↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
政略結婚を先延ばしにしていた婚約者が騎士団長をクビになりました  作者: 三尾めいこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/38

嬉しくない再会 4

「国王陛下に訴え出たければ、そうなさってください」


 アデレードは丁寧な、けれど冷たい口調でブレントに告げた。


「私も、きちんと反論させていただきます。婚約解消はあなたの不貞が原因ですし、あなたのご両親にも了解を得ています。それだけではありません。我が家の領地に勝手に踏み込み、領民同士の争いにまで口出ししてきたことは、明らかに越権行為です」


 ブレントは明らかにたじろいでいた。アデレードがここまではっきりとブレントに反論したのは、初めてだからだろう。


「どうぞ、お引き取りください。領地に居座るようであれば、王都から憲兵隊を呼ばなくてはなりません」


 憲兵隊、と聞いたブレントは、びくりと身体を震わせた。自分が追われる身であることを、改めて思い出したのだ。


「ここがストックポート伯爵家の領地であることを、ゆめゆめお忘れなきよう」


 アデレードの言葉には、今までになかった迫力があった。女主人として、十分な威厳を兼ね備えている。マイクもたじろいで、ブレントの顔色をうかがっていた。


「……後悔するなよ!」


 ブレントは捨て台詞を吐くと、雑木林から走り出て行った。残されたマイクはその背中を見送り、もう一度頭をかく。


「どうやら、お嬢様にご迷惑をおかけしてしまったようですなぁ。知らなかったこととはいえ、申し訳ありませんでした」


「あなたには、別のことを聞かなくてはいけません。ですが、後日にしましょう。今日はお家にお帰りなさい」


「左様ですか。では、帰ることにしましょう」


 マイクも雑木林を出て行こうとして「そうそう」と振り返った。


「家には、借金の証文も全て揃っているんですよ。ご入用であれば、お屋敷にでもノックスさんのところにでも、いつでもお届けしますよ」


 下衆な笑みを浮かべた後、「それでは」と頭を下げ、静かに遠ざかっていく。セオドアがその背中を見送ってから「食わせ者だな」と呟いた。


「あいつはヘレンズ伯爵家の令息だと知っていて、ここに連れてきたんじゃないだろうか」


「セオドアの言うとおりだと思うわ」


 ロバータが深いため息をついた。事態が面倒な方向へ転がり始めたことを、全員が感じ取っていた。


「けれどアデレード、あなたは立派でしたよ。ブレントにきちんと言い返せたのですもの」


「お母様、私はすべきことをしただけです」


 少し照れながら、アデレードは再び農夫たちに向き直った。


「借金の証文は、返してもらえなかったの?」


「はい」


 農夫たちは困り果てた顔をして、首を縦に振った。


「マイクさんが、一年分の収入じゃ足りないと言い出しまして……。銀貨一枚借りたっきりなんですが」

「子供の薬代が必要で、やむなく借りたんです」


「子供の薬代?」


 ロバータが大きく目を見開いた。


「病の者には、代官から無利子の貸し付けがあるはずよ。返済猶予もあるわ」


 ノックスは頷き「代官屋敷へ来ればよかったのに」と告げると、農夫たちは驚いた顔をして、その後全員が怒りを顔に浮かべた。


「マイクさんが『代官の貸し付けなんて、ありゃあ嘘だ』と言っていました」

「あとから税が三倍になるとか、子供を連れていかれるとか」

「嘘をついていたのはマイクさんの方だったのか」


 アデレードは「周知が不足していたのね」と肩を落とし、農夫たちに詫びた。


「ごめんなさい。あなたたちを苦しめてしまって……。必ずあのマイクという男から話を聞いて、あなたたちが不利にならないようにしますから」


「そんな、お嬢様のせいじゃありませんや」


 農夫たちは慌てて「顔を上げてください」と口々に言った。


「それよりお嬢様は大丈夫なんですかい。あの騎士団長様……いや、もう辞めさせられたから元の騎士団長様か、あの方、ずいぶんお嬢様に未練を残しているように見えましたけれど」


「大丈夫よ」


 アデレードは笑ってみせた。寂しい笑みだった。


「彼が執着しているのは第二騎士団長の地位であって、私ではないわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。