030_復讐の相手と帝都
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約束通り、ソフィアは俺らを貴族御用達のレストランへと連れてってもらえた。
改めてそこで俺は仲間の紹介をする。
女が多いなといういつものお約束もあった。
ソフィアの方は老齢だが逞しい武人を連れている。
副官のアーノルドだそうだ。
「おいおい、いいのかここで話して?」
「ああ、構わない。ここは私の一派が経営しているレストランだ。ここなら監視の手も入らないよ」
聞けば、城内のほとんどは監視されている。
他の留学生もそうだが、特に俺の監視はひどいとの事だ。
俺自身、そんなに監視がひどいならすぐに気付くと思うのだが、どうも相手は城内のメイドや執事など。
彼らはあくまでも城の仕事として行っている。
悪意も害意もなくやっている。
もっと露骨にやってくれればとっ捕まえるんだが。
監視は何も皇帝がやってる訳じゃない。
あっちは皇子派や、こっちでは元老院など。
正直、入り組みすぎてて面倒だと思う。
「とはいえ彼らのやってる事はただ見て報告するだけだ。アイン達の行動を制限するものじゃないよ」
「じゃあ城を出てっても何も言われないと?」
「ああ、その通りだ。けど、いずれは居場所を突き止められるがな。まぁ、彼らのやってる事を肯定するわけじゃないがテロリストから守るという建前もある」
「使命を持っているだけ厄介だな」
「まぁそういうなアイン程の腕前なら並大抵の奴らなら相手にならないのは知ってるよ。保護という名の監視じゃ、迷惑にしかならないのもな」
「ホント、その通りだ」
「この帝都に使っていない屋敷がある。ここなら父上も兄上も手出しは出来ない場所だ。そこを提供しよう。必要なら従者を貸すが、信用出来ないのなら従者もなしで構わない」
「破格の条件だ。俺達にとって、都合が良すぎないか?…理由が知りたい」
アーノルドが一歩前へ出る。
「私から説明しよう。ソフィア様は優秀な人材を欲している。先程の話もそうだが、帝国内部は分かれている。ソフィア様の父君でもある皇帝陛下、そして皇子二人それぞれの派閥、それと元老院だ。彼らは自らの権力を高める為に民の事などお構いなしに争っている。ソフィア様はそれを憂いておるのだ。民があっての国だとソフィア様はお考えだ」
「面倒この上ない事情だな」
「ああ、その通りだ。民を守るには力が必要だ。そこで貴様という事だ」
「それでいつかは帝位を手にしたいと?」
「違う!私はそんなのには興味ない!」
ソフィアは声を荒げる。
「すまない…アイン、声を荒げてしまって。だが違う。私は帝国を手に入れたいとかそういう訳じゃない。私達は他の勢力に比べたら弱い。この国では弱さは悪だ。私の意見など通らない。その為に力が欲しいんだ。力を貸してくれないか、アイン。君が帝国にいる一年でいい」
「理由は確かに…納得出来るものだ」
俺はちらりとみんなを見る。
俺の判断に任せるみたいだ。
はぁ…一人なら即断したのだが、こう増えると判断には責任が伴うなと感じる。
「良いだろう、条件を飲む。俺からいくつかある。まず従者は不要だ、ここのクロエが家事は行えるしな。せっかく帝国に来たんだ、色々と見たいものがある。それの許可や手配をお願い出来たらと考えている。最後になるが…何で俺なんだ?帝国内でも強い冒険者はいるだろう?」
「条件は了承した。難しいものもあるけど、これでも皇女だ。融通は出来ると思う。…それとアインを選んだ理由。それは君がゴーレム錬成士だからだ」
「それか…」
「ああ、私もゴーレム錬成士の伝説にあやかりたいのだ。かつて帝国にいたゼペットというゴーレム錬成士は帝国科学の三大師父の一人だ。そのゼペットと同じ力を持っているアインと手を組みたい」
「三大師父?」
「ゴーレム錬成士のゼペット。ホムンクルス錬金師のパラケルス。魔導技師のルゲイエ。彼らの事を三大師父と帝国では呼んでいる。彼らのおかげで帝国の科学力は格段に飛躍したと言われている」
ジジイめ、帝国だとそんな要人だったのか…。
しかし、帝国での栄光を捨ててまで逃げてきたのか。
「つまりゼペットのように俺に色々と作って協力しろという事か?」
「無理にとは言わない。あくまでも冒険者としての力だけでも構わない。その…君とゼペットの関係は知っている。知っててお願いしているのだ、わがままは言えない」
「そうか…」
ソフィアの考えや理由は分かった。
だが、ソフィアの彼女達の派閥の目的だけが見えない。
少なくとも俺とは敵対するようには見えない。
なら協力するのも悪く無いだろう。
「もう一つ、クレーヌ村を知ってるか?4年前、帝国に滅ぼされた村だ」
「クレーヌ…、すまない私は知らない。アーノルドは何か知ってる?」
「いえ、クレーヌという名前に聞き覚えはありません。帝国では戦いがあれば記録は必須。たとえ地図にない村や街でも記録上はそこに残るはずですが、聞いた事ありませんな。ただ…」
「ただ、何だ?」
「4年前、セルビアナが出陣したのですがその時の事は何一つ記録されておりません」
「セルビアナが?」
「ええ、ソフィア様はまだ幼かったので知らされていないのでしょう。ソフィア様の兄上や元老院は追求しましたが、ソフィア様の父君が黙殺されました。もしかすると…ですが」
セルビアナ…。
あの青白い髪の女。
あの時、いたのか?
俺はあの時母さんに抱きしめられ…。
いや、違う。
見ていた、母さんを殺した奴を。
思い出した。
そうだ、あいつと目があったんだ。
あの青白い髪の女騎士。
セルビアナ。
そうだった…!!
あいつが!!
「アイン、アイン!大丈夫ですの?」
「マスター!」
「ご主人様!」
あいつだ。
あの女が俺の大事な物を…!!
そうだ、あいつと皇帝だ!!!!
許さん…、許さん!!!!!!!
「アイン!!!」
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「ご気分はいかがですか、ソフィア様?」
「え、ええ…、だいぶ良くなりました」
最後に見せたアインのあの顔…。
恐ろしかった…。
まるで悪魔そのものだ。
謁見の間でも垣間見た恐ろしさだが、目の前で浴びるとあんなにも恐ろしいものだなんて…。
「しかし良かったのですか?私の意見ですが、彼は…危険です。まだ今なら私でも彼を殺せます。ご命令とあらば、いつでも」
「やめるんだ、アーノルド。彼は味方だ!例え、私達は悪魔に魂を売ってでも勝てねばならない!」
「味方…。そうでしょうか。彼はおそらく陛下、いや皇族の誰一人として許さない。そんな雰囲気でした」
「例えそうだとしても…。彼が私達の目的を達成してくれるなら、私の命など!!」
「殿下!!いけません…、私はシルキー様に誓いました。ソフィア様を守りぬくと。ですから、そのような事を仰らないで下さい」
「す、すまない、アーノルド。少し時間をくれ。彼が味方となるか敵となるか、もう少し見極めさせてくれ」
彼に期待したい。
けど、本当にいいんだろうか。
アーノルドの言う通り、彼は危険だ。
その狂気のような憎悪は私達に向くのでは?
しかし、私達には力がない。
彼ならもしかすると、父上に届くのではと期待してしまう。
そう例え、悪魔だとしても力を借りなければ父上を、帝国を倒すなど到底叶わないのだ。
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「うっ…、あれ?」
「マスター、起きましたか」
「エメ…、ここは?」
「例のソフィア様によって提供された屋敷です」
「そう…か。なるほど、気を失った訳か」
「気分は?」
「ああ、平気だ」
「セルビアナ…。彼女がマスターの故郷を奪ったのですね」
「…ああ。そしてそれを命じた皇帝だ」
ベッドから起き上がる。
エメはずっと俺を見ていてくれたようだ。
当然マスターである俺を守るのは当たり前なのだが、エメの行動はそれだけじゃないように感じる。
それのおかげで、俺は自我を手放さずに済む。
「アイン!目が覚めましたの!?」
「ご主人様!」
俺とエメの声を聞いたのか、部屋の外からロザミアとクロエが入ってくる。
「「良かったぁぁ(ですわ)!」」
「ちょ、おい、平気だから」
二人は俺に抱きつくと嬉しそうにする。
「すまない、心配かけたな…」
「ええ、無事でしたら問題ありませんわ」
「…えっと、ご主人様、気分はいかがですか?」
エメだけじゃなく、この二人も心配をかけてしまったようだ。
俺は改めて、現在の帝国の状況やどうするかを話し合う。
「…えっと、ご主人様は見ればスキルを手に入れられるんですか?」
「正確には手に入れるというより、収集だな。俺が使うというよりはゴーレムに付与出来るんだ」
「ずるいですわね…。あぁ、いえ、別にアインを責めてる訳ではございませんわ。それがあれば、例の最強にも届くのでは?」
「いや…どうなんだろう。俺も擬似的だが魔力強化を使えるようになったが、それでもあいつには敵いそうにもないな」
「はっきり言いますわね。まぁ、わたくしも見ましたがあれは別物ですわね」
「ソフィアの話には乗ろうと思う。…正直、皇族というだけで虫唾が走るのだが、それでも見返りはでかい。あいつ入れば、色々な物を見れる。それは俺の力になるという事だ」
「わたくしも構いませんわ。アインが望むようにしてくださいませ。わたくしは…あなたの剣ですから」
「…えっと、私はご主人様のご迷惑にならなければ、全てを捧げました。この屋敷の事は任せて下さい」
…俺の為にここまで。
正直、巻き込みたくないと思う反面、ここまで力を貸してくれる二人の為にも何としてでも目的を達成してやると決意が深くなる。
提供された屋敷を見て回る。
事前に、ロザミアとクロエに確認してもらったので罠や監視の目がないのは確かだった。
しかし、皇女殿下の用意する屋敷だ。
とてもじゃないが、俺達4人が済むには広すぎる。
そして地下には無駄に広いワイン蔵がある。
まぁ、丁度いい。
工房にするにはうってつけだ。
工房の準備と合わせて、念の為屋敷のあちこちにミニゴーレムを配置させる。
これなら帝都周辺にいる間は、屋敷の監視体制は万全だ。
離れる際は工房事、アイテムボックスへ収納すればいい。
ここを拠点に、俺はゴーレムのさらなる強化を目指す。
そう皇帝の喉元に届くような強さをこの1年で手に入れる。
「今度こそ負けませんわ!」
「ご随意にどうぞ」
二人は屋敷の庭で模擬戦を繰り広げてる。
ロザミアはレイアとの修行ではほとんど実戦形式に近い模擬戦で、徹底的に叩きのめされてその力を身につけたそうだ。
あのレイアらしいといえばそうなんだが、それに食らいついていたロザミアも凄い。
ちなみに今の模擬戦ではエメの圧勝だ。
屋敷の庭での模擬戦なので、互いに魔力強化やロザミアは『魔法剣』は使うなと言ってある。
屋敷内こそ監視はないが外からなら誰でも見えてしまうからだ。
…というのは建前で本当は借りてる屋敷を壊しでもしたら、何と言われるか分からないからだ。
「…えっと、ご主人様。私は買い物に行こうと思うのですがよろしいですか?」
「買い物?欲しいものがあるのか?」
「…えっと、みんなのご飯を用意しなくてはならないので」
「あ、そうか。確かに必要だ」
今までは帝国城で食事を出されていたし、王都でも宿での食事だった。
今日からは自分達の飯は用意しなくてはならない。
と言っても、外で食べればいいやとクロエには言えないな。
「そうだな…。俺もついていくよ」
「い、いえ!ご主人様にそんな事はさせられません」
「まぁ、そのなんだ。一応、帝都にはどんな人間がいるか分からないしな」
「…えっと、嬉しいです、ご主人様!」
クロエは目を潤ませて、俺にそう伝える。
心配なのは確かだが、本音は帝都を見てみたかったりもする。
こんなクロエを見てしまったら、それに応えてあげようと思う。
「行こうか」
「…えっと、はい!」
エメとロザミアに一言声をかけてから出発する。
あっちはかなり盛り上がってるのか、ついてくるとは言ってこなかった。
「…えっと、凄いですね!」
「ああ、これは…凄いな」
今、目の当たりにしてるのは人の波。
どこを見ても人、人、人だ。
世界最大共言える帝都にはそれだけ多くの人が住み、あらゆる物がこの帝都に揃う。
着いた時は駅から降り、そのまま護衛されて城に入ったのでこんな人混みを体験しなかった。
田舎丸出しで惚けて歩く、俺らに何度もすれ違う人とぶつかってしまう。
「きゃっ」
「大丈夫か、クロエ?」
「…えっと、はい」
華奢なクロエには荷が重かったかと思ったが、案外しっかりと買い物は淡々とこなしていた。
気付くと店員と揉めてるなと思えば、ちゃっかり値切り交渉をしている。
俺が主と言う事なので、みんなの分も俺が支払いを行う。
「…えっと、ご主人様大丈夫ですか?」
「あ、ああ。と言うかクロエは良く平気だな?」
「ここ程じゃないですが、王都の人混みにも慣れてましたから」
「そ、そうか」
日本でも満員電車なんかを体験してた俺なのに、クロエの方が逞しいなんて。
「…えっと、ご主人様は回りたいところはありますか?」
「ああ、そうだな。商会と、鍛冶屋は見たいな。時間があれば、冒険者ギルドも行っておきたい」
「…えっと、商会はあっちに鍛冶屋はさっき通り過ぎましたね。冒険者ギルドは分からないので、聞いてきます」
「え、あ、ああ」
何だかクロエがいれば、どこへ行っても大丈夫そうだ。
帝都と言えば科学技術だ。
それを扱う職人のスキルはどんなものかと思ったが、今俺が保有しているものよりは低かった。
商会でもめぼしい素材はなかった。
気をとり直して、俺は冒険者ギルドへ行く。
ロザミアとエメには悪いが後で場所を伝えよう。
「あら、いらっしゃい」
入るとすぐに受付嬢に話しかけられる。
美人だ。
美人なのだが、やたらと化粧が濃いな。
「俺らは冒険者だ。ここでの変更登録を頼みたい」
「そういう事ね。じゃあギルドカードを出してくれるかしら?」
カードを渡す時に気付いた。
「お、男?」
そう顔は美人なのだが、体格が良すぎる。
それにでかい胸は鍛え上げられた筋肉だった。
「あぁん、どういう事よ!?」
先程までは澄んだ声だったのに、ドスの効いた声に変わる。
「す、すまん。知らなくて」
「い、いえ、こちらこそ。最近、私達のような人をバカにする連中が多くて」
「い、いや、こちらこそ配慮不足だった」
私達?
気になり周りを見渡せば、ばけ…ではなくお姉さんの格好をしたいかつい冒険者ばかりだ。
一体、何なんだ。
「あれ、あなた…まさか。ウッドベアのアイン?」
「まさかってのは分からないが、アインだ」
「きゃあ!こんな所でギルドの英雄様に会えるなんて!あ、そうだ、ギルド長呼ばなくちゃ」
「え、英雄?」
まさかギルド長もこんな感じなのか。
俺は身構えてギルド長を待つが、来たのは優しそうな雰囲気の男だった。
「やぁ、君がアインくんだね」
「え、ええ」
「そんなに身構えなくても、平気だよ。ここだと人の目もあるし、奥へ行こうか」
「はい」
クロエもこのままにしておくのも忍びなくて、同行の許可をもらう。
「ふぅ、すまないね、ギルドがあんなんで驚いただろう」
「えぇっと」
「あはは、まぁ気にしなくていいよ。あれはそのある冒険者が原因だから」
「冒険者?」
「ああ、帝都のSランク冒険者。『剛血』のマスラオ。彼がね…、冒険者ギルド内に不正をする者が今後出ないように鍛え直すと言ってからああなってしまって」
マ、マスラオ…?
名前からするにとんでもなく快男児を想像するんだが、みんなを女装趣味に走らせるのか。
「何はともあれ、帝国へようこそ。王国から来た君には帝国は苦い場所かもしれないが、当ギルドは歓迎するよ」




