038_生体ゴーレム
引き続き残酷描写がございます。
俺はタコタの腕と足を斬り落とした。
回復魔法で出血を止めつつ行った。
悲鳴を上げまくったが、こんな事でこいつを殺すには惜しい。
「そうだ、お前のご自慢のソレももういらないよな?」
「た、頼む…。お願いだ、止めてくれ。頼む、お願いだ…」
「大の男が泣きながら懇願する姿はいつ見ても耐え難いな。しかし、お前のそれを触りたくないな…。クロエにやらせるわけにも行かないしな」
「ご主人様のご命令ならやりますが、この男の矮小なそれに触りたくはありません」
「くくく、そうだ。よし、ゴーレムよ。お前がやれ」
「や、止めろ!!止めて!止めて下さい、お願いします!」
「マスターからの命令を承認」
「来ないで!来ないで下さい!ゴーレム様、神様ぁぁぁぁぁ!!ぐぅうううう、がぎぎぎぎぎ」
ゴーレムの馬鹿力で、握り潰すようにタコタの一部を抉り取った。
「それを取ったくらいじゃ死なんだろう?わざわざ回復魔法を使う必要はないな」
「う、ううぅぅぅぅ」
こいつから手足を、そして大事な物を奪った。
それだけでこの男は泣き崩れてしまった。
傲慢なこの男のプライドはもう何もないだろう。
「女みたいな、泣きべそだな。いやもうそう言ってもいいのか?くくく、あははは。いいか、俺は俺から奪った奴を許さない。お前も帝国も!…だが俺は同時に慈悲深くもありたい。これから、お前にチャンスをやる。上手くいけば無くなった手足は取り戻せるかもしれないな」
「うぅぅぅぅ」
ドゴッ
「ゲホッ」
「話を聞かないか、屑が」
「ず、ずみまぜん…」
許す。
もちろん俺がそんな事をする訳がない。
クロエを、あんな酷い目に合わせたんだ。
そんなじゃ済ます訳がない。
「クロエ、俺は準備がある。辛くなければ見張りを…いや、殺さない程度に好きにしていい。傷が深くなりすぎたら、回復させる」
「いいのですか!?うふふ、この男に私が合った目に。い、いえ、それ以上の…」
「ふっ…。程々にな」
「タコタさん。逆転しちゃいましたね」
「ひっ…。すみませんでした、クロエさん!いえ、クロエ様!!」
「気にしないで下さい。ご主人様も薄々気づいてらっしゃいますが、ああいう目に合うのは初めてではありませんから。そういえばタコタさん、私の事褒めてくれましたね。美人だと。奴隷が長かったとはいえ、やはり褒められると嬉しいものです」
「クロエ様は美人です!それはとても!だからどうか…!どうかお願いします!お助けを…。助けて下さい、お願いします」
「けれど…、ご主人様の物である私を傷つけたのは許せません。しかし、貴方は醜いですね。その体も心も。心得はありませんが、ここは一つ。醜い貴方を私が着飾らせて上げましょう」
「ぎゃあああ!止めて!止めてぇぇぇぇ!!」
「うふふふ、どうでしょう!?その醜い姿でも赤く着飾れば多少マシでしょう!!」
「お願いしますぅぅぅぅ!!死ぬぅうううっっ!!」
「うふふふふ!」
「ひっ、ぐぅうううう…」
「あら…死んでませんよね?もうこんなんでご主人様の手を煩わせるなんて。使えないゴミ屑ですね」
「うっ、ここは…」
「やっと起きたか。いやクロエに何度も殺されかけたからな。記憶が混濁してるのかもしれない」
「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃ!!」
「そうか、思い出したか。それは良かった。忘れてたらもう一度、クロエが鎖で鞭打つ所だったよ。そうだ、タコタよ。朗報だ。お前の新しい手足を持ってきた」
「手足…?」
俺はタコタに、斬り落とした手足とほぼ同じ人の手足を見せる。
「こ、これをつけるんですか?」
「そうだ。お前につける。良かったな」
俺はまず腕を斬り落とされた所へ近づける。
「やれるか…。よし…”emeth”!」
タコタの腕元から錬成陣が発生する。
「ぐぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!」
「痛むか…。まぁそうだろうな」
「…えっと、ご主人様一体何を?」
「生体ゴーレムの実験だ。ようするに生身のゴーレムが作れるかだ。ちょうど壊してもいい実験体だ。まずは生きてる人間をゴーレムに出来るかという所だ」
「…えっと、そんな事可能なのですか?」
「分からん。けど、錬成士は禁忌を犯してまでこの技術を求めるらしい。俺もこれがさらなる成長を産むなら何でもやるさ。どうやら定着したようだな。おい、動かせるか?」
バキッ
「ちっ、気絶するな。おい、動かせるのか?」
「はっ。う、腕が…!え、はい、動かせます…」
まずは成功だな。
元より奴の腕をゴーレムにしたんだ。
元々可能性はあった。
「よし、残りもやるか」
「ぐぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!」
「て、手足が戻ってる!俺の手足が!?」
「拒絶反応も無さそうだ。上手くいったな」
「あ、ありがとうございます!」
「おい、こいつの拘束を解け」
「マスターからの命令を承認」
ゴーレムに命令してタコタの拘束を解く。
奴は地面にへばりつくように倒れる。
「おい、立てるなら立ってみせろ」
「ぐ、ぐぅぅぅ」
「よし立ち上がったな」
「はぁはぁ、戻った…。俺の手足…。ふっ、ふふ。くくく、ありがとうございます!」
「ご主人様!!」
「やれやれ、何も考えずに突っ込むなんてな。動くな!」
「あ、あれ。どうして。何で動かねぇんだ!?」
「お前の体は、いや手足はゴーレムにした。ゴーレムはマスターである俺の命令従うしかない」
「く、くそ!ふざけんなぁぁぁああ!」
「しかし一度は手足を斬り落とされ、クロエの拷問も受けながら、それでもまだ反抗心を持つとは…。そこだけは褒めてやるよ。だが…、覚えておけよ。そんな反抗心は無駄だ。俺から奪おうとした罪は、重いぞ」
「ひっ!!!?」
「まずは手足だ。次は体をゴーレム化する。体の方には臓器などもある。取り外してつけるなんて事は出来ないな。そのままやるしかないな」
「お、おい、まさか!?う、嘘だろ?」
「死なないよう、回復魔法はかけ続けてやる。だが…痛みだけは残してやる。ありがたく思えよ?くくく、楽しみだ。人を初めてゴーレムにするんだ。光栄に思えよ?」
「ご、ごめんなさい、俺が悪かったですぅぅぅ!だからどうか、それだけは!?お願いしますぅぅぅぅ!!」
「まずは腹を捌くか…」
「ぎゃあああああぁぁ!!」
「く、オクタの息子め…。此度の件、我ら元老院に話せないとはどういうつもりで…」
「しかし、例の件を密命してからのオクタ伯爵の怪死。上がった死体が王国の物であったならさすがに叱責は免れなかったが…。どう転んでも我らには損はあるまい」
「ふん、そうなれば良いのだが。皇女とはいえたかが小娘ごときへの牽制がこのような事態になるとは。しかも陛下へ直々に申し出る事があるとは。例え伯爵の死亡事件とはいえ謁見を組むのと容易ではないのだぞ」
「とはいえ伯爵だ。ここで蔑ろにすれば元老院自体が貴族を軽んじてると思われる。致し方ない事だ」
「謁見の為に、シルビア様の手を煩わせたのだ。これが裏目に出ればグレイ派が調子に乗る。奴らは我らの事を疎ましく思っておる」
「グレイ様など、ヘンリー様に比べれば所詮、戦う事しか能のないお方だ。陛下に似ておるがそれはただの蛮勇。我らの事を軽んじてる様ではまだまだ」
元老院達は一斉に黙る。
それは他の貴族や騎士達も同様だった。
玉座横の扉が開かれ、華麗な女騎士…いやセルビアナが出てくる。
そして少し遅れて、皇帝が現れ玉座へと腰掛ける。
「オクタ伯爵の変死事件において、その子息であるタコタ・オクタより申し開きがある。タコタ・オクタは陛下の御前へ」
「は、はい」
タコタはぎこちない足取りで陛下の御前へと辿り着くと跪く。
「こ、この度は陛下の貴重なお時間を賜りまして、か、感謝致します。わ、我が父についてですが突然の死で私も悲痛な思いでございます」
「ふん、能書きは良い。さっさと顛末を話せ」
「は、はっ。それでは。我が父は常々貴族とは尊くあるべしと私に垂れておりました。そ、それは愚民…へ、平民達の指導者足らんとあるべきだと」
「つまらぬ。誰が殺したのだと、余は聞いておる」
「し、失礼を。わ、我が父ですが、何者かにある事を命令されておりました。そ、それは王国の留学生の従者の誘拐を…」
「な、何を言うか!!?」
「黙れ!!構わぬ、続けよ」
「わた、私は思いました。そ、そんな事はおかしいと。私もち、父に言われたくさんの人を殺しました。い、いつからか、それは私自身がの、望み。奴隷や、し娼婦を雇ってはこ殺してきました。こ、今回もこ、殺したくて。け、けど、それはダメだと父が…。だ、だからここ殺しました。ご、拷問をた、たくさんして、いっぱいいいっぱいな殴りました。き、気づいたらう、動かなくなって」
「おい、まさか貴様が殺したのか!?父殺しだと!!」
「こ、この国はき、貴族のための国。だ、だからな、何をしても良い。け、けどお、おかしいって。さ、最初からま、間違ってたんだ、こここのく、国は。だ、だからみ、みんな気づくべきだ。ぐ、愚民にもわ、分かりやすく、は、話したんだ。お、お、怒ってたけど、げげげ元凶がいなくなればばば」
「お、おい!?どうしたんだ?話したって何を!?貴様、何を勝手に立ち上がってるんだ!?」
「げげ元凶がいいいなくればばば!!ししししねぇぇぇえぇ!!」
「き、貴様!!!」
「あ、ああれれれ?」
一瞬。
この場にいた皆が動揺している間に、セルビアナはタコタを真っ二つにした。
「詰まらない見世物だ。もう良いセルビアナ」
「はっ」
「ふん…。しかし王国か」
「これで良かったか、クロエ?」
「うふふ、ありがとうございますご主人様。最高の贈り物でした」
「いやこっちこそ色々と済まなかったな。それに最後はほぼ実験に付き合わす形になってしまったしな」
「あの男にふさわしい最後です。ご主人様…もし、またあのような事が起き私が死んだとしても立ち止まらないで下さい。私は生まれた時から既に人としての人生を無くし、狂気に犯されてます。ただ一つ、貴方のその憎しみだけが今は私にとって唯一の光。だから、私が帝国の謀略によって死ぬ事があればそれは貴方の憎しみの糧として下さい」
「クロエ…。ああ…そうだな。約束しよう」
俺はこの時初めて知った。
得たのは仲間による安らぎだけではなかった。
仲間が増えただけ、業を背負う事になったんだと。
タコタの謁見を見ていたソフィアは大慌てで俺の所へと会いに来た。
「ま、まさかそんな事になっていたとは…」
「悪いな、相談すべき事だとは分かっていたんだが突然の事だったしな」
「い、いやそれは仕方あるまいよ。クロエ殿が攫われたのだ。さすがのアインも動揺したんだろう。しかし生体ゴーレム?だったか…何とも恐ろしい」
「ふっ、まぁ俺の仲間に手を出した。然るべき制裁を行っただけだ。おかげであいつは生きながらにして俺の人形となったんだ。まぁ、状態は良くなかったが皇帝の前で元老院に一泡吹かせてやれたんだ」
「まぁ気味は良いんだが、元凶があの元老院だという事を考えると油断はしてられないな。アインのおかげでゴーレムを我々は手に入れられたんだ。やはりそれを目ざとく思っての今回の騒動。きっと奴らは諦めないよ」
「それも想定内さ。今回の事で奴らの行動は分かった。どうせ奴らは政治屋だ。露骨な行動には出れない。また来ようとも返り討ちにするだけだ」
「ふ、ふふふ、そうだな。アインがいればあいつらなんかに負ける訳ないね」
「そうだ、ソフィア。恐れるな。戦う意思を挫かなければ、きっと負けはしない」




