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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeα-
45/344

-Episode44-

 時間が経つのは早いもので、僕が退院してから早一週間だ。夏休みの宿題を終わらせるために机を漁っていると、病院で舞からもらったメモを発見する。数日遅れてしまったが、今電話をかけておいた方がいいだろう。僕は家の受話器でその電話番号にかける。数回コールが鳴った後、舞が電話に出てきた。

「もしもし?」

 通話相手が誰だか分からないのに、普段と全く変わらない様子で応答する舞。僕だったら緊張していくばくか声のトーンが高くなるのに。

「ど、どうもお久しぶりです」

 とりあえず軽い挨拶から始める。すると舞は僕のことが分かったようで、

「少し遅れたみたいだけど、まぁそっちにも都合はあるから仕方ないか。結果として丁度いいタイミングだったし……ところで、怜は近くにいるのかしら?」

 と、怜のことを聞いてきた。怜はリビングで優奈と何かゲームをしているみたいだ。そのことを話すと、

「ふうん……そう。じゃあ怜に見つからないように家の外へ出て頂戴」

 と、妙な提案をしてくる。怜に見つからないように出る必要なんてあるんだろうか?

「理由は話すと長くなるから、怜に見つかるリスクを避けるために今は話せないわ」

 そんなことを思っていると、まるで考えを読んだかのように理由について話してきた。電話越しだから、僕の表情は見えてないと思うんだけど。

「でも、気付かれないように出るなんて、結構無理があるよ? 僕の分の靴がなければ怜は僕を探すだろうし、ドアを開ける音だけで怜は僕の方にやってくるし。怜に見つからず外に出る方法なんて、ないんじゃないかな」

 とりあえず状況の説明だけしておくと、少しの間受話器が沈黙した。少しだけ聞き取れたのは、彼女が誰かと話しているような声。どうやら舞一人だけではないらしい。

「……ええ、とりあえず順を追って説明するわ。今から三十分後、あんたは部屋の窓を開けて、そこにぶら下がっているロープから降りて下に行く。ちょうど降りたところに靴も置いておくから、その靴を使って外に出ればいいと思うわ」

 相談を終え、舞が怜に見つからずに外へ出る方法を提案する。……確かに窓から外に出るのは典型的ではあるが家の中にいる人へは有効だろう。そこに靴が置いてあるなら靴で痕跡を残すこともないし。が、

「その靴とロープは誰が用意するの? まさか僕?」

 一番の疑問に、舞はほぼ間もなく答える。

「それに関してはこっちで用意するわ。だから安心して。あ、あと外に出られたら電話をかけてくれる? そうしたら改めて場所を指定するから」

 外に出てから電話をかける、って……

「あの、これ家庭用電話ですけど」

 僕がそう言って数秒後、溜息ともとれる声が聞こえてきた。

「……こっちで携帯電話も用意するわ」

 そう言って、僕の明確な意思確認もなしに、電話は切られてしまった。怜に見つからないように、というのが気がかりだが、舞は悪い人には見えなかったし、怜にかかったものについても協力的だから、信用できる。僕は自分の部屋に戻って、ベッドの上で時間が過ぎるのを待った。長針が半回転したのを確認して、窓を開ける。すると、窓には見事に丈夫そうなロープがぶら下がっていて、地面には靴が、さらにその中にかわいいデザインの携帯電話が置かれていた。それにしても、窓から家を出るなんて、なんだか特殊な経験だな。そう思いながら僕はロープに手をかける。そしてゆっくりと地面に降りて、携帯を拾った後に靴を履く。運よく窓ガラスにぶつかったりもしなかったので、そこまで大きな物音も立っていない。僕は忍び足で家の庭から外へ出た。空はもう見慣れてしまった黒色だ。僕は家の方を振り返る。怜にちょっと申し訳ない気がしていたので、僕はあらかじめ持ってきていた紙をポストに差し込む。まぁ、単純に出かけます、という類の文句がつづってあるだけだ。僕はさっき拾った携帯電話でもう一度舞の電話番号にかける。

「もしもし? なんて、分かってるわよ。じゃあ今から道案内するから、しっかり言うとおりに進むのよ?」

 舞は、電話に出るなりすぐに道案内を始めた。別に道案内なんてしなくても、どこどこに来てと言えば、十数年過ごした町なのだから場所は分かるのに。そう思っていたのだが、道案内された場所は、僕が一度も来たことのない、どこかの裏通りだった。レンガで出来た壁に、鉄パイプが通っている。

「はい、到着」

 受話器と頭上から、同時に声が聞こえる。見上げると、舞がすとんと僕の隣に飛び降りてきた。

「あんたが来てくれる可能性は半々だったんだけど、来てくれて正直助かったわ。……本題を話す前に、会わせたい人がいるんだけど、いいかしら?」

 僕は頷く。おそらくその人はさっき電話で舞と会話していた人物だろう。すると、彼女が右手を上げる。すると、姿を現したのは。

「彼女は杣。――怜を今の状態にした、張本人よ」

 舞の衝撃の言葉とともに、黒色のツインテールの少女が現れた。

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