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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
223/344

-Chapter21-

「……で、結局何も買わなかったのか」

 俺は杣の買い物に付き合ったが、結局彼女は何も買わずにスーパーを出ようとしていた。外に満という青年が決闘を待っているため、俺はなるべく杣の魔法で違うところに行きたいのだが……。

「彼、かなり行動力があるから、すぐに探し当てられると思うよ。だから、もう腹をくくって、決闘するしかないんじゃないかな」

 その旨を杣に話したら、そんなことを言われた。いや、もし俺が彼と決闘――運動系の何かで競えば、間違いなく勝つのは彼の方だ。そんな分かり切った勝負、一体誰が好んでするというのか。

「いや、でもさ、彼と決闘したところで俺が得られるものって――」

 俺がそう言ったところで、

「おお! 迅ではないか! さぁ、決闘の時間であるぞ! 今回はそうだな……らぐびーというものをやろうではないか!」

 カタカナの部分だけ妙に悪い発音で、ゴル先輩は言った。ラグビーって一対一で出来るものだっけ。

「あの、それは一人だと出来ないのでは……」

 俺がそう言うと、

「任せろ! 某と迅ならできる!」

 彼は俺に過剰な期待を抱いているようだった。……彼なら一人でラグビーが出来てしまいそうだと思えるほど、彼の見た目とか雰囲気がものすごいのはさておき。

「いや、俺には無理で――」

 とりあえず断ろうとするが、彼は話を聞かず、どこから取り出したのか、独特な形をしたラグビーボールを構え、

「行くぞ……!」

 彼はそのまま、それを全力で俺に向かって投げた。俺は命の危険を感じ、咄嗟に魔法を纏ってそれをかわす。すると、俺のもともといた位置の後ろが、まるで弾丸でも通過したかのように、穴が空いていた。……いくらなんでもこれはおかしいだろう。こんなの下手したら死人が出る。

「はっはっは! さすが迅だな! 某の全力で投げたボールを交わすとは!」

 満は大きな声を出して笑っていた。その表情は本当に今の状況を楽しんでいるように見えて俺は戦慄する。

「こ、これ、いつになったら終わるんですか……?」

 俺はなんとか早く終わってほしいと思いながら、ゴル先輩に聞いてみる。すると彼は笑って、

「勿論、どちらか片方が動けなくなるまでだ!」

 ……とんでもない答えをぶちまけてきた。俺が動けない状態であれを食らいでもしたら、間違いなく死ぬ。なんでこんなところで命を張らなくてはいけないのだろうか?

「いや、それはちょっとおかしあぶなっ!?」

 俺が必死に抗議しようとしたところで、背後から何か恐ろしい気配を感じて、必死で体を反らせる。するとちょうど俺の顔があった位置に、ラグビーのボールが飛んでくる。魔法を纏っていなかったら、間違いなく当たっていたぞ……。

「さすが迅だな! 某の用意したとらっぷにも引っかかることの無い頭脳……某に居は無いものだ!」

 満はとても満足そうだった。そんな彼にはぜひとも俺の表情を見てほしい。恐怖に顔が歪んでいるのが分からないのだろうか?

「うむ! いい顔をしているぞ! その闘志に満ちた瞳……! 某の心も熱くなってきた!」

 あ、駄目だこの人。何が起こってもそれをプラスにしか解釈しない人だ。

 そんなことを悟った俺は、夜まで満のラグビーという名の何かにつき合わされていた。体は完全に疲労しきり、俺はもう動けなくなっていた。……そのときにボールを投げなかったのは、彼も疲れたのか、俺が動けないことを知ったからなのか。空には月が浮かび、満足そうに帰っていく満と、その場で倒れ込んでいる俺。ちなみに俺は彼と必死のやりとりを続けているうち、杣や弥奈と別れてしまった。ここから一人で帰らなければならない切なさを感じていると、

「……あの、大丈夫、ですか?」

 ふと、倒れている俺に、たどたどしく声を掛けてくる一人の少女がいた。

「弥奈さん……。まぁ、俺はなんとか……」

 呼吸を整えながら、俺は返事をする。残された力を必死で振り絞り、俺はゆっくりと起き上がろうとする。が、なかなか力が入らず、起き上がれない。

「む、無理は、駄目、です……ちょっと、待って、ください」

 彼女はそう言ったとき、彼女の周りにシャボン玉のようなものが集まっているのが見えた。たしかこれは、弥奈さんの魔法だったような……。そのシャボン玉は俺の方に近づき、そして俺を覆っていく。

「ん? これは……」

 シャボン玉に覆われた部分の疲労が、まるで何事もなかったかのように回復していく。確か弥奈さんの魔法は、時を戻すような魔法だったはず。

「すごいな、この魔法……時を操る魔法なのかな? おかげであの満って人とのやりとりがまるでなかったことみたいだ」

 俺がそう言うと、弥奈は複雑な表情を見せた。何かを言おうとしているが、言うべきか迷っている表情だ。俺は思い切って、彼女に言ってみるよう催促する。すると彼女は、何かを決めたかのようにフード越しに俺を見て、

「私……虹魔法使いなんです」

 驚きの事実を、口にした。

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