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政略結婚を先延ばしにしていた婚約者が騎士団長をクビになりました  作者: 三尾めいこ


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13/21

騎士団長をクビになる 2

ブレントは一瞬ぽかんと口を開けて、それから大声をあげた。


「罷免とは?」


 氷のように冷たい視線が、ヘンリーを始めとした議員から突き刺さる。


「クビ、ということですよ。お分かりになりませんか?」

「そのくらいはわかる! なぜなのか、理由を教えろ!」


 わめくブレントに、警備兵たちが早足に近寄ってきた。取り押さえられることはなかったが、まるで罪人のような扱いに愕然とする。


「それは、これから説明させていただく」


 ヘンリーはあくまで冷静に、ゆっくりと語りはじめた。


「第一の理由は、国王陛下にうかがいを立てることなく、一方的に外征を計画したこと」


「外征など、計画していない!」


「複数の貴族が『第二騎士団長から、外征の計画があるために結婚を延期したと聞かされた』と証言しています」


「それは……!」


 結婚を先延ばしにしたくて「外征がある」と、あちこちで言い続けてきたのは事実だ。だが、それをこの場で言うわけにはいかない。ぎりりと歯がみをすると、ヘンリーは畳みかけるように発言した。


「外征の準備のために、あなたは家にも帰らず詰め所で寝起きする生活を送っている。ご両親にも婚約者にも、婚約者を伴って出かけた場でも『外征がある』と言っていた。あなたがここに到着する前に、いくつもの証言がありました」


 うろたえて議場を見回すと、アデレードの父、サイモンと目が合った。サイモンは強い視線をブレントに向けている。怒りや憤りとは少し違う感情をぶつけられた気がして、ブレントは思わず目を逸らした。


「これにより、外征を計画したことは間違いないと認められます。次に」


 話が一方的に進められていく。身体から体温がどんどん奪われていくように感じた。


「第二騎士団の機密を、間諜に漏らしたこと」

「間諜……だと!?」


 今度こそ、身に覚えのないことだった。


「そのようなこと、決してない!」

「間諜を捕らえ、取り調べを行う過程であなたの名前を白状しました」

「では、間諜であると気づかなかったのだ!」


 ブレントは必死だった。外征の計画は口から出まかせだと言い逃れできるが、間諜と接触したとなれば死罪もあり得る。


「気づかなかった、ですか。数年にわたり、毎日のように顔を合わせていても?」

「そもそも、本当に間諜なのか? 第二騎士団は、厳密な身元検査を行っている。間諜の入り込む余地などない!」


 毎日のように会っていた相手と言われれば、第二騎士団員としか考えられない。間諜だと言いがかりをつけているのではないか、と言い立てるブレントに、ヘンリーは冷たく言い放った。


「第二騎士団に、間諜がいたわけではありません。……こちらへ」


 後ろ手に縛られた男が、警備兵に連れられてきた。その顔を見たブレントは「まさか」と言葉を失った。

 ミミの酒場を経営している主人だった。


「この者は、数年前に城下町に酒場を開いて、様々な情報を隣国へ流していた。その中でも最も大きな情報は、第二騎士団長、ブレント・フィリップ・ヘレンズから得たものである。間違いないか」


 酒場の主人はうなだれて「……はい」と答えた。


「知らなかったのだ! この男が間諜だったなどと!」


 ブレントは唾を飛ばしながら叫んだ。その様子を、議員たちは呆れた様子で眺めていた。


「第二騎士団長ともあろう人物が、身元の確かではない者が経営する酒場に出入りした挙句」


 ヘンリーはもはや敬語を使わなかった。死刑執行前に罪状を述べ立てる執行人のように、議場へ朗々と声を響かせていく。


「酒場の女とねんごろになりたいからと、次々に機密を話してしまった。そのこと自体、第二騎士団長として不適格であると考えるが、議員諸君はいかがか」


 議員の間から「異議なし!」という声が次々に飛ぶ。ブレントは追い詰められたねずみのように、ぶるぶると身体を震わせるしかなかった。

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