スキル】
[スキル共有][水魔法スキル 8][土魔法スキル 8][魔壁スキル][強力スキル][強固スキル][天魔スキル][韋駄天スキル][自動HP回復スキル][自動MP回復スキル]
「[鑑定]されたんダナ」
「その瞳はセラフィス様と同じなんダゾ。むぅ、判断つかない奴なんダゾ」
奴らは再び攻撃を仕掛けようと接近してくる。
「マスター!私は一体を相手にします」
「ああ、こっちは任せろ。試験か知らんが倒せば一緒だ。いつも通りに行くぞ!」
エメは一体を引きつけ、戦いを開始する。
「やるんダナ、でもこれはどうなんダナ。アクアストリーム!」
「魔法ですか」
乙型の放った水の豪流がエメに向かい真っ直ぐに伸びてくる。
エメは軌道から逃れるように横へと駆け出すが、向きを変え迫ってくる。
「今度はこちらから行きます」
「そんなボロボロゴーレムでどうするんダゾ」
「自信があるな。俺が[鑑定]したのを忘れたのか?」
「我らのステータスを見たからと、それで倒せると思ってるんダゾ?」
「そう思いたいな!」
ゴーレムを操り、甲型と接敵させる。
エメなら拮抗した戦いに持ち込めるのだろうが、やはり力負けしてしまう。
だが、俺も入れば甲型を挟みこんで戦う事が出来る。
ゴーレム剣を二振り取り出し、魔力を込める。
「フレイムウェーブ!トルネード!」
同時に魔法を発動し合わせる。
「マスターが直に戦うとは珍しいんダゾ。それに魔法で来るんダゾ」
「これなら力押しなお前でもダメージが通るだろう!」
炎の竜巻は甲型を閉じ込める。
緊迫した状態から一息つけたかと思ったら、炎の竜巻から氷の刃が飛んでくる。
「くっ、魔法だと!?それにこの属性は甲型にはなかったはず」
「言ったはずなんダゾ。ステータスを見ただけで油断するななんダゾ」
甲型は魔力を練り始める。
「アースランス!なんダゾ」
「くっ、今度は土属性!?」
再び魔壁を張り耐え忍ぶ。
「攻撃が軽いんダナ」
「そんな貴方は魔法型のゴーレムでは?」
「そうだなんて言ってないんダナ。体と同じく頭も固いんダナ」
「聞き捨てなりませんね。そちらこそ、頭が柔らかすぎて呆けすぎてませんか」
「あっはっは、洒落は通じるんダナ。それにしてもその姿は中々グッドなんダナ。あのマスターの趣味なんダナ?」
「…さぁ、どうでしょう。私はマスターに従うだけですので」
「おかしいんダナ。お前もオラ達と同じで魂が存在してると思うんダナ」
「魂…。そんな話、今は関係ありませんね」
乙型との戦闘は接近戦へと移り変わる。
「そうか。[スキル共有]か。これを持つ者同士で互いのスキルを共有または交換してると言う事か」
「正解なんダゾ。我ら甲型、乙型共に近接も魔法も行うんダゾ。ただ倒すだなんて、そんなに甘くないんダゾ」
「ちっ、そのセラフィスとかいうのも意地が悪いぜ。その上、ゴーレムに制限までかけやがって」
「資格者が未熟なんダゾ。その調子じゃ、擬似錬成や想像錬成もまだなんダゾ。セラフィス様は錬成は発想と工夫だって言ってたんダゾ」
「お前らのマスターの自慢なんか聞いてる場合じゃないんだよ!」
甲型の魔法を交わし防ぎつつ、こちらも魔法を返していく。
だが俺らが押されつつあるのは明らかだった。
何か打開策をと考える程、自分の中で焦りを生み自身の首を絞めていた。




