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033_レジスタンス

すみません…、話が一つ飛びました…

「そんな、信じられませんわ…」

「…えっと、街の皆さんは無事なんでしょうか!?」

「…」


嘘だろ。

レジスタンスの話は聞いていたが、ここまでやるものなのか。

俺らがここを発った朝までは、争いとは全く無縁な風景だったのに。


「レジスタンスを駆逐する!!アーノルド、指揮は任せるぞ!」

「ソフィア様!貴方はどうされるのですか!?」

「癪だが、ノイン男爵を探す。私がここにいるのにノースボアの領主を見捨てたとなれば、元老院からの追求があるからん。それにこれは訓練ではない。アーノルドの方が的確に指揮を任せられるだろう」

「で、ですが!貴方を一人にする訳には!!」

「案ずるな!共は連れて行く。アイン、頼めるか?」

「…いいだろう。行くのは、俺一人だけだ。すまないが、他のみんなはここを頼めるか?街全体に戦火は広がっている。取り戻すには戦力が必要だろう」


「「「了解ですわ」」」


「この者を…。分かりました。先ほどの戦闘で実力はあるのは認めます。しかし、危ないと思ったらすぐに引いて下さい。アイン、頼むぞ」

「ああ、任せろ」


俺とソフィアはノインの屋敷へと駈け出す。

街のあちこちで悲鳴や叫び声が聞こえる。

それだけでも多くの住人がレジスタンスに襲われているのだ。

途中、レジスタンスに襲われてる人を発見する。

ソフィアは有無を言わさず、そのレジスタンスへと斬りかかる。


「やめろぉぉ!!」

「な、何だお前は!?」

「ハァッ!!」

「お、俺の腕が!!」


もっと抵抗するかと思ったが、一瞬で勝負がついた。

弱すぎる。

レジスタンスという割りに、見れば服装もただの村人みたいな感じだ。

レジスタンスの目印と思われる布を巻いてなきゃ、そこにいる住人と見分けがつかない。


「大丈夫か?」

「ええ、ええ!!ありがとうございます、ソフィア殿下!」

「気にするな。ところでノイン男爵を見かけたか?」

「ノイン?あの男なら、知りませんよ!!いきなりレジスタンスに襲われたのに、あの男は何もせずに屋敷から出てこないのですよ!」


出てこないか…。

奴らしいな。

頼みの綱の傭兵団も自らの計画で、潰したしな。

レジスタンスからのいきなり急襲で恐れをなして、屋敷に閉じこもったのだろう。


「行こうか、アイン」

「ああ」


俺たちは再びノインの屋敷へと目指す。

駆けながら、ソフィアへと質問する。


「あれがレジスタンスなのか?俺にはただの村人にしか見えないぞ」

「そうだよ、あの者たちがレジスタンスだ。国を奪われ、追い出された者たちだ」

「しかし、追い出されたなんてそれでは国は…。いや領土は成り立たなくなるんじゃ」

「そうだな、だが帝国にとってはそれでいいんだよ。元々国を統治してた者は処刑だ。次いで有能な士官や文官もだ。代わりに帝国から新しい領主が派遣され、領民にとっては法外とも言える税を貸す。領民は仕方なく土地を捨て彷徨う。空いた領土は溢れかえった帝都の民達の新しい土地となる訳だ」

「あくまでも、帝国…帝都の為という訳か」

「全ては元老院の書いた筋書きだ。父上はただ戦い、その支配域を増やせればいいのさ」

「相変わらず歪んでるな、この国は。だからこそだ、お前はそこまで分かってて何故帝国の為に戦うのか?皇帝の為か?」

「違う!!」


ソフィアは突然立ち止まり、反論する。


「やはり…お前は帝国を」

「言うな、もう屋敷の近くだ。お喋りはそこまでだ」

「…いいだろう」


もっと問いただしたいが、これ以上は無理だろうと判断する。

それに屋敷は目の前だ。

特に物音がしないので、レジスタンスはいないのだろうと踏んで屋敷の中へ入る。

争われた形跡があるが、屋敷に辿り着くまでに見た民家などに比べれば綺麗な方だった。

むしろノインは逃げ出したんじゃないかと不安になるが、奥から人が現れる。

この屋敷のメイドだ。

彼女は怯えた表情を見せ、その場でへたり込む。


「無事か?男爵は?」


言葉にはせずに震えた手をゆっくりと男爵の執務室らしき場所に指差した。


「そこまで怯えなくていい。私がお前も救い出してやる」


ソフィアの言葉に反応しないので、仕方なく先にノインの方へ向かうことにする。

教えられた執務室に近づくと、中から声が聞こえる。


「男爵か?」

「ああ、他に誰かいるみたいだ。言い争ってるみたいだ。レジスタンスかもしれない。アイン、扉を開けたら一気に制圧するぞ」


ひそひそ声で話をする。

俺は返事の代わりに首を静かに振る。

ソフィアは扉を開ける。


「そこまでだ、レジスタンス共!!」

「おお、ソフィア様!!ど、どうかお助けを!!」


ノインは手と足を縛られた状態だった。

そして近くにはレジスタンスと思われる人物が一人立っていた。


「くっくっく、まさかソフィア殿下が来るなんてな!」


ソフィアは剣を構え、そのレジスタンスへと斬りかかろうとする。

だが、それはその男の寸前で止まる。


「なっ!!」

「ソフィア!!くっ、動けない!」


ソフィアの異変を察知して、俺も反応したが体が硬直して動けなくなっていた。

こんな事が出来るのはスキルの類なのか。

どうやら目と口だけは動かせるので、そのレジスタンスに向けて[鑑定]を発動させる。



【ステータス】

ライノス

年齢:33歳

職業:戦士


Lv:49

HP:1032/1032

MP:198/198

力:987

体力:783

早さ:512

魔力:203

運:44


【装備】

銀獣斧

アイアンアーマー

パワーガントレット

アイアンブーツ


【スキル】

[斧術スキル 8][剛力スキル][頑強スキル][肉斬骨断スキル]



こいつ、本当にただのレジスタンスなのか!?

かなり脳筋系な奴のようだが、この[肉斬骨断スキル]は俺の知らないスキルだ。

しかし、この動きを縛ってるのはこいつのスキルじゃなさそうだ。

それに[鑑定]に気づかなかったのは幸いだ。

魔力強化が使えないという事だ。


「遅かったな?危うく殺られるとこだったゼ」

「危うい?全くのんびりとしてるからでござるよ」


後ろから声が聞こえ、振り向こうとするが動かない。


「まさかもう一人いたのか!?」

「無理でござるよ。拙者の[影縫]からは抜け出せないでござるよ」

「[影縫]…。やはりスキルか」

「それより早くそこの男爵を始末するでござるよ。お主が遊んでおるせいで『姫将軍』が間に合ってしまったでござる」


姿を現したのは忍者風な男だ。

この世界でも忍者がいるのかという驚きもあるがその前にこいつは敵だ。

正面に来てくれて助かった。

[鑑定]を発動する。



【ステータス】

バース

年齢:36歳

職業:忍


Lv:53

HP:856/856

MP:432/432

力:876

体力:567

早さ:976

魔力:397

運:46


【装備】

苦無

黒装束


【スキル】

『影魔法』[短剣術スキル 8][忍術スキル 3][回避スキル][気配スキル][韋駄天スキル][忍び足スキル][隠蔽スキル][偽装スキル]



先程の男同様、ただのレジスタンスというにはレベルが違いすぎる。

[影縫]とはスキルじゃなくて技か。

『影魔法』か。

おそらくこの固有スキルが原因だろうな。


「待て待て待て!!殺す?殺すと言ったのか!?私は領主だぞ!貴族だぞ!」

「あーあー、うっせぇナ!相変わらず貴族ってのは見栄ばっかでいざとなれば命乞いだゼ。領主なら領主らしく民の心配でもしねぇのか」

「此奴は所詮、元老院に飼い慣らされた代理でござる」

「た、頼む、命だけは!!金か?金ならあるぞ!だから助けて!」

「はっ、俺らをあそこにいる連中と一緒にするなっての!革命の為にやってんだゼ」

「革命?街にいるレジスタンスとは違うのか?」

「全く心配したのはお主がペラペラと喋って、お姫様に聞かれるからでござる」

「答える気はないのか!?」

「ちっ、悪かったナ。というかそろそろ、そこの貴族様に死んでもらうゼ!」

「ひぃぃぃぃぃぃ、頼むぅ!!そうだ、殺すならそこのお姫様に!」

「下種が!!」


ライノスというレジスタンスの一人がノインの首を刎ねた。

そのタイミングで俺は駆け出し、ござる忍者ことバースへと斬りかかった。


「ぬ、お主、[影縫]が!?」

「悪いな、解除させてもらった!特殊な才能はお前だけじゃないのさ!」


奴らが話してる隙に、以前ノインの屋敷に放したミニゴーレムを操作した。

俺の影に忍者が放ったと思われる苦無らしき物が突き刺さっていた。

まさかとは思ったが、それを引き抜くと体の自由を取り戻せた。


「くっ、おのれ!」

「アイン!!あれ、私も動ける!」

「まさかバースの[影縫]から抜け出せたのか!?ちっ、バースの言う通りだゼ。ちんたらやってた俺のせいだナ!!」

「全くでござる!!」


俺は忍者を、ソフィアはもう一人の男ライノスと対峙する。


「答えろ!貴様らは何者だ!」

「何者って、言われてもなぁ。正真正銘のレジスタンスだゼ。あそこでただ無差別に憎しみを吐き出してる連中とは違うゼ」

「どういう事だ!?お前らが彼らを率いて来たんじゃないのか?」

「くっくっく、まぁ間違っちゃいないが。俺もそう命令されただけだしな」


ソフィアの速剣はことごとくライノスに防がれてしまう。

あの素早く鋭い剣筋を見事に斧で封殺する。

レベル以上にこの男、戦い慣れている。


「どうやら、お飾りじゃねーって訳か。さすがあの皇帝の娘だけはあるナ!」

「戯言を!!私は帝国の将だぞ!この程度で負けるか!」


ソフィアは舞うかのように剣を次々と振るう。

斧で捌いて防いでいるが、その手数の多さに徐々に押される。


「くっくっく、いいねぇ!!唆ってきたゼ、お姫様ぁ!!」


ライノスは何かをすると身に纏う圧が跳ね上がる。

だが、これは魔力強化ではない。

[肉斬骨断スキル]。

一時的に体力値を力値に振るスキル、つまり防御を捨てて、攻撃に回す。


「何だそれは…!」

「くっくっく、企業秘密だゼ!今度はこっちから行くゼ!俺の斧を受け止められるかナ!!」

「舐めるなっ!!」


ライノスの一撃をソフィアは受け止める。

だが、威力が強すぎて体が浮いてしまう。


「何!?先ほどより、力が!!ぐあああっ!!!」





「お主、どこかで見たと思ったら、例の留学生でござるか」

「全くレジスタンスにまで顔が割れているのか」

「どうやら正解でござったか。全く、予定外の事態ばかりでござる」


呑気におしゃべりしながらもこの忍者は軽々と俺の攻撃を躱していく。

レベル帯はほぼ同じなのに相変わらず自身のスペックの低さに涙が出る。


「むむ、お主を殺すのは本意ではないのだが」


言い切ると忍者は何かを呟く。

手を何かの形に次々と変えていくと魔力が高まっていくのを感じる。


「くっ、魔法か。いや[忍術]というやつか!」


魔壁を展開すると、忍者の周りから次々と水弾が出現し俺目掛けて攻撃を開始する。

魔力値では俺のほうが上回っているおかげで魔壁で防ぎきる。


「ご明察でござる。やはり魔眼持ちもしくは、[鑑定]系のスキルを使えるのでござるな。見破れなかったのは拙者の不覚でござる」

「ちっ、やりづらい相手だな」

「ならば、こちらはどうでござるか!?」


ご自慢の苦無を両手に持つと、俺へと接近する。

華麗な動きで俺を翻弄しつつ、攻撃を繰り出していく。

俺も負けじとゴーレム剣で対抗する。


「不思議な相手でござるな。強さを感じぬのに、この実力。それもゴーレム錬成士としての能力でござるか?」

「貴様、最初から俺がゴーレム錬成士だと気付いてたな!!」


奴が一歩踏み出し、俺へと近づいた瞬間に魔法を発動させる。


「フレイムウォール」

「何と!!?」


決まった。

この距離だ、例え奴が素早くても躱せる訳はない。

だが、火の壁が収まる前に奴は苦無を俺の方へ投げてきた。


「ちっ!!」

「危なかったでござる。いやはや、舐めていたのは拙者でござったな」


見ると奴の被っている頭巾の一部が焦げているが、ダメージはほぼ喰らってなさそうだ。


「躱したのか…。いや何かのスキルか技か」

「ふむふむ、拙者もおいそれとネタばらしをする訳には行かぬござるよ。ところでそろそろ幕引きでござる」


見ると俺と忍者の目の前にソフィアが飛ばされてきた。


「拙者たちの任務は既に達成しているでござる。お主達を殺めるのは計画外。ライノスは一度火が着くと止めるのが大変でござる。大切な殿下を殺さない為にも、拙者たちはこの場を後にするでござる」

「待て!!う、まさか…!!」


まただ、奴に[影縫]をかけられ、体が動かくなっていた。

見れば、ソフィアの影にも苦無が刺されている。

いつの間に。

俺らが身動きが取れない間に、奴らは屋敷の窓から飛び出していた。


「どうしてどうしてどうして!!どいつもこいつも戦う事しか頭にないんだ!!」

「おい、ソフィア?」


[影縫]のせいで顔を向けることが出来ないが、ソフィアが泣いているのは分かった。

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