039_石の町ストーンヴィレッジ
お待たせしました。
少しはストックも出来たので更新も毎日続けられるかと思います。
全身鎧型魔力強化フレームゴーレム。
長くややこしいので『クロガネ』と名付けた。
造られたそれは全身が漆黒でとても厳つい化粧の全身鎧。
これを装着すれば、誰も自分だとは気付かれまい。
魔力強化という点に着手し、長い時間をかけ完成させたこれは。
「失敗だ…」
「起動試験の時もそうでしたが、これはマスターが装着するのにはおすすめ出来ません」
「確かにな…」
パラケルスのおかげか、それとも人体という禁忌を破ったおかげか、自分の弱さや魔力強化が出来ないという事が把握出来た。
この世界における人は魔力経路を持つが、俺はこの世界に生まれながらそれを持ち合わせてなかった。
俺と同じく魔力経路を持たないという人はいるのかも知れない。
けど大抵は自分が魔力や魔法を扱えぬと分かるとそこで諦めてしまってるから何故なのかまでは分からないのだろう。
俺は帝国に来て、数多のホムンクルスや人間を解体した。
そのおかげで知る事が出来た。
以前、制作した魔力強化フレームのゴーレムはロザミアとの戦い後には大破してしまった。
魔力強化の発生とは体内にある魔力経路を通しての肉体外部への魔力放出。
魔力強化フレームでは、肉体外部にて魔力経路を擬似的に作り魔力強化を発生させる。
この方法では魔力強化の調整や安定が難しい。
一度発動すれば、魔力強化を弱めたり強めたりも出来ず、激しい戦闘の最中ではフレームが損傷すれば魔力強化の発動が止まってしまう。
フレームの保護という事で全身鎧を選択、そして魔力強化の安定性と調整の為、無理やり体内からの魔力放出の仕組みを作った。
鎧内に仕込んである魔石を加工した楔を体内に突き刺す事で体内の各所から魔力を供給させる事で擬似的に体内に魔力経路を作成する事に成功した。
この方法により、部分的な魔力強化の発生や微調整も可能になり実際の魔力強化と変らぬ力を出せるようになる。
だが起動試験を行った際、俺の肉体に突き刺した楔から魔力を無理矢理引き出すのはかなりの激痛を伴った。
肉体に直接楔を打ち込むというのはある程度痛みは想像していたが、体内で魔力を引き出す際の痛みは想像していなかった。
回復魔法で痛みの軽減を行いながら試していたがそれでもだ。
これを使っての戦闘は正直難しい。
「仕組みは悪くないんだが…。しかしこの方法以外でとなるとフレーム自体を大型化しないと…」
そうなれば完全に搭乗型のゴーレムになる。
それはそれでロマンなのだが、対個人戦では小回りが利かない。
あの女、セルビアナみたいな相手をする場合、不可能だ。
「ご主人様ー!?」
工房で頭を捻らせてるとクロエが呼びに来た。
「どうした?」
「…えっと、ギルドの方が来てます」
「ギルド?」
「やぁ、アインくん」
「ギルド長。えーっと」
「あはは、ゲオルグだよ」
わざとじゃないんだが名前を忘れてしまっていた。
ゲオルグさんは頭を掻きながら俺に名乗ってくれた。
「すいません、ゲオルグさん。しかしわざわざ俺の所へ?」
「それはね、王国に来てる君に頼むのも悪いんだけど、とある依頼を受けて欲しいんだ」
「依頼?」
「あぁ、ギルドからの依頼だ。内容はダンジョンの調査。ダンジョンと言っても帝国では古くからあるダンジョンだよ。帝都での冒険者の腕試しとして昔から使われてる所だ」
「うーん、それなら何故、俺らに?実力を知りたいという事ですか?」
「いやいや、それは君のランクから分かるし、ロザミアくんとエメくんが色々依頼をこなしてくれてるおかげで十分把握してるよ。ここ最近、ダンジョンで異変が起きてるみたいなんだ。分かりやすく言うと通常ではありえない強さのモンスターが出現している」
「異変ですか…。まぁ俺達としてはダンジョンに潜れるのはありがたいですよ。古くからあるダンジョンなら尚更、利権なんか絡んで俺ら王国から来てる人間は入れてくれなさそうですし」
「まぁ、その通りだ。実質の管轄は、我ら冒険者ギルドが行っているけど、実際の権利者で言えば領主のものとなる。本来なら帝国内の冒険者にと言う話になるんだけど…、高ランクの冒険者は今不在でね。それで君にという訳なんだ」
「なるほど。うーん、そういう事なら」
「アイン!ダンジョンですのよ!?行きましょうよ!」
「…えっと、ダンジョンってどんな所なのですか?」
「素晴らしい所ですわ!そうですわね、夢やロマンが詰まってますわ!」
「…えっと、それはいいですね!」
「マスター…、何か勘違いしてますが」
「…言うな。だが、悪くないな。引き受けますよ。俺も素材集めをしたかったし、久しぶりに体を動かさないとな」
「それは良かった。じゃあ後でギルドまで来てくれ、依頼の詳細と場所の地図を渡すよ」
「はい、分かりました」
俺達は支度をするとギルドで正式な依頼を受けた。
ダンジョンの場所はストーンヴィレッジという街にあった。
地図上では遠くに感じたが、列車を使えばあっという間だった。
今回はソフィアがいないので優先的に搭乗出来るか不安だったが、何でもAランクもある冒険者なら優先搭乗が許されていた。
「列車の景色と言うのは素敵だと思っておりましたが、こうも岩ばかりだと飽きてしまいますわね」
「…えっと、風景が変わらないから飽きちゃうんですね」
「ええ、そうですわ」
「いやいや分かってないな。この岩肌に列車の線路を通した技術がすごいぞ」
「はぁぁ、アインはわたくし達と見ているものが違いますわね」
「そうか?帝国自体は憎むべき所だが、技術は憎む所じゃない。エメはそう思ってくれるだろ?」
「マスターのそういう観察力は感心致します」
「エメはアインの味方なのは仕方ないですわね」
今回は帝国に絡んだ事じゃないという事で久しぶりにみんなで楽しく列車の旅を堪能していた。
ロザミアの言う通り、岩ばかりの景色だったがそういう雰囲気もあってか悪くはなかった。
着いたストーンヴィレッジは岩山を切り崩して作られた街だった。
ダンジョンはどこだと探そうとしたら、すぐに見つかる。
「何々、「ようこそ、ダンジョンの街ストーンヴィレッジへ」。分かりやすいな。「ダンジョンはあちら」」
「…えっと、ようするに看板通りに進めばいいって事ですね」
「みたいですわね。こうも分かりやすくダンジョンって書いてあると、本当に異変があるのか疑問ですわね」
「とりあえず向かってみるか」
ダンジョンに向かう途中、街並みを見ながら進む。
ダンジョンがある事で街が栄えてるのだろう、派手な看板が目に付く。
ボリス男爵の依頼でウィレームの街でもダンジョンを発見したのだが、いつかウィレームの街もこんな看板だらけの派手な外観になってしまうのかとちょっぴり寂しい気持ちになるな。
「派手な街並みの割には、人が少ないですわね。やはり異変が関係しているのかしら」
「だろうな。こんなにも静かなのは何かあるって事だろう」
少し進むと突然目の前に巨大な建造物が現れる。
「お、大きいですわね」
「…えっと、すごいですね。塔なんでしょうか」
「みたいだな、巨大な石の塔。これがこのストーンヴィレッジのダンジョンという事だろうな」
「しかし、こんな巨大な建造物があればすぐに気付くのですが、突然私たちの目の前に現れたような」
「言われてみれば、そうですわね。この大きさなら街の入口からでも見えるはずですのに」
頭をかしげながら目の前にある巨大な石の塔を見上げていると、誰かが声を掛けてきた。
「おーい、あんた達!ここは立ち入り禁止だぞ!」
「誰か来ますね」
「あんた達、冒険者か?今はダンジョンに高ランクモンスターが溢れて閉鎖してるんだ。悪いが帰ってくれるか?」
見張りの人だろうか、俺達を物見遊山で来た冒険者だと勘違いしている。
「いや俺達はそれを調べに来たんだ。これが依頼書とギルドカードだ」
「ん、どれどれ。Aランク!?それにこっちはゲオルグさんのサイン!これは失礼しました!」
「一体、何があったんですの?」
「それが数日前に大きな揺れがあった後、しばらくするとダンジョンに潜った冒険者達が大慌てで戻ってきたのです。その時は大変でしたよ。戻ってきた冒険者の大半は大怪我を追っており、モンスターがダンジョンから飛び出して来たんですから」
「溢れかえったモンスターがダンジョンから出てくるというのは聞いたことあるけど、そんないきなりなのか」
「私も初めてで…。冒険者達の話ではいきなり湧いて出たと。領主様の命令で、無事な冒険者達と共に入り口付近のモンスターを排除し結界で封じ込めました」
「それは大変でしたわね。結界があるという事はわたくし達も入れるのかしら」
「はい、それは。こちらの鈴をお持ち頂ければ結界を通り抜けられます」
「これは?」
「結界を張っている魔導具に干渉しないようにする魔導具だとか」
「魔導具で結界を張っているのか」
「これがあれば、出入りは問題ないという事ですか」
「ええ、そうです。出来れば早くこの異変が片付けばいいのですが。魔導具も核となってる魔石の魔力が尽きれば、結界は効力を失いますからね」
「魔力の補填をすればいいんじゃないのか?」
「それは無理ですよ。これを作ったのはあのルゲイエ様ですよ。製作者であるあの方しか魔力の補填は出来ませんから」
「これもルゲイエ制なのか。一体、どんな男なんだか」
「…えっと、ところでこの石の塔なんですけど外から見えなかったのは何ででしょうか?」
「ああ、それはですね。元々この石の塔の持つ能力なんですよ。外からは見えない、ただそれだけなんですけどね。学者が言うには発見されたくないようにしているとか、戦争の為の遺物だとか」
「…そういう事なんですね。見つかりたくない理由でもあったんでしょうか」
「さぁ、どうでしょう。帝国では昔からこのダンジョンは登竜門として使われてきましたから。発見した当時は何か秘密があったのかも知れませんが、今となっては大勢の人が入り乱れてますから」
「しかし、ダンジョンとは不思議ですわね。一体、何の為に作ったのか、大昔にいたら直接製作者に聞いてやりますのに」
「気になる所ですが、早く依頼を遂行しましょう」
「そうだな、結界の魔力切れというのもあるし、早くこのダンジョンを調べよう」
石の塔の入り口へ近づくと、大きな魔導具が置かれそこからは魔壁に似たシールドが展開されていた。
「これが結界だな。今は問題なく稼働しているが、いつ切れるか分からないって言ってたしな」
「そうですわね。まぁ依頼とはいえ、ダンジョンを私達だけで堪能出来るなんて、こんなチャンスは滅多にありませんからね」
「確かに誰もいないダンジョンを探索出来るのは、滅多にないな。しばらく荒らされていない以上はお宝が結構あるはずだ。見つけたら全部手に入れる!」
「…お宝。何だかこうやってみんなで冒険してるっていうのは初めてでドキドキしますね」
「まぁこれでもわたくし達は冒険者ですもの。たまにはちゃんと冒険者稼業もしませんと」
「よし、進むぞ」
俺達は一斉に結界を通り抜けた。
通り抜ける際、渡された鈴がちりーんと音を鳴らしていた。
「じゃあ、打ち合わせ通りにまずはエメとロザミア達に任せるよ」
「了解しました」
「ふふふ、腕がなりますわね」
ダンジョンの異変の調査で来ているが、俺達にとってはダンジョン攻略と変わらない。
俺もだが、エメやロザミアは一介の冒険者では手も足も出ない程の強さだ。
一斉に戦っても、モンスターを瞬殺しちゃうという理由で一階層毎にエメ・ロザミア組と俺・クロエ組に分かれてモンスター討伐を行う事にした。
もちろん何かあれば、すぐにみんなで戦う予定だ。
以前、クロエが誘拐された事もあり今回の依頼にも同行してもらった。
不意打ちとはいえ、やはりクロエにもある程度戦い慣れてもらいたい。
そんな目的もあってか、俺はクロエのパワーレベリングする気満々であった。




