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政略結婚を先延ばしにしていた婚約者が騎士団長をクビになりました  作者: 三尾めいこ


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14/22

騎士団長をクビになる 3

「ブレント・フィリップ・ヘレンズの、第二騎士団長罷免に賛成する議員諸君は、ご起立願いたい」


 議場にいた議員全員が起立した。ヘンリーは「満場一致」と厳かに告げた。


「ま、待ってくれ! 国王陛下のご裁可が下りるまで、罷免はできないはずだ!」


 悲鳴のような声をあげたブレントに、議員たちは冷ややかな視線を送った。


「これから国王陛下のご裁可を仰ぐことになっています。それまでお待ちになりますか?」


「待つ! 国王陛下なら、必ずお分かりくださるはずだ!」


「では、お待ちいただこう。ご案内せよ」


 警備兵がやってくる。ほっとしたのもつかの間、ブレントが連れていかれたのは貴族院の中にある牢だった。


「ここは牢獄ではないか! なぜこのようなところに!」


「罷免、とのご裁可が下り次第、間諜との密通について、憲兵隊による取り調べが行われることになっております。それまでここでお待ちいただくようにとのこと」


 罠だった、と歯がみしても遅かった。脱力して椅子に座り込む。


(どうすればいい……。どうすれば、罪に問われずに済む……?)


 不意に、こちらに視線を送っていたサイモンの顔が脳裏をよぎった。


(そうだ!)


 アデレードに頼んで、サイモンからヘンリーに口利きをしてもらえばいい。娘の婚約者なのだから、必ず助けてくれるはずだ。


「おい!」


 警備兵に声をかける。兵はうさんくさそうに振り向いた。


「ストックポート伯爵を呼んでくれ! 私はストックポート伯爵の娘の婚約者だ!」

「はあ」


 もう一人の兵を呼んできて、警備兵は耳打ちをした。新しく来た兵が首を振る。


「どなたもお会いになりませんと、申しつかっております」

「そんなはずはない! もう一度確認してくれ!」


 やれやれ、と呟いた警備兵は、牢から出ていった。だがすぐに戻ってくる。


「お会いにならない、とのことです」

「馬鹿な! 俺は息子も同然なのだぞ!」


 わめくブレントに、警備兵は冷たく言い放った。


「ストックポート伯爵に、ご令嬢とあなたの婚約は解消されている、とうかがって参りました」


「は……?」


 言葉の意味がわからなかった。アデレードと自分の婚約が解消されているなど、思いもよらないことだった。


「どういうことだ!」

「ストックポート伯爵ご自身がおっしゃいました。あなたとご令嬢の婚約は、一週間ほど前に解消されている、と。正式な手続きも済んでいるそうです」

「馬鹿を言え!」


 牢の鉄格子を掴んでブレントは暴れはじめた。警備兵たちが一斉に武器を構える。その時だった。


「見苦しいぞ、ブレント」


 サイモンが姿を現した。ブレントは救われたとばかりに「ストックポート伯爵!」と声をあげる。


「俺は嵌められたのです! どうかここから救い出してください!」


 媚びるような笑みを浮かべるブレントに、サイモンはため息をついた。


「君は、本当に酒場に入り浸っていたようだな。ヘレンズ伯爵家から第二騎士団には、何度も使いをやったと聞いているのだが」


「えっ」


「少し前に、晩餐会の招待状を出したことを覚えているかね。あれは君の意向を問う場だったのだが、君は姿を現さなかった。つまり、我が家と親族になる意思はない、と判断せざるをえなかった。ご両親も納得してくださったよ。すぐに婚約解消の書類にサインをしてくださった」


「何ですって?」


 救いは、絶望に変わった。ブレントは全身から冷や汗が吹き出すのを感じた。確かに何度も両親から使いは来ていた。だが二日酔いだったり、ミミのいる酒場に繰り出す直前だったりしたために、いつも「あとにしてくれ」と追い返していた。まさかあれが婚約解消についての話だったとは。


「私も、アデレードにはたった一人の父親なのでね。間諜が経営する酒場に入り浸り、女と家を構えようとする男に口利きをしてやるほど、愚かではないよ。国王陛下の裁可を待って、憲兵隊の取り調べを受けることだ」


 サイモンはブレントに背を向けた。ブレントは茫然とその背中を見送ることしかできなかった。

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