-Chapter18-
「じゃあ電話番号を交換しておかないと」
俺は舞に携帯電話の画面を見せた。そこには赤外線通信の画面が映っており、舞は同じように赤外線の面を当てて、電話番号を交換する。そのやりとりを不思議そうに朔が見ていた。
「ん。じゃあ一回かけるわね」
電話番号の交換が終わり、舞が確認の為に電話をかけてきた。
「……よし、繋がったな」
俺はそれを確認すると、電話を切り、舞とは反対側の方向に歩いて行った。
「あ、あの……よろしく、お願い、します」
たどたどしくも、弥奈は挨拶をしてくれた。
「あぁ。よろしくな」
俺がそう言うと、杣も後に続いて挨拶をする。向こうが何やら騒がしいが、俺たちの方は特に大きな騒動もなく、割とすんなりと最初のやりとりを終えることが出来た。
「さて……これからどうするか? 俺はまぁ特に優先してやることは無いから、皆が先にやりたいことからやろうと思うんだが……」
俺がそう言うと、
「じゃあ私から一つ」
杣が手を挙げて、提案をしてきた。
「え、えぇと……私も、一つだけ……」
弥奈も何やら一つやりたいことがあるようだ。俺は頷いて、
「じゃあ、なるべく緊急性のある方からやろうか。急いでその用事を終わらせないといけない人は?」
俺は二人に尋ねたが、二人とも特に何も言わなかった。どうやら二人とも緊急の用事ではないようだ。
「じゃあ、弥奈さんからでいいかな、杣?」
俺は杣に尋ねる。彼女は特に何も言わなかった。……まぁ、否定はしないのだから、大丈夫だろう。
「す、すみません……」
申し訳なさそうに弥奈が言うと、
「別に大丈夫だよ」
ちらと弥奈の方を向いて、薄い笑みを浮かべて言った。その笑顔はどこか見たことのないようなものであった。
「え、えぇと……では」
彼女はそう言って、学校の外に歩いて行きながら用事を話した。彼女はどうやら商店街に用事があるらしい。買い物をする、と彼女はなんどか口ごもりながらも言い、一人では何を買ったらいいのか分からないので、丁度良かったとも言った。
「――で、あの、その……」
弥奈は商店街に買い物に行くとは言ったが、具体的にどの店に行くかは教えてくれなかった。それに、何を、誰に買うかも教えてくれないようだ。まぁ何を買うかは秘密なのは仕方ないが、誰に買うかぐらいは、家族、友人、恋人ぐらいの範囲では教えてほしい。そうしないと自分がどんな品を薦めればいいのか分からない。俺がそんなことを思っていると、
「まぁ、商店街に着いてからでもいいんじゃないかな」
杣が俺たちより前を歩きながら俺の方を見て言う。まぁ、それもそうか。俺は杣に頷くと、商店街へ歩いて行った。
自転車が壊れているせいで歩いて行ったが、商店街までの時間はあまりかからなかった。
「うーん……あの時の騒ぎのせいか、人が少ないな」
俺は商店街の景色を見回して言う。まぁ、あの少年が人を殺傷していったのだから、人通りがいつも通りの方がおかしいが。
「そうだね。でも、お店はやっているみたいだし、問題はなさそうかな」
杣は周囲の店の看板を指差して言う。杣はあの時の出来事を知っているように見えた。あの時、杣も商店街にいたのか? もしそうなら俺に声を掛けてくれればいいお店とか紹介したのに。まぁ、彼女の行動を束縛する気はないが。
「えぇと……」
弥奈は商店街の中へゆっくりと歩いて行って、彼女の目指しているらしい店を探す。彼女の中で入る店は決まっているらしい。俺たちが彼女に着いていくと、一軒のアクセサリー店の中に弥奈が入っていった。
「あのアクセサリー店……たしかかなり値段の高い店だったような……」
俺はぼそりとそんな言葉を洩らす。宝石のような類のものは売っていないが、その店の商品は、とても品質が良く、デザインが秀逸であることで有名なブランドである。
「高い商品を買うってことは、もしかしたら大事な人へのプレゼントなのかもしれないね」
杣はそんなことを言う。なるほど、確かにそうだ。……つまり、恋人や家族へのプレゼントか? そう思いながら俺は高級そうな見た目の店に入っていく。店員さんの挨拶に俺は挨拶を返しつつ、先に入って行った弥奈を探す。
「えぇと……うーんと……」
弥奈はネックレスのような場所で悩んでいた。そっと覗いてみると、ペアの首飾りを選んでいるようだ。どんなデザインがいいか悩んでいるらしい。彼女が見比べているのは、星のデザインのネックレスと、ハートのデザインのネックレスのようだ。俺は彼女が送る予定の人は良く分からないが、おそらくどちらのデザインでもきっと喜んでくれるだろう。だから俺は、
「これ、ハートのデザインの方がいい気がするな」
と、弥奈に意見を言ってみた。理由は単純で、弥奈にはそちらの方が似合うからだ。すると弥奈は、
「あ、は、はい……」
と俯きながら言って、店員さんを呼び、そのネックレスを買った。




