023_二つの再会
やっと明日、家に戻れます…
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昨日は見ず知らずの冒険者に襲われ、さんざんだった。
クロエの依頼の報告も兼ねて、『双葬』のレイアについて報告した。
勘違いなのかもという点を踏まえて話したら、エドモンさんはすまないと謝ってくれた。
根は悪い奴じゃないらしいが頭に血が上りやすいらしく、今回もそうじゃないかという事で終わらせた。
俺としてもSランクに目をつけられるのも厄介だし、それで納得する。
そして、今は俺は王城にいる。
選抜生徒が集まったので、これから謁見だ。
俺としては、帝国へ行くための通過儀礼みたいなもので正直他の選抜生徒に興味を持っていなかった。
「では、名を呼ばれたものは前へ!」
謁見の間にはウッドベア王国の有力者達がずらりと揃っている。
政治を司る文官たちに、軍務を務める武官。
王の横には大臣がこの謁見を見下ろしている。
「魔導学校の選抜生徒。アイン!」
「はっ!」
俺は王のいる玉座へと近づいて行く。
初めて見る王は、歳の割には皺が多く普段から問題が多いのだろうと思わせた。
また強者とは違う風格が、言うなれば王としての風格を感じた。
「そなたがアインか。話は大臣より聞いておる。ゴーレムか…。よくぞ、此度の留学を引き受けてくれた」
「いえ、王国民としての責務でございます」
「聞けば、冒険者としても活躍しておるらしいの。つい、先日Aランクになったと。帝国でもその冒険者としての力、発揮するがよい」
「Aランク…まだ若い少年が?」
「ウィレームのアイン。噂に聞いた事があります」
「伝説に残るゴーレム錬成士。一体どういう力なのか」
まさかこんな城の中でも、俺の事で騒がれるとは思わなかった。
王との謁見が終わると俺は後ろへと下がる。
その後も傅きながら、残りの選抜生徒の謁見が進んでいく。
「では、次。騎士学校の選抜生徒、ロザミア・オルコット!」
「はっ!」
え、ロザミア?
遠巻きながらの様子では本人かどうかは分からなかった。
彼女はご自慢の長い金髪をロールにしていたのだが、今呼ばれたロザミアはショートカットにしている。
疑念が晴れないまま、全ての謁見が終わると俺は夜会の会場へ行くことになった。
「よぉ、いいか、アイン?」
気さくに話しかけてきたのは俺と近い歳の男だ。
整えられた服の上からローブを羽織っている。
魔法職だろうか。
「ああ、えぇっと」
「アーヴィンだ。アーヴィン・レイクラフト。しかし、覚えられてなかったか」
「貴族か?」
「ん、まぁそうだ。けど俺は階級なんて気にしてない。普段通りでいいよ」
「ああ助かるよ、アーヴィン。すまないな、名前を覚えるのは苦手で」
「にしても、冒険者Aランクってホントか?俺とあまり変わらないのに凄いな!」
「そういうもんかな?気付いたらなっていたというか」
「俺はもちろんだが、あそこにいる騎士学校の連中もAランクには程遠いぜ。そういうのはやっかむのが多いから気をつけな」
「忠告か。受け取っておく」
「あー、でも一人だけとんでもない生徒が混じってると聞いたんだけど…。ダメだ、忘れちまったわ、あはは」
選抜生徒の大半は貴族だと聞いていたから、関わり合いになるのをやめようと思っていた。
ただアーヴィンみたいに気さくな奴がいるなら、話は違うな。
この夜会自体、面倒だったがこういう出会いもあるんだなと感心できた。
「悪いな、アイン。俺も一応は貴族の端くれ。他にも挨拶しないとまずいからな」
「ああ、俺のことは気にするな」
「また色々話させてくれ。あと、他の貴族には気をつけろよ。全てがじゃないが、平民や自分より目立つものを許さない連中がいるからな」
「ああ」
俺は軽く片手を上げ、アーヴィンはそそくさと他の所へ行ってしまった。
その後は見知らぬ貴族達に声をかけられ、あれやこれや質問責めにあった。
仲には意地の悪い質問もあった。
聞いていると俺はもちろんだが、ボリス男爵の事も悪く言う内容だ。
平民上がりの領主というのは古株の貴族からしたらウケは良くないのだ。
普段から喋り慣れてないので、色々な人と話していると疲れを感じる。
少し一人になりたいと、テラスへと向かった。
「隣、いいかしら?」
声をかけられ振り向くと、そこにはロザミアがいた。
「ロザミア…。やっぱりお前だったか」
「ええ、驚きまして?」
くすくすと笑いながらそう答える彼女に懐かしさを覚える。
「ああ、そりゃそうだ。突然、ウィレームからいなくなったと思えばこんな所で再会だからな」
「何も言わずにいなくなったのは申し訳ありませんわ。ただわたくしも色々考えまして。どうしたら、貴方に近付けるかと思い、騎士学校へと復学しましたの」
「俺に?」
「ええ、前にゴブリン達に襲われた時、わたくしは自分の弱さを痛感しました。わたくしは貴方の力になりたいのに、迷惑しかかけておりませんでしたわ」
「そう…だったな」
「いい師にも巡り会えましたし、これでも少しは強くなりましたのよ?」
「師匠?」
「ええ、冒険者の方で、わたくしも冒険者としても活躍致しました。今ではやっとBランク。アインと比べるとまだですが」
「Bランク!凄いじゃないか。まさか…こんな短期間にそこまで強くなるとは」
冒険者でBランクに上がるのは並大抵じゃないはずだ。
ロザミアをここまで仕上げた師匠とやらがきになるのだが。
「どうだい、ロザミア!話はついたかい?」
「師匠!」
あ、あの女は…。
「あはは、何驚いた顔をしてやがるんだい?」
「あんただったのか。『双葬』のレイア」
「ふん、どうせ、お得意の[鑑定]での名前ばれてるんだろ?あたしはヴィーゲル家の者だ。ここにいても不自然じゃないのさ」
[鑑定]した事がバレてる。
高レベル者にはバレるてしまうのか。
「そんな間抜け面してたら、いい男がだらしないよ。仕方ないから教えてやるが、魔力強化が出来る奴なら些細な魔力の動きでバレるのさ。熟練者同士の戦いは相手の情報が命取り。先にカードを切った方が負けさ」
「そういう事か…。参考になったよ」
魔力強化か…。
ここでも自分の才能の乏しさに嫌気が指す。
「まぁ、二人の邪魔をしに来たわけじゃないんだが、つい気になっちまってな。ロザミアは強くなった。どうだい、認めてやったら?」
「ちょっと師匠!わたくしとアインはそういうのでは…」
「なんだい、ロザミアも。惚れた男の為に強くなりたかったんだろ?強くなれば、こいつも認めてもらえると?」
な、なんだか勘違いされてる気が…。
「い、いや、そうじゃないんだが…」
「ったく、当事者の問題だから首を突っ込まないようにしてたんだがね」
この間、いきなり攻撃してきたのに、首を突っ込まないとはよく言えたな。
「ロザミアの実力を見たら、納得するのかい?」
こうなったら後にはひけないな。
「ふぅ、分かったよ。どうすればいいんだ?」
「やっと覚悟を決めたかい。なら、模擬戦でロザミアの実力を見てもらおうか。負けたなら、あんたも男だ分かってるね?ああ、安心してくれ。ロザミアの家の事はあたしに任せてくれ。貴族だとか平民とか、そんなのでウダウダ言わせないよ!」
満足したのか、レイアは笑いながらテラスから去っていく。
「な、なんだか変な方向に話が入ってしまいましたわ。ごめんなさい、アイン」
「いや、今回はあいつが悪いだろう。けど、本当にいいのか?あいつの話じゃないが、ロザミアが本当に強くなってるなら俺に協力したいと言った話を否定しない。しかし、それは…俺の個人的な復讐だ」
「今でも気持ちは変わりませんわ。前と違って、強さも覚悟もあります。アイン…わたくしは貴方の味方でいたいのです」
本当にいいのだろうか。
そんな考えが頭から離れない。
けど、ロザミアは本気でそう思ってくれている。
だから、模擬戦は俺も手を抜かずにやるしかない。
「少し冷えましたわね。中に戻りましょう」
「ああ」
夜会の会場は相変わらず貴族達の独壇場だった。
そこで俺はついに探してた相手の一人を見つけた。
「ア、アイン?」
きっと今、俺はものすごく邪悪な笑みを浮かべているだろう。




