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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
224/344

-Chapter22-

「虹魔法って……あれだよな? 確か、どんな魔法でも使えるとかいう……都市伝説みたいな……」

 俺はうろ覚えの記憶を頼りに、虹魔法について思い出す。俺はその話をどうせ実際にはないものだと思ってろくに聞いていなかったような記憶があるから、詳しくは分からない。だが、少なくとも俺がおとぎ話だと思うような次元のとんでもない魔法だったことは覚えている。

「はい、そうです……」

 弥奈さんは頷く。とんでもないことを知ってしまったような気がするが、彼女の様子を見ていると、そこまで驚くようなことではないような気がしてきた。もし彼女が世界を征服しようとするような思考を持っていたならば、それこそ大変な事態になりかねないが、ここ数日彼女と接して、彼女ならそんなことはないと確信を持って言える。

「へぇ、それはすごいな……空を飛べたりもするのか?」

 俺は気になったことを聞いてみる。

「え、えぇ……まぁ……」

 弥奈さんは俺の質問が予想外だったのか、戸惑いを隠せない様子で彼女は頷く。

「もしかして、瞬間移動とかも?」

 俺は杣の魔法で移動したときの弥奈さんの様子を思い出して、聞いてみる。

「え? あ、はい……」

 風に揺れるフードを手で押さえながら、弥奈さんは答えた。やはり何でもできる魔法というのはすごいのだろう。具体的な例をそこまで挙げていないので、まだいまいちそのすごさを実感できていないが、きっとそのすごさは後々分かっていくに違いない。

「やっぱり、すごい人、ですね……」

 ふと、弥奈さんが何かを呟いた。はっきりと聞き取れなかった俺は、もう一度聞いてみるが、

「え、い、いえ……なんでも……」

 と言われ、結局聞けなかった。無理に聞き出すことはしないが、何と言ったのかはやはり気になる。そのまま少しの間沈黙が流れていると、不意に俺の携帯電話が鳴る。誰からの電話か確認すると、舞からだ。何か進展があったのか?

「あの風の魔法を使う少年を捕まえたわ。明日の朝、朔の家に行くから、商店街のファミレス前集合。いいわね?」

 電話の最初にあるであろう簡単な挨拶抜きで、彼女は要件を端的に簡素に話し、それに対する同意を求めてきた。あまりにも簡単な説明だったので、一瞬何が起こったのか分からないほどだ。

「え、えーと? 風の魔法を使う少年っていうのは……商店街で暴れてた少年のことだよな? そして、今その少年を朔の家で確保してる、みたいな感じだから、彼の家に向かうために、商店街のファミレス前に――」

 俺が確認の為に反復していると、

「あー、なるべく早めに返事してくれない? 確認なんて後でもできるんだし、はいかいいえで答えてくれた方がいいし」

 舞はこちらの事情を全く考えていない様子で話す。……まぁ、今の反復で大体事情は把握した。

「ああ、いいけど――」

 俺がいい、と言った瞬間、

「あ、そう」

 と簡単な返事があり、すぐ電話が切られてしまった。……随分と失礼な電話の切り方だな。俺がそのことを不満に思っていると、

「あ、あの……誰から、ですか?」

 弥奈さんが俺の方を見て言う。フード越しに覗いてくる瞳は、とても輝いているように見えた。

「あぁ、今――」

 俺は電話の相手の名前を言おうとして、口ごもる。名前が出てこない。それどころか、その相手の姿も曖昧になってしまっている。ただ、とても特徴的な見た目であったことは覚えているのだが……。

「まぁ、電話があったんだ。明日の朝、商店街ファミレスに集合だそうだ。図書室で襲ってきたあいつがいただろ? そいつを捕まえたらしいんだ」

 俺は電話の内容を弥奈さんに伝える。会話の内容は覚えている。そのときの声も覚えている。だが、その通話相手の顔や名前がまるで出てこない。俺は、こんなに記憶力がなかったか?

「……とにかく、明日の朝、商店街に行けば会えるし、大丈夫だ」

 俺はそう自分に言い聞かせて、歩いて自宅に帰ることにした。弥奈さんは俺の家の前まで、魔法ですぐ帰れるからと付いて来てくれた。もしかして、俺の記憶の事情を悟ってくれたのだろうか? 彼女は虹魔法使いだし、そんなことも出来るのかもしれない。

 翌日、俺が家を出るとき、杣が俺の家の前に来ていた。

「もしかして、杣も呼ばれたのか?」

 俺は電話でファミレスに集合することを伝えられた旨を杣に話した。

「まぁ、私もそんなところかな。どうする? 私が連れて行く?」

 杣はそんな提案をしてくる。が、俺は首を振って、

「いや、弥奈さんも行くと思うから、彼女が来るまでここで待って、それから杣の魔法で行くことにしよう」

 杣は俺の提案に頷く。弥奈さんの虹魔法については、彼女の方から話すまでは他の人には黙っておこう。俺がそんなことを思っていると、

「あの……います……」

 杣のすぐ近くから、弥奈の声がした。俺と杣は慌てて声のした方を向く。するとそこには、フードをしっかり被った弥奈が立っていた。

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