026_憎しみの色
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帝国行きまで残り二週間。
本来であれば、自分のゴーレム軍団の強化をしたかったが色々やる事があり今日にいたる。
そして、他にもやらなければならない事が。
ロザミアだ。
例の夜会で決められた場所に俺は向かう。
着いた場所は騎士団の訓練場。
ロザミアとレイアは早く着いていたのか、俺を待ち構えていた。
「よく来たね!逃げ出さなかったのは、褒めてあげるよ」
「お前が見届け人じゃ、逃げ出そうにも地の果てまで追って来そうだ。それにこれは俺とロザミアの話だ。俺が逃げ出すわけには行かないさ」
「あはは、いいね!あんたのそういう所は悪くないよ!」
「来てくれて、ありがとうですわ、アイン」
「ふっ、これから戦うのにありがとうはないだろ、ロザミア?」
「ええ、そうですわね。わたくしは貴方にどれだけ追いついたかお見せ致しますわ」
「気合い十分だな、二人とも。細かいルールはねぇ。どっちかが殺しそうになったら止めてやる。準備が出来たら言ってくれ」
俺は一旦ロザミアから離れると、心配で着いてきた。
エメ達と話す。
「何もマスターが戦わなくても良かったのでは?」
「そう言うな。ロザミアは俺に近づきたくてがんばったんだ。それを無碍にする訳には」
「…えっと、ご主人様がんばってください」
「ああ」
ロザミアと戦うのに決めた事がある。
軍団は使わないという事だ。
あくまでもロザミアは俺としての実力を知りたいのだ。
まぁ、戦いに不得手なのだから、ロザミアの実力次第では俺がやられる事も十分あり得る。
今日の模擬戦は騎士団の訓練場を借りている。
訓練場を囲うように騎士達も観戦している。
まぁ、仮にもAランク冒険者と、Sランク『双葬』の弟子であるロザミアとの戦いだ。
模擬戦とはいえ、見応えがある一戦なのだろう。
「アイン、本気で来て下さいませ。勝っても負けてもわたくしは、貴方と全部を出し切ってぶつかりたいのですわ」
「ああ、前から言ってるが俺自身は弱いからな。全力でやらないと、こっちがやばいよ」
「よしいいな、二人とも!思う存分やれ!!それでは、はじめ!!」
模擬戦が開始された。
俺の想定通り、ロザミアは接近戦に持って行こうとする。
後方へと下がりつつ、剣から魔法を発動する。
「アースウォール!!」
「やはり魔法ですのね!」
[土魔法]で壁を作り、ロザミアの接近を防ぐ。
俺はもう一つの剣の魔法発動を促す。
「甘いですわよ!」
「上か!!」
ロザミアは土壁を軽々飛び越えると、頭上から攻撃を仕掛ける。
こちらはまだ魔法発動に至ってないので、防御に回る。
「やっと捉えましたわ、アイン!」
「軽々飛び越えるなんてな。思ったより強くなってるな!!」
鍔迫り合いから、一瞬の隙を見て魔法を発動させる。
「フレイムランス!」
「くぅぅ、はっ!!」
俺の剣から放たれた炎の槍はロザミアへと向かっていく。
だが、ロザミアは空いた手にどこかから剣を取り出し炎の槍を弾いた。
「アイテムボックスか!しかも、剣で魔法を…。魔力強化か!」
「ご名答ですわ」
ちっ、まずいな。
俺の想像以上にロザミアは強くなっている。
[鑑定]を発動しようにも、こう互いに激しく動き回って仕掛けられない。
おそらくは俺と同レベル帯。
しかも、相手は接近戦に秀でている。
「アイン、貴方から復讐を取り除く事は出来ませんの?」
ロザミアは二刀流のまま、接近戦を仕掛けると俺に話しかけてくる。
「無理な話だな。それを分かってて俺に挑んできてるんじゃないのか?」
「ええ、そうですわ。けれど…。わたくしの惚れた殿方です。望む事をさせたいですが、それ以上に幸せになって頂きたいのですわ」
「なっ!本気か?」
「ええ、本気ですわ。例え貴方が復讐に取り憑かれていようとも、他の女性を好きになろうとも。私の気持ちは変わりませんわ!!」
ロザミアは全身を魔力強化する。
接近戦で剣で打ち合っていたが、いきなり上がった髄力に吹き飛ばされる。
「…えっと、ストレート過ぎます!」
「…ロザミア!強敵ですね」
「まだまだですわ!私の本気は!!」
「くっ、まずい!!」
髄力だけじゃない。
速さも技のキレも格段に上がっている。
俺は一方的に押され始める。
「くそ!」
「アイン、その程度ですの!?」
何とか防ぎつつも、距離を取ろうと必死になるがその度追い詰められてしまう。
「ちぃっ、強いなロザミア!」
「嬉しい限りですわ、アイン!」
何とか隙を生まなくては…。
苦肉の策だが、近距離で魔法を発動させる。
「ダークバースト!」
「まさかこの距離で!?」
闇の爆発が俺とロザミアを襲う。
魔法の発動には距離が必要だ。
何故なら近くで発動すれば術者にも、その魔法のダメージが返ってくるからだ。
俺は魔壁である程度はダメージを軽減させる。
これで少しはロザミアも大人しくなればいいんだが。
今のあいつがこの程度、ダウンするとは思ってはいない。
「や、やりますわね…」
「さすがにお前も無傷では済まなくて良かったよ」
向こうも咄嗟の判断で魔壁をはつどさせたみたいだ。
だが、見れば身につけている服が損傷している。
ある程度はダメージを削れた。
だが、おれ自身もかなり食らってしまった。
取り繕ってはいるが、正直このままでは勝機を見出すのは難しいな。
「まだやれるのか?」
「ええ、もちろんですわ!」
今ならいける。
[鑑定]を発動させ、ロザミアのステータスを覗き見る。
【ステータス】
ロザミア・ベネット
年齢:17歳
職業:魔法剣士
Lv:51
HP:1355/1355
MP:942/942
力:896
体力:578
早さ:712
魔力:743
運:65
【装備】
ミスリルレイピア
ダマスカスソード
シルバープレート
マジックリング
レザーブーツ
【スキル】
『魔法剣』[二刀流][剣術スキル 6][火魔法スキル 5][水魔法スキル 6][風魔法スキル 4][回避スキル][気配スキル][加速スキル][怪力スキル][強魔スキル]
まじか、強いとは思っていたが…ここまでとは。
レイアと同じく『魔法剣』の固有スキルを持っているのか。
「ここからはわたくしも本気で行きますわ。アイン、どうか死なないで下さいませ」
ロザミアは両方の剣に魔法を灯す。
前に見たレイアの技だ。
「魔法剣か」
「ええ、そうですわ。ただの魔法とは違いますわ。刀身に魔法を移す事で、剣の髄力と合わさって魔法の威力は格段に上がっております」
「そうらしいな」
エメがレイアの魔法剣を受けたのを見ている。
まだまだ発展中とはいえ、ロザミアの魔法剣も馬鹿にならない威力だろう。
「はぁぁぁぁ!行きますわ!!」
「ならば!!」
この型はレイアのものと同じ。
以前見たものだ。
だから出来る強硬手段。
俺はロザミアに接近する、それもロザミアの間合いよりも内側へ。
「な、何を!?」
「ここなら!!」
ロザミアが剣を振り下ろすよりも早く前へ出て食い止める。
強引だが、全力をまともに食らうよりはマシだ。
「くぅぅぅぅ!だ、だめですわ。抑えられません!」
ロザミアはここに来て、剣の魔法を止めようとする。
俺を想っての行動か。
嬉しい限りだが甘い判断だ。
「うおおおおおおおぉぉぉぉ!ぐ、がはぁ!!」
剣の威力と魔法によって、訓練場の端まで飛ばされてしまう。
「ア、アイン!!」
「この勝負はここまでだな」
「お待ち下さい」
試合を終わらせようとしたレイアにエメが止める。
「まだです。マスターの戦意は消えておりません」
「しかしだなぁ、あいつかなりぼろぼろだよ?早く治療しないとそれこそまずいんじゃ…って、え?」
「アイン…」
「ああ、エメの言う通りだ。まだやれる…」
「本気か?ロザミアの実力は分かったろ?タフなのは認めるが、あんたに勝ち目はないよ」
「師匠。わたくしからもお願いしますわ。アインはまだ何かしてきます」
「いいんだな?…分かったよ。ただし次、危険だと判断したらあたしが無理矢理にでも介入するからな」
「感謝致しますわ」
レイアの言う通りだ。
このままではロザミアに勝ち目なんかない。
だが、ここまでやってロザミアの本気は見れた。
俺が思うよりも遥かに強く、そして彼女の想いも強い。
だから、俺もロザミアに教えなければ。
俺の本気を。
「アイン…。何も言いませんわ。貴方がやれる限り、わたくしは本気でお相手します」
回復魔法によって、動けるまで回復出来た。
俺は全身に魔力を流し始める。
それに呼応するようにとあるゴーレムが反応する。
エメの魔力強化を見てヒントを得た俺は試作型として人体に取り付けられる外装フレームを制作した。
まだ稼働しかしてないそれには、何もスキルや機能が付いてない。
だが、今俺が出来る精一杯だ。
「ま、魔力強化ですの?」
「似てるが違う。俺は才能ないからな、魔力強化が出来なかった。それをゴーレムが補ってやってる。まぁ、俺の魔力を喰って発動してるから、近いけどな」
話しながらも魔力の出力を上げていく。
「おいおい、何だそりゃ!?」
思わずレイアの方が声を上げる。
「禍々しい…。それがアインの本気ですの?」
「ああ」
「なんて色ですの。血よりも濃い赤色。それがアインの中にあるものですの?」
「魔力は自身の感情に呼応すると聞く。ならば、俺の中に宿る憎しみこそが力の原動!」
「ああぁ、か、体が震えて、剣を握れませんわ。アイン、もう前の貴方はおりませんのね」
「ロザミア、お前が知っているアインはもう俺の中にはいない。全て帝国が奪ったんだ。この力で、いや持てるもの全てで俺は憎き相手を潰す」
「アイン、貴方が恐ろしいですわ…。なのに何故こんなにも貴方が美しく見えるのでしょう。わたくしの心を惹きつけて離しませんわ。あぁ、そうなのですわね。きっと貴方の内に眠る物にわたくしはずっと焦がれておりましたのね」
「ふっ…。ははは!ロザミア、お前はおもしろいよ。俺の内側を見ても、変わらずに気持ちを持ってくれるなんてな」
「えぇ、ええ!ハッキリしましたわ。わたくしは一番近くで貴方の輝きを見たいですわ。それが外道の道だとしても。だから、負けません!必ず、わたくしの事を認めさせますわ!!」
「来い、ロザミア!!」
ロザミアは先程と同じく二刀魔法剣の構えだ。
対する俺は武器を変える。
今の高魔力を纏った俺では普段の武器型ゴーレム達では、俺の魔力を御しきれない。
アイテムボックスから懐かしい一振りを取り出す。
それはかつて、俺らを苦しめたSランクのリッチキングの大剣。
魔剣・ナイツプレデター。
この魔剣はゴーレムではない為、スキルの付与がされてない。
その為、この大剣で剣術勝負には持ち込めないが魔力を全力で込め振り下ろすだけなら十分だ。
「行くぞぉぉぉ!!」
振り下ろされた魔剣からは、黒い斬撃が飛ぶ。
そしてその斬撃には、俺が纏っているのと同じく血色をした魔力を纏っていた。
「アイン!!!」
ロザミアは全力の魔法剣で応えるが、俺の攻撃の前では有効ではなかった。
「はぁぁぁぁっっっ!!」
「はっ!!!」
気付けばロザミアの前には、レイアとエメが立ち塞がり俺の攻撃を止めていた。
訓練場の地面は今の斬撃で抉られ、奥の方までその爪痕を残してしまった。
「ちぃ、何て攻撃だよ。あたし一人じゃ無理だった」
「マスターがこうなる事は予想出来ておりました。最初からフォローに入るつもりでしたので」
「へっ、織り込み済みか。辞めだ辞め!試合は終了だ」
ロザミアは腰を抜かし、立てなくなってしまっている。
近くまで寄ると俺はロザミアに手を差し出す。
「助けは必要か?」
「いえ!わたくしは大丈夫ですわ」
「ロザミア、お前の強さも覚悟も受け取った。もう何も言わない。先程までよりもさらに昏くおそろものを見ても良いならついてこい!」
「アイン、ありがとう!!」
ロザミアは俺に抱きつく。
「うわっ」
「嬉しいですわ…」
仕方ない、涙が止むまでこうしてよう。
今の攻撃で試作型の外装ゴーレムが壊れてしまった。
さらに改良の余地はあるな。
「しかし、彼はすごいね。ここに来て初めて良いものを見たよ。彼なら、セルジアに届くかな?」
「彼の方は、帝国いや世界においても最強。あの若者がいかに優れ様とも無理ではないかと」
「夢がないなぁ。父上が抱える最強の将だしね。しかし、彼はまだ学生なのが驚きだ。あっちで殺さなければ良いんだけどね」
「召し取るつもりなのでしょうか?」
「んー、どうだろうね。無理じゃないかな。さすがに王国も放っておかないだろうし。ただ…」
「ただ、何でしょう」
「父上はまだまだ帝位を譲るつもりはない。第一継承者である僕ですら死んでも構わないと思ってる。そんな父上に一泡吹かせたらと思っただけだよ」




