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046_転生者

いつもお読み下さり、ありがとうございます。

俺はずっと復讐に囚われていた。

今もこれからもそれは変わらず帝国を滅ぼす、その日まで続くと思っていた。

そんな俺に気付けば、仲間と言える存在が生まれた。

クロエにロザミアだ。

ゴーレムじゃない、初めての人としての仲間。

復讐ばかり考えている俺に何故ついてくるんだと思ったが、彼女達はそう考えてはなかった。

純粋に俺を慕い、俺の復讐に協力すると言った。

まだ出会って日は浅いが、帝国で過ごした日々や共に冒険へ出る楽しさ。

復讐を忘れちゃいけないのに、快楽とも言えるその安心感に何度も身を委ねてしまう。

気付けば、俺を育てたジジイ以外にも心を開き始めていた。

たまに思う。

復讐をする事は本当に必要なんだろうかと。




「マスター!」

「くっ!!」


目の前で爆発が起こる。

俺の操作から離れ、自立稼働したゴーレムが俺を庇ったのだ。


「くそ、何なんだ一体!!」

「あー、言い忘れてたんダゾ。試験は始まってるんダゾ。それは我らを倒すのももちろん、セラフィス様が資格者に対して見極めをしようとしてるんダゾ」

「ちっ、さっきから俺の心を見透かすような何かはそいつのせいか」

「さすがに同情するんダゾ。我らを相手しつつ、頭の中で試験が行われてるんダゾ。でも、手を抜く事は出来ないんダゾ」

「くっ、まずい!」


ゴーレムが破壊されてしまった上に、甲型は近接へとタイプを変えてきた。

あわてて武器を握りしめ、応戦する。


「マスターが近接もするんダゾ。でもそれも錬成の力なんダゾ」

「くそ、早い!」


甲型の拳を辛うじて武器で防ぐ事しか出来ない。

何としても距離を取り、魔法で応戦しようと無理して離れるがすぐに追い付かれる。


「魔力が高いから魔法ならと思ったんダゾ。みすみすやらせる訳には行かないんダゾ」


甲型の魔力が跳ね上がる。


「魔力強化か!?」

「まずはその武器型を壊させてもらうんダゾ」

「は、早い!」


魔力強化された甲型は俺の視力では視認する事が出来ず、目の前に立つと武器目掛けて武器を破壊する。


「ぐぅぅ、く…そ!」

「もういっちょなんダゾ!」


そのまま、回し蹴りで俺の腹を抉るように蹴り飛ばした。




「ねぇ、聞いてよ。僕にもね、友達がたくさん出来たんだよ。エメに、クロエとロザミア。爺ちゃんはもういないけど、きっと爺ちゃんも安心してくれるよね」

「な、何を言っている?」

「エメは前から一緒にいるけど、エメらしく女の人の体を造ってあげたんだ。声にはしないけどきっと喜んでるよ」

「おい、お前は?」

「クロエはね、昔奴隷だったんだ。でも僕らの仲間になって、今は一緒に笑ってくれるよ」

「な、何で前の俺が?」

「ロザミアは、ふふ。昔からお転婆だったけど、今でも変わらないかな。あ、でもとっても強くなったんだ」

「や、やめろ!お前はもういない!ジジイが死んだ時に消えたんだ!!」

「何言ってるのかな?僕は僕だよ。今もこれからもアインだよ?」

「ふざけるな!アインは俺だ!!」

「違うよ、アインは僕だよ。だって君は」

「やめろ、俺はここにいる!それ以上、口を開くな!!」

「だって君は”相川 悠斗”じゃないか」


肉体と心が離れていく感覚がする。

自分が自分じゃなくなるような、そんな感覚。

ああ、きっと俺は存在してちゃいけなかったんだ。

前世での思いが強すぎて、”たまたま”この世界でも記憶があっただけ。

本当のアインはこいつなんだ。

徐々に意識が薄くなる。

肉体と離れる度に、俺が消えていく。




「あれ、動かないんダゾ。もしかして死んだんダゾ?」

「マスター!」


エメはアインに駆け寄り、抱きかかえる。

僅かだが、息遣いが聞こえる。


「ま、まだ生きてる!マスター!早く起きて、回復を!」


アインの肩を揺さぶるがそれでも意識が目覚めない。


「そ、そうだ、ポーションを!」


エメはアイテムボックスから偶然にも忍ばせておいたポーションを取り出す。

瓶の蓋を開け、口に持って行くが意識がないアインはそれを飲み干す事が出来ない。


「そんな!どうしたら…!」

「もうそいつはダメなんダナ。お前が生体だったらどうにでもしようがあったんダナ」

「残念なんダゾ。そいつは資格者じゃないんダゾ。気持ちは分かるが、我らにこいつを助ける義理はないんダゾ」

「マスター、起きて下さい!マスター!起きて、アイン!!」

「うっ…」

「ああ、マスター…!」

「か、体がぼろぼろですね」


アインは目を覚ますと、ボロボロの体をゆっくりと起こす。


「あれ、あれ。懐かしんダナ!」

「おお、この魔力は!我がマスターの物のなんダゾ!」

「マスター?」


アインは立ち上がると、回復魔法で体の傷を癒やす。


「うーん、この体はダメだね。早く造り変えないと」

「おお、マスターなんダナ!」

「セラフィス様!」

「ど、どういう事なんですか、マスター!?」

「甲ちゃん、乙ちゃん、久しぶりだね。何年振りだろう…、元気にやってるみたいだね」

「マスター!!」

「おや、君は。ああ、そうか。彼のゴーレムか。もう私の中には彼はいないよ。彼の…”相川 悠斗”の心は消えたんだ」

「嘘…、そんな」

「嘘じゃないさ。本来、アインとなる人物は私の生まれ変わりだったんだ。なのに、彼は強烈な思いで私の覚醒を妨げていた。でもやっと…。やっと私が目覚める事が出来た。君には感謝しているよ。ここまで彼を連れて来てくれて。だから、もう大丈夫だよ。君は自由に生きていい。何なら、私からの贈り物として人間と何一つ変わらない体を造ってあげるよ?」

「嘘…、嘘だ!マスターは!アインはそんな事じゃ消えない!!」





誰かが泣いてる。

その声がうるさくて、その声が懐かしくて俺は目を開けられずにはいなかった。

その声の主は、俺が目を覚ましてもずっと泣き続ける。

そして呪文のように、ごめんねと言葉を繰り返す。

見れば、俺の体はボロボロだ。

包帯でぐるぐるに巻かれ、それはまるでミイラ人間のようだなと心の中でふと笑った。

何でこんな事になったのか。

ちょっと記憶があやふやだ。

あー、そうだ。

思い出した。

俺は学校から突き落とされたんだ。

それも三階から。

よく生きていたなぁ、いや逆に運が悪かったんだろうか。


「ごめんね、悠くん。私のせいでこんな目に」

「いや遥姉ちゃんのせいじゃないさ。柄にもなく僕が行動したせいかな…あはは」


泣いていたのは遥、水沢遥。

近所に住む一歳上の僕の姉代わりとも言える人物だ。

僕らは小さい時、親同士の交流で出会った。

近所には僕らくらいしか子供がいないせいか、すぐに仲良くなった。

冒険ごっこにおままごとや色々。

本当に色々遊んだ。

その当時は、僕らは変わらずこのまま大人になるんだろうなと思っていた。

けど、そうはならなかった。

僕は小学校に入ってからいじめられ始めた。

最初は遥姉ちゃんと一緒にいるのがおかしいだとか、見た目が気持ち悪いだとか。

ほんの些細な理由からだった。

幼いながらも気付いていた。

人間は弱者をいじめなければ、気がすまないと。

いや、弱者がいるから自分が強者でいられると錯覚し続けたかったんだ。

きっといつか終わる。

きっと遥姉ちゃんが助けてくれる。

そう思い続けたけど、そんな事はなかった。

僕がいじめられる様を見て、他のクラスメイトは自分がこうなりたくない一心で僕をいじめ続けた。

遥姉ちゃんも、僕がいじめられる現場を見ておきながらずっと黙っていた。

そして気付けば、遥か姉ちゃんとも遊ばなくなり、気付いたら疎遠になっていた。

僕のこの環境は中学、高校になっても変わらずにいた。

ああ、どこに言っても変わらないんだ。

きっといつかは…、そう信じても何も変わらない。

僕は人生に絶望していた。

けどある日、いつものように足取りを重く、学校へと登校した時の事だ。

いじめられてるのもあり、授業中にこっそりと教室へ入ろうと思った僕は、空き教室で誰かが話し合う声が聞こえた。

どうせサボりの不良か何かだろうと無視しようと思ったが、そういう雰囲気ではなかった。

男女が揉めてるそんな雰囲気だった。

ただの興味本位で覗いたら、ある男子生徒が女子生徒を押さえつけていた。

これはまずいと本能的に逃げようとしたが、その女子生徒は知っている人だった。

遥か姉ちゃん。

ここで無視すれば良かったのに、俺は無茶してその男子生徒を殴りつけた。

きっと人生の中でこんなにもかっこ悪く、かっこ良い自分はいないなと思っていた。

それで終わるはずもなく、その後はその男子生徒にボコボコにされ窓にむけ押しつけられた。

本人も脅しのつもりだったんだろう、けど俺は運悪く落ちた。

そして目を覚ましたら病院のベッドの上という事だ。



くそ、何だこれは。

いや…記憶。

俺のか。

でも違う、誰かの記憶?

遥姉ちゃんの…。

まだ泣いている声が聞こえる。

これは。

この泣き声はエメのものだ!!





「あれ、もしかしてまだ戦うの?もう止めた方がいいんじゃないかな。私の敵は使徒と神であって、君じゃないんだけどな」

「マスター、危ないんダナ!」

「マスターを守るんダゾ!」


エメは魔力強化を行い、全力で棍を振るう。


「ぐぅあああ、い、痛いんダナ!!」

「お、おかしいんダゾ!お前の性能じゃここまでの力は出せないんダゾ!!」


甲型、乙型ともに防いだ腕は、エメの棍により折れてしまった。

それを見た、アインの体を操るセラフィスは驚きを隠せないでいた。


「い、一体君は…?ぐっ、頭が。な、何が起きてる」


エメは俯いた顔をあげ、セラフィスを見る。

そして開かない口で宣言する。


「返してもらうぞ。俺の体!」

「返してもらいます、マスターの体」


そう俺はまだ消えていない。

いや、消えるわけには行かない。

忘れるものか、この心の痛みを。

必ず帝国を滅ぼすまで止まる訳にはいかない。

俺が消える寸前に、俺はゴーレム操作でエメを操る事に成功した。

俺はエメを操り、必ずこいつらを仕留める。


「そ、そんな。何で君はまだ…」

「いいから、さっさと俺の体を返せ!セラフィスだか、何だか知らんが…そんな程度の思いで、俺の憎しみを消せると思うなよ!!」


俺とエメは一気に、俺の体・セラフィスへと距離を詰める。


「は、早いんダナ!」

「こちらも負けてられないんダゾ!」


甲型・乙型共に魔力強化を行い、攻撃を防ぐ。


「とは言え、お前は一体なんダナ」

「我ら兄弟相手に、一体のゴーレムではどうにも出来ないんダゾ」

「愚かですね。今、私は一体じゃありませんよ。マスターがいます」

「そうだ、俺とエメの二人だ!つまり数は揃ってるという事だ!!」


俺は自分の持つ魔力をエメの体へと送り込む。


「う、嘘なんダナ…!?」

「そ、それはなんダゾ?こんな魔力強化見た事ないんダゾ!」


俺は自身の魔力を注ぎこみ、更なる魔力強化を図る。

その強大な魔力はエメのボディには辛く、ミシミシとフレームや外装から音が聞こえるのが分かる。


「す、すごいです。けれどあまり長くは持ちませんね」

「ああ。すまない、無理をさせて。終わったら、俺が色々直してやるよ」


エメの体を覆う魔力は、俺の持つ憎しみの色によって塗りつぶされ、真っ赤な魔力を全身に纏い始める。


「まさかこれ程だなんて、思っていなかったよ」

「行くぞ!」

「行きます!」


エメの持つ棍を先ほどよりもさらなる力で、甲型と乙型を攻撃する。


「ぐぅあああ、い、痛いんダナ!」

「うぉぉおおお、つ、強いんダゾ!」


エメと俺は、甲型・乙型の二体を相手にしながらも、推し始めていた。

その圧倒的な魔力にエメのボディが悲鳴を上げ始めるが、エメはそれでも構わないと俺に伝えてくる。


「今なら!」

「行くぞ!!」


俺達は思い切り、踏み込み全身の魔力を棍へと乗せ、甲型・乙型に向け攻撃する。


「ぐうわぁぁぁああああ」

「ぬぅぅぉぉぉぉおおお」


バリンッ


「しまった!」

「くっ、棍の方が耐えられなかった」


エメと俺の魔力に耐えられなかった棍は攻撃の際に、砕けてしまう。


「まさかここまでやるとは思っていなかったよ。でも、武器がないのにどうするの?君の執念には感服すれけどそこまでじゃないかな?もうゆっくり休みなよ。君は運悪くこの世界に転生しただけなんだから」

「くくく、ふざけるなよ。俺の体を無理矢理奪っておいて、何言ってる?俺は奪われるのが死ぬ程ムカつくんだ!」

「一体、何を…?ぐっ、頭が…!!」


俺は魔力を込め、想像する。

目の前には錬成陣が広がる。


「な、何をする気なんダナ!?」

「魔石も何もないのに、錬成なんて出来るわけないんダゾ!」

「まさか…!?擬似錬成!いや、そんなまさか。彼はまだそこまで成長してなかったはず!そうか、まさか!?」

「くくく、お前は俺だろ?なら、お前の力は俺の物じゃないか!!」


錬成陣から光が放たれ、新しい武器が錬成される。


「エメ、新しい武器だ!」

「まさか、擬似錬成を!?」


エメはそれを手にすると再び、甲型・乙型へと近づく。


バンバンバンッ


「ぐわぁぁぁあああ!!」

「ぐおおおおおぅぅぅぅ!」


新武器で攻撃を続行する。

新しく造られた武器からは何かが飛び出し、それらが甲型・乙型を貫いていく。


「な、何、それは。見た事ない、そんなの。想像錬成…、まさかそれまで私から奪ったの?」

「想像と工夫か。良い事言ったじゃないか。これは俺の世界にある弾丸を発射する武器、銃とトンファーを組み合わせた物。銃トンファーとでも言うべきか」

「だんがん…?一体、何それは。私は知らない。これが異世界の武器」


実際にはそんな武器はないのだが、漫画やゲームなんかで知ったものなんて恥ずかしくて口に出せない。

それでも、俺が想像した武器は形になる。

想像した物を錬成するなんて能力、かなり凄すぎるのだが魔力がかなり減ってしまった。

この戦い、早く決着しないと俺の消滅が近くなってしまう。


「どうだ!」


俺達は飛び上がり、地面へ向け銃トンファーを発射する。


「ぐうわぁぁぁ、ま、まずいんダナ!」

「ぬぅぅぉぉぉ、や、殺られるんダゾ!」


そして落下する勢いのまま、魔力を込めトンファーを振るう。


「これで終わりです!!」


バタンッ

バタンッ


「甲ちゃん、乙ちゃん…」


甲型・乙型は共に倒れこむ。

自動回復のスキルを持っているが、発動する様子がない以上。

もう終わったという事だ。


「終わりだ。後は俺の体を返してもらうだけだ…!」

「君には驚いたよ。侮っていたのは私の方だったかも、知れないね。”相川 悠斗”、もしかしたら君なら…」

「いいか、俺は”アイン”だ。帝国を倒すため、俺は諦めない。またお前が現れようとも、必ず消し去ってやる」

「そう…だね。うん、君ならきっと大丈夫!確かに、帝国を倒す事は私の目的にも一応は繋がるか…、セッちゃんが何で帝国にいるかは分からないけど」

「また訳の分からないことを。逃げられないんだから、早く返せよ」

「ああ、そうだね。うん、分かったよ。君が目的を達成するまで、私は眠りにつくよ。もし、もしもだよ。君が帝国を倒したら、今度はちゃんと話そう」


そう最後にセラフィスは話すと、倒れこむ。

俺とエメは、俺の体に触れる。

するとエメの体から光が俺の体へと流れこむ。


「うっ…」

「マスター?」

「あ、ああ、大丈夫。大丈夫だ」


ゆっくり立ち上がり、周りを確認する。

あるのは甲型・乙型の残骸。


「戻れた。エメ、俺だ、アインだ」

「良かった、マスター。元に戻られたのですね」

「ああ…。しかし、今日は疲れたな」

「屋敷に戻りましたら、ゆっくり休みましょう」


その時、俺達の目の前に大きな魔力の渦が発生する。

どうやら帰りはここへ飛び込めという事だろう。

そして、何か大きな魔石のような物が俺の元へと落ちてきた。

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