表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
217/344

-Chapter15-

 俺は図書室を回り、手ごろな本を探す。図書室には何度も通っている、という訳ではないが、俺が読む本は大体自分で買って手に入れてしまう。何か目新しいジャンルに挑戦しようとするときもあるが、そう言うのは当たり外れが大きい。

「お……これは」

 俺はたまたまいいものを見つける。俺が毎月読んでいる小説の最新巻だ。この町は都会でないこともあってか、最新巻は売り切れるとなかなか入荷されない。一度入手を逃せば、次に手に入るのは半年後か、一年後か……とにかく長い期間待つ必要があるのだ。それが今、目の前にある。後で買っておくのは当然として、次の巻が発売される前にこれを読んでおきたい。

「これにするか」

 俺は小説を手に取って、カウンターに持っていく。

「あの、この本を借りたいんですが……」

 俺はフードを被った少女に話しかける。しかし、彼女は俯いたままで返事を返さない。

「あのー、もしもし」

 軽く手を振ってみたり、何度か声を掛けてみたりするが、返事はない。一度顔を覗き込もうとしたら顔を逸らされたので、眠っている訳ではないようだが……。

「わ、わた……わた……」

 しきりに彼女は何かを呟いていた。何かの呪文――いや、独り言だろうか? もしかしたら考え事に夢中になっているかもしれない。俺はそう思って、雰囲気的に図書室によく行きそうな朔に助けを求めてみる。

「さ、朔、ちょっといいか?」

 何か考え事をしていた朔に、俺はカウンターから声を出して呼びかけてみる。

「ん? 何?」

 朔は表情を読まれまい、というような表情をして、俺の方までやってくる。先程の考え事もそれなのだろうか。……そのことに関しては、朔は報われないな、と思う。

「本借りるの、手伝ってほしいんだけど」

 俺がそう言った途端、朔は何を言っているのか分からない、と言うような表情をした。少し俺を軽視しているような……表情を読まれまいとしたあの表情は一体何だったんだ。

「なぁ朔、割と失礼なこと考えているだろ?」

 俺は軽視されたことが不満で朔にそう言う。すると彼は驚き、少し落ち込んでしまった。その後すぐ気持ちを切り替えたようで、何があったのか聞いてきた。

「いや、それが……本を借りようと彼女に話しかけているんだが、返事がなくて」

 俺は事情を朔に説明する。すると彼は、

「どんな風に?」

 と聞いてきた。言葉で説明するより、実際にやった方がいいだろう。俺はそう思い、借りようとしている本をカウンターに置いて、

「これ、借りたいんだけど……」

 と、再びフードを被った少女に話しかける。やはり返事はない。

「じゃあ僕が代わりに処理をしようか? 本はよく借りるから、簡単な本の貸し借りなら、僕でも――」

朔がそう言いながらカウンターに入ろうとしたとき、

「だ、駄目ですっ!」

 フードの少女の大きな声が、図書館中に響いた。そのとき顔が一瞬だけ見えたのだが、彼女はひどく赤面していた。……もしかして、人見知りなのか?

「う、うぅ……」

 彼女は何か大きな失敗をしてしまったかのように、フードを深くかぶって俯いてしまった。……これじゃどうしようもないな。朔もそう思ったらしく、アイコンタクトでこれ以上の尽力は無理だと伝えてきた。俺が諦めてこの本を立ち読みしようとしたとき、

「――五秒以内に伏せて!」

 ふと、杣の、杣らしからぬ声が聞こえてきた。まるで他を威圧するかのような声に、俺は驚き、その言葉に従う。次の瞬間、轟音が図書室内に鳴り響いた。壊れるドア、割れるガラス、穴の開く本棚。風の衝撃でよろめき、地面に伏せた俺が見たのは、ドアから転がり出てきた赤い髪の少女。彼女は、舞によく似て――いや、舞本人だった。

「な……何!?」

 ふと、朔が声を上げる。――まぁ、急に非現実的な出来事が起きたのだ。声を上げない方がどうかしている。もし朔が声を上げなければ、俺が声を上げていたかもしれない。

「あ、あんた、どうしてここに……!?」

 ふと、舞が朔を見て驚きの声を上げた。――俺の方は見向きもしなかったが、それは一体どういうことなのだろうか。朔を見た後にちらと杣の方も見たような気がするのだが……。

「えっと、僕たちは杣の後を追ってここまで来たんだけど――」

 朔は正直にこれまでのいきさつを話そうとする。俺は頭を抱えながら起き上がりつつ、周囲の状況を確認する。全員無事ではあるようだが、おそらく誰も状況を飲み込めていない。――ただ一人、冷静に立っている杣を除いては。

「……なんというか、奇跡ね。これだけの人数がいるのに、怪我人が一人もいないなんて」

 舞は驚きながら言う。それは杣が言ったおかげで全員が伏せ、みな何かの障害物に隠れてやり過ごせたからであるが……そもそも、杣はどうやってこのことを知ったんだ? 俺が疑問に思っていると、図書室のドアの方向から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ