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Lonely Liar  作者: Laugh
-Episodeβ-
210/344

-Chapter08-

「あんまりここを利用したことは無かったけど……なかなか快適な空間なんだな、図書室って。冷房も聞いてるし」

 俺はフードを被った少女に着いていき、図書室の中まで入っていった。

「そう、ですね……長い間、ここに、いても、あまり、大変では、ないです」

 そういう話し方なのか、途切れ途切れの声で少女は言う。

「ふぅん……図書委員は当番制だって聞いたけど、君しか当番はいないのかい?」

 俺がそんなことを聞くと、

「えぇ、まぁ……今日は、休日、なので、私が当番、でもないです、けど」

 彼女はそっと当番表を差し出して言った。当番表には何人かの名前が書いてあったが、どうやらその人達は仕事を全くしていないらしい。

「えっと……それで……弥奈さん、かな?」

 俺は当番表の中に最も頻繁に名前の書かれているものを選んで、なるべく失礼の無いように彼女の名前を確かめる。

「あ、はい」

 彼女が返事をしたところを見ると、彼女の名前は弥奈で間違いないらしい。俺は弥奈さんにせっかくなのでここにある本を読んでもいいかと聞く。公共の場所にあるのだから、読むくらいは普通にいいと思うが、せっかく話しかけたから、何か話題を振らなくてはと思っての発言だ。

「え? はい……いいですよ」

 彼女も何故そのことを聞いたのか疑問に思ったようだが、普通に返事を返してくれた。俺は適当に興味を引く本を選んで、斜め読みをする。

「そういえば、今日は休日なんだよな……どうして弥奈さんは今日も図書当番をしているんだ?」

 俺は素朴な疑問を、本から顔を上げて聞いてみる。

「え? えぇと……好き、ですから。本を、読むのが」

 少しの間戸惑い、その後一度呼吸をしてから、弥奈さんは答えた。まぁ、確かに本を読むのが好きなら自発的にここに通いそうだが、

「でも、土日って、学校閉まってないか? あぁいや、今日はたまたま開いていたみたいだけど」

 俺はそんなことを思って再び質問をする。

「え、えぇ、まぁ……いろいろ、です」

 弥奈さんは答えを誤魔化したようだった。何を誤魔化す必要があるのか、いまいちピンとこなかったが、俺の質問自体あまり意味のないものだったので、特に気にしないことにした。

「せっかくだし、何か借りていこうかな」

 俺は杣の好きそうな本を選んでみる。確か杣は子供向けの絵本とかが好きだったような……あれ? そうだったか? あの杣がそんな本を好くイメージなんて全く湧きそうにないが、俺の記憶のどこかでそんな出来事があったのだろう。俺は子供向けの本を探し、図書室を探し回る。……さすがに中学校に小学生向けの本は少なく、そこから更に杣が好きそうなファンタジーを見つけるのは一苦労だった。俺が必死で本を探していると、

「多分、これとか……」

 弥奈さんがどこかの本棚から俺の探しているような本を差し出してきた。

「あ、さんきゅ」

 俺はお礼を言ってその本を受け取ろうとする。ちょうど俺が本を手に取った時、急に強い風が吹いた。窓が開けっぱなしだったのか、風は図書室の中にも入ってくる。本は殆どが本棚の中に入っていたが、カウンターの書類や、テーブルの上に置いてあったインテリアのための折り鶴などが風で飛ばされ、床に転がる。更に、弥奈さんの被っていたフードも、強い風のせいで外れ――。

「――ぁ」

 弥奈さんが、小さく声を上げる。フードの取れた彼女は、とても整った顔立ちをしていた。どこか控えめで奥手な印象は受けるものの、そこもまた彼女の美しさを際立たせているような気さえしてくる。一瞬だけ彼女と目が合うと、

「す、すみません……」

 彼女は慌ててフードを被り直し、床に散らばった書類などを集め始める。少しの間彼女の姿に見とれていた俺は、慌てて我を取り戻し、弥奈さんの書類を集める作業を手伝った。

「あ、ありがとう、ございます……」

 弥奈さんは書類と折り鶴をある程度元の位置に戻し終えた後で、何度も頭を下げてお礼を言っていた。

「いや、いいよ。困ってる人は助けないとな」

 俺はそんなことを言ってから、先ほど弥奈さんから手渡してもらった本を借りることにした。本を借りる際に、ちょっとだけ弥奈さんが笑顔を見せたような気がするが、あまり図書室に本を借りる人がいなかったのだろうか?

 弥奈さんと別れてから、俺は昼食を買いにコンビニに向かう。昨日大量のお金を主に怜のおかげで浪費してしまったので、なるべく安いものを選び、会計を済ませる。適当に選んだおにぎりを口に含みながら町を歩いていると、妙な人だかりができている場所を見つけた。商店街の近く――いや商店街の中か?

「カッ! どいつもこいつも逃げ回るだけ……雑魚しかいねぇのかよ!?」

 不意に、上空から高笑いと共にそんな声が聞こえてきたかと思うと、若草色の髪を持った少年が、地上に降りてきた。

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