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政略結婚を先延ばしにしていた婚約者が騎士団長をクビになりました  作者: 三尾めいこ


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12/20

騎士団長をクビになる 1

 話は四日ほどさかのぼる。


「団長、起きていらっしゃいますか?」


 ブレントはドアを激しく叩く音で目を覚ました。いつものように第二騎士団の詰め所、団長用の寝室で眠っていたのだが、起きると同時に激しい二日酔いを感じて、不機嫌になった。


「何だ、こんな朝早くから」


 ドアを開けると、部下の一人が青い顔をして立っていた。


「貴族院から召喚状が来ています。すぐさま出頭せよ、と」

「貴族院から?」


 さすがのブレントも驚愕した。貴族院の召喚状で騎士団長が呼び出されるというのは、他国が進軍してきたか、国王が外征を決断したか、どちらかしかありえない。


(国王陛下が、外征を決められたとは思えない。まさか他国が?)


 慌てて部下に手伝わせ、騎士団長の正装に着替える。帯剣しようとして、剣が少し刃こぼれしていることに気づいた。いい加減に扱っていたせいだろう。


(アデレードが気づきそうなものだが)


 舌打ちしたい気分になって、ここしばらくアデレードの顔を見ていないことに気づいた。最後にやってきたのは一週間少し前だろうか。晩餐会を開く、と招待状をよこした前後だった、と思う。

 晩餐会には、両親からも「必ず出席するように」と伝言が来ていたが、ミミを優先した。もう少しでミミが口説き落とせるのだ。アデレードに構っている暇はなかった。


(しかし、他国が進軍してきたとなると、厄介だな)


 国境近くで迎え撃つことになれば、当分王都には帰れない。ミミにも会えなくなってしまう。いっそ金を払って同行させようかと考えつつ、まだ痛む頭を軽く振って、詰め所の建物を出た。愛馬にまたがり、貴族院の建物を目指す。


 貴族院は、重厚な石造りの建物だった。すでに議員たちは議場に集まっているらしく、馬車寄せには警備に当たっている兵の姿しか見えない。ブレントは召喚状を取り出して、兵に見せた。


「第二騎士団長、ブレント・フィリップ・へレンズだ。この召喚状によって貴族院議会に出頭する」


 ブレントは貴族院に召喚されたのは初めてだった。兵は召喚状を見ると「お通りください」と敬礼した。だが、その顔にかすかな嘲笑が浮かんだのをブレントは見逃さなかった。


(なんだ……? 警備兵ごときが、俺に向かってにやにやするなど)


 騎士であれば、殴りつけているところだ。だが警備兵は管轄が違うので、うかつに手を出せない。


(まったく、教育がなっていないぞ)


 貴族院の建物に入ると、役人が近寄ってきた。


「第二騎士団長のへレンズ様でいらっしゃいますね。どうぞこちらへ」


 コツコツと足音を立てながら廊下を進む。控え室に案内されるのだろうと思っていたら、議場に通じる大きな扉の前にそのまま連れていかれた。当惑しているブレントをよそに、警備兵が扉を開く。


「お進みください」


 役人に連れられて、議場の中を進む。貴族院議員たちは「やっと来たか」と言わんばかりの表情で、ブレントを迎え入れた。最前列に近い場所に座らされる。

 当惑しながら議場を見回していると、一人の貴族が壇上に上がった。


(あれは、アデレードのいとこの……。ヘンリーと言ったか)


「アイルズベリー侯爵、どうぞ」


 議長が重々しく呼びかけると、ヘンリーは頷いた。


「お集まりの諸君。大変お待たせした。第二騎士団長が到着したようなので、議事を再開させていただく」


 どうやら貴族院は、ブレントの到着を待っていたらしい。


(……もしや他国の兵が、すでに国境を越えているのだろうか)


 二日酔いで寝込んでいる間に、他国の侵攻を許したとなれば由々しき事態だ。ブレントが顔を青くすると、ヘンリーは言い放った。


「先ほども申し上げたように、緊急動議である。……第二騎士団長の罷免を、この場で採決したい!」

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