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032_ノインの策略

感想・レビューお待ちしております。

「悔しいが奴の言う通りだ…」


俺はミニゴーレムから得たノイン男爵の計画をソフィアへと伝えた。

ソフィアは悔しそうに唇を噛み締めながら、その話を聞く。

隣で聞いていた副官のアーノルドが口を開く。


「ですが、ソフィア様。その傭兵団を捕まえれば、ノインの悪事はバレましょう。元老院が何か言ってくるのはいつもの事。民が救えれば、それだけでも我らが来た甲斐はございます」

「そう、そうだな。ありがとう、アイン!」

「アイン、お主は何故、ノインの隠し事をここまで見破ったのだ?」

「さすがに口頭だけで信用してもらおうとは思っていない。今日、ノインに会ってあんた達が思った以上に立場がないのも知ってしまったしな。使ったのはこいつだ」


俺はアイテムボックスからミニゴーレムを出す。


「なっ、どこからこれを。それにしてもこれはゴーレムなのか?」

「ああ、俺が作った小型のゴーレムだ。数はそう出せないがマスターの俺とリンクしている。これが見聞きした情報は俺へと入ってくる」

「こんな小さいゴーレムを…。さすがだ、アイン」

「なるほどな、これをあのノインの屋敷に放っていた訳か」

「ああ、さすがに奴の話は釈然としないものがあったからな。俺まで帝国のごたごたに巻き込まれるなら、せめて奴の鼻を明かしてやりたかったからだ」

「ふふふ、それは良いな。しかし、傭兵団か。確かに元老院がやっかむのは間違いない。…ノインの言う通りだが、私達が動けば民が安全になるのは事実だ」

「殿下のお気持ちはお察しします。ここで動けば、それは殿下の為となりましょう。民あっての皇族かと」

「…アーノルドの言う通りだ。明日、兵を連れて傭兵団を捕らえるぞ。アインも手伝ってくれるか?」

「ああ、奴の自慢話を聞くよりは楽そうだ」




「おいおい、こいつはどういう事だぁ?」

「貴様らが、ここで移民を殺し回ってるという傭兵団だな?」

「ちっ、どういう事だ。俺らがやってるって証拠はあるのかよ?つか、どっかで見た顔だな」

「おいおい、あいつ。例の『姫将軍』じゃないのか?」

「何!?くそ、ノインの野郎、裏切りやがったのか」

「貴様らの事情は知らん。大人しく我らに捕まるのなら、命は助けよう」

「くそ、ふざけんじゃねぇぇぇ!!ここで殺られる訳には行かねーよ!!」


翌日になり、俺とソフィアは傭兵団の隠れ家を目指した。

彼らにとってはノインが手を切ったのも知らず、罠など一切なかった。

放った斥候がすぐに戻ってくるなり、場所が分かった程だ。

近づくと、傭兵の一人が俺らに気付き話し掛けると、隠れ家からぞろぞろと出てきた。


「ちっ、『姫将軍』だが何だか知らねーが、今この場で殺っちまえば大丈夫だ!!てめぇら、殺るぞっ!!」

「「「おおっ!!」」


「全く…」

「いかがされますかな、ソフィア様」

「やるしかあるまい。何人かは捕らえるぞ」

「おい、お前も戦う気なのか?」

「王国から来たお主は知らんのだな。ソフィア様は『姫将軍』の名に違わぬ実力は持っておるよ」


ソフィアは剣を抜くと、傭兵達へと突っ込んでいく。

続いてソフィアの護衛の兵達も一斉に前へ出る。

だが、皆の視線を奪ったのはソフィアだった。


「へっ、馬鹿が!城でお姫様やってる女に、俺らがやられる訳はねぇ!!…あれ」


そう叫んでいた男はソフィアの剣を抑えようと剣を振るったが、その腕は地面へと落ちていた。


「え?え?俺の腕!!!どういう事だ!!見えなかったぞ!!」

「ちっ、調子に乗るな!!」


背後からもう一人、傭兵の一人が襲いかかるがソフィアは振り向き、駆け抜ける。

追い抜きざまにその傭兵の足は切り落とされた。


「ぐおおおお、お、俺の足が…!!」


その後も来る者を次々と速剣で斬り伏せていく。


「確かに…強いな」

「あれでもまだソフィア様は精進の身、あの剣はもっと速く強くなる」


そう喋りながらも一人の傭兵が近づく。

アーノルドは流れるような所作で剣を抜くと、まさしく一刀の元で両断する。

ソフィアが速の剣に対して、アーノルドは剛の剣と言った所だろうか。


ずっと気になっていたが、我慢出来ずに俺は[鑑定]を発動させる。



【ステータス】

アーノルド・サリャージュ

年齢:57歳

職業:剣士


Lv:59

HP:1847/1847

MP:489/489

力:1052

体力:896

早さ:698

魔力:312

運:43


【装備】

バスターソード

ミスリルプレート


【スキル】

[剣術スキル 8][回避スキル][気配スキル][威圧スキル][剛力スキル][鉄壁スキル][不動スキル]



さすがに強いな。

ソフィアの、いや帝国が誇る第4軍のふくかんだけはある。

ついでにソフィアにも[鑑定]をする。


【ステータス】

ソフィア・ルゥ・ガリオン

年齢:17歳

職業:剣士


Lv:42

HP:989/989

MP:312/312

力:787

体力:532

早さ:596

魔力:295

運:63


【装備】

ミスリルソード

ミスリルアーマー

祈りのネックレス


【スキル】

[剣術スキル 6][回避スキル][気配スキル][加速スキル][怪力スキル][スキル上昇補正スキル]


ソフィアも中々の強さだ。

しかし彼らですら、あのセルビアナには勝てないと言うのだ。

帝国の頂に存在するあの女は如何程の化け物なのか。


「貴様、どさくさに紛れて、[鑑定]をしたな」

「やはりばれたか。すまなかった」

「感心せんぞ。我らで良かったものの、他の将軍にでもすればその場で斬られるぞ」


やはりばれたか。

ソフィアの方は何をされたか気付いていないみたいだ。

おそらく魔力強化にまで至ってないのだろう。

アーノルドは非難したが、得た物は大きい。

第4軍のトップがこの強さなのだ。

他の軍団もおそらくアーノルド並、いやそれ以上の強さかもしれない。


「アイン、あの…」

「どうした、ロザミア。…と、エメもか」

「帝国に来てからまともに戦ってませんわ。わたくし達も手伝ってよろしいのかしら?」


戦ってないって…この二人は屋敷の庭でさんざんやらかしてるはずなんだが。

しかし、戦いに臆していたロザミアならまだしも今の半ば戦闘狂と化したロザミアは心強い。


「というわけだ、ここまで来て何もするなとは言わないよな?」

「ふん、見栄を張るくらいだ。好きにしろ。使えなければ、ワシからソフィア様に言うまでだ」

「うふふ、行きますわよ!」

「マスター、私も行きます」


二人はそう言うなり、4軍の兵士と傭兵達が交じり合う戦場へと駆けつける。


「…えっと、ご主人様」

「クロエは俺から離れるなよ」

「はい!」


ロザミアの魔法剣が唸る。


「な、なんだそれは!?うわぁぁー!」

「強ぇ…、何なんだお前達は!?ぐわあああ!」


傭兵団は次々とロザミアの剣に沈んでいく。

ある者は剣撃と炎によって、斬られ焼かれる。

またある者は剣と風によって防具毎ずたずただ。


「やっぱり実践の空気はいいですわね。ちょっと物足りなさを感じますが」

「これは驚いた。ロザミア殿がこんなに強いとは」

「いえいえ、ソフィア様も素晴らしいですわ。お姫様ですから、もっとお淑やかな想像でしたがあの副官さんに負けじ劣らずの剣裁き」

「いや、私はまだ未熟だ。義姉さんを除けば、私など皇族の中では下の方だ。しかし…、アインの従者の彼女も凄いな」


そう言ったソフィアの先にはエメがいた。


「ちっ、お姫さんに続いてこっちも女だからって油断は出来ねぇな!!」

「偏見ですね。時代が違えば差別ですよ?」

「なっ、早っ!くっ、うわぁぁぁぁ!!!!」

「て、てめぇ、よくも。ぐぅぉぉぉぉ」


エメの棍は次々と傭兵達を潰していく。

エメの強さは速さも然ることながら、あの細身では信じられない程の髄力である。

それを見抜けずにいる傭兵達は力の差も分からず、攻撃を受け止めようと構えるが逆に武器や防具事砕かれてしまう。


「何という強さだ…。確かにワシは侮っていたようだ」

「あいつらは特別だ。俺はあそこまでバケモン染みてないないさ」

「それを束ねてる、お主が言うことか」


確かにそうなんだが。

などと考えていると、俺らに傭兵の集団がけしかけてくる。


「彼女達だけにやらせるのも、格好が着かない。俺にやらせてもらうぞ」

「ああ、そこのメイドはワシに任せておけ」


俺はアイテムボックスから槍のゴーレムを取り出す。

そして槍からの詠唱を確認すると、集団の頭上へと[空歩]で飛び上がり集団に向けて槍を投げる。


「上からか!!」

「馬鹿め、素人の槍が当たるかよ!!」


腐っても傭兵だ。

俺の適当な槍投げには当たらない。

だが、狙いはそれじゃない。


「なっ、槍から!?」

「魔法だ!!ぬぅおおおおお!!」

「ぐああぁぁぁ!」

「ぐぅぅぅ!!!魔槍か!?」


地面に突き刺さった槍からは雷魔法である【ライトニングスパーク】が放たれる。

槍にだけ気をつけていた連中は魔法の餌食となる。


「まだ生きてるのがいるか…。まぁ、魔槍ではないんだけどなっ!」

「なっ、今度は火魔法だと!!?ぐぅああああ!!!!!!」

「てめぇ、魔法使いか!!うわああああ!!!!


俺は次々と各武器ゴーレム達で殲滅していく。


「…えっと、ご主人様凄いです」

「言うだけはあるな。さすがはゴーレム錬成士か。戦い方が独特だ」


きっとそこそこに名のしれた傭兵団だったのかもしれない。

だが、第4軍の。

いやソフィアに目をつけられたのがお終いだ。

壊滅するまでにそう時間がかからなかった。

ソフィアは宣言通り、手や足を切り落とし動けない傭兵の何人かを捕らえた。


「良くやった、皆」


さすが正規軍と言われるだけの兵たちだ。

どれも練度が高く、何人かは軽い負傷をしたもののこちらには死人は一切出なかった。


「それにしても、噂以上の実力じゃないかアイン。いや、アインだけでなくロザミア殿もエメ殿もかなりの実力だ。帝国の将達にも負けない程だ」

「いえまだまだですわ。帝国に来てから、初の実戦ですもの。だいぶ体がなまってましたわ」

「相手が弱かっただけです。特に傭兵と言ってましたが、やってる事は盗賊と同じ。戦い慣れしていない連中ばかりでした」

「そういうお前も、十分な強さじゃないか。それに兵の練度も高く驚いた」

「私はまだまだ。聖エルス騎士…いや、軍を率いるにはまだ力が足りない。アーノルドが補佐してくれなければ私はここには立てていない」


聖エルス…。

ソフィアはふとそんな事を呟いていた。


「ところで、アインが使っていた武器は魔導具なのか?」

「ん、まぁそんなところだ」

「魔導具か。アインなら同じ物を用意出来るのではないか?」

「用意か…。不可能ではないが、用意ってどのくらいなんだ?」

「可能な限り」

「つまり大量にという事か」


ソフィアは自身を、第4軍を強くしたいのだ。

俺は少し考えた後、口を開く。


「正直、難しい…が、不可能ではない。劣化版なら素材次第では出来る。ただそちらに素材の都合を付けてもらうのが前提だ」

「なるほど…。素材か何が必要になる?」

「待て、その前に何故必要なんだ。俺は一応王国からの留学生となる。無断で帝国に俺の力を貸したとなれば、あっちでの立場がない」

「…そうだな。すまない、少し考えさせてくれ」


おそらくソフィアは信頼出来る人間なのだろう。

だが、それはあくまでも帝国と王国が友好な姿勢を見せてる間だけだ。

もし互いの国で戦争が開始されれば、俺の与えた力はそのまま俺を襲いかねない。

だが、ソフィアも帝国に思うところがあるようだ。

その理由次第だが、さすがに心の奥に隠してるものまでは簡単には引き出せないか。


「とりあえず、ノースボアへと戻ろう。あの男爵の鼻も明かしたいしな」

「ふっ、それは結構だ」


俺達は来た道を引き返し、ノースボアへと目指す。

さすがに男爵もソフィアが殺されるとは思っていないだろう。

だが、この戦果だ。

少しはおもしろい反応が見れるかもな。


しかし、ソフィアの抱えてる問題と元老院との確執。

そして皇帝と他の皇族やレジスタンスの存在。

帝国への復讐はまだ始まっていない。

帝国の事情は複雑すぎる。

だが、必ず俺が帝国へと付け入る隙があるはずだ。

いつかあの皇帝とセルビアナに俺の刃を届かせてやる。




「そんな馬鹿な…」

「こ、これは!?ソフィア様、お気を確かに!む、あの旗は…」

「反帝国。レジスタンスか!!」


長閑で平和なノースボアは今、燃えていた。

ノースボアの人々が丁寧に作っている葡萄畑は踏み荒らされ、そこにも火の手が上がっていた。

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