第55話 おいしい料理で終わりましょう
魔物を倒した後は……いろいろありました。
まずは筋肉痛! それはそれはひどいものでした。ルリが「せっかく鍛えた筋肉、自然回復しないともったいない! なんて言い出すものだから、風邪をひいたと嘘をついて、孤児院に行くのは二日間お休みしました。
それなのに! 翌々日には鋼鉄の剣のみなさんが、魔物肉と大金を抱えて家にやってきたのです!
どうやら、サニーさんが移動させたドロップアイテムを手に入れることができて、その一割をお弁当代上乗せ分として 持ってきたのです。
ああ、また使い切れないほどの大金が入ってきました。
おまけに、アースドラゴンだということが判明し、鋼鉄の剣のみなさんは『ドラゴンスレイヤー』の称号を得たそうです。
めちゃくちゃテンション高く話し始めました。ああ、圧が強い。
なんだか、アースドラゴンの魔物肉食べるまで帰ってくれそうにないです。仕方がない。特製の焼き肉のたれで焼きますか。
焼きながら、こっそりとサニーさんにも渡します。あまりのおいしさに泣きながら食べていますね。私の分に炊いていたご飯も持って行っていいですよ。皆さんにはパンを出しますから。
「これよこれ! これが食べたかったのよ~!」
「ルツィナうまい! うまいぞ~!」
「やはりルツィナ殿の料理は、私たちが焼いたものとは一味も二味も違う。調味料だけではない。火の通し方の繊細さは私たちには真似ができません」
「……ミニタウロスよりおいしい」
「えっ、おまっ、あの時食ったのか!」
「ずるい~!」
「……役得」
あ~! シルルさんは特別ですから! 心の友ですから!
週に一度の夕食会って明日のはずですよね。今週これで終わっていいですか。
「「「「よくない! 明日も!」」」」
そうですよね。そうだと思いました。
◇
イレギュラーな天災級の魔物が二度も出たため、様々な調査隊が入ったみたいです。
鋼鉄の剣のみなさまは、ドラゴンスレイヤーとして調査に協力して忙しそうです。
ギルドはじめ、様々な人たちが『赤いローブのルナ』を探しています。
名乗り出れば100万ギルの報酬。他にも勲章や騎士爵の授爵など様々な特典があるらしいのですが、名乗り出るのは偽物だけ。
氷剣の舞は、リーダーの剣が壊れたため休業状態。今回知ったんだけど、魔剣は、使い手が育て一緒に成長するものだそうだ。宝剣はもともと何らかの属性効果がついているっていう違いがあるらしい。だから、魔剣が折れてしまうと自分の分身を失ったような気持ちになるそうだ。冒険者を辞める時には、高く売ることもできるので、財産としてとらえてる人も多いみたいです。
リーダーさんの心が折れてしまって、氷剣の舞は解散するのではないか、という話のようです。
騎士団は、報告のため早々に王都に戻ったそうです。
「あいつらは、全然助けようとしなかったんだ。いやぁ、あの時赤いローブのルナが現れなかったら大変だったぜ」
ボルクさんが武勇伝を語っています。
「まあ、その騎士団も帰っていったしな。剣をボロボロにされて最初は怒っていたが、ルナの言葉に感じるところがあったんだろうな」
え? あの時のルリの八つ当たり?
「『私は何のために騎士を目指していたのかすっかり忘れていたようだ。下賜された剣を駄目にしたのは、私の思い上がりのせいかもしれない。報告をしてしかるべき処分を受けよう。騎士を辞すことになっても致し方がない』って笑いながら俺に語ってきやがった」
え? は? 氷剣の舞も騎士団の隊長も、剣が折れたからやめるんですか! あれ、ボルクさんは? 剣折れましたよね。
「俺か? 俺の剣は鋼鉄製の量産品だ。初心者が使うのと同じだ。大剣だからちいと高いが、まあいくらでも替えが効く。消耗品だ」
あ、そうなんですね。
「以前も宝剣を壊されて心折れたやつもいたし、今回は騎士団の隊長と氷剣の舞の心を折って引退させた。だから、赤いローブのルナは、冒険者の間じゃ『破壊者ルナ』って恐れられているぜ。そっちの方が有名になりそうだな。ははは」
えっ、破壊者ルナ! なんでそんなことに……。
わざと壊しているわけじゃないのですよ! あああああ~。
◇
「スイートパンプキン、もう、一人で作っても、大丈夫ですね」
カナはすっかり料理がうまくなった。スイートポテトとスイートパンプキンは、カナが作って孤児院で販売することになった。
月々、売り上げの一割が私のもとに入ってくるようになったのは、ギルド長や宝石商の店主たちが、様々なところに働きかけたから。
別に全部孤児院のものにしてもよかったんだけど、いろいろ縛りを設けないと、本部がカナの身柄も含め、すべてを持っていくだろうって言われたから仕方がない。
そして今日は、オーブンが孤児院に設置されてから、初めての火入れの日。
まあ、使い方を教わるために、カナと二人で何度も試してみたんだけど。
(オーブン、オーブン、ルルルルル~!)
誰も見えないからって。ルリがオーブンの前で踊り狂っています。
(だってさ、これでまた料理の幅が広がるんだよ。こいつももらったし)
この間の戦闘のご褒美でルリが要求したもの。ドライイーストを掲げて喜んでいます。
(これとオーブンがあれば、ふっわふわのパンが焼ける。ピザだって、ドーナツだって作れる。ふふふふふーん)
それは今度のお楽しみです。今日は。
(完璧なスイートポテトを作ってみせるよ! 生クリームを混ぜ込んで、卵黄を塗って、こんがりとオーブンで焼き上げた、まろやかでコクの深い最高のデザートだよ)
広場では、孤児たち、神父様、ギルド長、宝石商と魔道具店の店主、そして、鋼鉄の剣のメンバーがスイートポテトの完成を待っています。
「焼こう、カナ」
「はい、師匠」
(ルリ、これでいい?)
(余熱オッケー。やりな)
オーブンから、甘い匂いがあふれてきます。
さあ、完成です!
「完成です!」
みんなが拍手で迎えてくれます。
誰もが笑顔で待ってくれています。
(一人の時間もいいけど、こういうのもいいよね)
そうだね。こんな平和で幸せな日々が、ずっと続きますように。
私は、全然知らない神様ではなく、なんかやってくれそうなサニーさんに祈りをささげた。
〈おしまい〉
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ルツィナの物語、いかがでしたでしょうか。
よかったと思ったら、ぜひ星を入れて応援してください!★★★★★
タイトルを思いついたとき、書けそう! と予感したその勢いで書き始めたお話。
孤児院が出てくるとは予想もしていませんでした。
相変わらず、キャラたちの自主性を優先した結果、こんな大事に・・・
まあ、書いていて楽しかったので良いことにしましょう。
ルツィナとルナは、これからもいろいろやらかすことでしょう。
味醂料理も披露していませんし、ドライイーストもまだ使っていません。
もちろん魔王たちとの対決も・・・
ご縁があったら、また会えるかもしれません。
ご愛読、ありがとうございました。




