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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
230/344

-Chapter28-

「危ねぇっ! ……じゃない危ない! これ絶対危ないからちょっと!?」

 俺は満に抱えられながら、下からの強風を受ける。上からの眺めは思っていたよりもいい……なんて考える余裕なんてどこにもなく、

「がはははは! むしろこの競技を決闘の無いようにしてもよかったかもしれぬな迅! 名付けて、空中すかいうぉーくとやらだ!」

 勝手に変な競技みたいなものを開発した満の言葉に耳を傾けておくことしかできなかった。彼は俺の話を全く聞いていない。間違いなく。ふと杣の方を見ると、彼女はぐったりとうなだれたまま動いていない。……もしかして気絶してる?

「おい、満! 杣が気絶してるぞ!」

 俺は必至で満に訴える。……が、彼は返事をしない。彼の聴覚はどこかおかしいのではないか? とりあえず彼女をなんとかして助けなくてはと、彼の背中を叩いて俺の話を聞いてもらえるように策を講じてみる。が、感覚が鈍いのか、軽くたたいた程度では何も反応せず、強くたたいても何の反応も返さなかった。

「……おい! いい加減に……!」

 だんだん苛立ってきた俺は、魔法を纏ってそれを纏った籠手で満の背中をたたくことにする。強くたたいてしまえば彼の命に関わってくるので、軽く叩くが、それでも骨を二、三本折るくらいの怪我はするだろう。心の中で満に謝りながら行動を起こすと、

「……む? なんだ迅、息が苦しいのか?」

 ようやく満が反応してくれた。しかも全く平気そうな表情でだ。彼に痛覚は無いのか? ……いや、彼の鍛えた体によって骨が折れなかっただけか。……どれだけ丈夫なんだ、彼の体は。

「はっ! 某の抱えているいたいけな少女に意識がない! ……これは早急に地面に降りねば!」

 彼はそう言うと、どれだけ長い間跳躍していたのか分からないほどの長い跳躍をようやく終え、地面に降り立った。

「……どれだけ跳んでたんだよ……」

 俺はもう考えるのが嫌になるほど風を感じていた気がする。……いや、今はそんなことより杣だ。

「杣、大丈夫か!?」

 俺は今意識を取り戻しているか分からない杣に声を掛ける。……しかし、返事はまるでない。

「な、何……!? おい、大丈夫か!?」

 満は慌てて杣を降ろし、何かしらの応急処置をする。その動作には今までの豪快さはどこにもなく、とても繊細で正確な動きだった。

「杣、杣……?」

 俺は意識を失っている杣に声を掛けるが、彼女は返事一つしない。まさかこんなことで、彼女がこんな重体になるなんて、誰が想像できるのだろうか。俺も満も必死で杣の意識を取り戻そうと画策する。……が、俺が心臓マッサージをしようと彼女の胸に手を当てた時、俺は気付いてはいけないことに気付いてしまった。

「心臓が……動いてない」

 生きている証拠となり得るその動きが、俺の手には感じられなかったのだ。服の上からだから、もしかしたら気のせいかもしれない。――いや、気のせいであってほしい。

「――ん」

 不意に杣の口から声が洩れる。……よかった、俺の勘違いだった。――そうだ、そうに違いない。

「少し気を失ってたみたい……もう大丈夫」

 杣はそう言って立ち上がった。

「心配したんだぞ……俺なんか杣の心臓が止まってるんじゃないかって錯覚に陥ったくらいなんだから」

 俺が安堵の溜息を吐きながら言う。満も杣が意識を取り戻してくれてほっとしているようだ。――唯一、杣だけが複雑な表情をしていた。……俺が不思議そうに杣を見ていると、

「ああ、ごめん。まだぼうっとしてるみたい」

 愛想笑いのような笑みを浮かべて言った。その乾いた笑みがどこか不気味なものに見えたのは、もしかして俺がさっき感じたあの感覚のせいだろうか。動いているはずの心臓が動いていない。彼女が生きているのだからそれは杞憂以外の何物でもないのだが、どうしてもその嫌な感じがぬぐえない。

「はっはっは! ならばしばらくの間そこで休憩しているとよいぞ! うむ、某も今日の決闘はやめにする! 今日は――むぅ、名前を聞いていなかったな。お主の名前はなんだ?」

 満に聞かれ、杣は自分の名前を答えた。すると彼は、

「ほう、杣か! いい名前だな! ……では杣、某は今日一日中杣の警護と介護を行うことにする!」

 と言った。まぁ彼が気絶させたようなものだし、責任を取るという意味ではそれは間違ってはいないような気もするが……。

「安心しろ! 某が栄養のあるものを取ってきて料理してやる! 自慢ではないがな、某は料理が出来る!」

 料理ができる――取り方によっては、様々な解釈の生まれる言い方で、彼は言う。

「あ、いや、別に大丈夫です……」

 杣は愛想笑いを苦笑いに変えて断った。――うん、俺も彼から介護されるのは嫌な予感しかしない。先ほどの満の繊細さから間違いが起こることはないと思うが。

「そうか? むぅ……」

 満は何か考え込むように唸る。少しの後、彼は閃いたように手を打ち、

「そうだ、某の家で看病すればよいのだ!」

 とんでもない案を提案してきた。

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