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037_痛みの末に

残酷描写がございます。

「はぁはぁ…」

「何だもうへばったのか?これじゃあ俺が愉しめないじゃないか。まあ、いい」

「はぁはぁ…す、すみません」


買物に出た私は何者かに捕まってしまった。

体は縄で拘束され、顔には布を口には猿轡をされ身動きが取れなかった。

ただ私の目の前であられもない行為が行われてるのは分かった。

女性らしき声の人物は倒れこむとそのまま眠りについたようだ。


「くくく、どうだ?お前もノって来たんじゃないか?」


男が近寄りながら、そんな汚い台詞を吐いてくる。


「お前も運がなかったなぁ。いや、逆だ。この俺に尽くせるんだからな。たかが王国の屑が、こんな別嬪を連れている時は驚いたもんだ。しかも奴隷みたく首輪をつけさすなんて、狂った趣味してるぜ」


ご主人様の事も知らず、この男は私の前でご主人様の事を馬鹿にします。

自由の身ならば真っ先に八つ裂きにしてやりたい。

だけど今は自由を奪われ、ご主人様から頂いた鎖も外されてしまった。


「そうだ、そんなに望むなら奴隷にしてやる。その方が後々厄介にならないと親父も喜ぶしな。いつも玩具は遊んだ後、壊しちゃうんだがお前を殺せば面倒になっちまうしな」


布がとられ、私を誘拐した男が姿を現した。


「相変わらずいい顔だ。これからお前がどんな表情を見せてくれるのか、愉しみだ」


男は汚い顔を近づけると私の頬を舌で舐めまわしました。

その後、猿轡を外します。


「汚い男…。それに貴方は勘違いしてます。私に人質としての価値はありません。ご主人様に危険が及ぶようであれば私など捨て置いて下さいます」

「それはそれで構わないさ。主に捨てられ泣き叫ぶお前が見れるんだからな。親父の方はそれじゃ困るとは思うがな」

「私の心はご主人様の物。貴方が何をしようとも意味はありません」

「ふふふ…意味はないか」


バシンッ


「痛っ…」

「それはやってみなくちゃ分からないよな?」



あれから何度打たれ、何度体を弄ばれただろう。

打たれた所は薄く血が滲み、風がそよぐだけでも痛みを感じさせる。

こいつはそれを分かって、わざと傷痕を触る。

その度に嬉しそうに笑う。

何回も悲鳴を上げ、その度に目の端から涙が零れるのを感じる。

だけど決して、私は助けてとは言わなかった。

私がご主人様に全てを捧げようと誓った日に決めた。

あの人には助けを求めないと。

呪われた運命から救ってくれたんだ。

私はあの人には返しても返しきれない程の感謝がある。

だから私があの人を助ける事はあっても、あの人の手を煩わせるような救いを望まないと。

こいつに陵辱される度、心の中ではご主人様の顔が浮かぶ。

それを分かって、こいつはさらに苦痛を与えてくる。


「いい表情じゃないか。もっと鉄面皮かと思ったがそうじゃないな。くくく、お前に人質としての価値がないなら尚更。死の間際まで愉しめるってもんだ」

「ふふふ、私を殺すなら殺せばいい。けど貴方は必ず後悔する。あの人は全てを壊してくれるんだから。私はそれが見たくてあの人に尽くすと決めました。貴方のようなたかが個人の愉悦に浸るおろか者では足元にも及ばない」

「お前…!!!」


バシンッ


「がはっ」

「体は正直だ。いかに心でそう決めても、肉体の限界は心では逆らえない。どうだ、一言俺に助けてと言え。そうしたらすぐに止めてやる。手当もしよう。そうだな、暖かい食事も用意してやる。たった一言だ。助けてと言えばいい」

「………」


バシンッ


「一言だ!それだけ言えばいい!」

「……」


バシンッ


「クッ!!」

「いつまで我慢するつもりだ?痛いんだろう?このままじゃ傷跡は残っちまう。これを見たお前の主はどんな顔をするかな?」

「下種め…」


バシンッ


「もし万が一、お前が助かったとして。お前のその傷だらけの体を見る度にお前の主は苦い顔を浮かべるんだろうな」


バシンッ


「クッ…。あの方は私など見ません」

「何だお前はあいつの伽相手じゃないのか。ならば他の二人か」

「ち、違います。あの人はそんな事をする為に私達と共にいるんじゃありません」

「何?一度もしてないのか?くくく、何だかんだ御託並べたってただの不能野郎じゃないのか。これは傑作だぜ」

「違います!!」


バシンッ


「違わないな。お前がそこまでムキになるのがいい証拠だ。くくく、どこまで強情でいられるかな」


もう覚えてられないほどの痛みと屈辱を与え続けられました。

私は心を空にして、終わりないこの時間を過ごすのを待つだけです。




「誰だ?…気のせいか」


オクタ伯爵は再び執務へと戻る。

元老院からの密命ーソフィア殿下に着いている王国の留学生の従者を攫え。

帝国にいる貴族でいる以上、元老院からの命を破るという事がいかに愚かな事か。

もし断れば爵位を失うだけでなく、名家だろうと歴史事なくなる。

だが、旨味もある。

元老院に属している以上、帝国に有るありとあらゆる利益権益が手に入るのだ。

帝国には正義などない。

あるのは力のみ。

ならば、民に罵られようとも貴族はそのぶら下がる餌に喰らいつくしかないのだ。

だから弾き者であるソフィアを黙らせる為の密命ならと快く引き受けたのだ。

オクタ伯爵の息子であるタコタが主導となって誘拐したが、一応の警戒は払う。

だが、この帝都は貴族達の為のもの。

力なきソフィアには何も出来まいと油断しているのたのも事実。


「動くな」

「くっ!!誰だ?」

「帝国は屑な貴族が多いとは分かっていたが、まさか俺からクロエを奪おうなんてな」

「貴様、王国の!」

「一応聞いてやる。クロエはどこだ?」

「王国の者がこんな事をして、タダで済むと…グボァッ」

「ふん、今ので命だけはと思ったがそれもやめだ。ロザミア、エメ。後は任せたぞ」

「はい、マスター」

「拷問なんて初めてですわ。ですが、クロエさんを誘拐したお礼はしませんとね」

「俺はこいつのバカ息子とケリをつけてくる」


アインはそう伝えると、二階にも関わらず屋敷の窓から飛び出した。


「貴様ら!私にこんな事をして本当にどうなるかわからんぞ!」

「構いませんわ。どうせアインが全てを壊しますもの」

「は?な、何を言ってる?」

「アインは帝国を滅ぼす為に生きてますもの。貴方が何を吠えようとも意味は無くなりますわ」

「お、お前ら、何を言ってるんだ。そんなの無理に決まってるだろう!?」

「そう…ですわね。そこにいるエメさんはアインの造られたゴーレムですわ。アインはゴーレムを数千用意しておりますわ」

「す、数千だとぅ!?ば、馬鹿な!そんな事になれば戦争じゃないか!」

「だから言ってますわ。アインは帝国を滅ぼしますわと」

「そう、そうか!あのソフィアが色々と便宜を図ったのはあいつの為か!!クソ、忌々しいあの女の娘だからと侮ったのが!だ、誰か!!誰かいないのか!!」

「貴方、面白いですわね。ここまでどうやって来たと思ってらっしゃるの?屋敷の周囲含めて貴方の配下の者は皆、殺しましたわ」


ロザミアはそれは丁寧な笑顔でオクタ伯爵へと告げた。

その笑顔を見たオクタ伯爵は一気に血の気が無くなるのを感じた。


「ぎゃあぁぁぁ」

「あら、これで悲鳴をあげますの?難しいですわね」

「た、頼む…やめてくれ!いや、やめてください!私は元老院に命令された…ぎゃあぁぁぁ!!」

「ダメですわ。アインには出来るだけ苦痛を与えてから殺せと言われてますの。まぁ殺されるだけマシだと思いますわ。貴方の息子のタコ…はどうなるかはわたくしでも分かりませんわ」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」



「足も手も体もこんなに真っ赤になるとはな。これはこれで見応えがある。白い肌に薔薇でも咲いたような」


この男は私を傷付け、愉悦に浸る。

本当に反吐が出る。

こんな姿、ご主人様には見せられない。

人質としての価値がない私は普通ならこのままどこかで処理されるのだろう。

だがこの男はきっと私の無残な死体をわざとご主人様の元へと送る。

それを考えると流したくもない涙が溢れてしまう。


「しょっぱいな。涙は何回流してもしょっぱいものかな。くくく、お前には興味がつかないよ。骨の髄…いや魂の深くまでお前を陵辱し尽くしてから殺してやる」

「下種め…」

「愉しいな!今までどの女も奴隷も娼婦もここまで愉しませてくれたのはいなかった!お前に会えた事、神に感謝するよ」


ガシャンッ


「クロエーーーー!!」

「ちっ、何だ!?」

「ご主人様!」




俺は勢い良くタコタの隠れ家の窓から飛び込む。

目に入った裸の男に向かい、迷わず剣を振り下ろす。


「っととと、奇襲だぁ?しかしまさかお前から来てくれるとはな、ご主人様?」

「ちっ、躱すか」

「舐めるなよ、俺はただのボンボンじゃない。これでも帝国の貴族だぞ?てめぇみたいな奴に遅れは取らない程度には鍛えてるつもりだ!」


奴は机の上に置かれたナイフを投げると、隠してある剣を取り出した。

そしてそのまま俺に接敵すると剣を振りかざした。


「くっ」

「噂以下だな、ゴーレム錬成士!」


ゴーレム剣には魔法スキルが付与されてるが、隠れ家とはいえ狭い帝都だ。

ここで魔法を使えば騒ぎ大きくなる。

スキルで向上されてるとはいえ、奴は分かって力押しでケリをつける気でいる。


「そこの奴隷、いい感じに仕上げてやったぜ。その姿をお前に早く見せたくてなぁ。わざわざ来てくれたのは僥倖だよ」

「下種がっ!」


剣に込められた[剣術スキル]のおかげか奴の髄力を受け流し、奴をそのまますり抜ける。


「待て待て、せっかく来たんだ。あの奴隷を綺麗に咲かせてやったんだ。作り手である俺の話でもきいたらどうだ?」

「ふざけるなよ…!」

「くくく、ムキになるなよ。聞いたぞ、お前。あの奴隷に触れてもないそうだな?もったいないぜ。代わりに俺があいつを散々慰めてやったよ。まぁ既に傷物だったけどな」

「くそが!!」

「今だ!」

「なっ!」


奴の言葉に注意を削がれ、気付けば背後から鈍い痛みが拡がっていた。


「く、くそ。もう一人いたのか…」

「くくく、間抜けすぎるぜ。ゴーレム錬成士。良くやったな、牝犬」

「ありがとうございます」


奴の遊び相手だろう。

裸の娼婦が背後から現れた。

傷ついたクロエを見た俺は、感情に任せて警戒を怠ってしまった。


「まさしく絶対絶命だな。男をいたぶる趣味はないが…、そうだなこの奴隷を遊ぶのに一役買ってもらおうか」

「…終わりにしようか」

「は?何を言っている?手傷を追ったお前に俺が負けるとでも思ってるのか?」

「俺じゃない。俺じゃあお前には敵わないよ。"emeth"!」

「何をした!?な、何だこいつら後ろから!?」

「やれ、こいつらを捕まえろ!!」

「マスターからの命令を承認」


奴らの背後からゴーレムを錬成すると、ゴーレム達に命令をする。


「くそ、こいつらなんかに!くっ、放せ!何て力だ!?放せーー!」

「きゃあぁぁぁ、何!?いや、放して!!やめて、やめなさいよーー!!」


このゴーレム達は性能だけはエメに負けず劣らずだ。

こいつら程度には負けるはずもない。

タコタは羽交締めに、娼婦は片腕で頭ごと持ち上げられている。


「こいつらがゴーレムだと!?くそ、動かねぇ。おい、放しやがれ!俺は貴族だぞ!?帝国の貴族様だ!放さないとどうなるか分かってんのか!?」

「いやぁぁぁ、痛い痛い痛い!お願い、放して!お願い!!」

「くっ、黙れ!!」


俺は回復魔法で先程の傷を治療する。


「命令だ。そこの女の頭を潰せ!」

「了解」

「いやあああああああああ!痛いぃぃぃぃぃ!ああああああああああああ!」


グシャリ


そんな音ともに女の体だけがとさりと地面へと落ちた。


「クロエ!」

「ご、ご主人様…」

「酷い傷だ…。待ってろ、今治す」


クロエの拘束を解くと、俺は早速回復魔法で治療を開始する。

あられもない姿だったので、俺は自分の羽織るローブを被せた。

その間も含めてクロエは終始涙を流し続けた。


「ど、どうして私なんかを…」

「大事だからだ。クロエ、俺にとってお前は大事な仲間だ。あの日、お前は俺に仕えると言ったが俺にとっちゃあの日はお前が俺の仲間になってくれた日だ。俺は昔、大事な人を何度も失った。けど今は力がある。大事な仲間が危険な目に合うなら俺はそれを助ける」

「あ、ありがとうございます、ご主人様」

「すまなかった…。俺の不注意でクロエをこんな目に」

「いえ、そんな事ありません!こうしてご主人様は私を救ってくれました。価値のない私を二度も!」

「今のお前は俺にとって必要な存在だ。誰かに奪われるなんて…許すわけがない!」


回復魔法で淡々と治療を続ける。

後ろでタコタが喚くが、無視してクロエの傷を癒し続ける。


「傷痕が綺麗に…」

「高位の回復スキルだからな。痕くらいなら消せるようだ」

「ありがとうございます…」


クロエも女の娘だ。

やはり痕が気になるのだろう。

クロエをここまで追い詰めたタコタめ、ただで済ますわけには行くまい。


「ご主人様、この太ももの傷ですが…」

「このくらいならの傷ならば痕に残さず治療が出来る。安心しろ」

「い、いえ!残したいのです。愚かな私の戒めとして」

「いいのか?まぁ、痕になっても再度治療すれば消えると思うが…」

「お願いします。私はご主人様の物です。貴方が望むならいつでも消します。ですが、可能ならまだ残しておきたいのです」

「…分かった」


治療を終えたクロエに、俺は護衛用としてゴーレムを一体側に置いた。

そのままではと思い、ゴーレムにローブを被せたがこれはこれで怪しい。

端からゴーレムだとバレなければいいかとそのままにしとく。


「クロエ、俺はこのまま奴とケリをつける。護衛につけたゴーレムなら、問題なく家まで送ってくれるだろう」

「…えっと、私も最後まで見届けさせて下さい」

「クロエ、お前をこんな目に合わせた奴だぞ?」

「構いません。いえ…だからこそ最後までこいつの終わりを見届けさせて下さい」

「そうか、なら言うまでもないが…。俺はこいつを許す訳には行かない。お前が受けた以上の苦痛を!生きている事が苦しいくらいの絶望を与えてやる」

「お願いします。私も、この男が絶望に打ちひしがれる姿を望みます!」

「や、やめろぉぉ!!何をする気だ!?ふざけんな、放せ!このっ、この!!」

「クロエもお前の絶望をご所望だ。良かったな、お前にふさわしい最期を与えてやれるよ」

「て、てめぇ!いいのか、俺がこんな目に合ってるって親父が知ったらお前らは帝国に、いや王国は滅ぶぞ!!」

「馬鹿だな。帝国が王国を狙ってるのはとっくに知ってる。それにお前の親父はとっくに死んでるぞ。俺の仲間が拷問にかけ、無残な死に方をしてるはず」

「そ、そんな…。お前…、何をしたのか分かってるのか。まさか帝国の貴族に手をかける馬鹿がいるとは…」

「お前の頼みの綱の親父ももういない。それにここはお前が悪事を働く為の隠れ家だ。つまり…、お前がいくらここで泣き喚こうとも誰も助けに来ないという事だ」

「くくく、たかがガキのする事だ。いいか…今なら許してやる。いやここまで俺を追い詰めたんだ。褒めてやるよ。何なら俺から色々口聞きしてやる。親父がいなくなった俺はオクタ家の当主だ。ソフィアなんかより、いい目を見させてやるよ。どうだ悪くないだろ?」

「ふっ、本当お前はおもしろいな。この後に及んで自分が助かると思ってる。条件か…。確かに帝国で活躍するならお前みたいな裏で暗躍してる人間の方が都合が良いな」

「だろ?なら、早くこいつをどかしてくれ。頼む、この俺が頭を垂れるなんてお前くらいだ。そうだ…ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!な、何を!?ぐあああぁぁぁ!」

「助ける?馬鹿なのか、お前。言ったはずだ。俺はお前に絶望を与えてやると」

「お、俺の腕が!?や、やめろぉぉ!!ひ、ひぃぃぃ、あ、足が!?」

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