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029_帝国の頂

感想・レビューお待ちしております。

帝都・ヴァナディス。

帝都の駅に着いた俺らは、帝国城を目指した。

城に着くと客室へと案内され、ここを好きに使って欲しいと言われた。

ここが1年間、俺の部屋となる。

また他にいい所があれば、そっちへ移ってもいいとの事だった。


帝都は俺が思うよりも美しく立派な首都だった。

”紅”の都。

その街並みは赤レンガで建てられた建物が多く、そう呼ぶのに相応しい景観だ。

大きな建物は、ビルと言ってもいいような建物だ。

王国はまるで中世という雰囲気だが、こちらは近代と言ったところか。


仲間は帝都を見たがっていたが、馬車組が到着するまでは外出禁止を言い渡された。

3日後、城にも慣れ始めたくらいに馬車組を到着した。

乗ってるだけとはいえ、馬車での長距離移動は疲れるのだろう。

皆、ぐったりした顔を見せていた。


使用人の一人から、翌日にでも皇帝が俺達と謁見すると伝えてきた。

ついに。

ついに…待ち望んだ相手と対面出来る。

帝国の頂点にして、全ての災厄の根幹だ。

いやそう決めつけるのは早いかもしれない。

俺は切に願う。

皇帝は、殺すのに復讐するのに相応しい外道であって欲しいと。

ただの好々爺だったら?

権力争いの一環で、皇帝は知らずの内に俺の村が蹂躙されただけであったら?

この扉の向こうに答がある。

扉は開かれ、中へと歩みだす。


「よく来た、王国の客人よ」


謁見の間、その奥にある玉座から声がする。

言葉の内容とは裏腹に、そう言うべきだから伝えたというだけの声。

その声を発するのは老人だ。

ただの老人ではない。

額には大きな傷があり、顔の一部は火傷の跡で白くなっている皮膚が存在する。

する度眼光はまるで獅子のようで、眉間には大きな皺が寄っている。

言わずとも分かる。

この者こそが皇帝だと。



皇帝の横には絵画になっていそうな美しい女性が立っている。

青白き髪に、白い肌。

そして何故か首には奴隷が付けるであろう首輪がされている。

何も知らなければ、この女性はただ皇帝の好みの女だと思うだろう。

だが、その目は奴隷のものでも、ただの女としてでもない。

腰には儀礼用だが剣を帯刀している。


この二人の存在感に圧倒されていたが、見れば他にもその強さを隠す事なく見せつけている連中ばかりだ。


「楽にするがいい。余がこの帝国の皇帝、アグニス・レイ・ガリオンだ。長い旅路で疲れたであろう。しばらくは帝都でゆっくりすると良い。それぞれ案内をつけよう」


謁見とは言われたが俺達に口を開く権利は存在しない。

それを分かってか皇帝は興味深そうに見ている。

そうまるで、獅子の檻に入れられた鹿だ。


「中々に有望そうな学生達だ。余の帝国で、しかと勉学に励むが良い。我ら帝国と王国の栄えある未来の為にな」


俺は皇帝の一字一句を漏らさずに聞く。

この男が何を考え、何を成そうとするのか。

言葉の一つ一つが俺の憎しみの糧になる。


「ところでアインとはどの者だ?」


いきなり名指しで呼ばれる。

何故俺の事を知っているのか。

気にはなるが、俺は意を決して忘れ声を上げる。


「はい、俺です」


俺は一歩、前へ出ると跪く。


「ふむ、貴公がアインか。ゴーレム錬成士…希少な職業だ。かつて帝国にもおったぞ。名を…なんと言ったかな」

「ゼペットです、陛下」


謁見の間にいる将の一人が答える。


「そうであった、ゼペットだ。かの男も中々に優秀であった。時に王国で没したと聞いておる」


くそくそくそ…こいつ!!!

分かってて言っているのか!!


「いずれ、貴公も優秀になるのであろう?期待しておるぞ」


おのれ…!!

今まで俺から奪い続けていた帝国の頂点がすぐ目の前にいる。

近くにいる。

それだけで俺は心の中で皇帝への憎しみが募っていく。

俺はそれを隠せず、憎しみの篭った目で頭を上げる。


「なっ…!!?」


気付くと、俺の首筋に青白い髪の女の剣が突き立てられていた。

この女、一瞬でここまでの距離を!?

全く気付けなかった。


「辞めよ、セルビアナ」

「はっ」


セルビアナと呼ばれた女は剣をしまうと皇帝の元へと戻っていく。


「すまぬな、此奴は余の剣。余にとって害を為すものを始末するのが仕事よ。何故、貴公に対して剣を向けたのか。余の剣は正確ぞ。良からぬ事でも考えておったかのか」

「い、いえ…」

「主は客人。首と体が離れたとなれば、王国に失礼になるな。くっくっく、良い。下がっていいぞ」


くそ!!!!!!!

俺は弱い、弱すぎる。

もしあそこで1mmでも動けば、あのセルビアナは迷いなく剣を振るった。

俺の力じゃ、1mmも届かないのだ。


「アイン、平気ですの?」

「ああ、大丈夫だ」

「ですが、まだ顔色は悪そうですね」


謁見には随行員の同行は許可されていなかった。

エメ達がいなかったのは幸いだろう。

謁見は終わり、今は簡単な歓迎パーティーだ。

他の留学生達は貴族相手にご自慢の話をしている。

謁見の間にいた怪物達にあてられなかったのは、それだけの強さを把握するまでに至ってないからだ。

俺はもちろん、ロザミアも怪物達の覇気にあてられ今でも顔色が少し悪かった。


「ちょっといいか。君はアインだな?」

「ああ、そうだがお前は?」


ふと声をかけられると先程の謁見に参加していた少女がいた。


「私か。私はソフィアという。少し君と話したくてな」

「ソフィア?」


どこかで聞いた事がある名前だと思ったが、その風貌でピンと来る。


「なるほど『姫将軍』か?いや、皇女様でしたか」

「その名れを知っているとは。恥ずかしい仇名だ。そうか、教えたのはおそらくクルスだな。それと普段の言葉遣いで構わない。そっちの方が私も話しやすいしな」


『姫将軍』ソフィア。

クルスが教えてくれた、皇帝の娘。

つまりお姫様にして自ら軍を率いて民を救う存在。

だが皇女の娘だ、その雰囲気から話しやすさを受け取るが、ついつい警戒してしまう。


「それはありがたい。なるほど、それで用事とは?」

「そう…警戒しないでくれ。用事という訳ではないんだが、話がしたくてな。先程の父上の非礼を許してくれ」

「皇帝の娘である、あんたがわざわざ謝りに来たという事か?」

「今回の留学には色々と思う所はあるだろうが、少なくとも歓迎している者もいるんだ。私もその一人という事さ」

「歓迎ね。まあお姫様からの直々の言葉だ、無碍には出来ないな」

「やめてくれ、お姫様という柄じゃないんだ。この帝国は力が全てだ。だからこそ、ゴーレム錬成士としても冒険者としても有名なアインに、父上は白羽の矢を立てたのだろう」

「有名?全くそんな自覚はないんだが」


それなりに王国では大人しくしていたつもりだったんだが、帝国は俺の事を調べているのか。


「ふふふ、まぁ冒険者ギルドから帝国へと苦情が入ったくらいには」

「あぁ、そういうことか」


つまりはウィレームの街での一件。

冒険者ギルドは見抜けなかったとはいえ、利用されたのだ。

つまりは抗議をした結果、俺の名が知られてしまったと。


「ところで、皇帝の隣にいたあの女将軍は何だ?」

「セルビアナか。あれは父上の剣、父上の敵を倒す為だけの存在だ。父上の命には絶対服従をして、どんな無理な戦いでも勝つ。つまりはこの帝国における最強の将だ」

「最強…」


俺が首に突き付けられた剣筋。

確かにそう言われて頷ける程の速さだ。


「まぁ実際、セルビアナがいるおかげで父上は負けを知らない。いかな暗殺者だろうとセルビアナは誰一人として見逃さず、また戦場においても有能な指揮官であり、戦いにおいても最強だ」

「そこまで言い切るとは。だが帝国には他にも強い奴は多いんじゃないのか?」

「確かにそうだが、セルビアナには勝てない。私を含めて今いる帝国の将達は全員セルビアナに挑まなかったからここにいるのだ」

「とんだ化け物だな…」

「それを御してる父上もだよ。どんなに優秀でも父上に逆らい、セルビアナに挑んだ者を決して許さなかった」

「あの皇帝らしいな」

「帝国は力による支配だ。それを崩せば全てが終わる。だから父上は手を緩めない。兄上達もいつかはと思っていたけど、考えなくなったよ。父上が老衰するのを待っているだけだ」


セルビアナか。

あの存在に追いつけない限りは、俺の復讐には辿り着かない。

しかしあんな化物に勝てるのか。

俺も僅かだが強者と呼ばれるくらいの存在とは戦ってきた。

だが彼女は何か違う。

そう、人外と呼ぶのが相応しい圧を持っていた。


「景気付けにと思ってきたんだが、つまらない話になってしまったな。すまない」

「あー、いや気にするな。俺には興味深い話だ」

「ふふふ、人の国の内部事情を興味深いというとは、あそこにいる貴族なんかに知れたら卒倒だぞ」

「そうだな、気をつけよう」

「そうそう、アインの案内役は私になった。基本的には留学中の1年間は私と共にいる事になる。よろしく頼むな」

「案内役?ああ、皇帝が言っていたな。他の貴族連中よりかはよっぽど気を抜いて過ごせるな」

「ふふふ、アイン。君はおもしろいな」

「1年はこの帝国にいるんだ。まともに話せる人は作っておきたいのさ」

「そうか、なら退屈な1年にしないよう頑張るとしよう」


ソフィアは俺が思う以上におもしろく、話しやすい人物だ。

俺も楽しく話に乗っているが、違う。

目で何かの合図を送っている。


「それではな、他にも挨拶をせねばならない相手がいるのでな」

「皇女ってのは大変だな。ああ、ではまたな」


ソフィアは俺の横を通り過ぎていく。

そして通り過ぎる瞬間に。


「気をつけろ、監視がついている」


それを伝えると去っていった。





「戯れが過ぎませんか、陛下」

「ふっ、戯れだと。あの程度はほんの遊びに過ぎぬ。セルビアナ、あの者はどうだ?」

「大した事ありません。ですが、彼がゴーレム錬成士ならばいつかは…」

「いつかは…か。ゴーレム錬成士の行き着く先というやつか。…だが、あの者がもしそうであればだ。試しにとゼペットを囲っては見たがその兆しは見えなかったしな」

「極稀にいるのです。その者は我ら…いえ、世界にとって破滅をもたらすのです」

「レミリアの教えか。ただの伝説かと思っておったが、主が言うと真実と言わざるを得ないな。王国との約束では1年。この1年で余は血の門を刻む。そうなれば、王国と言わずこの大陸は全て余の者とする」

「…陛下の赴くままに」

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