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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
95/344

-Chapter38-

 俺はポケットから携帯電話を取り出して、通話する相手を見る。――知らない番号だ。俺は訝しげな表情をしながらも、電話に出る。

「もしもし――」

 俺がそこまで言いかけた時、電話口の向こうから声が聞こえた。

「久しぶりだね。そっちの状況はよく分からないけど……今のところ、私は安全な場所にいるよ」

 既に聞き慣れてしまっていた、杣の声だった。

「な、お前、なんで……!?」

 俺は困惑をあらわにする。彼女が安全な場所にいる。という言葉に俺は安心はしたものの、どうやって彼女があの中から助かったのか、どうして知らない番号からかかってきたのかなど、疑問がいろいろありすぎて、そんな言葉を口にする。

「なんでって……電話のこと? それは私――いえ、楓さんの携帯電話が壊れてしまったから、たまたま近くにいた舞さんに携帯電話を貸してもらっただけだよ」

 それに対して、杣はとても冷静に話す。

「え、あぁ。舞って人の携帯電話を使っているのか。で、無事なんだな?」

 俺は困惑のせいか舞のことを思い出せず、ちょっとだけよそよそしい呼び方をしてしまう。

「ええ、大丈夫……きっとあの黒い奴は追ってこない」

 彼女の一言に、俺は再度安心する。

「……そうか。なぁ、何があったか教えてくれないか?」

 自分の今の精神状態を落ち着かせることも含めて、杣に状況説明を求めた。杣は特に不満を漏らすこともなく、淡々と現状を説明してくれた。

 どうやら、電話が切れた瞬間に、黒い奴に見つかって携帯電話が壊れてしまったらしい。楓がもう駄目だと目をつむった時、舞がたまたまそこを通りかかって助けてくれたそうだ。俺は舞に電話越しでお礼を言う。舞は別に気にしてないといった風だった。舞と一緒に黒い奴から逃げている最中、楓は意識を失い、杣の人格が現れる。その後二人は逃げ続け、なんとか安全な場所までこれたから電話した、ということのようだ。

「……私は舞さんの家に泊まることになったみたいだから、多分そっちに帰ることはないと思う。ごめんね、それじゃ」

 杣はそう言うと、半ば強引に電話を切った。どうやら舞に早く電話を切るよう急かされていたらしい。かすかに聞こえていた舞の不満そうな声がそれを物語っていた。俺は静かに携帯電話を切ると、

「悪い。解決した。だから、朔の提案を受け入れるよ。朔の家に行く、ってことでいいんだよな?」

 朔にいつもどおりの笑顔で話しかける。さっきまでいろいろあって不機嫌な表情になっていたため、朔ともう一人、怜という少女に気を悪くさせていないか、ということからそういう応対をしたが、どうやら朔には逆効果だったらしい。少し戸惑ったまま、隣にいる誰かに話しかける。すると、柱の一部が不自然に盛り上がり始めると、そのまま水あめのようにどこかへ伸び始めた。まるで氷の橋のようになったそれは、どんどん距離を伸ばして進んでいく。これを渡ればどうやら朔の家に着くらしい……のだが。

「これ……本気で渡るのか? 落ちたら結構危ないが……」

 俺は不安げに呟く。橋の下からは水がとんでもない勢いで噴き出しているから、重みで橋が折れることはないだろうが。ただ、朔は俺の一言も意に介さず、自信満々で橋を渡ろうとしていた。彼が橋の上に足を付けた瞬間、

「うばぁ!?」

 朔の足場が思い切り抜け落ちた。幸い彼が落ちることはなかったが、彼は異常な量の冷や汗をかいていた。そりゃそれだけの量が出るほどの恐怖体験だっただろうが。俺が引きつった笑顔のまま彼を見ていると、

「れ、怜、大丈夫なの、これ……」

 と、俺より後ろにいるらしい怜という少女に話しかける。そしてその返答を聞いたらしい後、彼は端っこを渡り始めた。どうやら、真ん中は危険らしい。俺も朔にならって橋の端を渡り始める。下には町明かりがぽつぽつと光っていて、不覚にも少しだけきれいだと思ってしまった。隣で朔が膝をガクガクさせていなければ、立ち止まって景色を眺めていたかもしれない。どうやら朔は高所恐怖症のようだ。

「へぇ……随分すごい芸当ができるんだな」

 朔の家まで橋はしっかり続いていて、俺は感心する。これだけの距離の位置情報を把握しているのは、尊敬に値する。生まれてからずっとここで暮らしている俺でさえも、正確な距離感はあまりつかめない。それをここまで正確にコントロールできるというのは、ある種才能なのだろう。

「……さて、この辺りからなら何とか自分の家まで帰れそうだな。じゃあ俺はこの辺で――」

 俺は一言言い残して、この場から去ろうとする。すると、目の前に氷壁が現れ、俺の行く先を塞いだ。

「うわっ!? な、なんだよ朔!?」

 俺は朔に抗議の視線を送る。彼は少しの間沈黙した後、

「……だそうです」

 とだけ、言った。俺は勿論、

「何が!?」

 としか返せなかった。

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