第11話:沈められた軍艦と、玄武岩と防弾鋼の要塞、そして嵐の夜の『15体』
第11話からは、東京湾から持ち帰った莫大な資材と5頭の忠犬たちと共に、無人島を文字通り「絶対不落の近代要塞」へと魔改造する【要塞島完成編】です!
海に沈める鋼鉄の防壁と、嵐の夜の無音防衛戦をお楽しみください!
【407日目〜460日目:人工暗礁と、絶対に燃えない家】
四百六日目の正午、大型武装揚陸バージの平らな船首が俺の島の穏やかな入り江へと滑り込んだ時、権藤たちに焼かれた古い木造農家の煙はすでに消え、緑の段々畑の頂上には四角い黒い灰の跡だけが残っていた。
だが、俺の胸に悲しみはこれっぽっちもなかった。
昨日燃え落ちたのは、誰にも見つからないことだけを祈って震えていた漂流者の小屋だ。
これから俺がここに築き上げるのは、もはや誰の目も恐れる必要のない「孤高の王の城」なのだ。
四百七日目から四百十日目にかけて、俺が最初に着手した大工事は、陸の上ではなく『入り江の海の中』だった。
権藤たちの奇襲を受けたあの日、俺が痛感したこの島最大の弱点は、南側の入り江の入り口――幅十五メートル、水深四メートルの水路だった。あそこが深く開いているせいで、大型の警備艇や武装船が浜辺のすぐ近くまで侵入し、やすやすと兵士を上陸させることができてしまう。
俺は都市の運河から曳航して持ち帰った全長十五メートルの鋼鉄船――『第3資源徴発艇』を使った。
まず、揚陸バージの中央に備え付けられている油圧式クレーンを使って、第3徴発艇の内部から使える部品をネジ一本残らずすべて取り外した。二基のディーゼルエンジン、燃料タンク、バッテリー、銅線、無線機、そして操舵室の厚さ四センチの防弾ガラス窓まですべて回収する。
完全に空っぽの「分厚い鋼鉄の箱(船殻)」だけになった第3徴発艇の船底に、俺は崖から砕き出した『合計十二トンの黒い玄武岩の塊』をバラスト(重り)として満載した。
そして、その重くなった船体を入り江の入り口の最も狭いボトルネック(幅十五メートルの水路のど真ん中)へと曳航し、真横に配置してから、船底のキングストン弁(注水バルブ)を全開にして六角カナテコで底栓を叩き抜いた!
――ゴボボボボボボボッ!!
白い泡を噴き上げながら、全長十五メートルの鋼鉄の船体はゆっくりと水平に沈んでいき、水深四メートルの岩盤の海底へとドシンと着底した。
計算通りだった。干潮時でも満潮時でも、鋼鉄の上部構造物のエッジが『海面下わずか四十センチ』の深さに隠れて横に立ちはだかる、完璧な『水中防壁(閉塞船による人工暗礁)』が完成したのだ!
『港湾防衛と海洋土木の実践書』に載っていた閉塞作戦の応用だった。
海面の上からは、そこに船が沈んでいることはまったく見えない。だが今後、もしどこかの略奪船や武装ボートが俺の入り江へ速度を出して侵入しようとすれば、砂浜から八十メートル手前でこの海面下の鋼鉄の壁に船底をまともにぶつけ、スクリューと竜骨を真っ二つにへし折られてその場で沈没する!
東側の岩壁すれすれに残した「幅二メートル・水深八十センチの秘密の水路」の正確な位置を知っている俺だけが、平底の小型和船で自由に出入りできる仕組みだ。そして二十五メートルの大型揚陸バージ本体は、入り江の奥の浅瀬に永久固定し、鋼鉄の浮き桟橋兼・倉庫へと作り変えた。
海の門を完全に閉ざしたあと、俺は陸の城の建設に取りかかった。
四百十二日目の朝、医療倉庫から持ってきた1000mgの抗生物質を飲み切って化膿を完全に抑え込んだ俺は、鏡の前に座り、専用の『医療用抜鉤器(ばっこうき/ステープルリムーバー)』を使って、左肩に打ち込んでいた十二発のステンレス針を自分の手で一発ずつ引き抜いた。
金属の針の下では、裂けていた皮膚と筋肉が分厚く逞しいピンク色の傷跡となって完璧に癒着しており、左腕には以前にも増して強い力が漲っていた。
そこからの四十日間、俺は五頭の犬たちに見守られながら、一日十時間働き続けて新しい家を造り上げた。
古い農家の焼け跡の灰をすべて取り除き、山肌の強固な玄武岩の岩盤を直接露出させる。
今度の家には、外装に「燃える木材」は1ミリたりとも使わなかった。
俺は『耐震建築と鉄筋コンクリート施工の実践マニュアル』の図面に従い、揚陸バージから運んだ大量の『速乾性セメント』と、洗った海砂、砕いた玄武岩の砂利、そして鉄筋を組み合わせて、厚さ八十センチの『鉄筋コンクリートと黒玄武岩の石壁』を立ち上げた。
さらにそれだけでは終わらない。バージの発電機に繋いだアーク溶接機を使い、その石壁の内側と外側に、持ち帰った五十枚の『厚さ十五ミリの軍用防弾鋼板』を隙間なく溶接して貼り巡らせたのだ!
もはや農家ではなかった。文字通りの『近代要塞』だった。
たとえ敵が口径12.7ミリの重機関銃で撃ってこようが、火炎瓶を何百本投げつけようが、銃弾は十五ミリの防弾鋼板と八十センチの玄武岩コンクリートに弾かれ、火の手は石と鉄の表面を撫でるだけで絶対に中へは届かない。
窓には、割れるガラスではなく、第3徴発艇と装甲トラックから取り外した『厚さ四センチの積層防弾ガラス』をはめ込み、内側から開閉できる鋼鉄の銃眼を設けた。そして入り口の扉には、船の機関室から外してきた『4点ロック式の分厚い鋼鉄製水密ハッチ』をそのまま溶接して据え付けた。
平らな鉄筋コンクリートの屋上には、南の太陽に向けて『工業用ソーラーパネル二十枚』をずらりと設置し、分厚い鉄管を通したケーブルで室内の機械室にある『大型リチウムイオン蓄電池群』へと接続した。
俺がメインブレーカーのスイッチを上げた瞬間、天井のLED照明が音もなく真っ白な光を放ち、船から降ろした大型冷凍ストッカー、井戸の電動汲み上げポンプ、そして毎時二百リットルの海水を真水に変える『逆浸透膜式の海水淡水化装置』が一斉に稼働を開始した。給水タンクと濾過装置はすべて厚さ八十センチの防弾壁の「室内」に配置したため、二度と外から撃ち抜かれることはない。
さらにバンカーのすぐ横には、同じ玄武岩と鉄板で造った頑丈な『ヤギ小屋』と、二重の鋼鉄メッシュで空からの猛禽類も防ぐ『ニワトリ小屋』を建設し、東の溶岩洞窟に隠しておいた玄米の袋、すべての種子、そしてイノシシのコンフィの壺を、バンカー内の涼しい地下貯蔵庫へと運び込んだ。
【461日目〜520日目:『群れ統率教本』の実践と、5頭の絶対防衛網】
だが、この島で最も強固な防壁は、セメントでも防弾鋼板でもなかった。
四本の脚で大地を駆け、音もなく闇を統べる『五頭の群れ(パック)』だった。
毎日午後の二時間、俺はバンカーのテーブルからあの『使役犬・軍用犬の群れ統率と実戦防衛マニュアル』を取り出し、クロ、ハナ、ゴウ、ジン、リクの五頭を連れて島の断崖や段々畑、そして北の森で徹底的な実戦訓練を行った。
暴力や電気ショックなど、一度たりとも使う必要はなかった。
指導官の教本に書かれていた通り、犬という生き物は人間のわずかな視線や指先の動きを誰よりも正確に読み取る天才であり、何より群れの頂点に『クロ』という完璧なアルファ(リーダー犬)がいることで、他の四頭はクロの行動を鏡のように真似る『社会的模倣学習』によって、驚くべき速度ですべての戦術を吸収していったのだ。
俺は教本に基づき、島の防衛システムを「三つの柱」として完成させた。
【第一の柱:超音波ドッグホイッスルによる完全無音通信】。
2万2000ヘルツの真鍮製の犬笛を使い、俺が吹く音のパターンと彼らの行動を完全にリンクさせ、成功するたびに乾燥させたイノシシのハツ(心臓)やレバーの絶品ジャーキーを褒美として与えた。
・『長音1回』=【完全沈黙・その場の草むらへ伏せて気配を消せ】
・『短音2回』=【島の外周4エリアの定時巡回開始】
・『連続短音3回+長音1回』=【標的の背後への回り込み・アキレス腱および膝裏への無音転倒攻撃】
・『短音1回+長音1回』=【即座に戦闘を中断し、バンカーの鋼鉄扉の内側へ撤退・集合せよ】
【第二の柱:犬種ごとの身体的特性に応じた配置】。
俺は教本の犬種別データに従い、五頭それぞれに最も適した役割を与えた。
双子のベルジアン・シェパード・マリノアである『ジン』と『リク』(体重三十二キロ)は、猫のような跳躍力と高い場所を恐れない平衡感覚を活かし、『東と西の三十メートルの断崖絶壁の上』を走る高所監視哨になった。彼らは岩壁の突端に座り、二キロ先の海面に浮かぶ流木一つも見逃さない。
体重五十キロのロットワイラー『ゴウ』は、その圧倒的な質量と動じない精神力を活かし、『南の入り江から登る一本道の関門守備』および『ヤギとニワトリの護衛隊長』になった。二週間もすると、ゴウはヤギとニワトリが「群れの大切な財産」であることを完全に理解し、小屋の前で目を光らせ、野生のイタチやカラスが近づくだけで低い唸り声一つで追い払うようになった。
そして、最も優れた嗅覚と戦術知能を持つジャーマン・シェパードの『クロ』と『ハナ』のペアは、群れ全体の指揮を執りながら『北の原生林の制圧』と『俺の直衛』を担った。
【第三の柱:対感染者・非接触転倒戦術(俺が教本に書き加えた独自の訓練)】。
これこそが、この世界で最も重要な訓練だった。
感染者は犬を完全に無視するため、犬たちはいつでも背後から一方的に攻撃できる。だが俺は、『犬たちが感染者の首や顔に噛みついて、腐敗した黒い血や壊死組織を口の中に入れてしまうこと』を何よりも恐れた。ウイルスそのものは犬に感染しなくても、一年以上腐り続けた死肉の猛毒バクテリア(死体毒)を飲み込めば、犬が重度の食中毒や敗血症を起こす危険があるからだ!
そこで俺は、古いタイヤと丸太で「人間の形をしたダミー人形」を作り、胴体や首には犬が嫌う激辛の唐辛子ペーストと強い酢を塗りたくった。
そして、ダミー人形の『両膝の裏側』と『ブーツのかかと(アキレス腱)』の部分にだけ、分厚いキャンバス布で包んだイノシシのソーセージを縛り付け、さらに五頭の顔には、口が直接腐肉に触れないようレザーと鋼鉄ワイヤーで補強した『打撃用マズルガード(口輪型バンパー)』とケブラー胸当てを装着させた。
クロが手本を見せ、わずか十日間の反復訓練で、五頭全員が完璧な『対ゾンビ無力化モーション』をマスターした。
すなわち――感染者に対しては決して肉に牙を突き立てず、背後から時速五十キロで無音接近し、ケブラー胸当てを着た肩と頭部の体当たりで『両膝の裏の関節』を後ろから一気にへし折るか、ブーツの裾だけを引っ張って坂道にうつ伏せに転倒させ、前足で背中の肩甲骨を地面に踏みつけてロックする!
そして動けなくなった感染者の頭蓋骨を、後から歩いてきた俺が長さ一・五メートルの『六角カナテコ』の一突きで安全・確実に破壊するのだ!
【525日目・12月の嵐の夜:浜辺の『15体』と、無音の処刑】
俺たちが築き上げたその「絶対防衛網」の真価が試されたのは、五百二十五日目――十二月の凍てつく嵐の夜だった。
外は風速二十五メートルを超える冬の暴風雨が吹き荒れ、高さ四メートルの白い大波が島の黒い玄武岩の断崖にドォォン!と激しい音を立てて打ちつけていた。
だが、厚さ八十センチの石と防弾鋼板に守られた俺のバンカーの室内は、摂氏二十二度の春のような暖かさだった。
鋳鉄の薪ストーブの中では乾燥した樫の薪がパチパチと赤い炎を上げ、ソーラー蓄電池で灯るLEDの下、鍋の中ではサツマイモと冬キャベツ、搾りたてのヤギのミルク、そして熟成させたイノシシのスモークベーコンをたっぷり入れた濃厚なクリームシチューがグツグツと煮えていた。
深夜二時。
南の入り江を見下ろす石造りの監視小屋に入っていたマリノアの『ジン』が、バンカーの壁に設けた犬用の二重装甲ハッチを通って室内へ戻ってくると、ベッドの端にいた俺の膝の上に鼻先をトンと乗せ、「フッ」と一度だけ短く鼻を鳴らした。
同時に、ストーブの前で眠っていた『クロ』と『ハナ』が、音もなくスッと四本の脚で立ち上がった。
俺はベッドから起き上がり、テーブルの上の壁に設置した二台の小型白黒モニターへと目を向けた。
揚陸バージの操舵室から取り外した『夜間赤外線暗視カメラ』を入り江の岩場に設置し、地中に埋めたケーブルで室内から二十四時間監視できるようにしてあったのだ。
赤外線LEDが緑色に照らし出すモニターの画面を見て、俺は目を細めた。
暴風雨の荒波に流されてきた全長二十メートルほどの錆びついた古い中型漁船――おそらくパンデミック初期に船員たちが船室に閉じこもったまま感染し、何ヶ月も太平洋を漂流していた幽霊船――が、風下に位置する俺の島の入り江へと真っ直ぐに吹き寄せられていた。
だが、その幽霊船は浜辺までたどり着くことはできなかった。
砂利浜から八十メートル手前、入り江の入り口の海面下四十センチに俺が沈めておいた『第3資源徴発艇の鋼鉄の船体(人工暗礁)』に、幽霊船の腐った木造の船底がまともに激突したのだ!
モニターの中で、幽霊船が真っ二つにへし折れて入り江の入り口で座礁するのが見えた。
しかし、割れた船倉の隙間から荒波に投げ出された黒い影たちが、白い波しぶきに揉まれながら次々と玉砂利の浜辺へと打ち上げられた。
『十五体の感染者』だった。
フジツボと塩にまみれ、骨と皮になった元船員たちの感染者が、激しい雨の中で脱臼した手足をガクガクと動かして砂利浜の上に立ち上がり、俺のバンカーの煙突から風に乗って流れていく「薪の煙とシチューの匂い」を嗅ぎつけて、一本道の坂道の入り口へと群がって登り始めたのだ!
一年半前の俺なら、嵐の真夜中に十五体もの感染者が島に上陸したのを見れば、恐怖で歯の根も合わずにパニックを起こしていただろう。
だが今夜、俺の心拍数は一分間に六十回のまま、1回たりとも乱れなかった。
俺は落ち着いて鋼鉄入りの登山ブーツを履き、防水の厚手のマウンテンパーカーを羽織り、バージの倉庫から回収した軽量暗視ゴーグル付きのヘルメットを被った。
壁のガンラックにかかっている89式自動小銃には、手すら触れなかった。どしゃ降りの塩水の中で銃を撃てば貴重な弾を消費するだけでなく、銃身が錆びる原因になる。
俺が右手に取ったのは、ただ一つ。一・五メートルの焼き入れ鋼製『六角カナテコ』だけだった。
俺はクロ、ハナ、ゴウ、ジン、リクの五頭にケブラー胸当てと打撃用マズルガードを装着させると、鋼鉄の水密ハッチを押し開けて、暴風雨の夜の中へと踏み出した。
暗視ゴーグルの緑色の視界の中で、十五体の感染者たちが急な一本道の坂道を中腹まで登ってきているのが見えた。
俺は四十メートル上の段々畑の石垣の上にわざと姿を現し、風下に立つ彼らに「生きた人間である俺の匂い」を嗅がせて顔をすべて上へと向けさせてから、唇に当てた『超音波ドッグホイッスル』を強く吹き鳴らした。
――フッ、フッ、フッ……フーーーッ!!
(コマンド:【全頭、敵の背後へ無音迂回・同時転倒制圧】)
嵐の轟音の中、十五体の感染者たちは上の石垣に立つ俺の姿だけを見つめ、「グォォォォッ……」と嗄れた声を上げながら坂道を登ろうと腐った脚を踏み出した。
奴らの誰一人として、坂道の両脇の岩壁の上を黒い疾風となって駆け降りていく『五つの影』には気づかなかった。
クロ、ハナ、ゴウ、ジン、リクの五頭は、感染者たちのすぐ一メートル横の茂みを空気のように素通りして、十五体の群れの『完全な背後(坂道の下側)』へと回り込み、横一列に展開した。
そして俺が二度目の短い犬笛を吹いた瞬間――五頭の黒い狩人たちが、背後から一斉に牙なき突撃を放った!
――ドォンッ!! バキィッ!!
まず、体重五十キロの重戦車『ゴウ』が、坂道の中央に固まっていた四体の感染者の『両膝の裏側』めがけて、ケブラー装甲で覆われた肩から真正面に体当たりを叩き込んだ!
ボウリングのピンが弾け飛ぶように、四体の感染者の膝の関節が前へと逆折れし、四体同時に顔面から玄武岩の石畳の上へと激しく叩きつけられた!
同じ瞬間、左右から飛び込んだ『クロ』『ハナ』『ジン』『リク』の四頭が、残りの十一体のかかととズボンの裾を後ろから引っ掛け、三十度の急勾配の濡れた坂道の下方向へと力任せに引きずり倒した!
バランスの反射神経を持たない感染者は、急な上り坂で後ろから足首を払われれば、ひとたまりもなく前のめりに転倒する。
わずか『八秒』だった。
上陸した十五体の感染者すべてが、狭い坂道の泥と石の上にうつ伏せに転がり、起き上がろうともがく彼らの背中の肩甲骨の上には、五頭の犬たちが前足を乗せて全体重で地面へと縫い止めていた! 訓練通り、どの一頭も腐った肉には口を触れず、マズルガードと前足の圧力だけで完璧にロックしている。
俺は雨に濡れた石の坂道を、ゆっくりと規則正しい歩調で下りていった。
両手には、重さ六キロの鋼鉄の六角カナテコ。
まず、一番端でクロが前足で背中を押さえつけている一体目の感染者の横に立つ。
俺は円錐状に尖った焼き入れ鋼の穂先を三十センチ持ち上げ、地面に押しつけられた感染者の後頭部――延髄の付け根へ、垂直に振り下ろした。
――ゴスッ!
一撃。一体目が沈黙する。
俺は一歩横へ移動し、ハナが押さえ込んでいる二体目の後頭部へ穂先を突き刺した。
――ゴスッ!
次はゴウの足元の三体目。ジンとリクの足元の四体目、五体目。
――ゴスッ! ゴスッ! ゴスッ!
まるで畑に支柱の杭を打ち込む農夫のように、淡々と、冷徹に、正確に十五回、鋼鉄の穂先を振り下ろした。
戦闘開始から十五体すべての完全処理までにかかった時間――『二分十秒』。
消費した銃弾――『ゼロ』。
俺と五頭の犬たちが負った傷――『ゼロ』。
俺はウインチを使って十五体の死体を外海に面した西の断崖から強い潮流の中へと投棄し、坂道に消石灰と海水を撒いて綺麗に洗い流してから、五頭を連れて暖かいバンカーの中へと戻った。
薪ストーブの前で、大きなタオルを使ってクロ、ハナ、ゴウ、ジン、リクの濡れた毛並みを一頭ずつ丁寧に拭いてやり、五つの大きなステンレスボウルに『温かいイノシシの骨髄スープと煮込み肉、そして今朝採れたばかりの新鮮な生卵を二つずつ』割り入れて並べた。
外の嵐の音をBGMに、五頭が尻尾を振りながら夢中で温かいスープと肉を平らげる姿を見つめながら、俺は自分のシチューの皿を手に取って微笑んだ。
俺たちの要塞は、ついに完成したのだ。
もうこの地上のどんな死者の群れも、どんな人間の軍隊も、俺たちの眠りを妨げることはできない。
(第12話へ続く)
第11話をお読みいただき、ありがとうございます!
第3徴発艇を入り江の入り口に沈めて敵船の侵入を物理的に封じる『人工暗礁化』、防弾鋼板と玄武岩コンクリートで築き上げた『絶対に燃えないバンカー』、そして冬の嵐の夜に上陸した15体の感染者を5頭の群れとの連携で「銃弾0発・わずか2分10秒」で無音処理する圧倒的な防衛戦、いかがでしたでしょうか?
続く【第12話(第1章クライマックス)】では、ついにパンデミックから丸2年となる『730日目』を迎えます!
ヤギのミルクから作る自家製熟成チーズや12ヶ月熟成の生ハム、クロとハナの間に生まれた『4匹の小さな新しい命(9頭の群れへ)』、そして2年ぶりにスイッチを入れた軍用無線機から聞こえてきた「人間たちの滑稽な放送」を前に主人公が下す、最高にスカッとする決断をお届けします!
さらに第12話の直後からは、あの『カテゴリーS+』の軍用犬とゾンビウイルス誕生の恐るべき真相が明かされる【特別章】&【第2章】へとノンストップで突入します!
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