022_AランクとSランク
すみません、諸事情によりしばらく家を離れており更新が遅れています。
ご覧になれてる方には早く更新出来るようがんばりたいと思います。
翌日。
俺達は王城へと喚ばれた。
「この者が、魔導学校の選抜生徒か」
「はい、この者が選抜生徒であるアインです。アイン、こちらは大臣のデニス様だ」
「アインと申します。よろしくお願いします、閣下」
男爵と共に城の執務室へと連れられると、デニスと呼ばれた大臣と面会だった。
「ふむ、アインか。ゴーレム錬成士と聞いているが、真か?」
「ええ、ゴーレム錬成士をしております」
「そうか…、本当に実在しておったとは。かつて帝国で一人のゴーレム錬成士がいたと聞いたが、気付けば噂も耳にしなくなった」
「失礼ですが、余程珍しいのでしょうか、ゴーレム錬成とは?」
「ふむ、ワシも詳しくは知らんが、ゴーレム錬成士はたった一人で軍を率い、一夜で城を造り、数日で国を興したと言われている。当時、それを許さなかった各国はたった一人の為に軍を用いて、戦争をしかけたと聞いておる」
「ゴーレム錬成士とは、そんなすごいものなのですか!?」
俺も初耳で驚いたが、俺よりも男爵が驚く。
軍はともかく、城までも作るって昔のゴーレム錬成士はすごいな。
「まぁ、あくまでも伝説じゃ。とは言え、ゴーレム錬成士は希少なのは間違いない。本当であれば、今回の留学に反対したい所だが仕方あるまい」
「俺も初めて聞き、驚きました」
「その力をどう使おうが、お前次第じゃ。我が国の為に、役に立てて欲しいがの。帝国ではいつ何者かに襲われるか分からぬから、用心せよ」
「はい、肝に命じます」
「さて、あと数日で選抜生徒は全員揃うじゃろう。全員揃った後、陛下と謁見をしてもらう。その後は小さいが歓談の機会を設けておる」
「歓談ですか?」
「つまりは夜会。パーティという事だ」
男爵がこっそりと俺に耳打ちで教えてくれる。
なるほど、貴族中心ならばそれくらいは当然やるという事なのだろう。
有望な若者を、実質敵地でもある帝国へと送るのだから。
しばらく大臣と雑談をすると、俺と男爵は宿へと帰った。
もっと性格の悪そうな大臣のイメージだったが、あの人は随分と優秀な方らしい。
とはいえ、俺の悪くイメージしている貴族というのも、多々いるそうだ。
特に気をつけなければならないのは、謁見の後の夜会だ。
「…えっと、お帰りなさいませ」
「ただいま。っていうか、その挨拶の仕方はいつもそうなのか」
ボロ着じゃ悪いだろうという事で、服を用意する事になったのだが、何故かクロエはメイド服を所望した。
何でも奴隷時代はこういうのを着る事が多かったので、慣れているからだと。
ちなみに、挨拶する時は可愛らしくスカートの端をつまんで会釈する。
うーん、、、悪くはないんだが、男の俺としてはちょっと落ち着かない。
「…えっと、はい。奴隷暮らしが長かったのでどうしてもこうなってしまいます」
本人がいいのなら、いいんだけど。
「エメ、ガーヴェイさんが言ってたの覚えてるか?これから冒険者ギルドへ行こうと思うんだけど」
「覚えてます。既に冒険者ギルドの場所も把握しております。向かうなら案内致します」
「それは助かるよ。あとはクロエも来るか?」
「…えっと、いいんですか?邪魔にならないですか」
「問題ないかと思われます。何かあれば私が対処します」
「エメもこう言ってるんだ。大丈夫だろ?」
「…えっと、それならぜひ!」
クロエにとって、冒険者ギルドの中に入るのは初めてだ。
そんな事をクロエはエメに嬉しそうに話しているのが聞こえた。
彼女に取って、奴隷生活が長かったのだこうして自由に動けるのは今までになかったのだ。
王都にいて、安全なうちは好きにクロエの好きにさせようと思う。
「いらっしゃいませ、新規の登録でしょうか?」
「えーっと、そうだな。クロエ、せっかくだし登録したらどうだ?」
「…えっと、私がですが?私に冒険者なんか出来るんでしょうか?」
「まぁ、ある程度は戦えるようになってくれた方が俺らも嬉しいしな」
「…ご主人様がそうおっしゃるなら、お願いします」
「あら、初めてですね。奴隷の方でも冒険者登録は出来ますので、ご安心ください」
いや、本当は奴隷じゃないんだけど。
クロエにメイド服を買った時に、首輪や手錠など外そうかと言ったのだが、それだけは嫌がったのだ。
まだ日も浅いが、この鎖が俺との繋がりだと彼女はそう言っていた。
「それで、あなた方は冒険者という事でしょうか?」
「ああ。変更登録と、おそらくギルド長に呼ばれてると思うんだけど」
「えぇっと、お待ちを。アイン様とエメ様でいらっしゃいますね?ギルド長をお呼びします」
奥の部屋からギルド長らしき人物がやってくる。
初老と呼ばれる位の年齢なのだが、その肉体はまだまだ若々しく現役と言っても過言ではない雰囲気の人物がやってくる。
「ほぉー、お前らがアインとエメか!実際、会ってみるとまだまだガキって感じだが、お前らがあのガーヴェイと互角にやったって訳か」
「ガーヴェイと互角?嘘だろ」
「『鮮刃』とやり合うなんてまともじゃねぇぜ」
「あ、あんなガキが…。でも、『双葬』もあんなだし見た目で判断しちゃいけねぇよ」
ガーヴェイさんの名前が出た瞬間にギルド内がざわつく。
「まぁ、互角っていうのは大げさですけど、いきなり試験と称して模擬戦はしましたね」
「ハハハ、あいつらしい!あの小僧も、今度は新人を鍛える番になったか」
「その話しぶりだと、仲がいいんですか?」
「まぁ、あいつを鍛えたのは俺だからな。まだまだあいつが『鮮刃』などと呼ばれる前だがよ。おっと紹介がまだだったな、俺はエドモンだ。ガーヴェイと同じく前は冒険者だったがもう歳でな」
「「「いやいや、嘘だ」」」
俺の代わりに外野が突っ込んでくれた。
「お前らを呼んだのは、礼を言いたかったんだ」
「礼?」
「ああ、お前らがウィレームでルギウス達をとっ捕まえてくれたおかげで、これ以上冒険者ギルドが不正を働かなくなったからな」
「あー、あいつか」
「そうだ。冒険者ギルドは民の為のギルドだ。信用問題だからな。まぁ、捕まえたのがお前達冒険者で良かったよ」
冒険者ギルドは国家とは独自に民を救う為のギルドとして立ち上がった。
その信条を守るギルドが不正を行ったというのは民衆に対して信用を失う事になる。
あくまでも冒険者で俺らが不正を暴いたのは、冒険者ギルドにとっては救いだったのだろう。
「ふむ、それとウィレームでダンジョンも攻略したんだろ?その時の報告に聞いたSランクモンスターを二人での撃破。これらを評価して、お前らは今日からAランクだ」
「え、Aランク!?」
突発の事で驚いてしまった。
Bランクになって、まだ日も浅い気はするのだが。
「まぁ、Bランクのクエストも十分受けてるしな、資格は十分あるって事よ。あとはガーヴェイが推薦してたってのもあるが」
「何だか実感がないですね」
「ハハハ、そんなもんよ。お前らならSランクもすぐだろうよ。あとAランクってのはお前らが思ってるより効力があるぞ。帝国でも十分、評価してもらえるぞ」
「俺達が帝国に行くのも知ってるんですか?おそらく、ガーヴェイさんか…」
「ハハハ、あいつも心配性でな。まぁ、帝国との交換留学は隠す事じゃねーさ。貴族様にとっちゃ栄誉ある事かも知れねーが、俺達からしたら虎の巣に放りこまれる可哀想な羊だ」
「やっぱ、そうですよね。でも、俺は自身で帝国の力を目の当たりにしたいんです」
「ハハハ、お前も変わった奴だな。まぁ実際、ギルドへ介入して不正を働いた帝国は許せねーが、向こうのギルドにもしっかりした奴はいる。何かあればそのAランクが役に立つさ」
「言われてみれば、ありがたい事ですね」
「今日は何か受けていくのか?」
「いや今日は挨拶と用事だけでしたが、ついでにクロエの冒険者登録をしたんで手近な奴を受けようかなと思います」
「ほぉー、この嬢ちゃんか!ハハハ、細くてちっこいな、肉を食え、肉を」
肉を食ったからってすぐには大きくならないだろう。
それに筋肉ゴリゴリで膨れ上がるメイド服なんか見たくない。
「うっ、想像したら気持ち悪いですね…」
エメも俺と同じ想像をしていた。
クロエでもこなせるよう、この付近に生息しているスライム討伐を受けた。
エドモンさんからはついでと言われ、ドラゴン討伐など押しつけられそうになったが断った。
王都近くの平原へ出ると、早速クロエの依頼をこなす。
「…えっと、戦いは初めてでちょっと怖いです」
「まぁ俺達がいるから死ぬことはないよ。最初は緊張するだろうが、武器を振るう事に慣れるのがてっとり早い」
俺もそうだったが、武器すらまともに握った事がない奴が武器に慣れるというのは大事だ。
武器という”非日常”を”日常”に変える。
冒険者にとって、武器とは自分の身を守る大事な相棒だ。
「…えっと、がんばります。ご主人様の役に立てるよう強くなります」
クロエの武器は色々相談した結果、手に嵌められた鎖をそのまま武器にした。
エメの変形棍と同じく、戦闘時には鎖の先端から刃が飛び出るようにした。
「クロエ、あそこにスライムがいる。狙って攻撃してみてくれ」
「…えっと、はい!」
腕を振り、鎖を叩きつけるように狙いを定める。
鎖は見事にスライムを叩きつけられ、スライムはその体を構成する液体がはじけ飛んだ。
「…えっと、やりました!」
「ああ、見事だ」
もちろん、この鎖も俺のゴーレムだ。
スキルには[鞭術 5]を付与してある。
腕を振れば、勝手に鎖の方が敵に攻撃を当ててくれる。
「この調子で、残りのスライムも討伐してくれ」
「…えっと、分かりました!」
かれこれ、しばらくスライムを討伐し続けるとスライムの気配がなくなった。
エメはスライムを探しに行くと森のなかへ入っていってしまった。
「…ご主人様のおかげで、だいぶ戦いにも慣れました」
戦う事への緊張は取れたみたいだ。
スライムくらいであれば、安心してクエストをやらせられるかな。
「マスター、スライムを発見しました」
「おお、それは良かった…って、何だそのサイズは!?」
出てきたのはスライムを大きくした。
いや、その大きさは人間すらも越え、高さだけでも二階程もある。
慌てて、俺は[鑑定]を発動させる。
【ステータス】
グランスライム
年齢:5歳
ランク:A
Lv:48
HP:1012/1012
MP:883/883
力:765
体力:567
早さ:189
魔力:727
運:66
【スキル】
『スライムボディ』[水魔法スキル 7][光魔法スキル 4][風魔法スキル 6][魔壁スキル]
「エメ、これはスライムはスライムで上位種だ…。クロエじゃ無理だ」
「…えっと、無理ですか?」
「無理だと思うから、下がってなさい」
「…はい」
「すみません、マスター。違ったのですね…」
エメは表情を変えられないが、きっと落ち込んでいるように見える。
「はぁっ!!」
槍を取り出し、[雷魔法]を打ち込む。
雷撃によって痺れたグランスライムに、エメはトドメの一撃を加える。
「…えっと、すごいですお二人共」
「クロエもこのくらいは出来るようになるさ」
「…はい、がんばります」
ふと人の気配を感じ、そちらを振り向く。
「おーい、あんたら大丈夫かい?」
「お前は誰だ?」
「あー、すまんすまん。この付近でグランスライムを見かけたからね、もしかして初心者かと思って声をかけたんだ。ま、でも問題はなさそうだったね」
「それは何だか悪いな」
いや、本当にこっちの不手際ですから。
声かけてきたのは女性冒険者だ。
女性でも冒険者がいるのは珍しくはないが、こうしてソロでいるのは珍しい。
「そうかそうか、まぁ思ったより高レベルそうだし、大丈夫だったね。あ、あたいの名前はレイアだ」
「レイアか。よろしく、俺はアイン。こっちはエメとクロエだ」
「え!?今、何て?アインと言ったかい?」
「あー、確かに俺はアインだけど…って!!?」
気付けば、レイアは俺に剣を振り下ろしていた。
「なっ、いきなり何だ!!?」
「人違いだったら悪いな—とは思ったが、この実力に、アインとエメという名前。間違いないね、私の弟子を泣かした罰だ!!」
「罰だと!?」
「マスター!!」
横からエメが棍を振るう。
いとも容易く、レイアは避けてしまう。
「安心しな、殺しゃしないよ。ちょっと灸を据えるだけさ!」
レイアは剣を日本構えると二刀流にする。
そしてそれぞれの剣に何かすると、片方の刃からは炎、もう片方は水が纏っていた。
「魔法剣…なのか?」
初めて見るスキルだ。
俺のゴーレムに魔法発動を任せたなんちゃって魔法剣ではなく、本物だ。
急いで[鑑定]を発動させる。
【ステータス】
レイア・ヴィーゲル
年齢:21歳
職業:魔法剣士
Lv:65
HP:1879/1879
MP:1226/1226
力:1011
体力:643
早さ:836
魔力:989
運:71
【装備】
魔剣・炎劾
魔剣・水翁
ミスリルプレート
剛力の腕輪
退魔のネックレス
ダイアブーツ
【スキル】
『魔法剣』[二刀流][剣術スキル 8][火魔法スキル 7][水魔法スキル 7][回避スキル][気配スキル][加速スキル][頑強スキル][怪力スキル]
な、なんてステータスだ。
魔法剣はやはり固有スキルなのか。
「ちぃーっとばかし、痛いが大丈夫だろ!!喰らいな!!」
レイアは二振りの剣を交差させるように振り下ろす。
炎の刃と水の刃がぶつかりあいながら、俺を目指す。
「くっ!!!」
思わぬ事で防御が間に合わない。
だが、エメが攻撃を防いでくれた。
「いい加減にしてください。何なんですか、あなた?」
「助かった、エメ」
「アハハ、まさか防ぐなんて!!魔力強化まで使えるとは思ってなかったよ、こりゃあ認識不足だったかねぇ」
「いや、だから何なんだあんたは…」
「まぁいいさ、一発撃ったらすっきりしたよ。あー、一応私も冒険者でね。今は依頼で、とある人物を鍛えてるのさ。まぁまた会う事もあるだろうよ」
「ある人物?」
「あ、名前は名乗ったけど、こっちは名乗ってないな。あたしは『双葬』のレイア。一応Sランクになったばかりの冒険者さ」




