024_リルハの処世術
感想・レビューお待ちしております。
もうダメ…。
何とかモンスターは振り切ったけど、MPも底をついた。
自分で回復も出来ない…。
ああ、あたしの人生って何だったんだろう。
あの田舎街では上手くいってたのに、いきなり仲間だったダンが結婚するなんて言い始めてからだ。
べ、別にあいつの事なんてどうも思ってなかったけど結婚するだなんて思わなかった。
もちろんあたしとの事は本気じゃないとは分かっていたけど、きっとこのまま一緒なのかなと思ってた。
そういえばいつだったか、いつもの仕事をこなしてる時に人形遊びが好きなガキがやってきた事があったっけ。
ピーピー泣き叫ぶから、ガキは嫌いだけどそいつは違ったなぁ。
けど、そいつの人形に悪戯した時だけ本気で怒ってたのがおもしろかった。
その辺から、ダンは私達に黙って何かやってた。
今にして思えば、結婚する受付嬢にちょっかい出してたんだ。
まぁ、だからそのガキを殺し損ねたけど、殺したって意地悪したなぁ。
何て名前だったかな、アロン?
忘れちゃった。
「だ、大丈夫か、君!?」
あー、まだ私は見放されてなかった。
本当に救いだった。
「君、生きてるのか!?」
「は、はい」
「良かった!今、手当をしてやるからな。おい、誰か回復ポーションを!」
見れば、良い身なりだ。
貴族かな?
金にがめついだけの奴らかと思ったけど、まさか救ってくれるなんて。
「どうだ、少しは楽になったか?」
「え、ええ」
「それは良かった。自己紹介がまだだったね、私の名前はバナン。バナン・ポーツ」
「ああ、バナン様!ありがとうございます」
思ったより歳上だけど、意外とイケるかも。
私は恐怖に怯える淑女を演じてみせる。
「良ければ君の名前を聞いても良いかい?」
「私はリルハ。…リルハ・ネッド」
うふふ、こうも上手くいくとは思わなかった。
私を助けたバナンは、なんと王都でそれなりの地位を持つ伯爵だった。
どんな手を使ってでもこいつに取り入ってやる、そう思いあの手この手を使ってこいつを騙した。
まず私は地方で没落した貴族の生き残りという設定にした。
ふふふ、ネッドなんて貴族聞いた事もねーよ。
仲間と共に旅をしていたが、ある日男だらけの仲間達は私を犯そうと襲いかかって来たと。
命からがら逃げ出し、伯爵に助けて頂きましたと泣きながら抱きついたら顔を真っ赤にして、私が貴方を守ろうだなんて。
良い歳したおっさんが夢見るなよな。
他にもこいつに取り入るチャンスがあった。
バナンは私が回復職だと聞くと、目の色を変えて逆に助けを求めた。
何でも愛する妻が床に伏せているから、私の自慢の回復魔法で救ってくれと。
ふふふ、ここでと私は涙ながらに演技してやった。
愛する妻が床に入って可哀想。
命を助けて頂いたお礼もあるし、私のお力で良ければいくらでも伯爵を支えますわ。
その時の顔と来たら…、ふふふ。
涙を浮かべて、ずっとありがとうありがとうって呟いてたっけ。
だから、もっと。
もっとこいつから手に入れなきゃ。
金も名誉も、全て。
治療を頼まれ、バナンの妻に会ったがただの死にかけのババアだった。
全く見た事ない症状で、そのババアは既に長い間昏睡状態だった。
手の施しようがないなと諦めてたけど、いい事を思いついた。
ポーツ家には、跡取りとなる息子がいない。
バナンが前に言ってたけど、息子が生まれない限りこの家はこのままでは没落してしまうと。
それでも僕は妻との間に息子が欲しいんだって。
バナンから適当に大金をせしめて終わりにしようと思ったけど、私は計画を変更する。
彼を篭絡しよう。
あいつは私を好いている。
あんなおっさんを相手にするのは嫌だが、身体で商売した事もある。
おっさんにだかれるだけでこの家が手に入るのだ、十分過ぎるほど見返りはでかい。
ふふふ、楽しみだ。
そうなれば、少しくらいおっさんに気持ちが湧いてくる。
「リ、リルハ、その格好は?」
「ああ、バナン様。いけない事だとは分かってるのですが、どうしても気持ちが抑えられず…」
「だめだ、リルハ…。気持ちは嬉しいのだが、私には妻が」
貴族ならば側室の一人や二人いてもおかしくない。
けど、こいつは妻を愛するあまり他に女を囲っていないのは知ってる。
馬鹿がつくほど純真。
そう既成事実さえ作ってしまえば、手玉に取るのは簡単。
「いいのです、バナン様。貴方は変わらず奥様を愛して頂いて。私も変わらず奥様の治療を続けます。ですが、せめて…。せめて私の想いを受け取って下さいませ。日陰でも構いません。貴方に触れられればそれだけで、私は幸せです」
「おお…、リルハ。まさか親子ほど離れた私を慕ってくれようとは。過ちだとは分かっておる。だ、だがお前をここまでさせた責任はある!」
うふふ、バナンは私を激しく求めた。
そりゃ、ババアがあんな状態じゃろくに女も抱いていないだろう。
必ず…、バナンを虜にさせる為に何度も果てさせてあげるわ。
毎夜毎夜、貴方を愛してあげる。
見返りはでかいんですから。
「に、妊娠だと!?」
「ええ、貴方。貴方と私の愛の結晶がここにいるのよ」
「し、しかし…。妻もいる事だし。うぅぅむ」
「いいのです、貴方。産まれてくる息子だけは変わらず愛して頂ければ」
「息子!?まことか!?」
「ええ、何故だか分からないけど私にはそうです感じます。けど…、貴方の迷惑だという事は知っております。だから、私は息子を産んだらどこか他所へと行きますわ」
「ダメだ、リルハ!すまない、私はお前の気持ちを知っておりながら…。お前だけにそんな苦労は背負えまい。それに息子ならば、私も認めざるをえまい」
「貴方…。愛してます」
ふふふ、あーっははは。
おかしい、ホントにおかしい。
子供なんている訳ないじゃん。
私を抱いてからというもの、こいつは本当に操りやすくなったわ。
後はいない子供が産まれるまでの間にババアを始末さえすれば、この家も金も名誉も全て手に入る。
ありがとう、バナン。
本当に貴方が間抜けで、私はこんなにも幸せなんだから。




