043_ダンジョン『石の塔』恐怖との出会い
感想・レビューお待ちしております。
結局、繭を全部調べたが生き残った人はいなかった。
俺たちは出来る限りの遺品と冒険者の証ギルドカードを持ち帰りギルドに提出する事に決めた。
帝国の冒険者とはいえ、不運にも命を落とした事に俺らは軽い祈りを捧げてから次のエリアへと出発した。
「次は、思ったより普通な感じのとこになったな」
「…薄暗くて石畳。ダンジョンっぽいと言えばダンジョンっぽいですね」
「何だか気味が悪い雰囲気ですわ。先程の虫といい、ここでも嫌なものに遭遇しなければ良いのですが」
「そう言うとまた呼び寄せそうな気がしますね」
「わたくしのせいですの!?」
「ロザミアのせいじゃないさ。気にすれば、普通のモンスターも嫌に見えてくるさ」
「…そうです。気にしないのが一番です」
「はぁ、確かにクロエさんには見習う所がございますわ。そうですわね、こんな所でもたついていたらゴールは遠そうですわ。行きましょう」
気を取り直してみんなで出発する。
気にしないと言ったが、ロザミアの言う通りこのエリアは不気味な雰囲気を漂わせていた。
アンデッドでも出そうな雰囲気なのだが、今の所モンスターの気配を感知出来なかった。
「おかしいですわね、モンスターがいませんわ」
「そうですね、先程まではかなりのモンスターに出くわしていたのに」
「イベントというのは先程までのモンスター達だったという事でしょうか?」
「どうだろうな。ここまで来たんだ、最奥まで行って確かめるしかないな」
「まぁ、そうですわね。嫌な思いもしたんですもの、塔の上に出れるか分かりませんが最上階に行きたいですわね」
「…そういえばここ、塔でしたね。不思議なエリアばかりだから忘れちゃいますね」
「確かにな。外の外観と違って中の構造は変わってるもんな」
「…ダンジョンって本当に不思議ですね」
その後もしばらく進むがモンスターに遭遇する事はなく、さらに奥へと進む。
この様相に俺もだが、みんなも疑問を抱き始めていく。
「…ダンジョンってモンスターが出ないエリアってあるんですか?」
「いや、そんな事は聞いた事がないが。俺も二回目だしな、もしかしたらそういう事もあるのかも知れない」
「わたくしもダンジョンでモンスターと出会わなかったなんて聞いた事ありませんわ。異変と関係しているのかしら」
「異変か。突然湧いた高ランクモンスターがダンジョンのモンスターを狩り尽くしたってのは分かるんだが、何でここには高ランクモンスターが残っていないんだろうな」
「…ここにいたくない理由があるんでしょうか」
「いたくない理由か。モンスターも生物だからな、自分よりも強敵とは戦いたくないという事か」
「強敵、なんていい響きですの」
「あくまで推測だ。他のモンスターを追っ払う程のモンスターなんているのか」
「マスター、あそこに扉が」
ここまでの道はほぼ一本道。
そして目の前には大きな扉がある。
先へ行くにはそこを抜けるしか無い。
「ボス部屋の扉とは違うように見えるが…、中から嫌な気配が漂ってくる」
「…何か聞こえませんでした?」
「ひっ、何ですの!?脅かさないでくださいまし」
「…いえ、脅かすつもりはないんですけど。扉の中からうめき声のようなものが聞こえた気がして」
「モンスターでしょうか?」
「そうなら、戦闘準備だ。今まで通りさ、扉をくぐる時は警戒しながら入っていこう」
ギギギィ
錆びついた扉は悲鳴にも近い音を上げながら、開かれる。
俺達は扉の外から中の様子を伺う。
見えるのは一面黒い通路。
天井も壁も床も全てが黒。
だが、それは僅かだが動いている。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
「醜悪です…」
「…あー、良く見ますね。お屋敷でもいましたね、これ」
「おいおい、これってゴキ…いや”G”か!!」
【ステータス】
G
年齢:0歳
ランク:F
Lv:5
HP:12/12
MP:9/9
力:21
体力:24
早さ:39
魔力:11
運:1
【スキル】
『死亡孵化』
[鑑定]を発動すると俺の視界一杯にGのステータスで溢れかえる。
「間違いない、黒い悪魔だ…!」
「うぅぅぅぅ、気持ち悪いですわ。ひっ、こっちに来ましたわ!!?」
「…踏み潰せば終わりますよ?」
ズシャ
「ひぃぃぃぃ、クロエさんなんて事を!?」
「…あれ、潰したんだけどな」
カサカサカサ
「ふふふふふ、増えてますわよ!!」
「『死亡孵化』。こいつらの固有スキルのせいか。もしかしてこのダンジョンにいるG達は潰すと卵が孵化して増殖するんじゃ…」
「…そういう事ですか。こんなのがいれば他のモンスターは寄り付きませんよ。でも困りましたね、潰せばいつも終わるんですけど」
「何か聞こえませんか?」
「どうした、エメ?」
「クロエが言っていたうめき声。確かに奥から聞こえるんですよ。というか近づいてきてます」
「…本当ですね。聞き間違いじゃなかったんだ」
「ひぃぃぃぃ、これ以上気持ち悪いのは勘弁ですわ!!」
オオオオォォォォ
「確かに聞こえる。モンスターなのか、これ」
「ひぃぃぃぃ、聞こえますわ!!G達のうめき声が!」
「いや違うだろ。こいつら鳴かないんじゃないか」
「…鳴きますよ」
「ひぃぃぃぃぃ、やっぱり!!」
「いいから、落ち着けよロザミア。確かに気持ち悪いのは認めるが」
「来ます」
暗く黒で覆われた通路の奥から、現れたのはGに塗れた謎の二足歩行の生物。
「くっ、なんだあれ!!?」
想像もし得ない姿に俺も戸惑いながら、[鑑定]で正体を探る。
【ステータス】
G
年齢:0歳
ランク:F
Lv:5
HP:12/12
MP:9/9
力:21
体力:24
早さ:39
魔力:11
運:1
【スキル】
『死亡孵化』
だめだ…、Gの情報しか得られない。
Gに塗れた生き物、そんな生物やモンスターなんかいるのか。
黒いその姿はなんとなく人の形にも見えなくもないのだが、人がああなって生きているなんて信じられない。
「ひぃぃぃぃぃぃ、こちらに向かってきますわ!!」
「…ちょっとあれは私でも…」
「謎の相手過ぎて」
「と、とりあえず、扉を閉めよう!!」
対処がしきれないのなら一旦、時間を稼ぐしかない。
俺達は慌てて、一度開いた扉を閉める。
バタンッ
「ふぅ、何とかなったな」
「で、でも、解決にはなってませんわよ!?」
「…な、何か、うめき声が強くなってませんか?もしかして怒ってるのかな?」
「そうですね、扉を閉めたから怒ってるんですか」
「な、何で扉を閉めたら怒るんですの!!?あれはGの親玉ですわ!!仲間と共に幸せに暮らして下さいまし!!」
「だけど、いずれ開けなきゃなんだよな…この扉」
ドーンッ
突然扉が強く叩かれる。
「ひぃぃぃぃぃぃ!!やっぱり怒ってますわ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「まずいぞ、これ…」
「…あんなに大きいGは初めてです。知能があるんでしょうか」
「先ほどから扉を叩く音が強くなってますね。むしろ扉を壊そうとしてるんじゃないでしょうか」
ドゴーンッ
ドゴーンッ
「エメの言う通り、扉を壊すつもりらしい。亀裂が入り始めたぞ」
「ひぃぃぃぃぃぃ、Gの怒りが!!」
「ロザミア、しっかりしてください。敵ですよ!」
「わ、分かりましたわ!敵…、そうあれは敵ですわね」
「エメ、ロザミア。初撃を頼めるか?火魔法で通路のGごと焼き尽くす」
「「はい!」」
エメとロザミアは武器を構え、いつ中からアレが出てきてもいいように向き合う。
俺はゴーレム剣に魔力を込め、詠唱の準備をさせておく。
ドゴーンッ
ドゴーンッ
ドゴーーーーーンッ
一際大きい破壊音と共に、土煙が上がる。
黒の通路から、アレの姿が確認出来る。
「い、いきますわよ!!」
「はぁぁぁぁ!!」
エメとロザミアはアレに跳びかかり、互いの攻撃が十字を描くように武器を振るう。
「オオオオォォォォ!」
「嘘…!?」
「まさか!?」
黒い人影は腕らしきもので、二人の攻撃を受け止めていた。
「きゃああああっ」
「くっ!」
黒い人影は掴んだ武器を振り回し、二人を放り投げる。
あいつが二人を放してくれたおかげで、俺は迷いなくそいつとGに向けて魔法を発動する。
「フレイムウェーブ!」
剣から放たれた魔力は徐々に赤熱を帯び、それは大きな炎の波となる。
炎の波は、黒い人影とG達を洗い流すかのように通路へと放たれて行く。
「…Gが燃えていきます。これなら孵化せず焼き尽くせますね」
「火を使って正解だったようだ」
「ひっ!まだ、Gの親玉は立ってますわ!」
「トドメを!」
徐々に消え始めていく炎の中に、例の黒い人影はまだ立っていた。
Gの鎧は炎で燃え尽き、煙の中ではその醜悪な本体を晒しているだろう。
エメはそれに最期の一撃として、突っ込んでいく。
「くっ、また!?」
見るとまたもや、エメの武器はそいつによって掴まれていた。
そして簡単にエメを投げ飛ばす。
「ふうううう、暑かったわぁ。でも助けてくれてありがとう」
野太い声だが、間違いなくそいつは喋った。
「まさか…人なのか?」
「あらん、そうよ。一体何だと思ってたのよ、やーね!」
笑いながら、そいつは煙の中から姿を現した。
それは筋骨隆々な厚化粧の男!?
「へ、男?」
「あぁん!?誰が男ですって!?私はれっきとした乙女よ、坊や」
片目をパチリと閉じながら、俺にそう答えた。
いや乙女って…どう見ても男。
いや漢だろ?
「そ、それはすまなかった」
「いいのいいの。こんな所で可愛い坊や達に出会えたんだし、ラッキーよ!あ、そうそう私はね、マスラオ。一応、冒険者よ」
「マスラオ!?まさかSランクの?」
「あらん、坊やに知っててもらえるなら光栄だわ。美を追求して肉体を強化していくうちに気付いたらSランクになってたわ」
これが帝国のSランク冒険者。
帝都のオカマ達の親玉って事か。
通りで魔法を喰らっても、エメ達の攻撃も軽々と防いでた訳か。
「…えっと、あのマスラオさん。どうしてあんな所に?」
「それは私が冒険者だからよ。別の依頼帰りだったんだけれど、この『石の塔』で異変が起きたって聞いたのよ。だから調査に来たって訳。でもそうしたらGちゃん達の巣に出くわしてね、潰しても潰しても増えてくから困ってたのよ。私は魔法が使えないからね」
「…えっと、はい!」
クロエは返答に困り、笑顔で返した。
そりゃこんな人間離れした存在に出会えばそうなるだろう。
「ところで貴方達は一体?」
一通り挨拶とここに来た目的を伝える。
「そう、アインちゃんにエメちゃん。それにロザミアちゃんとクロエちゃんね。すごいわねぇ、まだ若いのにAランクだなんて」
「え、えぇ、あはははは」
「そうね、私は勢いで来ちゃったのだけれど貴方達は正式な依頼なのよね。良かったら、ついて行っていいかしら?何、心配しないで。報酬寄越せとかそんな事は言わないわ。ここは冒険者や騎士達の修練場としても機能しているのよ、早く異変を元に戻したいだけなのよ」
「ま、まぁ、マスラオさんがいいなら」
正直、断る理由もないしSランクの戦いっぷりを近くで見れるのは嬉しい。
「まぁ、やだ。マスラオさんだなんて、他人行儀な。私達は拳を交えた相手なのよ、戦友じゃない!呼び捨てでも、マスラオちゃんって言って欲しいわ」
「あ、あはははは、よろしく、マスラオちゃん…」




