↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/20

第17話:暗黒の海峡四キロ、東の崖の睡眠罠、そして夜空を裂く赤色信号弾

第17話では、特殊部隊より先に健二と9頭の犬たちに危機を知らせるため、真夜中の海をカヤックで4キロ漕ぎ抜いた葵が、ついに『健二の無人島』へと上陸します!

東の断崖で小さな銀灰色の雌犬『ユキ』と『ジン&リク』たちに迫る睡眠肉の罠と、夜空へ撃ち上げる決死の赤色信号弾をお楽しみください!

【735日目・午前0時00分〜午前1時40分:黒潮の海と、水深40センチの死角】




 真夜中の外洋四キロという距離は、地図の上の単なる数字ではない。呼吸をするたびに人間の体温と体力を奪い取ろうとする、黒く巨大な水の壁だ。




 葵(あおい)の乗った艶消し黒のシーカヤックが黒潮の岬を抜け、外海の潮流に入った瞬間、横からの強い波が繊維強化プラスチック(FRP)の細い船腹を激しく揺さぶった。


 空には星ひとつない。頼りになるのは、低い雲の下にうっすらと浮かび上がる無人島の黒いシルエットと、コックピットの前に固定した夜光コンパスの緑色の針だけだった。




 ――イチ、ニ。イチ、ニ。




 葵は沿岸航法の技術書で学んだ通り、パドルのブレードを水面に浅い角度で滑り込ませ、白い波しぶきや水音が風に乗って後方へ響かないよう、規則正しいリズムで夜の海を漕ぎ続けた。




 二キロを過ぎたあたりで、三角筋と広背筋が溶けた鉛を流し込まれたかのように激しく軋み始めた。


 パドルのシャフトを伝って流れ込む冷たい海水が指なしグローブの下に染み込み、十ヶ月間で硬くなった手のひらのタコをふやかして引き裂いていく。ひと漕ぎごとに生肉の裂けた掌(てのひら)がカーボンシャフトに擦れて焼けるように痛んだが、葵は1秒たりともパドルの回転を緩めなかった。




 自分の後方一キロほどの闇の中では、今頃、篠原(しのはら)少佐たちの無音エレキモーター付き強襲用ゴムボート二隻が出航しているはずだった。


 奴らはバッテリーの力で汗ひとつかかずに海を渡ってくる。


 だが、葵には篠原たち『カテゴリーA』の略奪者には決して理解できない力があった。奴らは他人が血を流して築いた楽園を奪い、首輪をはめるために海を渡っている。けれど自分は、この死んだ世界で唯一自分を人間として救ってくれた人と、彼の大切な九頭の家族を守り抜くためにパドルを握っているのだ。




 午前一時三十八分。


 葵のカヤックは、無人島の南の入り江から東へ百メートルほど外れた、高さ三十メートルの黒い玄武岩の断崖の真下へと滑り込んだ。




 そこは波に削られた狭い岩の裂け目になっていた。葵は太ももまで凍えるような海水に浸かりながらカヤックを岩棚の上へと引き上げ、黒い岩陰に船体を完全に隠すと、崖の端から西側の「入り江の入り口」へとそっと視線を向けた。




 そして、息を呑んだ。




 油を流したように暗い入り江の入り口の水面を、二つの平たく黒い影――篠原少佐たちの『平底強襲用ゴムボート』が、モーター音すらほとんど立てずに滑るように進入してきていたのだ。




 砂利浜から八十メートル沖合には、冬の嵐で真っ二つに折れた古い木造漁船の残骸が突き出ていた。その真下、海面下四十センチに、あの人が沈めた『第3資源徴発艇』の鋼鉄の船体が横たわっている場所だ。


 だが、新月の大潮の満潮を迎えた今、海面は計算通り二十センチ以上も上昇していた。


 喫水わずか十五センチの二隻の平底ゴムボートは、海面下に眠る鋼鉄の防壁の真上を、かすり傷ひとつ負うことなく完全に素通りして入り江の奥へと侵入したのだ!




(通り抜けた……! バンカーの赤外線暗視カメラは中央の水路と正面の坂道を向いている。奴らはカメラの死角になる東側の岩場へ上陸する気だわ!)




 葵は素早く装備を確認した。


 背中には、小麦やコーヒーの種、そして『二箱の非常用ビスケット』を詰めた防水バックパック。その脇のベルトには、四百六日目の朝にあの人から受け取った長さ四十五センチの鋼鉄製『小型ボルトカッター』が差してある。


 そして両手には、あらかじめ弦を引き絞って三枚刃の狩猟用カーボン矢をつがえた『コンパウンド・クロスボウ(複合洋弓銃)』を構え、腰の矢筒(クイバー)の留め具を外した。




 入り江の東端の岩場に上陸した八人の特殊部隊員たちは、暗視ゴーグルを装着したまま一言も言葉を発さず、篠原少佐のハンドサイン一つで即座に二手に分かれた。




 指向性爆薬(C4)と消音自動小銃を持った『篠原少佐たち本隊五名』は、犬たちが無力化されるのを待つため、浜辺の死角となる大岩の陰に身を潜めた。


 そして、残りの『捕獲班三名』――麻酔銃とケブラー製捕獲ネットを持った二人の兵士と、あの『睡眠導入剤入りの特上牛ヒレ肉』の保冷ケースを抱えた兵士――が、島の東側の断崖に沿って伸びる険しい岩の沢筋を音もなく登り始めたのだ。




 その沢筋を登り切れば、あの人が作った『溶岩洞窟の天然熟成庫』のすぐ上、段々畑とバンカーに対して完全に『風上(かざかみ)』となる東の尾根に出る!




 葵は一秒も迷わなかった。


 東の海から西へ吹く潮風の向きを計算し、三人の兵士たちから常に五メートル下方の『風下』を維持したまま、波の砕ける音に紛れて黒い玄武岩の沢筋を慎重に登り、三人の背後をぴったりと追尾した。




【735日目・午前2時12分:小さな銀灰色の影と、2頭の黒い疾風】




 海抜四十メートルの東の尾根の上にたどり着くと、潮風に混じって、野生のローズマリーと若い島ミカンの爽やかな香りが漂ってきた。


 三十メートル先の岩壁には、頑丈な鉄格子の扉がはめ込まれた『溶岩洞窟の熟成庫』の入り口があり、その奥から熟成された生ハムとヤギのチーズの芳醇な香りが微かに漏れている。




 捕獲班の三人の兵士たちは、シダの葉に覆われた古い石積みの陰に身を伏せた。


 その十秒後、沢を登り切った葵は、彼らの真後ろわずか『九メートル』にある低い杜松(ネズ)の茂みの暗闇へと音もなく腹ばいに滑り込んだ。




 石積みの向こう側、断崖に沿った草の小道の上で、四つの静かな影がピタリと足を止めたのが見えた。


 葵の胸が、熱い感動でギュッと締めつけられた。




 先頭に立っていたのは、ケブラー製の戦術胸当てを装着し、バネのように引き締まった筋肉を持つ二頭の精悍な『ベルジアン・シェパード・マリノア(胸に白い斑点のあるジンと、弟のリク)』だった。


 そしてそのすぐ後ろ、大人たちの無音の足取りを完璧に真似て、キャンという鳴き声ひとつ立てずに並んで歩いていたのは、この島で生まれた生後三ヶ月の二頭の若い犬――漆黒の毛並みを持つ雄の『ライデン』と、月明かりのない闇の中でも目を引く美しい銀灰色の毛並みを持つ小さな雌の『ユキ』だった!




 四頭の犬たちは、石積みから十五メートル手前で足を止め、警戒して鼻を動かしていた。


 だが、まさにその瞬間、石積みの陰にいた中央の兵士が、保冷ケースの密閉蓋をパカリと開けた。




 東からの夜風が、表面を軽く炙ったばかりの『最高級の生牛ヒレ肉』の強烈で甘美な肉汁の香りを一気に運び、四頭の犬たちの鼻先へと叩きつけた!


 毒薬の匂いは一切しない。純粋な極上の牛肉の匂いだけだ。




 銀灰色の小さな雌犬――『ユキ』が、生まれて初めて嗅ぐ牛肉の香りに黒く丸い瞳を輝かせ、小さな鼻先をヒクヒクさせながら草の上を二歩前へと踏み出した。兄のライデンと、護衛のジンとリクも、ユキを守るようにそのすぐ後ろに続く。




 石積みの陰で、保冷ケースの男が咽頭マイクで極小の声を送った。


「目標を確認。東の尾根に成犬のマリノアが二頭、若い犬が二頭だ。これより睡眠肉を投下する。三分で四頭とも昏睡状態に落としてネットに収め、そのままバンカー前の黒いシェパードへ向かう」




 男が手袋をはめた右手をケースに突っ込み、高濃度の動物用睡眠導入剤が注入された『六個の牛ヒレ肉の塊』を掴み出すと、小さなユキの鼻先へ投げ込むために右腕を大きく後ろへ振りかぶった。


 同時に、両脇の二人の兵士も麻酔銃と消音短機関銃を構える。




 あの肉が草の上に落ちれば、食べ盛りの小さなユキは一秒で飲み込んでしまう。そして四頭が眠らされれば、バンカーの扉が爆破されるまで誰も異変に気づけない!




 九メートル後ろの茂みの中で、葵の瞳が絶対零度の氷へと変わった。


 コンパウンド・クロスボウの銃床を肩にしっかりと固定し、肉を投げようと振りかぶった男の『右前腕の関節』――男が寄りかかっている太い松の幹と手首が重なる一点に照準を合わせ、静かに息を吐き切ってトリガーを引いた。




 ――シュッ!




 蜜蝋(みつろう)を塗った弦が、フクロウの羽音よりも静かに空気を切った。


 秒速百メートルで射出された三枚刃の鋼鉄の矢じりは、コンマ一秒で九メートルの闇を貫き――男の指が開いて肉が投げ放たれる直前、その『右手首を背後から貫通して、後ろの松の木の幹へと直接縫い止めた』!




 ――ドスッ!!


「ぐあっ――!?」




 橈骨(とうこつ)神経を断ち切られた男の指が反射的に外側へと弾け開き、掴んでいた六個の牛肉と保冷ケースごと、石積みの外側――『高さ三十メートルの垂直な断崖の裂け目の下』へと真っ逆さまに転がり落ち、荒れ狂う白波の底へと跡形もなく飲み込まれた! 草の上には、肉の一欠片すら落ちなかった!




「なっ、なんだ!? 後ろの茂みに誰かいるぞ!!」


 左側にいた二人の兵士が、暗視ゴーグルの顔を百八十度回転させてこちらを向き、消音器(サプレッサー)付きの短機関銃『MP5』を茂みめがけて即座に連射してきた!




 ――プシュッ! プシュッ! プシュッ!




 葵は矢を放った瞬間に草の上へ低く伏せて転がったが、三発の9ミリ亜音速弾がネズの枝を粉々に砕き、四発目の銃弾が葵のフードの端を裂いて『左の頬骨の上』を鋭く掠(かす)めた! 熱い血の筋が頬を伝って飛び散る。




「見つけたぞ、出てこい――!」




 二人の兵士が銃口を向けたまま茂みへ踏み込もうとした、まさにその瞬間だった。


 自分たちを狙っていた人間が、後ろの茂みの少女に気を取られて完全に背中を晒したのを見た二つの黒い疾風――マリノアの『ジン』と『リク』が、主人に叩き込まれた防衛本能に従って、石積みの向こうから時速五十キロの無音の跳躍を放ったのだ!




 ――ドォンッ!! ガキィッ!!


「「ぐあっ――!?」」




 吠え声すら一切なかった。


 空から降ってきた『ジン』の二百キロの顎が、短機関銃を構えていた三人目の大男の右前腕を背後から一撃で噛み砕いて銃を取り落とさせ、同時に『リク』がケブラー胸当てを着た三十二キロの全体重で二人目の兵士の両膝の裏へ体当たりを叩き込み、石畳の上へ顔面から激しく転倒させた!




 そして、足元で組み敷かれた大男が左手でサバイバルナイフを抜こうともがいた瞬間、茂みから飛び出してきた葵が、背中のベルトから抜いた重さ二キロの鍛造鋼の塊――『小型ボルトカッター』を両手で振り下ろし、犬たちに押さえ込まれた男のヘルメットの下のこめかみへと正確に叩き込んで気絶させた!




 さらにジンとリクは、松の幹に右手首を矢で縫い止められていた最初の一人目の胸板にも同時に飛びかかり、後頭部を松の幹に激しく打ちつけさせて意識を刈り取った!






【735日目・午前2時16分:工具に残る『主人の匂い』と、夜空の赤色信号弾】




 わずか二十秒足らずで、捕獲班の三人は完全に無力化された。


 九頭の犬たちは一頭たりとも傷つかず、睡眠薬入りの肉はすべて海の底へと消えた。




 だが、荒い息を吐きながら振り返った葵の目の前には、暗闇の中で光る『四対の瞳』があった。


 二頭のマリノア(ジンとリク)が、後ろにいる二頭の若い犬(ライデンとユキ)を庇うように葵から三メートルの距離に立ちはだかり、いつでも飛びかかれるよう全身の筋肉を張り詰めさせていたのだ。




 この島の犬たちにとって、見知らぬ人間はすべて「排除すべき敵」だ。もし葵が武器を構えたり逃げ出したりすれば、次の瞬間には喉笛を噛み砕かれる。




 葵は一歩も退かなかった。


 獣医学科で学んだ通り、敵意がないことを示すためにゆっくりと草の上に両膝をついて自分の頭の位置を犬たちより低く下げると、握っていた『小型ボルトカッター』を自分の前の地面にそっと置き、血の滲む両手のひらを上に向けて差し出した。




「……あなたたちを、助けに来たのよ」


 葵は左頬の傷から垂れる血も拭わず、消え入りそうなほど静かな声で囁いた。「あなたたちの大切な家族を、誰にも奪わせたくなかったの」




 胸に白い斑点のある兄のマリノア――『ジン』が、耳をピンと立てたまま慎重に二歩前へ進み出た。その後ろから、銀灰色の小さな『ユキ』もひょこひょことついてくる。


 ジンは黒い鼻先を下げ、まず葵の手のひらを嗅ぎ、次に草の上に置かれた『小型ボルトカッター』のグリップの匂いを深く嗅いだ。




 その瞬間、ジンの二つの耳がピクリと大きく揺れた。


 人間の何万倍もの嗅覚を持つ使役犬の鼻は、決して騙せない。


 葵が十ヶ月間、防水バッグの奥で大切に守り続けてきたそのボルトカッターのゴムグリップの溝には、葵の匂いの下に、ジンたちが毎日嗅いでいる『あの島のガンオイルの匂い、リーダーであるクロの匂い、そして彼らが世界でただ一人命を捧げた主人(ハンドラー)の手の匂い』が、はっきりと刻み込まれていたのだ!


 何より、ジンとリクはたった今、この見知らぬ少女が自分たちと子犬たちを守るために銃弾に頬を裂かれながらも矢を放ち、一緒に敵を倒してくれた姿を、その目で見ていた。




 ジンの肩から、スッと警戒の力が抜けた。


 ジンは唸るのをやめ、顔を上げると、自分の湿った黒い鼻先を葵の開いた手のひらに「トン」と優しく押し当てた。


 すると、後ろにいた銀灰色の小さな『ユキ』がトコトコと葵の膝元まで駆け寄り、短い前足を葵の太ももに乗せて背伸びをすると、血が滲んでいる葵の左頬の傷の下を、温かい舌でペロッ、ペロッと二回舐めて小さな尻尾を振ったのだ!




「……っ、ありがとう、いい子ね……!」


 葵は瞳に熱い涙が浮かぶのをこらえ、ユキの柔らかい首筋を一度だけ優しく撫でた。




 だが、まだ戦いは終わっていない。


 四十メートル下の南の斜面では、捕獲班が失敗したことを知らない『篠原少佐たち本隊五名』が、指向性爆薬(C4)を持ってバンカーの鋼鉄扉へと迫っている!




 ジンは葵が斜面を指差すよりも早く、すべてを理解していた。


 ジンは弟のリクに「ここで気絶した三人の敵と子犬たちを見張っていろ」と鼻先で合図を送ると、身を翻し、時速五十キロの黒い稲妻となってバンカーの犬用装甲ハッチ――『クロ』と主人が待つ場所――へと斜面を全力で駆け上がっていった!




(ジンなら二十秒でバンカーに着く……! でも、もし篠原たちが異常に気づいて浜辺へ逃げ帰り、あの二隻のゴムボートで本土へ戻ったら、山岳要塞の父に無線で増援を呼ばれるわ! 奴らの逃げ道を、今ここで完全に断たなきゃ!)




 葵は気絶している捕獲班のリーダーのベルトから、赤いパラシュート照明弾が装填された『軍用信号拳銃(フレアガン)』と、消音器付きの『MP5短機関銃』を奪い取った。


 そして東の沢筋を滑るように一気に浜辺へと駆け降りると、大岩の陰に隠されていた篠原たちの『二隻の平底強襲用ゴムボート』へと飛びついた。




 葵はサバイバルナイフを抜き、二隻のゴムボートの分厚いチューブに根元まで刃を突き立てて、長さ一メートルにわたって一気に切り裂いた!


 ――ブシュウウウウウウウウウッ!!


 空気が抜けてぺしゃんこに潰れたボートの船尾に向かい、葵は両手で『小型ボルトカッター』を振り上げ、二基の無音エレキモーターのスクリューとリチウムバッテリーの制御盤を、渾身の力で叩き割って完全に破壊した!




 これで、この島に侵入した八人の略奪者たちは、誰一人として海へ逃げることはできない。




 その時、浜辺から百五十メートル上の段々畑を見上げると、暗視スコープ越しに五つの黒い影――篠原少佐と四人の突撃兵が、砕けた石垣の跡を越えて、バンカーの鋼鉄ハッチの『残り二十メートル手前』まで迫っているのが見えた!




「あの人の家に、指一本触れさせないわ!!」




 葵は入り江の岩場の突端に立ち、両手で『軍用信号拳銃』を真上の夜空へと真っ直ぐに突き上げて、力いっぱい引き金を引いた!




 ――ドォォォォンッ!! シュオオオオオ……パァァァァンッ!!




 無人島の上空百二十メートルでマグネシウム照明弾が炸裂し、小さなパラシュートが開いた。


 五万カンデラの『血のように赤い強烈な閃光』が新月の闇を一瞬にして焼き払い、段々畑も、黒いバンカーも、そして扉の二十メートル手前で丸腰同然に晒された篠原少佐たち五人の姿も、真昼のように鮮明に照らし出した!




『なっ――!? なんだこの赤い光は!? 誰が浜辺から照明弾を撃った!?』


 無線機から、暗視ゴーグルを赤い強光で焼かれてパニックに陥った篠原の絶叫が響いた。『東の捕獲班、応答しろ! クソッ、気づかれたぞ、今すぐ扉に爆薬を――!』




 篠原が言い終えるよりも早かった。


 空から降り注ぐ赤い光の下で、バンカーの分厚い防弾ガラス窓の『鋼鉄の銃眼(ガンポート)』がガチャン!と内側から開いた。




 そして同時に、人間の耳には聞こえない『2万2000ヘルツの超音波ドッグホイッスル』が夜の空気を震わせ――バンカーの側面ハッチと上の茂みから、漆黒のリーダー犬『クロ』と体重五十キロの重戦車『ゴウ』を先頭とするケブラー装甲の犬の群れが、赤い閃光の中を地獄の番犬のように一斉に飛び出した!




(第18話へ続く)


第17話をお読みいただき、ありがとうございます!


睡眠肉を投げようとした兵士の右手首を松の幹へ縫い止めた葵のクロスボウと、背後から時速50キロで跳躍した『ジン&リク』の完璧な連携!

そして、葵が10ヶ月間守り抜いた小型ボルトカッターに残る「主人(健二)の匂い」を嗅ぎ分け、小さなユキが葵の頬の傷を舐める感動の瞬間、いかがでしたでしょうか?


次回【第18話】では、夜空を裂いた赤色信号弾を合図に、バンカーの鋼鉄扉が開き、ついに島の主・健二とリーダー犬『クロ』、重戦車『ゴウ』たちが赤い閃光の中へ飛び出します!

8人の特殊部隊の殲滅戦と、夜明けの浜辺で健二と葵が交わす「2箱のビスケットの返却」をぜひお楽しみください!


―――――――――――――――

【パニック〔SF〕ランキング入賞の御礼&他作品のご案内】


いつも本作を温かく応援してくださる皆様のおかげで、本日、本作がパニック〔SF〕連載中部門にて【日間ランキング 第3位】(週間 第2位・月間 第3位)に入賞いたしました!

皆様からいただく一つひとつの応援やブックマーク、ご感想が、毎日の執筆の何よりの原動力になっています。本当にありがとうございます!


また、私のプロフィール(マイページ)には、他にも【SF】や【パニック〔SF〕】カテゴリーの完結短編シリーズを複数公開しております!

本日公開したばかりの最新作も含め、15分ほどでサクッと読める「知識と現場技術で生き抜くリアル・サバイバル&上級国民への痛快な逆転劇」となっておりますので、以下のURLまたはページ上部・下部の【作者名】からぜひ他の作品も覗いてみてください!


・(1)【本日公開の新作SF短編!】科学者&現場職人たちの逆転バイオハザード劇!

『『研究員ごと封鎖しろ!』と地下研究所に生き埋めにされた俺たち、映画のバカ科学者じゃないのでとっくに全員『免疫済み』だった件〜無害な感染者と極上ステーキを食っていたら、上級国民が扉を開けた〜』

https://ncode.syosetu.com/n9276my/


・(2)【パニック〔SF〕短編ランキング第7位入賞!】極寒タワマン地下サバイバル!

『『ボルトでも食ってろ』と氷点下50度のタワマン地下に監禁された底辺作業員3人のリアル・大寒波サバイバル〜最上階の上級国民が飢えと凍死で崩壊する中、俺たちは地下農園と発酵熱でぬくぬく生き延びる〜』

https://ncode.syosetu.com/n4897mx/


―――――――――――――――

【別作品(ゴブリンの物語)に関する深いお詫びと再公開のお知らせ】


最後に、私のもう一つの作品を読んでくださっていた読者の皆様へ、心よりお詫びを申し上げます。


先日公開しておりましたゴブリンとハルトのチョコレート・コメディー作品につきまして、「第0話(短編)」と「連載版」を別々に分けて投稿してしまったことや、ページレイアウト・改行のミスなど、私の不手際による多くの不備がございました。


そのため、やむを得ず一度作品を取り下げて一から作り直す形となってしまい、すでに物語を読んでくださっていた皆様、そしてせっかくブックマーク(お気に入り)登録や温かい応援を入れてくださっていた皆様には、多大なるご迷惑とご不快な思いをおかけしてしまい、本当に、本当に申し訳ございませんでした。私自身の不注意と未熟さを深く反省しております。


皆様にいただいた応援に少しでもお応えし、今度こそストレスなく楽しんでいただける形でお届けしたく、短編と連載を【一つの連載作品】に完全統合して第1話からスムーズに読めるよう全面改修いたしました。さらに、お詫びと感謝の気持ちを込めて、新規書き下ろしの【第33話:劇場版・特別番外編】を追加した『全33話・完全版』として再公開しております。


・再公開・完全版(ページ上部・下部の【作者名】からご覧いただけます)

『俺の『鞄持ち』が勝手に世界を救おうとする件〜ゾンビ世界でチョコ中毒になった最弱ゴブリンと、彼を聖なる精霊と信じる少年のすれ違いバール無双〜』


せっかくフォローしてくださっていた皆様には重ねて深くお詫び申し上げますとともに、もしお許しいただけるようでしたら、新しく生まれ変わった完全版をまた覗いていただけますと幸いです。

本当に申し訳ございませんでした。そして、いつも私の作品を温かく支えてくださり、心より感謝申し上げます!グラッツェ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。