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燃え〈ルナ〉よ剣‼️~コミュ障少女。ぼっち生活を死守するために、お弁当と燃える剣で冒険者たちを守ります~  作者: みちのあかり
最終章 これからも一緒に

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第54話 戦闘

【三人称】

「おいおい、そんなんありかよ!」


 目の前の魔物はアースドラゴンだった。そのドラゴンが分離し、氷剣の舞と鋼鉄の剣、それぞれをターゲットにしようとしていた。


「一頭だったら、氷剣のヤツらがひきつけている間に救助完了するつもりだったのにな。どうするバゥイ」


「君たち、早く逃げてください。足手まといです」


 バゥイが冒険者たちに声をかけたが、恐ろしさでなかなか動けないようだった。


「ちっ、ボルクしばらくは防御に徹してください。シルル、重力のデバフを! ヴィラは目を! ひたすら目を狙いなさい」


 氷剣の舞は、思い切り大技をかけている。そのたびに周辺の空気が凍てつく。

 しかし、思うように攻撃は効いてないようだった。

 わずかに皮膚を傷つけるだけ。


「各々、分散してデータを取るように。魔物の動き、冒険者の出す技、冒険者も鋼鉄、氷剣、それぞれ分けて」


 騎士団は、遠く安全な場所から戦いを見つめていた。それが任務だと割り切って。


 氷剣の大技も使い切り、防戦一方となった。全員が逃げ切る目途が立たないまま、時間だけが過ぎていく。


 そこに、ルツィナとルリが合わさったルナと、サニーが出現した。



「魔物は一頭じゃなかったのかよ!」


 ルリがサニーに文句を言った。


「あれは、アースドラゴンだわ。つがいだと、分かれたり一緒になったりできるの」

「なんてむちゃくちゃな!」


「あ、あそこに鋼鉄のみなさんがいます」


 ルツィナが声に出して言った。


「助けないと」


「待って、もう一組の方がヤバいわ。それに、私が手を貸せるのは一度だけ。この中で一番高価な武器に魔法をかけてあげられるけど、二回は無理なの」


 技をすべて繰り出した氷剣の舞。体力もごっそりと失っていた。

 大切な剣も今にも折れそうなほど歪んでいるのがわかる。


「考えるな、まずは武器だ。どれが使える?」


 ルリがルツィナの思考をとめるために優先順位を変えた。

 サニーは騎士団隊長の腰の剣を指さして「あれよ」と答えた。


「こんなところでなにしてるんだ! 助けに行かないのか!」


 ルリが叫ぶと、隊長が答えた。


「我々は騎士団。王国直属の部隊だ。我らはこのダンジョンと魔物のデータを持ち帰るのが務めだ」


「国民を守るのが騎士じゃないのか!」


 ルリが忌々しそうに叫ぶ。


「目の前で死にそうな人を助けるのが騎士ってもんじゃないのか!」


「……我々の任務じゃないな」


「その腰につけているのはなんだ! それは人を、人の命を守るためにあるんじゃないのかよ」


 隊長は剣を抜いて掲げた。


「この剣は、王より直々に下賜された宝剣だ。こんなところで使えるわけがないだろう」


「使えねえ剣ならそいつは剣じゃねえ! 俺が使い方を見せてやるぜ」


 ルリは剣を奪うと、一気に走った。


「おい、待て!」


 隊長が叫んだが聞きはしない。

 赤いローブに気が付いたボルクが叫んだ。


「こっちはいい! 向こうを頼む!」


 ルリもルツィナも、その声を信じた。

 鋼鉄のみんななら、絶対に何とかする。そんな確信が生まれた。


 手に持った宝剣がどんどんと熱くなっていく。手のひらが焼けそうになる。


 ――離してなるものか。


 ルツィナもルリも覚醒したまま、同じ動きを意識した。その意識は肉体に反映し、速度もキレも普段より良くなっていた。

 まさに一心同体。いや二心同体というべきか。


 地面を蹴り、アースドラゴンに向かって飛びかかると、そのまま燃え盛った剣で頭を真っ二つに切り裂いた。


 切られたアースドラゴンは、大量のドロップ品を落とし消え去った。


「やりやがった! こっちも負けてらんねえな!」


 ボルクが「後のことは考えるな、全力で向かうぞ!」と言うと、「しょうがないわね」とヴィラ答えた。


「一回しか出せないし、出した後何もできなくなるからね。シルル、あいつの動き止めて。外したら後がないんだから」


 ヴィラは『エクリプスムーン・アロー 』と叫び、ギフトを解放した。青白く光る巨大な固定式の大弓がアースドラゴンに向けて引き絞られていく。


「いけ~!」


 その声に導かれ、巨大な矢が放たれた。勢いよく肩の近くに深々と刺さり、アースドラゴンはのたうち回っている。


「あ、あたしは、ここまで。あとは頼んだ」


 バゥイがすかさず回復魔法をかけ、シールドを強化した。

 ボルクがシルルに目配せをする。シルルはうなずき、タイミングを計った。そして、フェザーの魔法を唱えた。


 体重も防具も武器も、すべてが軽くなったボルクは、アースドラゴンの頭上をはるかに超えるところまで飛びあがった。その瞬間、シルルはフェザーを解除した。


 鋼鉄の鎧に鋼鉄の剣。それに筋肉であふれんばかりのボルクの体重。

 それらが重力により、一気にアースドラゴンに向かい落下してゆく。両手で剣をつかみ、首に向かって剣を立てる。


 矢の痛みで反撃をすることもできないまま、もう一体のアースドラゴンも倒された。


 ドロップ品とともに落ちてきた鋼鉄の剣は、真っ二つに折れていた。


「勝ったか」


 そのままボルクは大の字に倒れこんだ。


 ルリは騎士団のところに歩み寄っていった。


「人を守るのが騎士じゃないのか。何のための剣だ。悪いな、ボロボロになったが、返すぜ」


「貴様!」


「どれだけえらいのか知らないが、ダンジョンの中では命は同じ重さだ。魔物は身分で忖度なんかしてくれない。外野気分だったんだろうが、あいつらがやられたらお前らもやられてた。結界が張られていて通路に逃げることができないのに気が付いていなかっただろう」


「……結界、だと」


「ああ。協力すれば俺の出番はなかったかもしれないし、剣もこんなことにはならなかったんだ。自業自得ってやつさ」


(もういいよ。サニーさん早く離れよう)

(そうね。けが人も治療した方がよさそうだし)

(まて、もっと言わせろ、本当に腹が立ってるんだから)

(駄目よ。そろそろ離れないと。タイムオーバーだわ)


 サニーは自分たち以外の全員を地上にワープさせた。


「あ~疲れた。でもよくやったな、ルツィナ。鍛えた甲斐があったよ」

「そうね、ちゃんと意識も半分半分だったし。良い傾向ね」

「え~。もう出ないんですよね」


……たぶんね」


 自信なさげにサニーは答えた。


「たぶんってなんですか! もう嫌ですよ」

「あたしはやってもいいよ。欲しいものいろいろあるし」


 ルリはむしろやりたがっているようだ。


「ルリの欲しいものって何?」

「そうね、今回のご褒美上げないと。でもルリの欲しいものでいいの? ルツィナの欲しいものは?」


 そう言われて考えても何も思い浮かばないルツィナ。


「ルリの欲しいものでいいよ。調味料増えるの楽しいから。何を頼むの?」

「それは帰ってからのお楽しみ。まずはドロップアイテム拾うよ」


 ルツィナは地面を見てつぶやいた。


「こっち側の私たちのものじゃないよね。倒したの鋼鉄の剣のみなさんだよね」

「そうだね」

「サニーさん。何とか届けられないかな」


 サニーは少し考えてから「じゃあ、後で送りましょうか」と答えた。


「ほら、早く拾う。孤児院に行く時間だよ」


「うん。……明日筋肉痛かな」

「なるだろうね。がんばれ」

「もう、誰のせいよ!」


 三人は笑った。全員が無事で戻れたことを本当に良かったと思いながら。

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