040_ダンジョン『石の塔』攻略開始
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「どうやら早速来ましたわね。あれはリザードマン…ですわね。なるほど、確かに自称中級者程度の冒険者では歯が立ちませんわね」
「リザードマンですか。なかなかの強さだったと記憶してます」
リザードマンが数体、群れを成して俺らへ向かってくる。
ロザミア達の口ぶりからそこそこの強さなのだろう。
おそらくはこのダンジョンのこの階層では出現なんてあり得ない程には。
近くの一体が射程に入ったので、真眼から[鑑定]を発動する。
【ステータス】
リザードマン
年齢:6歳
ランク:B
Lv:41
HP:812/812
MP:153/153
力:532
体力:612
早さ:498
魔力:143
運:23
【スキル】
あー、確かにこれは中々だ。
いきなりBランクだなんて。
前のダンジョンでマリクで邪魔された時を思い出すな。
「…えっと、強いのですか、このリザードマンというモンスターは?」
「ああ、Bランクもするモンスターだ。俺も一人で戦うなら厳しいな」
「…えっといきなりBですか!?」
「まぁ、普通はそういう反応だよな…」
見ると、ロザミアは笑みを絶やさずに戦い続けている。
場所が違えば、無邪気に笑う少女なのだが…、リザードマンから見れば悪魔そのものに違いないな。
「まだまだですわよ!」
両手にそれぞれ持った剣を巧みに振るい、それはまるで舞踏のような動きで次々とリザードマンを斬り伏せていく。
リザードマンもBランクとついている位、強モンスターの一体だ。
あくまでもステータス上ではロザミアの方が上回っているがこうも簡単に斬り伏せられるのは、ロザミアの経験の差がでかいだろう。
「はっ!せいっ!はぁぁぁ、たぁっ!!」
ロザミアが優雅なダンスを想像させるなら、こちらは作業だ。
次々とリザードマンが襲いかかっては、それを自慢の棍でぶっ飛ばしていく。
何というかこの流れを見ていると、コミカルな漫画でも見ているような光景だ。
「わたくし達には丁度良い、運動ですわね」
「油断は行けませんよ。こうやってお喋りしていると足元を救われるのは定石ですから」
互いに声を掛け合いながら、相手の調子を見つつ立ちまわっている。
何というか、俺よりも連携攻撃が上手くなっている。
普段、工房に篭ってゴーレムの研究ばかりやっている間に、エメとロザミアはほぼ毎日ギルドの依頼を受けていたのだ。
当然といえば当然なのだが、あまりにも自分が置いて行かれている気がするとちょっぴり凹む。
「…だ、大丈夫ですよ、ご主人様!私がついてます」
「そ、そうだな。俺達インドアーズは日陰の道で頑張ろうな」
「い、インドアーズですか」
勝手にコンビ名を付けさせてもらった。
「グ、ガァァァァ!」
「はっ!」
「ギャウゥゥゥゥウゥ!!!」
「殺気立った攻撃ならば、すぐに気付きますよ。はっ!」
「ギャオオオオオオオォォォォォォォォ・・・」
また一体とリザードマンを屠っていく。
俺とクロエは二人が倒したリザードマン達の死体をいそいそと解体し魔石を手に入れていく。
この為だけに制作した解体専門のゴーレムも持ちだしての解体なので捗る。
「そこですわね!!」
「ギャオオオオオオオォォォォォォォォ・・・」
「やれやれせっかくの『魔法剣』も披露する機会がなければ、宝の持ち腐れになってしまいますわ」
現れたリザードマン達は全て倒し終わった。
残った死体の魔石を抜いていく。
「どうやら片付いたようですわね。結構な数でしたがこのくらい何ともありませんわね」
「13体はいましたね。リザードマンが複数で攻めてくるのは知ってますが、この数の多さは異常ですね」
「結構いましたわね。まだまだいけますわ。早く先へ行きましょう」
「待ってください!…来ました、また敵です」
「ま、またリザードマンですの!しかも今度はさっきの倍以上いますわ!」
「見てください。見た事ないモンスターがいます」
さっきの戦闘での騒ぎを聞きつけてやってきたのか、倍以上の数のリザードマンが攻めてきた。
そして今度は群れを率いるボスまで連れて。
【ステータス】
ドラゴニュート
年齢:11歳
ランク:A
Lv:52
HP:1230/1230
MP:356/356
力:780
体力:812
早さ:578
魔力:339
運:33
【スキル】
『ドラゴブレス』[剣術スキル 7][剛力スキル][鉄壁スキル]
初めて見るモンスターだ。
しかもAランク。
「エメ、ロザミア。あのボスはドラゴニュート。Aランクだ。ブレス持ちだから気をつけろよ」
「「了解」」
「グギャア!!」
「くっ、数が多くなるでちょっと厄介ですわね!」
「ギャオオオオオオオォォォォォォォォ・・・」
数が多くなったせいか、それとも群れのボスを連れているせいか先ほどよりもリザードマン達の勢いが激しくなる。
「はっ!この数なら私達に勝てると思っているからですよ。気持ちで負けては押されます」
「ゴーレムの貴方にそんな風に励まされるなんて思いもしませんでしたわ。でも…、確かにそうですわ!!」
「ギャオオオッ!」
「グギャギャギャ!」
「ギシャアアアア!」
「鬱陶しいですわね!ですが!!」
ロザミアはエメに目線で合図を送ると一気に前へ出る。
リザードマンが密集している所へ、駆けながら次々と斬り伏せる。
そんな攻勢に出れば、必然とロザミアの背後を狙うリザードマンが現れる。
だが、すかさずエメがそれを叩きつける。
「グギャオオオォォォォォ・・・」
「私がいる事を忘れないでください!」
「エメさん、一気にドラゴニュートの元へ行きますわ!」
「了解」
リザードマン達はこれをチャンスと見て、エメとロザミアに襲いかかる。
だが、前方はロザミアが、後方はエメが防ぐという立ち回りで上手くリザードマンの攻撃を捌いていく。
「しつこいですが…、あと少しですわ!」
「後ろは任せて下さい!ロザミアは前だけに集中を!」
エメもロザミアもリザードマンの攻撃を躱しつつ、道を防ぐリザードマン達を次々と屠っていく。
ドラゴニュートまであと少し。
「危ない!!」
この機を待ち構えているかのようにドラゴニュートはエメとロザミアに向け、口を大きく開けていた。
まだ自分の配下であるリザードマンが二人の周りにいるのにも関わらず、奴はブレスを吐くつもりだ。
「なっ、間に合わないですわ!?」
「リザードマン達が壁になって、抜けられません!」
ドラゴニュートの口から光明が溢れだすと、それは大きな火炎となって二人を包み込む。
ゴオオオオオッ
遠くからでも聞こえる、ブレスの音。
それだけでもかなりの威力なのが伺える。
「…ご主人様!二人は!?」
「わ、わからん」
火煙は二人の周りを渦巻いており、未だ俺は無事を確認出来ていない。
あの二人の事だ、致命傷は避けたと信じたいがドラゴニュートの思わぬ攻撃に動揺が隠せなかった。
だが、すぐにその不安は払拭された。
バゴーーンッ
勢いの良いそんな打撃音と共にドラゴニュートは壁に叩きつけられていた。
「グ、グギャアァァ?」
「痛いですわね…!!髪の先が少し燃えましたわ!!」
「ちょっとこちらも本気を出しますよ」
煙が徐々に晴れると、光を体に纏い輝く二人の姿が。
「…えっと、エメさん!ロザミアさん!・・・良かったぁ」
「ああ、どうやら無事だったようだ。二人共、魔力強化を行って、魔壁で直撃を防いだんだな」
しかし、魔力強化したとはいえAランクモンスターを壁に叩きつけるって、どんな馬鹿力だ。
「すぐにケリを着けますわ!」
ロザミアは剣に魔力を集中させる。
片方の剣には渦巻く風の刃が、もう片方の剣には荒れ狂う水の刃が。
「グギャ、グギャ!?」
これを見たドラゴニュートは止めろと言わんばかりに叫ぶ。
群れのボスがこんな絶体絶命にリザードマン達はというと、魔力強化されたエメとロザミアに恐れを成して徐々に離れていく。
「喰らいなさい!!」
ロザミアの2つの刃が交差する。
蒼と蒼の軌跡。
その十字がドラゴニュートを裁断した。
「ま、魔石!?」
「…ご、ご主人様?」
「今の攻撃でドラゴニュートの魔石が砕けてないかどうか。Aランクの魔石…」
「…だ、大丈夫ですよ。二人を信じましょう」
バラバラとドラゴニュートの体が崩れ落ちる。
またロザミアの凶撃に巻き込まれたリザードマン達の何体かも倒れる。
「マスター、ご安心を」
敵意が消えたリザードマン達に安心をしたエメは魔力強化を解いた手で、俺に何かを見せた。
「魔石!」
「はい。ロザミアには念を押しましたので無事確保出来ました」
「良かった…!」
「それよりもわたくし達の心配をしないの、アイン?」
「もちろん心配したさ。だがあの輝きを見れば、安心出来たよ」
「それはそうですが、あのトカゲ…!!見てくださいまし、自慢の髪が燃えましたのよ!!」
ロザミアの縦巻きの髪のほんの一部が焦げている。
前にロザミアはこの髪のセットがいかに大変か、そしてここまでするには丹念に髪をここまで伸ばしたんだとか聞かされていた。
それゆえに、ドラゴニュートのブレスでちょっとだけでも焦がされたのに腹が立ったのだろう。
「ともかく無事で良かったよ。しかしいきなりAランクが来るとはな。間違いなくSランクモンスターにも遭遇するだろう」
「…Sランクですか。神話級と呼ばれるモンスターですよね?」
「ふふ、それは楽しみですわ。先ほどのお礼をSランクモンスターにぶつけてあげますわよ」
「程々にしてくれよ。魔力ポーション持ってきているとはいえ、魔力は無限じゃないんだ」
「分かってますわよ。けど出し惜しみしては、髪が…いえ怪我を追ってしまうかも知れませんわ」
「そうだな。よし倒れてる死体の魔石と素材を剥ぎ取ったら、次へ向かうぞ」
興奮が冷めぬロザミアはまだやれると言い続けたので、しばらくは通称アウトドアーズに任せる事にした。
変わらずリザードマンやたまにドラゴニュートが出現してきたが、一度戦った相手だからか苦戦する事なく進めた。
幾つかの階段を登っていくと、あるフロアに突然巨大な扉が現れた。
「ボス部屋か」
「ですね、ウィレームのダンジョンでもそうでしたからおそらくはこの扉の向こうにはエリアボスがいるのではないかと」
「そうだな、気を引き締めて行こう。よし開けるぞ」
扉を開けた先には大きな広間が拡がっている。
だが、いるはずのボスモンスターは見当たらなかった。
「ボスモンスターがいない?」
「隠れてるというわけではなさそうですわね。期待していたのに残念ですわ」
「うーん、ウィレームのダンジョンみたく誰かが引っ張りだしたというのもなさそうだしな」
「…えっと、ロザミアさん達が戦ってきたリザードマンやドラゴニュートが倒したとか?」
「なるほど、この強モンスターは突然湧いてきたと言ってましたね。もしかするとダンジョンとは関係ないモンスターがダンジョンのモンスターを駆逐してしまったと」
「そ、それはあんまりですわ!!ボスがいないダンジョンなんて!」
「ロザミアの言いたい事は分かりますが、今徘徊してるモンスターより弱いんですよ?それならロザミアが満足する相手とは言えないかと」
「それは言えてますわね。この異変のおかげで高ランクのモンスターと戦えるんですから、贅沢は言ってはいけませんね」
「ともかく先へ進もう。俺たちは一応依頼を受けてるんだ」




