027_閑話・クロエ
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目が覚めた時、何でまだ生きてるんだろうと思った。
ウッドベア王国は奴隷に対してしっかり制度が整ってる。
国民なら口を揃えてそう言うだろう。
けど、そんなのは嘘だ。
奴隷として生まれ、奴隷として生きてる私はそんなの詭弁でしかないのは知ってる。
中には優しい主人もいたが、ほぼ大半は奴隷を物として扱い、外道以下な扱いを強いられた。
たった一人の家族だった弟はそんな奴らの扱いで殺された。
目つきが悪い、その一言で拷問よりも酷い折檻で殺されたのだ。
憎かったそいつが。
いや、奴隷じゃない全ての人が憎かった。
けど私には復讐する程の力もなければ、機会もなかった。
ある日、いつものようにそいつは私を犯していた。
犯してる間、ずっとそいつは私の弟がどんな風に死んだかを話してくる。
殺したい殺したい殺したい。
声を出さないよう、口で抑え涙を流した。
そんな時、あいつの部下がやってくると奴隷が反乱したと。
そっからだったそいつは私が手を下さず共、勝手に自滅した。
奴隷が反乱し、そいつの商売が立ち行かなくなり、妻子には裏切られ、気付いたら首をくくって死んだ。
主人が死んだ事で私の奴隷紋は消えた。
けど、私は奴隷以外の生き方なんで知らない。
生きる価値も私にはない。
また奴隷になろうと考えたのは、ごく自然だった。
王都の奴隷商を見つけ、事情を話したらよろこんで私にまた奴隷紋を刻んだ。
その奴隷商も気付けば散々な目に遭っていた。
不正売買の疑いをかけられ、奴隷数人が逃亡したりなど。
いい気味だって思ってた。
その後、別の主人に買われたけどまたそいつも不幸に襲われた。
何度も何度も奴隷に戻り、その度に不幸を振りまいて行く。
これは奴隷からの罰だと思ってた。
けど違う。
悪い人だけじゃなくて、いい人も不幸に陥っていった。
いやむしろ、いい人の方が、私が感謝や親しい気持ちを抱いた人程酷い目に遭っていった。
罰は私自身に下っていたんだ。
心を閉ざし、誰とも触れ合わずにいよう。
けど、そんなのも関係なく私の不幸は人を殺していく。
死にたい。
ごめんなさい、神様。
私が悪かったの。
だから、これ以上私に死を見せないで。
私を殺して!!
ある日、当時の私の主人は盗賊に襲われ、その盗賊達は喜んで私を攫った。
アジトの牢屋に入れられ、どう犯すかそんな話を聞かされた。
私を犯すなら犯せばいい。
どうせお前達も悲惨な終わりを迎えるのだから。
彼らは想像通りな目に遭った。
生き残った数人が疫病神と罵り、私を殺そうとナイフで刻んだ。
あぁ、やっと死ねる。
私は喜んで死を受け入れたのに、それを許さなかった。
どこかの貴族とそれについてきた少年に救われた。
その少年の名前はアイン。
ゴーレム錬成士という聞いた事もない職業だった。
彼は私に興味ない素振りをするが、何かと気をかけてくれた。
良い人だって思った。
だから悲しかった。
彼が私を調べるといって何かをした。
これが原因かと言うと、何かをし出した。
見た事のない魔法で私が付けてる鎖と同じものを作る。
これを付ければ、私の不幸が治るって彼は言ってた。
どうせ上手くいくわけない。
これで彼の気がすむならと思って、私は新しい鎖を受け入れる。
あれからしばらく経って、彼のした事に気付き始めた。
周りにいる人は誰も死なず傷ついてもいなかった。
彼らはいつも通りに過ごし、何事もなく王都への道を進んだ。
私は夜になり、誰にも気づかれずに泣いた。
本当に私は救われたんだ。
アインのおかげで。
一人で泣いているとエメさんがやってきた。
彼女はアインが作ったゴーレムだ。
人じゃないんならと、私は彼女に思いの丈を話した。
エメさんは静かに話を聞くと、アインの話をしてくれた。
帝国に復讐する為だけに生きていると。
そしてエメさんは私に、アインの側で支えて欲しいと伝えた。
人間であるあなたならと、そう話すエメさんは寂しそうに見えた。
私はアインを新しい自分の主人にする事にした。
彼が受け入れてくれるかはわからない。
けどこの命は、私を救い不幸の因果が解き放った、彼の物だ。
アイン様は迷っていたが私を受け入れてくれた。
エメちゃんが何かを言ってくれてたみたいだけど、ご主人様は考えた結果、私を側に置くと決めてくれた。
そして彼と一緒にいるうちに彼の憎しみを知った。
色々な人間の汚い心内を見てきた私が、彼のそれを見て思えた。
なんて純粋で真っ直ぐな憎しみだろう。
彼は復讐と向き合っている時の瞳は黒い太陽のように吸い込まれそうになる。
ロザミアさんとの戦いの時に見せた威圧感に私は心の底から、感動を覚えた。
エメちゃんはもう少しレベルが上がれば、ご主人様が纏ってる魔力が見えるようになるよって教えてくれた。
あー、早く見たい。
ご主人様の素敵は姿を。
きっと私はおかしいのだろう。
色々あって、壊れてるのだろう。
そんな私をこの世界に繫ぎ止めてくれてるのはご主人様だ。
ごめんね、エメちゃん。
あなたは私にご主人様の良心を留めて欲しいって言ってたけど、無理だよ。
だって私もご主人様も復讐で焦がれる程、純粋に真っ黒になっていくのを見たいんだもの。




