第14話【特別編・後編】:赤い警察戦術教本、崩壊する『カテゴリーA』のシェルター、そして晴海埠頭の最終検疫
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本日は、のちに健二の頼もしい相棒となる青年シンと、クロたちの長兄犬『ブリッツ』の過去を描く【特別編・後編】です!
父ケンゾウが遺した「対感染者・絶対生存教本」の4つの鉄則、彼らを見捨てたカテゴリーAの政府シェルターの末路、そして晴海埠頭のタラップの上でブリッツが見抜く「潜伏期感染者」の緊迫のドラマをお楽しみください!
(※そして次回の【第15話】からは、いよいよ健二と9頭の忠犬たちの無人島へ物語が戻ります!)
【4:警視庁・対感染者教本と『カテゴリーS+』の完全武装】
俺は倉庫の鉄門が閉まっていることを確認すると、敷地内のコンクリート製守衛室に入り、父が遺した『警視庁・対感染者戦術教本』を開いた。
そこには、最初の四十八時間で殉職した何百人もの警察官たちの犠牲の上に判明した、冷徹なまでの「リアル・サバイバルの鉄則」が記されていた。
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【第1条:銃器の放棄と完全無音行動】
・市街地での発砲は自殺行為である。銃声は半径800メートル以内の全感染者を呼び寄せる。
・感染者は知能を持たず、音と視覚、および風上の匂いにのみ反応する。風下を維持し、金属音と声を完全に断てば、5メートルの距離でも気づかれずに通過できる。
【第2条:咬傷防御(雑誌と業務用ラップの複合装甲)】
・人間の顎の咬合力は最大70キロに達し、通常の衣服は容易に貫通される。
・特殊防具がない場合、厚手の紙束(カタログや雑誌)を前腕・脛・首周りに巻き、その上から『業務用ストレッチフィルム(塩化ビニルラップ)』と『布ガムテープ』を三十重に密閉せよ。圧縮された紙繊維と樹脂フィルムの層は、極めて軽量でありながら人間の歯では物理的に絶対に貫通できない。
【第3条:長柄のストッパー付き刺突武器(十字槍)】
・ナイフやバールなどの短い武器で1メートル以内に近づけば、組みつかれて噛まれる。
・必ず長さ180センチ以上の鉄パイプの先端に刃を固定し、刃から25センチ下に『横木のストッパー(貫通止め)』を取り付けよ。これにより、感染者を突いた際に相手がそのまま柄を伝って前進してくるのを物理的に阻止できる。
【第4条:特殊犬(カテゴリーS+)の打撃運用】
・一般の飼い犬は恐怖で吠えるため、飼い主の生存率をゼロにする。
・しかし無音訓練を受けた特殊犬は、半径60メートルの壁の向こうの死臭と潜伏期ウイルスを完全に探知する最強の生体レーダーとなる。
・犬自身はウイルスに完全免疫を持つが、口腔内の細菌感染を防ぐため感染者に噛みつかせてはならない。必ずケブラー防刃ベストと『打撃用チタン鋼マズル(口輪)』を装着させ、時速50キロの体当たりで感染者の膝関節を粉砕させよ。
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「……すげぇ。これなら戦える!」
俺は守衛室と倉庫の資材を使い、教本の指示通りに自分の装備を組み上げた。
分厚い工具カタログを破って両腕・両脚・首の周りに巻きつけ、倉庫にあった梱包用の分厚い業務用ラップとガムテープでカッチリと三十周巻き上げて『対咬傷プロテクター』を作った。さらに目と口からの血液飛沫感染を防ぐため、防塵ゴーグルとフェイスマスクを装着する。
武器は、直径3センチ・長さ1メートル90センチの足場用単管パイプの先端に、父の分厚いサバイバルナイフを針金と溶接パテで固定し、その25センチ下に太い鉄ボルトを十字に貫通させた『ストッパー付き鋼鉄十字槍』だ。
そして、俺は『ブリッツのK9戦術バッグ』を開いた。
ブリッツの鍛え抜かれた四十二キロの巨体に、警察特殊部隊用の黒い『ケブラー繊維製・全面防刃アーマー』を着せ、その顔に、先端に厚さ8ミリの鋼鉄プレートが取り付けられた『打撃用アサルト・スチールマズル(鉄の口輪)』を装着した。
さらに、アーマーの背中のリングに、引張強度2トンの『黒いケブラー製タクティカルワイヤー(長さ4メートル)』を繋ぎ、もう片方の持ち手を俺の左手のグローブに固定した。
俺は言葉を一切発さず、左手の指で自分の太ももを二度叩き、舌を上顎に当てて「チッ」と一度だけ小さく鳴らした。
――『無音戦闘態勢』。
ブリッツの琥珀色の瞳が鋭く細められた。
爪の音すら立てず、地面に吸い付くような低い姿勢で俺の左脇にピタリと寄り添う。
父さんが鍛え上げた世界最高の『カテゴリーS+』と、そのすべてを知る俺の、命がけの東京突破が始まった。
【5:崩壊したシェルターと、カテゴリーAの末路】
倉庫の裏門から大通りへと出た俺とブリッツは、晴海埠頭までの残り2キロの死の街を、幽霊のような無音で進んだ。
もし俺一人だったら、最初の交差点で死んでいただろう。
だがブリッツと一緒なら、曲がり角の向こうを覗き込む必要すらなかった。
見通しの悪いT字路の手前15メートルで俺が立ち止まり、二本の指で目を示してから前方を指差す――『嗅覚スキャン』。
ブリッツは鼻先をわずかに上げ、風に乗って漂う分子を嗅ぎ分ける。
そして右耳だけをピンと立て、俺のブーツを前足で「トン、トン、トン」と三回叩いてから、右側の路地を鼻先で示した。
――『右の路地の死角、距離30メートル以内に感染者が3体静止している。左ルートはクリア』。
人間には見えない壁の向こうの敵の配置が、ブリッツの鼻を通せば手に取るように分かった。俺たちはただの一度も感染者と鉢合わせすることなく、最短ルートを駆け抜けていった。
だが、港へ続く高架橋のスロープの手前に差し掛かった時、俺は立ち止まって目を見張った。
高架橋のすぐ脇――先ほど俺たちを追い返したばかりの『港区・政府指定第3シェルター』の巨大な換気塔から、真っ黒な煙が噴き上がり、分厚い装甲ゲートの内側から何百人もの絶望的な悲鳴と銃声が響き渡っていたのだ!
しかも、シェルターの非常脱出用スロープから一台の白い装甲バンがゲートを突き破って飛び出してきたが、運転手がパニックを起こして高架橋のコンクリートの橋脚に激突し、横転した。
俺が物陰から双眼鏡で覗くと、横転したバンの屋根の上に這い上がってきたのは、高級スーツが血と泥でボロボロになったあの上級国民――大垣所長だった!
バンのすぐ後ろからは、シェルター内部から溢れ出してきた数十体の感染者たちが続々と追いかけてきている。よく見れば、その感染者たちが着ているのはすべて『カテゴリーA』の金バッジがついた高級な衣服と、シェルター内の警備員の制服だった!
「父さんの言った通りだ……」
俺は息を呑んだ。
さっきブリッツがゲート前で探知した通り、シェルターの中にはすでに噛まれた傷を隠したカテゴリーAの富豪が紛れ込んでいたのだ。そして父さんとブリッツを追い返したせいで誰が感染しているか見抜けず、密閉されたシェルターの内側で連鎖的に感染が爆発し、わずか一時間で全滅したのだ!
その時、バンの屋根の上で泣き叫んでいた大垣所長が、高架橋の歩道を無音で移動していた俺とブリッツの姿に気づいた。
「お、おいっ!! そこの小僧! ケンゾウ訓練士の息子だろう!!」
大垣はバンの屋根の上で両手を振り回しながら、街中に響き渡るような大声で絶叫した。
「た、助けてくれ!! お前の父親が言っていた通り、厚生労働省の政務官の奴が腕の噛み傷を隠してシェルターに入ってやがったんだ! 頼む、その『カテゴリーS+』のシェパードをこっちへ寄越して、バンの周りの化け物どもを噛み殺させろ!! 私を港の船まで護衛しろ!!」
大垣がバカみたいに大声で叫んだせいで、バンの周りにいた感染者のうち『二体』がこちらを振り返り、俺とブリッツに向かって時速40キロで突進してきた!
「チッ、チッ!」
俺はパニックにならず、二回の舌打ちと指の回転サインを出した。
――『ワイヤー脚払い&マズル・ストライク』!
ブリッツが灰色の弾丸となって地面すれすれを疾走した!
迫りくる一体目の感染者の喉元ではなく、その『横』を時速50キロで駆け抜けながら背中のケブラーワイヤーをピンと張り、俺とブリッツの間でワイヤーの罠を作った!
――バチィッ!!
全力疾走していた一体目の感染者の両足首に高強度ワイヤーが食い込み、怪物は空中で一回転して顔面からアスファルトへ激突した!
そしてすぐ後ろから来た二体目の感染者に対し、ブリッツは一切吠えずに跳躍し、鼻先の『厚さ8ミリの鋼鉄プレート付きマズル(口輪)』を、怪物の左膝の皿(膝蓋骨)へ真正面からぶちかました!
――バキィィィッ!!
鈍器で殴られたような乾燥した破砕音とともに、二体目の感染者の膝関節が逆方向に折れ曲がり、その場に崩れ落ちた!
俺は一歩前に踏み出し、地面に倒れた二体の感染者の後頭部を、1メートル90センチの十字槍の穂先で上から順番に突き刺し、わずか五秒間、完全な無音のまま二体を処理した。
バンの屋根の上でそれを見ていた大垣は、信じられないものを見たかのように目を剥いた。
「す、凄すぎる……!! 銃も使わずに一瞬で二体を殺したぞ!! おいシン君、今すぐこっちへ来てくれ! 私のカバンの中に内閣府の特権公印がある! 今ここで君を『カテゴリーA』に昇格させてやるし、三千万円の小切手もやる! だから早くその犬に命令して私を助けろ、これはカテゴリーAからの命令だぞ!!」
だが、大垣が屋根の上で喚き散らした大声は、シェルターの中からさらに『五十体以上の感染者の群れ』を呼び寄せていた。
俺は十字槍の刃についた血を振り払い、防塵ゴーグルの奥から冷ややかな目で大垣を見下ろした。
俺の横で、ブリッツは血一滴ついていない鋼鉄の口輪を光らせながら、大垣を一瞥すらしていなかった。
「警察の戦術教本の4ページ目に、こう書いてあるよ、大垣所長」
俺は静かな声で言った。
「『パニックを起こして大声で叫び、群れを呼び寄せる規律なき者は、その時点で生物学的に死んでいる。決して救助に近づいてはならない』ってな」
「なっ……!? ば、馬鹿なことを言うな、私はカテゴリーAの上級国民だぞ!! お前みたいなカテゴリーDのガキが私を見殺しにしていいわけがないだろうが!!」
「あんたが一時間前に言ったんだよ。『ここにはカテゴリーDに食わせる飯も酸素もない、港の船へ勝手に歩いて行け』ってな」
俺は背を向け、ブリッツのリードを軽く引いた。
「父さんはあんたたちに殺されたようなもんだ。あんたが大好きな『カテゴリーA』の仲間たちがすぐ後ろまで来てるぜ。その金色のバッジを見せて、仲良くやってもらえよ。――もう遅いんだよ」
「ま、待てえええっ!! 行くな、私を置いていくなああああっ!!」
背後で、五十体の感染者が横転したバンに雪崩れ込み、大垣を屋根から引きずり下ろす断末魔の悲鳴が響き渡ったが、俺とブリッツは一度も振り返ることなく高架橋を駆け下りた。
【6:晴海埠頭の濃霧と、タラップの上の最終検疫】
午後五時。
俺とブリッツはついに、東京湾・晴海埠頭の軍用岸壁へと辿り着いた。
海面から立ち昇る濃い夕霧の中、最後の大型輸送艦の巨大な鉄のランプウェイ(乗船スロープ)がゆっくりと上がり始めているところだった。
岸壁では、海上自衛隊と海兵隊の合同警備小隊(八名)が最後の避難民三十名を船内へ誘導していたが、深い霧のせいで視界が十メートルしかなく、兵士たちの赤外線暗視ゴーグルも「体温のない冷たい感染者」を霧の中で捉えきれずに苦戦していた。
俺たちが岸壁のバリケードまで残り三十メートルに迫った、その瞬間だった。
走っていたブリッツがピタリと足を止め、俺の左脛を前足で強く「二度」叩き、兵士たちの左後方――海面に近いコンテナの死角へと鼻先を向けた!
俺が目を凝らすと、兵士たちがまったく気づいていないすぐ背後の岸壁の縁から、海水に濡れた『四体の感染者』が音を立てずに這い上がり、最後尾の若い隊員の首筋へ今まさに飛びかかろうとしていた!
もしあそこで隊員が噛まれ、パニックになった部隊がアサルトライフルを乱射すれば、銃声で港中の何千体もの感染者が押し寄せ、出航前の輸送艦そのものが地獄絵図になる!
「ブリッツ、『サイレント・スイープ(無音一掃)』だ!!」
俺は声を殺してケブラーワイヤーの持ち手を握りしめ、ブリッツと共に霧の中へ飛び出した!
兵士たちの背後3メートルまで迫っていた四体の感染者の足元へ、ブリッツが横から時速50キロで突っ込み、岸壁の係留ビット(鉄柱)を軸にしてワイヤーをU字型に引き絞った!
――バチィィンッ!!
ピンと張ったワイヤーが三体の感染者の足首を同時に刈り取り、三体が前のめりに激しく転倒する!
残る一体が振り向いた瞬間、ブリッツが跳躍して『鋼鉄マズル』の強烈な頭突きをそいつの顎に叩き込み、首の骨ごと後ろへ吹き飛ばした!
そこへ滑り込んだ俺が、地面に倒れた四体の後頭部を十字槍の穂先で「ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ!」と一秒間隔で正確に貫き、銃声をただの一発も鳴らすことなく四体すべてを完全に沈黙させたのだ!
背後の気配に気づいて振り返った部隊の指揮官――海兵隊のベテラン大尉と自衛隊の一等海尉が、自分たちの足元に転がる四体の死体と、血一滴浴びずに立つ俺とブリッツを見て目を丸くした。
「なっ……いつの間に後ろに4体も!? それを銃も使わずに、少年と犬一頭で瞬殺しただと……!?」
大尉が驚愕の声を上げた。
「おい少年、そのシェパードの装備と動き……まさか警視庁の特殊犬『カテゴリーS+』か!?」
「はい! 特殊犬訓練士・ケンゾウの息子、シンです!」
俺は父の血がついた警察手帳と赤い戦術教本を掲げて叫んだ。
「父は俺たちを逃がすために命を落としました! 父の最後の命令で、この『ブリッツ』を連れて艦隊へ合流するために来ました!」
「ケンゾウ教官の息子か! よし、二人とも今すぐタラップを上がれ、あと一分でハッチを閉めるぞ!!」
大尉たちに促され、俺とブリッツは閉まり始めた輸送艦の巨大な鉄のスロープへと駆け上がった。
スロープの上には、最後に乗り込んだ三十人ほどの避難民が船内の格納庫へと入っていくところだった。
だが――俺たちがスロープの真ん中を通り過ぎた、まさにその瞬間だった。
俺の隣を走っていたブリッツが、突然ブレーキをかけて立ち止まった。
背中の毛が針のように逆立ち、琥珀色の瞳が、格納庫の入り口を歩いている一人の男――高級なカシミヤのコートを着て、胸に金色の『カテゴリーA(内閣府参事官)』のバッジをつけた五十代の男――の背中を射抜いた!
ブリッツは音もなくその男の前へと回り込むと、男の正面1メートルの場所にビシッと座り込み、右前足で鉄の床を力強く「タンッ!!」と一回叩いた!
――『サンプルX-09(潜伏期ゾンビウイルス)陽性反応』!!
「全員止まれえええっ!! そのコートの男を船内に入れるな!!」
俺は十字槍を水平に構え、格納庫の入り口を塞ぐようにその男の前に立ちはだかった。
「な、なんだ貴様は!? 無礼者め、どけ!!」
参事官の男は顔をひきつらせ、左腕をコートの内側に隠すようにしながら怒鳴った。
「大尉、このカテゴリーDの薄汚い小僧と犬を海に突き落とせ! 私は内閣府の参事官だぞ、乗船前の検温検査は36度5分でクリアしている!!」
「大尉、そいつは一時間以内に噛まれたばかりの潜伏期感染者です!」
俺は微動だにせず男を指し示しているブリッツを指差して叫んだ。
「俺の父は六週間前、政府の特務機関から渡されたウイルス原液を使って、このブリッツに『発熱する前の潜伏期ウイルスの分子臭』を100パーセント嗅ぎ分ける訓練を完了させていました! そいつの左腕を調べてください、絶対に噛み傷を隠しています!!」
大尉の顔色が一変した。「隊員、その参事官のコートを剥ぎ取れ!」
二人の海兵隊員が男の左右から腕を掴み、カシミヤのコートとワイシャツの袖を力任せに引き裂いた。
周囲の避難民たちから、悲鳴のようなどよめきが上がった。
男の左前腕には、血が漏れないようにビニールテープと高級ハンカチでぐるぐる巻きにして隠された『生々しい人間の歯形(咬傷)』がくっきりと刻まれており、傷口の周りの血管がすでにドス黒く変色し始めていたのだ!
「う、うわあああっ!! 離せ、私はカテゴリーAだぞ! 置いていかないでくれ、金を払うから船に乗せてくれえええっ!!」
「冗談じゃない、そのまま船内の雑居区画に入っていたら、航海中に乗員四百人が全員食い殺されるところだったぞ! 今すぐ岸壁の隔離コンテナへ放り出せ!!」
大尉の怒号とともに、兵士たちが泣き叫ぶカテゴリーAの参事官をスロープの下へと引きずり下ろした。
その直後、油圧シリンダーが唸りを上げ、輸送艦の分厚い鋼鉄のハッチが「ガゴォォォンッ!!」と重厚な音を立てて完全に閉鎖された。
船体がゆっくりと岸壁を離れ、安全な東京湾の沖合へと滑り出していく。
格納庫の甲板の上で、大尉と一等海尉、そして何十人もの隊員たちが、俺とブリッツの前に整列し、一斉に制帽に手を当てて最敬礼を送った。
「少年……いや、シン隊員」
大尉が震える声で言った。
「地上の上級国民どもは、お前をカテゴリーDと判定したそうだな。だが、この艦隊において、潜伏期の感染者すら完璧に見抜き、無音で敵を制圧するお前と『ブリッツ』は、戦車百台にも勝る人類最後の希望だ! これよりお前とブリッツを、我が艦隊司令部直属の『特務生体戦術班・カテゴリーS+』として最優先待遇で迎え入れる! これから我々は東京湾を脱出し、南方海域の洋上艦隊拠点へと向かう!」
俺は鋼鉄の甲板の上で、ブリッツの首元の分厚い毛並みを強く抱きしめた。
ブリッツは初めて小さく鼻を鳴らし、その温かい舌で俺の頬を一度だけ優しく舐めた。
防弾ガラスの丸窓の向こう側で、燃え盛る東京の街が夕闇の彼方へと遠ざかっていく。
あそこに残してきたSUVの中で、最後まで俺を守り抜いてくれた父さんの声が、潮風の向こうから聞こえた気がした。
「父さん……俺たち、船に着いたよ」
俺は父の警察手帳と赤い教本を胸ポケットに強く握りしめ、南の海へと続く水平線を真っ直ぐに見据えた。
「これからブリッツと二人で、あんたが育てた他の十頭の仲間たちを必ず見つけ出す。――俺たちは絶対に、最後まで生き抜いてみせるからな!」
(第15話・新章へ続く)
第14話(特別編・後編)をお読みいただき、ありがとうございます!
父ケンゾウが遺した戦術教本と長兄犬『ブリッツ』の圧倒的な力で死の東京を突破したシン!彼が「父が育てた仲間たち(クロ、ハナ、ゴウ、ジン、リク)」と感動の再会を果たし、健二の最強の相棒として共闘する日は、のちの章で必ずやってきます!
そしてお待たせいたしました!明日の【第15話】からは、ついに主人公『健二と9頭の忠犬たちの島』へと物語が戻ります!
・406日目の朝、健二が医療倉庫で手首の結束バンドを切り、ボルトカッターと2箱のビスケットを投げてやった「あの足首を怪我した少女・葵」は、その後どう生き延びたのか?
・そして732日目、健二が海に投げ捨てたラジオの放送主(山奥の臨時統治委員会)が、健二の『9頭の軍用犬』を無傷で奪い取るために送り込んできた特殊部隊と、卑劣な「睡眠薬入り牛肉の罠」とは……!?
明日からさらに熱い【第2章:絶海の天然要塞・青ヶ島大開拓編】が開幕しますので、次回【第15話】もぜひお楽しみいただけますと幸いです!




